東工大について

東工大だからできる!文理共創の未来

(左から)田中幹子教授、上田紀行副学長、川名晋史准教授(左から)田中幹子教授、上田紀行副学長、川名晋史准教授

上田紀行

副学長(文理共創戦略担当)、リベラルアーツ研究教育院・教授

田中幹子

生命理工学院・教授

川名晋史

リベラルアーツ研究教育院・准教授

理工系こそ哲学的なことばと、文系こそ理工系の知恵と組むことを

上田紀行副学長 上田紀行副学長

上田:東京工業大学は2016年にリベラルアーツ研究教育院を設立し、リベラルアーツ教育に基づいた改革を進めてきました。次なる改革、それが理系の知恵と文系の知恵をかけあわせる「文理共創」です。私自身はリベラルアーツ研究教育院の初代院長を務め、2022年4月より文理共創戦略担当の副学長に就任しました。教育と研究で、それぞれどんな文理共創が可能なのかについて、生物学の田中幹子教授、国際政治学の川名晋史准教授にそれぞれ熱く語っていただきましょう。

田中:東工大は、個々の科学力や技術力ではそれぞれ世界をリードするような成果をあげている分野もあり、アメリカのCaltech(カリフォルニア工科大学)やMIT(マサチューセッツ工科大学)とも十分に張り合っている分野もあります。ただ、総合力という面でみると、国際的に発信する力がまだ足りていないと感じています。この国際的な発信に必要となるのは、それぞれの成果から描くビッグピクチャーを言語化、もしくは視覚化し、その思想や哲学を国際社会に発信し大きな影響力を与える「文系力」だと思います。

上田:「文系力」ですか!文系の人間はそれを「力」だと認識することは少なく斬新です。「科学技術力」はよく聞きますけれど。思い返せば、以前池上彰特命教授と行ったアメリカの大学視察でも、多くの理工系の先生方がリベラルアーツの力を強調されていました。

田中:MITにはMITメディアラボがありますが、メディアラボはコンピューターが身近になる未来予想図をデモにより示すことで、MIT がコンピューター社会を牽引するイメージを社会に植え付ける役割を担いました。一方、Caltechは近隣に天文台やNASAの研究所、さらに芸術大学ACCD(アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン)があり、それぞれの交流が盛んで、文理共創が当たり前の状況にあります。例えば、最近Caltechで研究が進む神経科学研究分野では、神経経済学という脳科学者と経済学者の協力により誕生した研究分野があり、その成果は社会経済活動に影響も与えています。

上田:東工大も、未来社会DESIGN機構(DLab)未来の人類研究センターなど、メディアラボ型の独立組織への発展も視野に入れた組織をこの数年立ち上げてきました。そのDLabでもご活躍の川名先生にはリベラルアーツ研究教育院のシンポジウム「東工大における文理共創とは何か」において、文理融合と文理共創はどう違うのか、といった論点の整理をしていただきました。

川名:私は国際政治学を専門としています。沖縄の基地問題などが研究対象ですが、理系分野のお知恵を拝借したいと感じることが多々あります。というのも、私をふくめた社会科学の研究者が、社会問題を科学の手法と手続きによって分析しようとすると、時として研究が非常に小さなサイズになることがあるからです。沖縄基地問題も社会課題の解決そのものというよりは、問題の因果関係を探ることが優先されてしまいます。それはそれで学問の営みとしては正しいのですが、現実に起きている問題、ないしはそれを解決してほしいと願う人々のニーズと距離が離れてしまうことがあります。こうした隘路から逃れるためにも、東工大発でもっと文理共創的な研究を進めてはどうかと思います。

上田:たしかに研究者として専門的に研究を進めると、時として現実の課題解決から遠くなることがあり、これはジレンマですね。私自身、これまで東工大でいろいろなワークショップをやり、そこで気づいたのは、東工大の研究者の多くが「とがった」という言葉を連発することです。ワークショップに参加していた外部の編集者が「東工大の先生は『とがった』が好きですね」と感想を漏らしたのを覚えています。研究がとがって先鋭化することはとてもいい反面、他人の論評を許さない不寛容で孤立した排他性を発揮してしまうこともあります。

