AEARU(東アジア研究型大学協会)AEARU STEM Summer Camp 北京大学 2018年7月15日~7月28日

東工大での所属:
理学院,工学院,物質理工学院,情報理工学院,生命理工学院,環境・社会理工学院
留学先国:
中華人民共和国
留学先大学:
北京大学
留学期間:
2018年7月15日~7月28日
プログラム名:

AEARU STEM Summer Campについて

  • テーマ:Computer Science及びEngineeringの最新研究
  • 開催時期:2018年7月15日(日)~28日(土)
  • 開催場所:北京大学
  • 応募資格:学部生でも院生でもOK
  • 面接:参加するにあたり、英語面接を1回行います。場所は東工大(大岡山)です。
  • (東工大からの?)推薦人数:4人

留学中の活動及び感想

プログラム自体は7 月1 日から開始なので、北京大学からの迎えや Welcome Party はこの日辺りにありました。しかし、東工大での留学期間は 7 月 15 日~28 日で、また寮(勺园 shaoyuan)に居られる期間は、7 月 15 日~26 日だったので、この期間の前にあったイベントには参加することは出来ませんでした。僕は Economics and Computation という授業を取っていました。勺园のルームメイトも同じ授業を取っていました。途中、北京大学のインストラクターが万里の長城に行くイベントを企画してくれるものの、授業が16~25 日の10 日間、土日関係なく毎日授業があったので参加出来ませんでした。授業の時間は9:00~12:00 でした。

Economics and Computation の授業形式は、座学の講義形式で、後は voteシステムというのがありました。これは指定されたサイトのアカウントを作って、授業で出されたクイズに対してその場で投票するというものです。多分これは正解不正解を見るというよりかは、単なる出席点代わりだったと思います。使用言語は英語で、教授(中国人)の英語は速いですがとても発音が良かったです。テストは 4 日目と 7 日目と 9 日目の全 3 回ありました。テストに役立つ宿題がその都度あり(提出不要)、テスト直前の夜に宿題の模範解答をそのサイト上で表示されました。講義の難易度は東工大院の授業とだいたい同じぐらいで、テストは割と簡単でした。

後は、教授のジョークが面白かったです。中国では北京大学と隣にある清华大学(Tsinghua University)が2 大勢力TOP なのですが、清华大学を意識したジョークが特に面白かったです。例えば“Peking University is No.1!”や“Peking University is better than Tsinghua!”という発言が特に印象に残っていました。テストにもこんな風にネタとして使われていました。

Fig.1 テストの問題の一部

Fig.1 テストの問題の一部

清华大学を意識したジョークを話していた教授でしたが、実は彼の出身大学は清华大学でした。ちなみに今回のEconomics and Computation でお世話になった教授のLirong 先生の紹介ページはこれです。

Economics and Computation でお世話になった教授のLirong 先生の紹介ページ

講義はだいたい40 人ほどが受けており、ほとんどが北京大生でした。日本の学生と違うところは、みんな前の方にきちんと座って真面目に授業を受けているところです。後は小中高のクラスのようにお互いに仲が良いという感じでした。

Economics and Computation で扱う内容

要するに、社会活動における意思決定を計算で解く、というようなことです。授業で扱った具体的な内容は、以下のとおりです。

Game theory

→意思決定を行う人々がいて(例えばAさんとBさんとする)、互いの選択した行動によってそれぞれの損益が変わる時、相手(AさんからしたらBさん)の選択を予測しながらどの選択が自分にとって最も良いかを考えるために用いるものです。

Nash Equilibrium

→もしAさんとBさんがこの行動を選択していたら、そこからAさんもBさんもわざわざ違う行動を選択しないよね、という均衡状態です。

Mixed-strategy

→Aさんは~%の確率でCという行動を、~%の確率でDという行動を選択するという考え方です。

Dominated strategy

→Aさんにとっては、例えBさんがどの行動を選択しても、CよりもDを選択した方が利益が大きいという考え方です。

Extensive form

→AさんがCを選択した場合、Dを選択した場合に分けて木を書いていき、さらにその葉にBさんがCを選択した場合とDを選択した場合を書き、全て書き終わったら今度は逆算してAさんBさんはどの行動を選択するだろう、を予測する方法です。

