TOMODACHI STEM Women's Leadership and Research Program リーハイ大学 2022年2月12日~3月15日

TOMODACHI STEM Women's Leadership and Research Program リーハイ大学 2022年2月12日~3月15日

留学時の学年:
学士課程2年
東工大での所属:
環境・社会理工学院 融合理工学系
留学先国:
アメリカ合衆国
留学先大学:
リーハイ大学
留学期間:
2022年2月12日~3月15日
プログラム名:

留学先(参加プログラム/受入れ機関)の概略

日本の大学で理工学を専攻とする女性学部生10名を対象とした約1ヶ月の研究インターンシッププログラムである。学部時点で大学の研究室に所属して最先端の研究活動に触れると同時にアメリカの高等教育システムを体験し、米国人学生との交流活動を通して言語や文化を学ぶ機会を得る。学部生でありながら研究室に所属することで、アメリカでの研究活動の雰囲気を掴み、専門分野のさらなる理解を深める。さらにプログラムに参加するメンバー及び留学先の学生や研究者と交流しコネクションを構築する。

日米カウンシルが主催し、ダウ・ケミカルなどがスポンサーにつく奨学金を含むプログラム(渡航費、現地の生活費・食費、授業料など全てカバーされている)。2011年よりライス大学がホストとなり行われていたが、本年度よりリーハイ大学と合同となり5人ずつ計10人の日本人が参加。さらに本年度より台湾と同様のプログラム(MACHI-STEM Program)がスタートし、5人の台湾人生徒もライス大学へ。

[オンラインプログラム]
リーハイ大学とライス大学からゲスト講師を招き講演やワークショップを開催。
2021年9月7日〜24日の月〜木の夜に1時間から2時間ほど。
プログラム自体が理系の女子学部生に限定したものであることから、「STEMの女性」が大きなテーマとなっている。
その他英語力やコミュニケーションなど2月に渡航した際の事前準備になるような内容。
ブレイクアウトセッションなどを行うことにより、渡航前に参加者同士の交流の場をもうけるものでもある。

[現地プログラム]
 自分はリーハイ大学に配属となり、他3人のメンバーと共に渡航した(うち1人は所属大学の方針で出国できず辞退)。
 それぞれのメンバーが研究室に配属され、1ヶ月間研究活動を行う。日本で研究室に所属していて同じような分野の研究室に配属された場合は、本格的に実験に参加することができる。日本での研究テーマとは近しいが専門ではない場合や、日本でまだ研究をしていない場合は、シンプルな実験を指導してもらいながら研究室のテーマについて学んだり、論文を読んでラボミーティングに参加する。どちらの場合もメンターがついて指導をしてくれて、自分の英語力や理解度に応じて柔軟にその日やることを決めていく。プログラムの最後に参加者全員で行われるCapstone Presentationにむけ研究活動を進め、まとめてプレゼンをする。
 最後の三日間はヒューストンに移動し、残り5人のTOMODACHI-STEMメンバーと5人のMACHI-STEMメンバーと合流。ライス大学やNASAを訪問する。

オンラインプログラム(事前学習)の内容

・リーハイ大学とライス大学からゲスト講師を招き講演やワークショップを開催。
・アカデミックプレゼンテーションの作り方
・コネクションの大切さと作り方(ネットワーキング)
・エレベーターピッチのワークショップ
・レジュメの書き方
・特性分析による自己パーソナリティの理解
・さまざまなSTEM分野の教授とマンツーマンで3分ずつシャッフルトークするセッション
・「STEM分野の女性」「アカデミアの女性」の在り方について、STEM分野の女性教授からトークセッション
・アメリカへの大学院出願方法と奨学金について
・サイエンティフィック、アカデミックなトピックを相手にわかりやすく伝えるには
・多文化理解をするには
・自信を持って話すには
・ハラスメントと権利について
・ライス大学でPhD過程に在籍している日本人学生とコーヒーチャット

リーハイ大学での活動内容

(Dr. Fox) MOF素材と活性炭のメチレンブルー吸着比較

初めに配属された研究室。
日本での研究経験がなかったため、まずは研究室が扱っていた低コストで効率的な水のろ過を実現する材料研究や、発電所から出る灰の環境負荷を減らすための素材研究についてレクチャーを受け論文を読んだ。
その上で自分でもできるMOF素材と活性炭のメチレンブルー吸着比較実験の説明資料を読み、メンターに教わりながら実験して結果をまとめた。