川名:理系だけじゃなく文系でも同じ課題を抱えています。実際、沖縄の基地問題では、私が研究者としてやるべきことをやっているつもりでも、基地問題の現場や行政の当事者とお互いの成果を翻訳しあえない状態に陥ったりします。また、米軍基地問題は日米安保条約や地位協定など、米国政府が動かなければどうしようもない点があり、それが研究者間に現状維持バイアスを働かせ、問題の解決は不可能ではないかという空気が広がりやすくなります。

いったい何のための学問か、というのは研究者としても悩みどころです。個々の研究が先鋭化してとがればとがるほど、現場のニーズから離れていきます。私の研究分野だと、何年何月何日の資料をどう解釈するか、といった具合に研究を進めていくことがアカデミアにおいてのいわゆる「勝ち筋」となります。ただし、そういったアプローチが本当にわれわれ研究者が社会から付託されていることであり、求められていることなんだろうかという迷いは常にありますし、学会にも同じように考えている研究者は少なくありません。

タコツボ化しない垣根の低さが、東工大の強み!

田中幹子教授
田中幹子教授

上田:理工系である東工大の現場では、研究者がとがりすぎてどんどん細分化してしまい、いわゆるタコツボ化することはないのでしょうか?

田中:東工大は比較的タコツボ化しにくい環境だと思います。自然科学の研究対象は「自然」ですから本来分けることはできないものを人間の都合で分野を分けています。様々なアプローチと様々なテクノロジーを使ったほうが、新しい発見、新しい研究が生まれやすいのです。幸いなことに、東工大は各分野の垣根が低く、共同研究がしやすいと思います。

上田:東工大のいいところは、理系文系にかかわらず大学規模がコンパクトだ、という点ですね。総合大学だと組織が縦割りに細分化されており、文理どころか文系の学部間にも理系の学部間にも交流が生まれにくくなります。その点、東工大の文系研究者は、身近に理工系の専門家がたくさんいることが心強いですね。

川名:私自身、東工大に来て理工系の先生方とのお付き合いが増えました。現在は、修士学生向けの「横断科目」で理工系の先生方と一緒に文理を合体させた授業を実施しています。総合大学だと大学の規模が大きすぎて、理系と文系研究者が交わることは滅多にないでしょう。これまで私は社会課題を取り扱う研究は、社会科学が単独で取り組まなければいけないものだと思い込んでいました。東工大だと、理工系の先生や学生が身近にいて雑談する機会もあり、「こんなアイデアがあるのですが」と提案を受けるなど、実に刺激的です。

上田:現代の社会課題は、基地問題にしても環境問題にしても1つのディシプリンで解決できるようなものではなく、多分野の問題が複雑に絡まり合っています。文理共創は、単独のディシプリンだけでは解決できないという、研究者の絶望がむしろ出発点です。だからきちんと絶望しなければならないし、そこから創造的な文理共創が生まれる、ということでしょうね。

川名:米軍基地問題の研究についても、理系の学問分野との共創は十分に考えられます。米軍基地が抱える騒音問題や環境汚染問題など、理工系のアプローチで探索できる課題はいくらでもありますし、洋上基地の可能性など工学的な代替案はこれまでも検討されてきました。文系=社会科学だけではなかなか発想できない領域ですね。

田中:私の専門は進化生物学ですが、進化生物学は、歴史的に文理共創が大きくかかわっている学問です。生き物の体や骨のかたちがどのようにできてどのように変化したのか。進化論につながるこうした研究を取り組んだ人物として、生物学者が最初に思い浮かぶのは、おそらくゲーテでしょう。生物学においてゲーテは哲学や文学の人ではなく、形態学者です。体はどうやって誕生したのか、骨の形などの原型、体の形の大本はこうではないかとゲーテは哲学をもって語りました。

上田:ゲーテが文理共創のお手本ですか。それは文学者も喜んじゃうなあ。

田中:最近は、東工大内でも自分の専門と異なる分野で何か新しい研究テーマを1つ創り出そうという試みや、若い人たちで集まって研究プロジェクトをしましょうという動きがたくさんあります。そして、東工大が提唱するビッグピクチャーにつながるような研究には、理工系だけじゃなくて文系の研究者の協力が必要だと思っています。全体を俯瞰して、ビジョンを打ち立て、言語化もしくは視覚化するのは哲学や文学が担う仕事だからです。

上田:文理共創と言うと、文系と理系が一緒になって…、という話になりますが、理系・文系それぞれの中でのコラボレーションが深まっていく面もある。もはや文系だ、理系だと言っていないでもっと自由に分野を横断して研究者同士が結びつくことが重要でしょうね。

「文理共創」は、(1)離陸(2)飛行(3)着陸の3段階で社会実装を目指す

川名晋史准教授
川名晋史准教授

上田:理系と文系を混ぜようという動きは教育や研究の世界では何度もありました。「文理融合」や「文理連携」などがそうですね。これらと「文理共創」とは、何がどう違うのでしょうか?

