東工大について

特集「未来をリードする人材の育成と学術・科学技術の発展」

出てこい 世界を引っ張るとがったリーダー ~東工大の教育と研究を考える~

特集「未来をリードする人材の育成と学術・科学技術の発展」特集「未来をリードする人材の育成と学術・科学技術の発展」

細野秀雄

元素戦略研究センター長・特命教授

阪口啓

超スマート社会卓越教育院長・教授

上田紀行

リベラルアーツ研究教育院長・教授

桑田薫(司会・進行)

副学長(研究企画担当)、学長特別補佐

桑田薫 副学長(研究企画担当)、学長特別補佐
桑田薫 副学長(研究企画担当)、学長特別補佐

桑田:2021年度にスタートした「第6期科学技術・イノベーション基本計画outer」では、従来からの課題に加えて、感染症によるパンデミック、深刻化する自然災害、科学技術の国際競争力の低下、若者世代の自己肯定感の低さ、といった問題が課題として挙げられています。これらの解決のためには、自然科学や技術だけではなく人文・社会科学を含めた「総合知」の創出によって、社会全体の見直しと再設計、そして今後を担う人材育成が避けて通れないと述べられています。この総合知の活用視点を念頭に、未来をリードする人材の育成として「博士人材育成」と、学術や科学技術の発展によりイノベーションを創出する施策としての「研究力強化」について伺います。

まず、「博士人材育成」から。

東工大は総合知が提言される以前から人文・社会科学を重視しており、特に2016年の教育改革で、学部から修士・博士後期課程まで人文・社会科学科目の受講が必須化されましたね。上田先生は今年『とがったリーダーを育てる 東工大「リベラルアーツ教育」10年の軌跡』(池上彰、伊藤亜紗との共著・中央公論新社刊)を上梓されましたが、あらためて東工大の博士後期課程教育、リベラルアーツ教育の意図、その成果についてお話しください。

未来社会へのインパクトの観点が博士後期課程の教育には必要

上田紀行 リベラルアーツ研究教育院長・教授
上田紀行 リベラルアーツ研究教育院長・教授

上田:東工大は伝統的にリベラルアーツ教育が非常に厚い大学として知られてきました。戦後すぐの和田小六学長の時に、敗戦の総括でこれからは文系分野を拡充するということで、宮城音弥、鶴見俊輔、川喜田二郎、伊藤整といった面々を呼び集めました。理工系大学でありながら文系分野にも非常に優れた教授たちを招集したわけで、当時の卒業生はその文系教育が非常に素晴らしかったということをおっしゃいます。

ところが、1990年代に始まった大学院重点化で、文系の教員も大学院に分属することになり、文系分野の教養教育の改善が一時期停滞しました。しかし、その後2016年の教育改革でリベラルアーツ研究教育院ができ、学士だけではなく修士課程、博士後期課程までリベラルアーツ教育を延伸することになりました。

現在は、中心テーマに「志を育成する」ということを据えて、学士1年で「東工大立志プロジェクト」という講義、学士3年では教養卒論が全員必修です。教養卒論では「あなたがこれからやる研究がどのように世界に変革を起こしていくのか」といったことを5,000字から1万字程度でまとめます。博士後期課程ではSDGsのテーマに沿って課題を与え、いろいろな学院の学生たちが4~5人1組でその解決について2ヵ月にわたって議論、最後はポスターセッションやビデオプレゼンテーションを行い、全員投票でグランプリを決めています。

博士後期課程の学生は、隣の研究室の人ともあまり触れ合わず、自分の狭い専門分野に特化し、極めていくというイメージがこれまでは持たれていたと思います。例えば企業からは「博士の学生はなかなか社会性がないので、会社では困るんだよね。その分野だけが詳しくても…」という言われ方をすることがありました。現在、世界では今回のパンデミックや天災地変も含めて毎年のように想定外の出来事が起きています。科学技術の分野でも、5年前にメインストリームだったところが5年後にはもう別のところに移り変わるような、変化が非常に速い状況になっています。そうなると1分野だけの頭と精神を持った博士では対応できない。境界領域への知識はもちろん、自分の研究が人類社会に持つ意義や未来社会に与えるインパクトなど、より広い観点が博士後期課程にも求められていると思います。