(Dr. Yang) 水環境問題における政策決定について

後半に配属変更になり在籍した研究室
Dr. Yang Labではプログラミングを政策決定に用いるプロジェクトを研究しており、特に水環境に焦点を当てている。参加したミーティングで議論されていた内容は、ダム・水道システム一帯をサイバーアタックから守るためのプログラミングや、年により変化する雨量に対して適した農業水利用量の目安を示すためのプログラミング、河川の流量をプログラミングを用いてマネジメントするプロジェクトなど。自分は自分の興味と将来についてDr.Yangに面談を複数回組んでいただき、アドバイスと論文や資料を読む課題をいただいていた。毎週のラボミーティングにも出席し、質問にチャレンジした。

興味がある研究分野に取り組むPhD課程の学生5人、教授3人にアポイントメントを取り、それぞれが専門・研究トピックを選んだ理由やキャリアについてインタビューを行った。
インタビューした全員がアジアからの留学生だったが、同じ研究室に所属していても大学、専門、キャリアの選び方が全く違った。一度コンサルタントになって社会人として働いてから研究者になったり、自分は研究が好きではないけどアメリカで働くには学位がないといい職につけないからという動機だったり、学部時代とは違う専門だったりと様々だった。共通していたのはアメリカで進学するという決意が彼らの中でそれほど大きな決断ではなく、周りの影響や気候と雰囲気で選ぶなど、想像よりも肩の力を抜いて選んでいたのが印象的だった。

ライス大学にて

ヒューストンに到着してからは観光メイン。ライス大学はリーハイ大学とはまた雰囲気が違って魅力的だった。台湾からのメンバーにライス大学ツアーをしてもらったり、一緒に部屋でケーキを食べたり楽しい交流の時間を過ごした。中でもMACHI-Programのスポンサーがヒューストン一番の高級ステーキをご馳走してくださり、背筋が伸びる高級な雰囲気とお肉の美味しさは忘れられない。



留学から何を学び、それを今後どのように活かしたいか

本プログラムを通して自分の今後の専門を狭めるプロセスやその後のキャリアについて深く考えることができた。
 分野について言えば、Dr. Fox Labの研究テーマは自分の興味とは違い、Dr. Yangの研究テーマの方が興味が湧くものだった。しかしどちらも将来自分の専門になることは想像がつかなかった。ただ、消去法的に専門を絞っていくことも選択肢だと知った。
 研究の雰囲気も感じることができた。日本の研究室に比べ、学生間も学生と教員間もそれぞれが干渉しすぎず独立しているような雰囲気がした。特にDr.Foxの研究室は教授はほぼ姿を見せず、ラボとしてのコミュニティーが希薄だった。一方Dr. Yang の研究室は皆密に関わるわけではないものの、他の生徒の研究にも熱心に意見を出し、ミーティングは充実した内容であった。研究室の雰囲気が自分に合うかはとても大切だと感じた。
 コミュニケーション力、英語力を向上させることでコネクションを作ることができたのは大きな財産だった。自分がどのようなことに興味があるか(環境系分野における政策決定やプロジェクトマネジメント、エンジニアリングデザインなど)について、教授でも学生でも躊躇なく相談し、アドバイスを求めて連絡を取り合える関係になることができた。

学習について

自分の専門とキャリアについてたくさん考えた1ヶ月だった。
 まず研究分野と研究室をめぐる問題が一緒に行ったメンバーの中でも一番複雑でとても苦労した。しかしそこでめげずに行動した結果、本当に興味があることに近づくことができ、素晴らしい人たちに出会うことができた。
 最初に配属されたDr.Fox研究室は、教授が忙しくてほとんど現れずメールにも応じないために、コミュニケーションが取れなかった。私が出会った研究室の学生は1人だけで、他に学生がいるのか最後までわからないほど研究室としてのコミュニティが希薄だった。メンターも、現地に着いてみたらDr.Fox研究室から異動しており、私の面倒を見てくれようとはするもののどうしても物理的に忙しく、放置され気味になっていた。
 研究内容を説明されて、生まれて初めての論文を苦労しながら読んだところ、研究内容が自分が本来興味を持っていた内容とは違うことがわかった。環境系の分野でもDr.Foxの研究室は物質工学寄りで、自分はプロジェクトマネジメントや政策決定などソフト面に興味があったからだ。そもそも、もともと配属される予定だった研究室はDr.Fox研究室ではなかった。その研究室が私をホストすることができなくなり、渡航2週間前に急遽変更になったのだ。 留学して興味が「ある」ことを見つけるのも留学の醍醐味だが、興味が「ない」ことがわかるのは同じくらい大きなことだと感じた。単位や成績を気にしなくて良い短期間に、専門と違うことを見て面白いと感じたり、専門を選ぶ上での消去法が一歩前に進むのは良い経験だった。
 分野が合っていないのはメンターも感じていたようで、私が自分の興味と将来やりたいことをプレゼンすると、Dr.Yangの話を聞くのが面白いと思う、と紹介してくれた。メールを送って事情を説明すると、快く受け入れてすぐに面談を組んでくれた。私が今後専門を決めていく上で有益になるような資料を課題として与えてくださった。興味があることを探さなくても、消去法的に絞っていけばいいということを教わった。ラボミーティングにも招待していただき、1人の研究室の学生として扱ってくださった。「もう僕の生徒の1人だから」と言ってくださったのがとても嬉しかった。こうして配属研究室が途中で変更になった。
 Dr.Yang研究室の学生は皆優しく、私がミーティングで初歩的な質問しても丁寧に応えてくれたり、全員が快くインタビューを引き受けてくれたり、ランチに連れて行ってくれたりした。どの学生の研究プロジェクトも興味深く、毎日が刺激的だった。

