Asia-Oceania Strategic Universities Exchange Program (AOSU),武漢理工大学 2019年10月~12月

Asia-Oceania Strategic Universities Exchange Program (AOSU),武漢理工大学 2019年10月~12月

留学時の学年:
博士課程3年
東工大での所属:
物質理工学院
留学先国:
中華人民共和国
留学先大学:
武漢理工大学
留学期間:
2019年10月~12月
プログラム名:

派遣大学の概要(所在地、創立、規模など)

武漢理工大学

  • 所在地:湖北省武漢市
  • 創立:西暦2000年(前身のWuhan University of Technology, Wuhan Transportation University and Wuhan Automotive Polytechnic Universityの合併による)。
  • 規模:学部生36,000人、大学院生16,000人、留学生327人(Wikipediaより、2019.12.10参照)。23個の学院からなる。

武漢市は80あまりの大学を有し、総学生数は120万人を超える(世界一の学生数を誇る市として知られる)。総人口は約1,090万人(湖北省全体では約5,900万人)。武漢市は長江沿いに位置する交通の要衝として古くから発展し、上海や北京の直轄市と同水準のGDPを誇る(2017年)。地下鉄やショッピングモール等も充実しており住み心地は東京都心と変わらない。

留学準備など

(就職活動、修士・博士論文などとの兼ね合いを含め、修了までの計画をどう立てたか。留学先大学の指導教員/所属研究室の見つけ方、ビザ取得有無など)

2020年3月卒業予定であり、2019年4月に就活終了。2019年8月の時点で同年9月中には博士論文に必要なデータを全て取り終える見込みが立ったため渡航を決意。プログラム応募は2018年末。留学先(大学、研究室)は指導教員の紹介により決定した。渡航目的は日本では経験のない手法による薄膜作成を学ぶこととした。ビザは8月末に取得、4日ほどかかった。

所属研究室での研究概要とその経過や成果、課題など

渡航中の目標であったレーザーCVDによる熱酸化Si基板上SiC薄膜成長に成功した。作成の目的はSiC中のスピン緩和のSiC中キャリア濃度依存性を明らかにすることであり、現在は持ち帰った試料に強磁性薄膜を接合し強磁性共鳴の測定を行っている。

所属研究室内外の活動・体験(日常生活・余暇に行った事など)

日常生活

住環境:寮から研究室まで徒歩2分。食堂までも2分。キャンパス内で生活を完結することが可能な施設(朝昼晩利用可能な食堂、果実店、スーパーなど)が整っており、一週間キャンパスから出ない時期もあった。勉強、研究に非常に集中しやすいが、その裏で逃げ場がない環境とも言える。

研究室の学生部屋
研究室の学生部屋

寮の自室(6畳ほど、シャワー・トイレ付)
寮の自室(6畳ほど、シャワー・トイレ付)

  • 食事:安くておいしい。武漢は中国の中央部に位置するため各地の食材が集まり豊かな食文化を形成。日本で知られている中華料理は中国にある料理のほんの一部。どんな素材も調味料でおいしくして食べる、というのが中国料理の根底にある。政府が補助金を出して食料価格の高騰を抑えている。学内外問わず10元(約160円)未満でお腹を満たすことも十分可能。豚まん一個が2元ほど。
  • 学食:学食の大きさ、メニューの充実度はショッピングセンターのフードコートに匹敵、写真参照

2階から見た食堂
2階から見た食堂

学食の魚のスープ(12元)
学食の魚のスープ(12元)

観光

  • 市内(長江大橋、黄鶴楼、東湖、県華林、湖北省博物館など):研究室の学生が毎週末連れまわしてくれた。写真は湖北省博物館にある越の王の剣。これは現代では再現不可能であり、当時の中国の技術力の高さを物語る。
  • 他地域(重慶、成都、広州、深センなど):新幹線で移動し中国の広大さを実感。新幹線は清潔さ・正確さ共に日本のものと変わらず値段は約1/3。地域ごとに異なる文化を有していることを実感した。中国1国でヨーロッパ全土に匹敵するくらいの見どころを有している。これらが9割以上単一民族により構成されていることがまた興味深い。大都市以外の方が物価は安い。

湖北省博物館にある越の王の剣

湖北省博物館にある越の王の剣

留学先での住居(寮、ホームステイ等)、探し方、申し込み方法、ルームメイトなど)

学内の外国人専用寮(一人部屋、1,200元/月)。留学手続きをすれば大学側が部屋を割り振ってくれるため自分で探す必要はない。アフリカ系留学生が多数を占める。

留学費用(渡航費、生活費、住居費、保険料)など

渡航費:工系3学院学生国際交流基金13万円
他:自費(寮費1,200元/月、食費50~100元/日(3食を学食で済ませれば一日50元でお釣りがくる))

今回の留学から得られたもの、後輩へのメッセージ、感想、意見、要望

留学から得られたもの

中国本土で生まれ育った同年代の中国人がどのような原理の元で動いているのかを肌感覚として知ることができたことが最大の収穫である。3~40年前の日本社会に現代の最新技術を投入したような中国社会は整備された部分と未整備の部分の差が大きいが、それが今日の中国社会のダイナミックさを物語っている。未整備な部分が残っていることは中国社会の伸びしろの多さを象徴していると言える。日本から見た中国はあくまで「外から見た中国」であり、そこには「中から見た中国」の視点が決定的に抜け落ちていることを実感できた。これは旅行のような数日の滞在では得られなかったものと考える。

後輩へのメッセージ

自分が外国人になるという経験は早めにしておいて損はない。語学は国内でも学べるが、これは留学でしか味わうことができない。普段自分が日本という国でどんな枠組みの中でものを見て思考しているのかが外に出るとよくわかる。困ったときに周りに助けを求めることができれば留学に怖いものはない。

その他*任意(留学先で困ったこと/帰国後の進路(就職・進学・長期留学))

特になし。

この体験談の留学・国際経験プログラム情報