従来の大学教育は、入ったときは教養教育で一番幅広く、修士、博士と徐々に先細っていって専門的になっていくというイメージでした。これからの博士後期課程の教育はむしろ社会あるいは文明に何を求められているのかという大きな視野も同時に持っていくという意味合いがあると思います。

昔は強かった、は慰めにならない

桑田:細野先生は世界トップを走っていらっしゃる研究者ですが、東工大の博士教育の強みをどう評価されていますでしょうか。

細野秀雄 元素戦略研究センター長・教授
細野秀雄 元素戦略研究センター長・特命教授

細野:実は、冷静に見ると日本の大学が国際的にトップである強みというのはここ10年でなくなってしまいました。これは数字に全て表れています。海外の研究者たちに言わせると「日本の大学や研究者は、昔は良かったけれど…」ということになる。ここ10年の落ち方は異常ですよ。だからといって、東工大も昔は良かったなんて言っているようでは駄目です。これからどうするかが一番重要です。

「専門バカ」と言いますが、極端なことを言うと「専門もバカ」ではしょうがないのです。競争相手は世界です。特に今は中国。中国の研究者は層も厚いし、若ければ若いほど優秀で意欲もある。片や日本の大学の評価はどんどん下がっています。これはちょっとやそっとのことでは変わらないでしょう。「かつて東工大は強かった」はなんの慰めにもならないと思います。

桑田:阪口先生は卓越大学院で博士教育をされていますが。

阪口:私は2017年に東工大に戻ってきましたが、その時に「卓越をやりなさい」と言われました。

もともと、1700年代半ば~1800年代に起きた蒸気機関に代表される機械系の産業革命、1980年代から現在に続くICT革命、この2つがつながるだろうなと漠然と思っていました。そうなると今まで持っていた片側の知識だけではどうにもならない。そこで、卓越をやる前にまず初めに同じビジョンを持つ人たちと一緒に「超スマート社会推進コンソーシアム(SSS)」をつくりました。

SSSをつくった当初の段階では、それを卓越につなげようと単純に思っている人や、社会課題を解決しようと思っている人もいましたが、同時に自分の持っている知識だけでは先が無いと思っている人がたくさんいました。メンバーは今も増え続けています。その集団で「10年後以降の未来社会を支える人材はどうあるべきか」という教育プログラムと、コロナや自然災害の問題も含めて「社会課題を解決する、未来の社会をつくる」という研究チームをつくる活動をしています。

幸運にも卓越大学院に採択されたので、そのメンバーでつくった教育プログラムで新しい博士リーダーを育てようと進めているところです。

みんなをとがらせることが重要

桑田:たしかに自分の専門だけではなく、その外を見ていく力や外を見極める力があれば、専門をただ突き進むだけではなく、外的環境がどうなっているのかきちんと判断しながら進むことができますよね。そういう博士学生を育成していくことが総じて大切ということでしょうか。

細野:いや僕は、総合知という言葉にあまり踊らされている場合ではないと思います。専門が非常に難しくなって、競争も厳しくなっているので、今までと同じやり方ではとてもついていけません。東工大が世界トップクラスを目指すためにどうするべきか。総合知は1つのファクターに過ぎません。極端なことを言うと、徹底的に専門を極めれば総合知になると思います。

うちの研究室の学生には、ドクターで研究するなら余計なことはやらず集中せよと言っています。その時間があったらきちんと専門を徹底的に研究しろ、そうしないともう勝てない、それくらい切実な感じですよ。

上田:今の学生は東工大に限らずものすごく他人の評価を気にします。「自分はこれがやりたい」という自分の中からあふれ出るような意欲よりも、「ほかの子は何やってるのかな?」「同僚がこの程度なら自分もこの程度でいいんじゃない?」「出る杭になると叩かれそう」と同調圧力や人の目を気にする…そんな学生が日本全国で増えてしまったように感じます。

AI人材とかIT人材とか言う前に、まず一人の人間として何がやりたいのか、あなたという人間はどこをブレークスルーしたいのか、ということを見つけるべきです。「世の中ではこういう人材が求められているから私はそうなってくのだ」というような受動的な学生をいくら育てても、突き抜けていくような人は出てこないと思います。

細野:総合知もそうですが、言葉だけの遊びが多くて、人材育成と言って人が育ったことは今までなかったと思います。人(学生)というのは周囲と先生の背中をみて勝手に育つものでしょう。人材育成と言った途端に人が育たないのです。