VCG mechanism

→Googleのオークションで用いられたアルゴリズムです。

Deferred acceptance algorithm

→互いの好みからどの人とどの人を結び付ければ一番良いかを決めるアルゴリズムです。

Voting rules

→色んな国の選挙などで行われた選挙結果を決めるアルゴリズムを吟味しました。

Manipulation

→投票において、他の人の好みがわかっている場合、自分の好みをわざと変えて当選する人を自分の都合によく変えるためのテクニックです。

自分自身の成長を実感したエピソード

①初めての海外、②英語が通じない国、③単独で2週間過ごす、といういきなりハードルが高い挑戦だったと思います。まずは北京に行く前の準備の段階から成長しました。中国政府のGFWによるネット規制があるので、それの対策として香港SIMやVPNのことについて徹底的に下調べしたり、現地で生活していく上で便利なもの(WeChat payや一卡通)も一通り調べたりして入念な準備をしたことにより、いかに下調べ・準備が重要で、実際に生きてくるのかが実感出来ました。後は英語が通じない国は現地の言葉もある程度勉強して話せるべきだと思いました。そして、現地で生活しているからと言って勝手に現地の言葉が習得出来るという訳ではないと実感しました。きちんとその国の言語を聞けるようになったり話せるようになったりするためには、真面目に勉強しなければ行けないと思い知らされました。また、日本にいる中国の友達からは感じられませんでしたが、現地人の車やバイクの運転の荒さやサービスの雑さなどから、首都の北京ですら現地の人は粗い人が多いので、きっと中国全体としてもまだ多少粗くても良い、ということが当たり前な国だとわかりました。これは一見悪い意味で捉えられるように思われますが、日本のあまりに丁寧過ぎるサービス精神・空気を読むという謎の雰囲気などが無いという面では良い面なのかも知れません。日本ではこういった丁寧過ぎるサービスにより労働者が疲弊したり、空気を無駄に読んでいる国民性から余計なストレスを感じたりする人も沢山いるので、そういったことに疲れた人は一度海外を見てみるのも良いかもしれません。実は日本はある意味異常なのだということが実感出来ます。僕は無駄に深く考えてしまう性格なので、あまり深く物事を考えないという中国の国民性はとても参考になりました。しかし、やはりいかに日本が綺麗で住みやすい国だということが実感出来ました。後は北京で何度も大変な思いをしたので、日本で何かあっても多少のことでは動揺しなくなる自信が付きました。

留学先での住居

勺园(北京大学の寮)

最初に200元、短い滞在だと50元をデポジットとして払う必要があります。何も壊さなかったらチェックアウトで全額戻ってきます。僕は11泊12日でしたが、デポジット料が50元でした。シーツが多少汚れてしまった気がしますが全額戻ってきました。付属されているバスタオルや手拭きタオルは使ったら毎日交換してくれます。トイレットペーパーも減ったら交換してくれます。授業で出かけている間に交換してくれます。洗濯機はないので自分で洗剤買って手洗いで洗濯しましょう。水道水は飲んだらダメみたいですが、歯磨きぐらいなら大丈夫でした。

ルームメイト

南京大学から来たルームメイトと2人で暮らしていました。彼には本当に色々助けて貰いました。勺园の人は中国語しか話せない人も多いので、エアコンが壊れた時は交渉して部屋を変えられることが出来たり、色々食べ物や飲み物を買ってきて分けてくれたりしました。中国事情についても色々話が聞けました。

留学先での語学状況

ルームメイトとは英語で会話しました。現地人はほとんど英語が通じません。東工大での自分の研究室は日本人が自分含め2人しかいないので英語が公用語です。ゼミも英語です。なので、英語での会話には慣れていました。

今後、留学経験をどう生かすか

今回の北京留学経験を通して3.の「自分自身の成長を実感したエピソード」として①準備・対策は徹底的にする、②中国語を真面目に勉強する、③無駄なことは深く考えず思い切って行動する、ということを学びました。まず①に関しては、これから生きていく上で様々な人生のイベントに直面する際に、入念な準備を徹底的にしようと心がけます。②に関しては、中国語を母国語する人口は圧倒的に多く、また、日本人がこれからも一番関わる機会があると思われる外国人は中国人なので、中国語である程度の会話が出来るようにしたいです。③に関しては、自分の欠点として深く考えすぎて取り越し苦労することが沢山あるので、中国人のラフな精神を参考にし、思い切って自分の主張を出し惜しむことなく前面に出して生きる人間に成ります(ある程度の節度は弁えますが)。

この体験談の留学・国際経験プログラム情報