川名:「文理融合」は、文系と理系の研究を融合しようという取り組みだったので、なかなか進展しなかったのです。科学技術振興機構(JST)をはじめとした科学技術行政の現場にいる人たちもそのことはわかっています。研究者としてはまずは自身のディシプリンがベースにあるので、融合した途端にそのディシプリンが融解し、別のものになってしまうのではないか、という不安があるでしょう。その意味で、融合というのは、研究者にとって非常にハードルが高いんですね。

「文理連携」は、逆にハードルが低いことが問題かもしれません。「連携」はそれぞれの研究領域を守ったまま並走するイメージです。結果、各研究者が自分のディシプリンから外に出ようとしなくなり、理系と文系の研究者が並走した内容をただ並べてホチキスで綴じて報告書として出すだけで終わってしまいます。

上田:ハードルが高くても低くても、うまくいかないわけですね。

川名:これからの文理共創では、こうした過去の教訓を踏まえた上で、(1)離陸(2)飛行(3)着陸、の3段階でコラボレーションのあり方を分けて考えてみたらどうでしょうか。

「離陸」の際は、問題の設定や問いの発見といった研究プロセスの最上流で理系と文系が一緒に物事を考え、ある意味で「融合」し、協働します。たとえば、自然科学の基礎研究の人々と文学や哲学の人たちのコラボレーションや、私のような社会科学の研究者とエンジニアリングの研究者のコラボレーションにおいて、それぞれの立場から問題解決を導く問いの設定を行うわけです。

プロジェクトが「飛行」段階に移ったら、実際の研究フェーズでは分野ごとにアプローチも目的も違うので、「連携」のフェーズになり、個別に研究を進めることになります。

そして「着陸」段階ですが、この最後の社会実装のフェーズでは、もう1回協働が必要になります。文理共創プロジェクトで、ある技術が生まれたとします。ただし、レギュレーションや人々の反発があって実装しにくい時があります。そんな時、人文や社会科学の研究者も一緒になって、新しい技術の社会実装に漕ぎ着けます。このように飛行機の離陸と着陸の部分で協働するのが文理共創の一つのあり方ではないかと私は考えています。こうすれば、ハードルもそこそこで、得られる効果も高いものになるものと期待しています。

上田:離陸と着陸を一緒に、その間は個々に、ということですね。僕は離陸のところが相当重要だと思います。みんなでいろいろやり合わないと飛行機は離陸できないでしょう。ここでかなりエネルギーが必要で、人と人が全てを出し合うようなセッションが必要ではないかと感じます。

文理共創のコンテストをオンラインで

上田紀行副学長

上田:文理共創、その実践には何が必要でしょうか。

川名:研究者は義務感だけでは動きにくい。「面白い」と思ってもらえるプロジェクトをつくることが重要でしょう。研究発表の機会をカジュアルに増やすというのはどうでしょうか? 例えばZoomなどを活用して、昼休み時間に10分間で自由に自分の研究を発表する場をつくるのです。そこでは学生も研究者も出入り自由とし、発表内容に「いいね」をつけられるようにします。批判をしないこともルール化します。気軽にYouTubeのコンテンツを眺めるようなイメージで参加できるようにするのはどうでしょうか。

学生からも気楽に、「ああ、そういう分野があるのか」「私だったらこうするけれど」という感想を出してもらうのです。元来勉強が好きな彼ら彼女らの好奇心をくすぐり、具体的なアイデアを出せる場を用意するといいと思います。