上田:たしかに、人材育成という言葉はもうやめたほうがいいかもしれないですね。

東工大は危機感があったからこそ2016年に教育改革をしました。それが世間的に成功しているように見えているから、「教育改革はうまくいっているじゃないか」「卓越も全部取れているじゃないか」と浮かれているところもある。でも、内部での危機感はまだ持続しているわけで。

細野:だって卓越は日本の中の話でしょう? 卓越を取れても国際的には影響はありません。問題は国際的に勝てるかどうかなんですよ。

阪口啓 教授、超スマート社会卓越教育院長長
阪口啓 超スマート社会卓越教育院長・教授

阪口:私は博士の学生に「夢をしっかり持つこと」「ビジョンを持って自分の研究のゴールを決めること」を指導しています。総合知とか融合というのは手段であって、それがあるからいい人材が育つわけではないと思います。

それからスマホのせいか共感社会になってしまっている。共感と寛容は違います。寛容社会、つまり個々がとがっているとを寛容に受入れる社会になり、みんなをとがらせるということが重要だと思っています。

細野:研究の場合はトップ10%が育てばいい。全部を育てるなんてできっこありません。トップ10%あるいは1%が世界を引っ張るのですよ。みんなが出ることを研究の世界では考える必要はないでしょう。研究者はその位の気概をもって突っ切っていく意志が大切だということを理解して欲しいですね。

阪口:たとえば研究でいうと、誰もが否定しているところを自分が信じることは、突っ切ることだと思います。リーダーの資質がある人はそういう人だと思います。否定する人がいても突っ切れば必ず何か開けるところがあって、開いていないものを開くと海外からすごく称賛される。海外のほうが寛容な人が多く、いいものはいいときちんと言ってくれますよね。

上田:ナントカ学会の学会賞のような仲間内の共感で称賛される人をいくら育てても、そこを突き抜けてその外の大きな世界に向かっていけないとその先はありません。村社会の中でトップくらいではもう済まない世の中になっている、東工大はそこを今自覚しつつあるからこそ、これだけの教育改革をしたわけです。

教員の夢、環境、コミュニケーション能力の3つ

桑田:東工大は世界最高の理工系総合大学を目指しているということを常に言っているわけですが、研究力強化についてはどうお考えでしょうか。

阪口:3つ観点があります。

1つ目はそもそも指導している教員がしっかり夢を持っているかどうか。背中をしっかり学生に見せているかどうか。

2つ目は環境があるかどうか。基礎的な教育は座学でいいと思いますが、研究に関しては環境があることが結構重要です。今しかない、ここにしかない研究ができる環境があると学生はやる気が出る。そういう環境を教員がつくっていくことが重要だと思います。

3つ目はコミュニケーション能力。学生がいい研究をしても、それを情報発信できる能力がないとイノベーションにならない。少なくとも学会や海外へ持っていって初めてイノベーションになる。コミュニケーションも含めてイノベーションだと刷り込むことが研究力を上げていくと思います。

細野秀雄 特命教授

細野:1つ目はまったく同感です。教員はもっと研究に集中すべきです。企業との付き合いでお酒を飲むなんてことにあまり時間を使わない方がいい。研究はそんなに甘くないですよ。世界に勝っていくには24時間費やしてやっていけるかどうか。それをドクターの学生たちが見て、あんなやり方じゃ駄目だと先生をどんどん超えていかないとその先に行けない。超えられるものがないと意味がないのです。

私の研究室ではドクター以上のゼミは10年近く公用語を英語にしています。それからドクターとマスターを一緒にしていません。ドクターには若手研究者としての自覚と、より高みを目指した議論をしてほしいので、ドクターとポスドクを一緒にしています。

僕の研究室でIGZOの研究開発をした卒業生(日本人)は、アメリカのクアルコム社にスカウトされて、今はカリフォルニア大学サンタバーバラ校の准教授になりました。それからLGディスプレイの社長がIGZOの特許をライセンスしたときに講演に来てくれたことで、「うちの研究室でやっているあんな研究で、あのLGの有機ELテレビができたんだ」と学生が熱心に研究するようになった。そういう小さな成功例が幾つか出てくると学生は元気が出るのかなと思います。