英語について

専門的内容を英語で学ぶことと、自分の興味があることを相手にわかるように説明することが難しいと感じた。リスニングは特に問題がなかったが、スピーキングの時にもっとスラスラ単語が出てくるようになりたいと思った。

出会いについて

リーハイ大学では本プログラムに対して、大学の国際交流課の職員と、中国からのPhD留学生の女性(Mary)がついてくれた。2人とも私たちを非常に温かく迎え入れてくれて、プログラムのマネジメントから旅行の計画、メンタルサポートまで幅広く支えてくれた。Maryは頻繁に一緒にご飯を食べたり、大学のナイトイベントを予定に組み込んでくれたり、LINEでも毎日私たちがうまくやっているか気にかけてくれていた。私達を寮に招いてルームメイトと共に中華料理を振る舞ってくれて、この1ヶ月でベスト3に入るくらい忘れられない味だった。日本に戻ってからも頻繁に連絡を取っていて、自分も日本で留学生サポーターをやってみたい、Maryのような温かいサポートをしたいと思うようになった。
 一緒に渡航した3人のプログラムメンバーとは一生の友達になった。研究室に行っている間以外は四六時中一緒にいたためすぐに仲良くなった。くだらない笑い話から将来の真面目な話までたくさん喋って、その日のラボの報告をしたり励ましあったりした。最後には全員でこの4人で本当によかったと言い合えるほど絆が深まった。



コロナ禍での留学

出入国の前後は、陰性証明が必要なため感染対策への気遣いや金銭的負担が大きかった。出入国に伴う書類や誓約書など通常の留学よりも調べることや用意する書類は多かったように思う。しかしそれ以外はコロナの影響を感じることは少なかった。アメリカでは現地の人たちは法令に基づきマスク着用が義務付けられているところでは皆マスクをしていたが、そうでなければしていない人がほとんどだった。感染した場合や疑いがある場合のスケジュール調整やオンライン対応は迅速だった。

トラブルエピソード

リーハイからヒューストンに国内線で移動しようとした時、危うく飛行機に乗れなくなるところだった。朝6時すぎのフライトで余裕を持って着いたのに、カウンターのスタッフがヘルプデスクに電話し初めて繋がらないまま30分以上が経過し、保安検査場に着いた時には出発時刻になっていた。長蛇の列ができていたが、警備員に聞くと自分で前の人に話をつけて割り込ませてもらうしかないとのこと。一人一人にお願いしていると優しい方が大声で「この子たち困っているから前に行かせてあげて!」と言って前まで行かせてくれた。
 しかしトランジットで2枚必要なはずのボーディングパスが1枚しかなく、エスカレータを全力で逆走してカウンターのスタッフの元へ再発行してもらいに行く羽目になった。結局飛行機が15分待ってくれて乗ることができた。アメリカでは飛行機が定刻を遅らせて待つことはほぼないのでラッキーだった。思い返せばカウンターのスタッフが空港スタッフへの無線で「ヘルプデスクに繋がらなくてあと4人くるから待て」とひたすら叫んでくれたからかもしれない。とにかく無事に乗れてよかった。
 ヒューストンから帰国するときも、私達4人のうち1人だけアプリでチェックインできなかったので有人カウンターに並んだら、スタッフに「ビザの期限が今日までだからだめだ。更新しに戻らないといけない。」と言われた。怯まず目を見開きながら私たちは日本からのインターン生でもう日本に帰るからビザはいらないことを何度も主張して、やっとチェックインできた。
やはり海外は最後まで油断はできない。

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