上田:教員も学生もディシプリンの垣根を超えて、わくわくするようなプラットフォームをつくろう、というわけですね。

田中:とてもいいアイデアだと思います。研究室に配属される前の学生たちがグループで研究・発表できる場にもなったら面白いでしょうね。専門分野を超えて、若い学生たちが新しいアイデアを出し合って、何かを生むことは「共創」の訓練にもなります。実際に、うちの学生が他分野の学生たちとチームを組んでとある企業のコンペティションに勝ったあと、特許を取ったことがあるのです。アイデアを出し、実験し、デザインし、場合によっては実用化まで手がける、そんな学内の学生たちによる共創プロジェクトを手助けできる仕組みを作りたいですね。

上田:リベラルアーツ研究教育院では、学士課程1年生向けに「未来社会デザイン入門」という授業を開講していて、学生たちにグループワークで未来に対するアイデアを出してもらっていますが、さらに進めてより具体的なプロジェクトを立ち上げてもらうイメージですね。

川名:私の文系ゼミではまさにそれをやっています。研究室に所属する前の2年生3年生が国際政治について勉強していますが、どこにも発表しないけれど、社会科学系の論文を書いているのです。ただし、それなりの手間と時間がかかるのも事実です。

田中:たとえば「未来社会デザイン入門」の実践編のようなプロジェクトにするのはいかがでしょう。生命理工学院では、以前、学生たちが参加する教材コンテストを行っていました。その全学版として、共創プロジェクトを単位が出るコンテストにする。リベラルアーツ研究教育院の先生方が運営することで、テクノロジーを社会実装する手助けもできる気がします。

川名:カジュアルな共創プロジェクトの探索の場が、教員にも学生たちにも開かれていると、専門分野の研究についての理解も広がっていきますね。私の場合でいうと、通常は社会問題としてニュースに取り上げられる米軍基地の問題について、こうすべき、ああすべきといった規範や価値観ではなく、政治学の理論や方法をお見せしたいです。私が接してきた東工大生はロジックで突き詰めるのが得意で、好きです。文理共創の第一歩も、社会に対する高邁な規範意識を醸成するとかではなく、学問のロジックを見せあうところにあるのではないでしょうか。

上田:教育現場との連携もありますね。「東工大立志プロジェクト」は新入生必須の科目で、3年生になると「教養卒論」を全員が執筆しますが、これに加えて、田中先生と川名先生から今あがってきたアイデアを盛り込みながら、学生たちが将来研究したいテーマを考えるきっかけとなるプログラムを作るのです。東工大の各分野の先生方にも参加いただけば、まさに「東工大文理共創プロジェクト」となりますね!

「いじめゼロ!」を文理共創で目指す

田中幹子教授

上田:いま、私が考えているのは、文理共創につながる「テーマ出しワークショップ」です。是非、全学を巻き込んで開催したいと思います。「こんなこと、今の科学技術じゃできない」「でも実現したら歴史が変わる!」というハードルの高い、しかし実現したら最高に面白いアイデアを全学の先生方と学生たちを巻き込んでどんどん出してもらい、ブレーンストーミングをする。テーマ出しだけじゃなく、この指止まれで、そこから実際にプロジェクトを立ち上げたいと思います。

田中:是非やりたいですね。

上田:先日、「いじめゼロ!」研究推進体を立ち上げました。「いじめ」は、教育現場のみならず、企業社会から地域社会に至るまで、あらゆるところに蔓延しています。日本だけではなく、世界中のいたるところです。「いじめ」がなくなる社会の実現にはどうすればいいか、その具体的な研究・実践を文理共創の一大プロジェクトにしていきたいです。「『いじめ』なんかなくならないでしょ」と言う前に、文理の総力をあげて立ち向かっていきます。

インターネット空間のSNS上で「いじめ」をどうすればなくすことができるか。「いじめ」と人間の自己信頼感とはどのようにかかわっているのか。「いじめ」と人間の健康状態、睡眠などとはどんな関係があるのか、等々。東工大の理系文系のさまざまな研究者たちが結集して研究を始めようとしているところで、そのプロジェクトに加わってくださる方々、そして支援してくださる方々を大募集しているところです。

田中:なるほど。たとえば、生物学の分野でいうと、神経生物学などは関係がありそうです。どんな心理の時に「いじめ」につながる行動が起きるのか、攻撃的な行動をする人の原因は何か、人間が集団でいる時にどんな気持ちの変化が起こり得るのかなどについて、「いじめ」を科学として観察し、原因を究明できます。