「風を切って最先端を走る心意気がとがったリーダー」

上田:とがったリーダーへの第一歩は、まず自分自身がリーダーであることの自覚です。リーダーというと他の人を率いる人のことをイメージしますが、ここに先端がある、私がリーディングしているという意識のことだと思います。どこかに先端があってそのリーダーから引き受けて何かやるというより、「私が走っているここに最先端ポイントがある」ということです。

例えるならラグビーみたいなものですね。球を持っている人は後ろにしか投げられない。前に投げてしまうとオフサイドになる。球を持って走っている私が風を切りながら一番最先端にいる、という心意気。それがとがっているところにつながると思います。

とがっている人を「頑張れ」と力づけ、「どんどんとがっていけ」というような在り方に東工大全体の雰囲気を変えていこうとしているわけです。日本社会を覆う同調圧力、人の目を気にして出過ぎたことはやらない、テストは100点満点取ればいいでしょう、ではなくて、150点、200点取っていけという話です。テストなんて先生が作ったものだから、100点というのはその先生を超えられないわけですよね。100点満点のテストがあったら150点、200点を取る、あるいは「この問題は間違っていますよ」と突っ込める気概が重要です。

私たちは、大学1年次から、「偉い人が言っているからといってそのまま信じないで常に批判的に捉える」つまりクリティカルシンキングを徹底的にやって、受験教育からの脱洗脳をしています。それが博士後期課程、研究者までいくにはまだ少し時間が掛かる。まだ始めて6年ですが、大学全体が本当にとがっていく、私たち一人ひとりがリーダーなのだというカルチャーに今変わろうとしているところだと期待したい。

例えば、多くの総合大学では、教員は自分の所属する学部のことだけ考えて、他学部と協働することなどは考えない。文理融合なんて言うけど、実際は部局間の壁に悩んでいます。1つ1つの学部が良くも悪くも独立しているのです。東工大は6学院で構成されていますが、リベラルアーツ教育では、ロボットをやっている人、生命をやっている人、情報をやっている人が同じクラスで学びます。文系の教員は東工大のために教育も研究もしているという意識が強い。そういう意味では、文理融合や文理共創は東工大だからこそできるということです。「新たなとがったリーダーは東工大から出る」ということを目指して進んでいるところです。

細野:研究力の強化というのは、例えればオリンピックでメダルを取れるようにすることですよ。世界レベルで「この分野はあそこ」「あの分野を開いたのはどこどこの誰」というように名前が出てくるのが研究の意義。オリンピック選手がメダルを目指して日々努力するように研究もしなければいけないのです。

阪口啓 教授

阪口:先ほど環境が重要だとお話ししましたが、今、大岡山キャンパスには自動運転車が走るスマートモビリティのフィールドがあるのですよ。365日いつでも走らせられるのは、おそらく日本では東工大だけです。キャンパス内に次世代ITS、高度道路交通システムも入っていて、未来社会にこれから導入されるシステムとして研究開発が進められています。そういうものがあると、研究は進むし、学生の研究力も上がってくると思います。

上田:大学3年全員が書く教養卒論、その優秀論文冊子をぜひ読んでいただきたい。今までの理工系の学生の多くは、例えばどこの研究室に行ったら就職がいいとか、この何年間かはこの分野がはやりそうだ、という感じで世界を見ていた。しかし東工大では「私はこの分野に全身全霊で取り組みたい」「この科学技術で世界を変えていくんだ」という子たちがどんどん出てきていて、論文のレベルがどんどん上がっている。つまり、研究室に所属する前に「この技術はこういうふうに世界を変えていく」「この学問分野は自分にとってこんなにワクワクするものだ」と思考する学生たちがこれから研究室に入っていくわけです。あと5年もすれば、こうした学生が修士や博士を経て活躍することを期待しています。

細野:東工大は研究環境が恵まれています。研究所が4つもあるわけだから。人員とキャパも非常に恵まれている。それはもう間違いないですね。
光通信工学の末松安晴元学長、面発光レーザーの伊賀健一元学長など、世界トップレベルの研究は東工大に幾つもあったのです。今は端境期で、また世界を目指しているわけですが、かつてと今では競争環境が全く違います。アメリカの2倍の研究者と豊富な資金を要する中国がプレイヤーに入ってきました。英語ではなく中国語を勉強しなければならないという時代にすらなると思います。

課題の克服や産業化につながる目に見える成果を

桑田薫 副学長

桑田:社会連携、産学連携について伺いたいのですが、本多光太郎先生の言葉で「産業は学問の道場」というのがあります。外のことに常にアンテナを張って理解し危機感を持つこと。それが東工大の学生には求められるし、そうすることによって東工大は新しい世代の強い大学になっていくということでしょうか。

