東工大について
東工大について
平成27年度学位記授与式に先立ち、博士後期課程を修了する3名の学生に、東工大での大学院生活について話を聞きました。
私は博士後期課程から東工大大学院へ進学しました。博士課程へ進学することは決めていましたが、広い視野を持とうと思い、他大学の研究室も考慮し進学先を検討していました。東工大を考えたきっかけは、参加した研究会で旭研究室の研究発表を聞き、その内容に興味を惹かれたことです。そして研究室訪問や旭先生との面談を通じて、自身で新しい研究に挑戦できる場であると感じ進学を決意しました。
博士後期課程全体を振り返って、大変自由に研究が行えたことを印象深く思います。我々、旭研究室が独自に開発を続けてきた「能動帰還型核スピンメーザー」という装置を用いる研究ですので、最先端の研究の多くがそうであるように、どのように研究を進めるかは自ら決定します。その過程には苦しいこともありましたが、自身の行動が即座に結果に結びついていき、やりがいのある3年間でした。
原子の永久電気双極子モーメント(EDM)とは、電気的に中性な原子にも関わらず、内部では電荷の分極が生じている状態です。これは現在未発見であり、発見されればいままでにない新しい物理(超対称性模型など)が自然の背後に隠れていることの証明となります。私はこの原子EDMの探索精度を高めるための新たな手法の提案、開発とその性能の評価を行い、従来の手法を越える精度が期待できることを示しました。
理化学研究所に籍を置き、原子を用いた基本対称性の研究を続けます。博士後期課程修了はこれからの自身の人生における起点になると思っています。東工大で得た経験を基に、幅広い視野を持って生きていきたいと思います。
東工大大学院には最先端の研究を行える環境が整っています。設備などはもちろんのこと、第一線の研究者である先生方との研究・ディスカッションは刺激的で、また、「自由に」だけではなく多くのサポートも受けることができました。
大学院からの進学を考える人にもぜひ東工大を薦めたいと思います。「自分で深く物事を探求したい」という意志があれば、東工大大学院の門戸は大きく開かれていると思います。
研究が面白かったからです。私は東工大の学部から大学院の博士後期課程まで進み、研究室に所属した6年間、生物を対象にした研究を行いました。生物の研究は、予定通り・予想通りにはいかない事が多々ありますし、すぐには結果が出ません。時間をかけて準備を進めていても、当日の生物の調子が悪くて実験がうまくいかない事も多いです。しかし、だからこそうまくいった時はとても嬉しいし、達成感をものすごく感じられます。
研究室ごとに様々なイベントがあることです。大学院生活はもちろん研究がメインですが、私の所属研究室では、お花見、バーベキュー、研究室旅行などがありました。バーベキューでは竹を使ってバームクーヘンを作ってみたり、研究室旅行ではアクティビティや観光を楽しんだりしました。また、他の研究室とも仲がよく、一緒に飲み会などを開催したりしています。研究は真剣に、遊ぶ時は遊ぶ。かなりメリハリのついた生活でした。
「ゼブラフィッシュコネキシンcx36.7の心筋特異的な遺伝子発現調節機構の解析」というテーマで研究を行いました。ゼブラフィッシュという魚の発生初期に心臓特異的に発現する遺伝子の発現調節がどのように行われているのかを調査するため、受精卵を用いて解析を行いました。その結果、心臓での遺伝子発現が、心臓特異的なプロモーターの活性化と骨格筋での発現抑制によって調節されていることがわかりました。
製薬会社に就職します。入社後は、医療用医薬品を創る最初の工程である、創薬研究職として研究に携わる予定です。
今まで薬学も医学も学んだことがなく研究内容にもほぼ接点が無いので、正直不安な面もありますが、これまでの研究生活で学んだことを活かしてがんばっていきたいです。
大学生活・大学院生活を通して、自身の専門だけでなく分野を超えて様々な考えに触れてください。そして、自身にしかない視点や考え方をしっかりと持ち行動できるようになってください。その人にしかない視点や考え方は、一生の大きな強みになります。東工大は、様々な人との交流を通して多くの視点や考え方を知り、自身にしかない一生ものの強みを育むことのできる場所だと思います。
来日する前、私はフィリピンの科学技術高校でコンピュータサイエンスの教師をしていました。幸運にも文部科学省奨学金の資格を得て、大学院で学ぶ機会を得た私は、「学生がどのようにコンピュータサイエンスを学び、テクノロジーがどのように教育に利用されているのか」が研究できる大学を幅広く探し、2008年に西原明法教授の研究室の一員となりました。
忘れられない出来事は2011年の東日本大震災です。私は当時、日本のフィリピン人学生会の会長を務めていましたので、他のメンバーやボランティアと協力しながら、日本にいるフィリピン人留学生の安否確認を行いました。
また、私は修士と博士の2つの学位を取得する間に、日本で2人の息子を出産しました。子育てしながらの学位取得は、西原教授の協力無しには決して成し得ませんでした。
コンピュータサイエンスを学ぶ高校生のパフォーマンス低下や低モチベーションの問題に対処する学習ツールを開発しました。学習内容は基本的なアルゴリズムで、学習意欲を高めるためにアニメーションを使用し、教育の戦略や学生の成績も包括したモデルを提案しました。現段階での研究は高校生に焦点を当てていますが、将来的には大学におけるコンピュータサイエンス教育への波及を狙っています。
フィリピンに戻ってコンピュータサイエンス教育を推進し、カリキュラム設計と実装の研究や政策提言を行っていくつもりです。また、フィリピンではより多くの科学者やエンジニアの養成が急務となっています。コンピュータ技術の有能な教師の存在は重要な必須条件です。そのため、私はコンピュータサイエンスや情報通信技術の教師の教育にも関わりたいと思っています。
日本、特に東工大で学ぼうという留学生の皆さんへ。どんな状況にあっても、自分が心に決めた目標を見失わないでください。辛い時に支え合える友達を見つけ、一緒に日本の美しい自然や豊かな文化を体感しましょう。そして、研究で多忙を極めるときこそ、じっくり考える時間を大切にし、日本での勉強を終えた後、あなたが何を社会に還元し、母国に持ち帰ることができるかを思い描くことを忘れないで欲しいと思います。
佐藤さん、宮城さん、アバンセニアさん、そして、この春東工大を卒業する皆さん、
ご卒業おめでとうございます。東工大での経験を生かし、世界に羽ばたいてください。
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2016年3月掲載