上田:まさにそういう多様な分野からのアプローチを待っています。「いじめゼロ!」というと教育学の仕事のように思われがちですが、新しい分野から切り込んでいくものです。東工大のこれまでの対外的なイメージは、技術分野でトップに立つ大学です。技術でトップを極めれば、ウィナー・テイクス・オール、つまり勝ち組になります。ただ、ひたすら勝者を目指すだけではない新しい科学技術の極め方、弱者を生み出さない科学技術、ケアする科学技術といった新たな科学技術の姿を、この「いじめゼロ!」プロジェクトで目指したいですね。

田中:上田先生、川名先生のお話を理工系の研究者が伺うと、例えば神経行動学との融合研究のようなサイエンスとして成り立ち得るアイデアもひらめいてきそうです。その意味でも、研究者間も学生間も、オンラインではなく対面で対話する日が早く来ないかと待ち望みます。

上田:東工大では2018年からDLabを指定国立大学プロジェクトの中核組織として立ち上げ、理系と文系の研究者、外部の専門家が一緒に活動を始めました。若手研究者の人たちが知り合う場として「DLab Challenge」も設けました。DLabにおける文理共創の発信はこれからの課題です。

川名:DLabには私も参加しており、ファーストステップとしては重要な役割を果たしていると思います。研究者が面白がって参加できるような内発的な動機をいかに創出するかといったことがさらに求められるでしょうね。

田中:DLabは「社会の中で東工大ができることは何か」という使命感の強い組織ですね。一方、MITのメディアラボは、大学から独立しており、ラボ単体での国際的な発信力、そして大学のブランドイメージを作る力を持っています。東工大にはすでに世界レベルのスター研究者が揃っています。だからこそ、国際的な発信力が求められます。文理共創が進んで理工系の研究者が社会に影響力のある哲学的なことばを発信できるようになる、その必要性を感じています。

「ワクワク」するプロジェクトを立ち上げたい

川名晋史准教授

上田:私には「文理共創戦略担当」という肩書きがあります。別名「ワクワク担当」です。文理共創戦略はワクワクプロジェクトだ、そう強く思っています。単にどういう研究を生み出すかという以上に、この大学全体がワクワクした場になる、そんな大きな流れを作り出していきます。

田中:「ワクワクする」って研究者にとっても重要なポイントです。研究者当人が面白い!大事だ!と思うことですね。自分の興味が研究と直結してはじめていい研究は生まれます。

上田:今後、文理だけでなく、たとえば東京藝術大学と組んだアートを取り込むプロジェクトも進めたいです。アーティスト・イン・レジデンスのように芸大生に1年間東工大に住んでもらっていろいろな研究室とコラボレーションを行うことや、「いじめゼロ!」プロジェクトならば「あなたのアートと東工大の研究室の技術を組み合わせたアート作品をいじめゼロをテーマに作ってください」という具合に活動したりすることが考えられます。東工大キャンパスをアーティストが徘徊し、突然「あなたの研究室を見せてください」と訪ねて来たりします。民俗学で言うところのマレビトですね。そういう人がいても面白いと思います。

田中:東工大にアートを混ぜるのは大賛成です。その前に、まず学内の文系の研究者たちともっと共創したいです。状況を俯瞰的に見ることができる文系のプロの方々の力は、理工系大学にとって不可欠です。日本の素晴らしいテクノロジーを世界に発信するためには、文系の能力が欠かせません。

川名:たしかに人文系の研究者は言葉でストーリーをつくり、哲学を語れる方々です。私たち社会科学の研究者は、科学の研究や知見を社会課題や社会課題解決へと接続するお手伝いができます。

上田:理系と文系の共創は、まさにスタートラインに立っています。東工大発の文理共創で新たな世界を創り出していきたいですね。

(左から)田中幹子教授、上田紀行副学長、川名晋史准教授

統合報告書

統合報告書 未来への「飛躍」 ―東工大から科学大へ―
学長や理事・副学長、研究者による対談・鼎談や、教育・研究、社会に対する取り組み、経営戦略などをご紹介します。

統合報告書|情報公開|東工大について

2022年7月取材

お問い合わせ先

東京工業大学 総務部 広報課

Email pr@jim.titech.ac.jp