細野:僕は家で女房や子供にあまり尊敬されていないけれど、あるとき家電量販店でLGのテレビが並んでいるのを指して「これがお父さんたちの研究の成果でできたやつ」と言ったら、「うそー」「お父さんの研究、少しは世の中のためになっているんだ」と驚かれた。成果が目に見えるということはとても重要だと思います。自分たちの研究が製品につながる、社会的課題の克服につながる、つまり線が見えるということですね、今の学生は競争が厳しくなって、インパクトファクターに振り回され過ぎですよ。インパクトファクターも大事ですが、それはあくまで中途であって、社会的課題の克服や産業化につながることがないと、本来の目的ではない。本多先生が言ったのはそういうことだと思う。それが実学ですよね。

上田紀行 教授

上田:我々が「業績」と言うときに、インパクトファクターとか、サイテーションとか、とても抽象的な、偏差値的なものになっています。社会も人間の姿も見えないところに向かって、非常に抽象度の高い競争をしている感じに陥っている。今ここでやっていることの先にどういう人間や社会があるのかという未来への具体的なビジョンが無くなってきている。大学入試の偏差値を上げるのと同じになってしまっています。

東工大は、その先にある人間や社会の在り方を見ていくところに既にシフトしているということを強調したいところですね。

細野:ただ、今現在、東工大のこれらの数値が落ちてきているので海外から優秀な人材が来なくなってきていることも忘れてはいけない。数値と人間力両方やらないと駄目です。サイテーションから逃げる世界トップクラスの大学なんて世の中にない。

上田:数値はもちろんクリアし、その先に行ける人間力ですよね。大学全体でその強い意志を醸成していかなければなりません。

細野:実際、東工大教員のサイテーションはもっと改善すべきです。難しい雑誌への挑戦もまだ不足しています。ドクターの中国人が「この雑誌じゃなきゃ駄目だ」と言うので、「かなり難しいよ。本当にやるの」と答えたら「やります」と。中国は競争が非常に激烈で、彼の出身大学は東工大よりランクがかなり上でした。

日本の大学はもちろん、欧米の研究大学も海外から優秀な学生が博士後期課程や博士研究員として来なかったら高いレベルの研究が成立しません。そのためには大学ランキングを上げる努力をしなければいけません。そこを逃げたら絶対負けです。

5Gの実用化に貢献したのは博士後期課程の学生がやり切ったから

阪口:産学連携の話をすると、私の専門5Gに関して、ミリ波を使って5Gを実現するということを最初は国内の学会で提案したのですが、国内のテレコムオペレータ全社が反対でした。その後、特性やメリットを証明する論文を発表したところ、最初に来たのがアメリカのインテルでした。次が中国のファーウェイ。通信は標準化というのがあって海外と連携しないと絶対標準にならないのですが、そのおかげでとんとん拍子に進みました。当時は国内でミリ波を使って5Gシステムの設計ができる人間は、私と共に研究を推進していた博士の学生しかいませんでした。その学生がテレコム業界各社に就職して今の5Gの実用化、商用化に貢献してくれました。インパクトファクターはそれほどなかったけれど、他の人がやっていないことをやり切ると、良い博士、本当の意味での博士が育つという経験でした。

現在、私の分野では自動運転とコネクテッドを前提とした新しい自動車のプラットフォームを真剣に考える時代になっています。そこにうまく博士の学生が乗っかって産業界と連携してくれれば、東工大はその分野に関してはトップに立てると考えています。

細野:そういう分野が幾つも出てくるといいよね。みんな元気になる。幾つか出てくれば先が見えてくるので、それがたぶん研究力を上げる一番現実的なやり方ですね。

桑田:今日の議論を伺って、先生方が言葉だけではなく身をもって実践していく、危機感を絶対に忘れず突き進んでいく、そしてそれを見ている学生もそこに進んでいく、そういう連鎖が東工大をもっと強い大学にしていくのではないかと感じました。東工大を良くしていくにはどうしたらいいか、自分たちの研究力が上がっていくにはどうしたらいいか、教職員や学生一人ひとりが深く考えるきっかけとなればと思います。

本日はどうもありがとうございました。

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2021年8月取材

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