協定校シーズンプログラム (グルノーブル工科大学) 2022年6月~2022年7月

協定校シーズンプログラム (グルノーブル工科大学) 2022年6月~2022年7月

留学時の学年:
B3
東工大での所属:
環境・社会理工学院 融合理工学系
留学先国:
フランス
留学先大学:
グルノーブル工科大学
留学期間:
2022年6月20日~2022年
プログラム名:

プログラムの概要

プログラムの内容

●Discover France
必修のDiscover Ginsen に加えて任意で追加できるプログラム。フランス語講座を受けるほか、プロジェクトマネジメントや異文化間コミュニケーションの講義を受ける。
 
●Discover Ginsen (Smart Energy Option)
英語で行われる学士課程レベルのサマープログラム。Nanotechnology またはSmart Energy のいずれかの2 週間のコースを選択することができる。どちらのコースも講義・実習があり、研究施設への訪問やグルノーブル市内ツアーの参加、その他アクテビティへの参加が含まれる。
持続可能な開発とエネルギーにおけるエネルギー変換と貯蔵の課題に注目する。スマートエネルギーや新エネルギーなどの基本から、モデリングやIOT などの応用まで、スマートエネルギーに関して幅広く取り扱う。評価は全日程への出席及び最終日に行われる試験による。

日程

Discover France:2022 年6 月20 日~2022 年6 月27 日(1 週間)
Discover Ginsen:2022 年6 月27 日~2022 年7 月8 日(2 週間)

参加費用

1500€【Discover France:500€、Discover Ginsen:1000€】
(滞在費及び保険も含む・食費や生活費は除く)

参加者

19 名【香港(5 名)、スウェーデン(3 名)、コロンビア(3 名)、スペイン、タイ、イギリス、マルタ、ベトナム、イタリア、エジプト、日本】

滞在場所

大学の学生レジデンス(1 人部屋)
●キッチン・シャワールーム・トイレ・電子レンジ付
●基本的な調理器具や食器、タオルあるが、ドライヤーやエアコンはない
●コインランドリーあり(洗濯機:3€、乾燥機:1.8€)

活動の内容

フランス語講座

名前・国籍・職業(学生)・年齢・趣味などのフレーズを練習しながら、会話の練習を行った。また、日常生活で使えるフレーズも学習した。

講義

●Welcome to Anthropocene: an energy perspective(3 時間)
この講義では、タイトルの通り、“smart buildings”及びそれを実現可能にする技術には何があるかを学ぶ。人間活動に伴うエネルギー使用量や各国の発電方法などについて学んだ。また、持続可能エネルギーの種類についても学び、それらの生産コストを比べた。持続可能エネルギー以外の、電気自動車やスマートハウスなどの環境への負荷を減らすための技術についても学び、増え続けるエネルギー消費にどう対応していけばいいか考えた。

●Urban modelling and analytics(3 時間)
この講義では、都市を理解し、持続可能な都市の設計のためにどのようなデータ・ツール・手法・応用を用いることができるか探り、学ぶ。都市化が抱える問題点や課題の対策としてスマートシティの設計があることを学び、実際に担当教員がリスボンで行ったプロジェクトについて説明を受けた。更には、本題である“urban energy modelling”を実行する上で用いる技術やシステム、プログラム、データベースについて学んだ後、エコ地区Bonne についてどのような対策を取ることができるかディスカッションを行った。

●Demand response (DR) programs(3 時間)
この講義では、家庭内における電力消費及びDR プログラムの効率をどのように変えていくかについて学び、考える。DRとは、電気の需要と供給のバランスをとるために、電力制御を行うことである。そしてDR プログラムは、全体の電力消費を変えるために用いられる手法であり、変化を促す方法として可変性の電気料金やナッジなどが使用されることを学んだ。またDR プログラムを手助けする役割として、スマートグリッドへの応用があることを知った。実際に行われた実地調査を基に、それぞれの手法がDRにどれほどの影響力を持つのか理解を深めることができた。

●Empowering consumers – Designing persuasive smart systems for energy(3時間)
この講義では、“Persuasive computing”と“end-user programming”とは何かを学び、それらのエネルギーセクターへの応用を図る。“Persuasion”とは何かという問いから始まり、身の回りの具体例を参考にしながらどのように人々に行動の改変を促すのが効果的か学んだ。従来のアプローチでは、効果が十分に得られず、あったとしてもそれが一時的で短期間のものであるということがわかった。そこで注目されるのが“Persuasive technologies”といった最新の技術であると学び、身近でのどのような応用例があるかディスカッションを行った。更に、実際の他人の行動から影響を受ける“influence”との違いを学び、様々な種類の“influence”についても理解を深めた。

●Towards a new paradigm: the smart-grid(3 時間)
この講義では、電力網の課題を探りながら、次世代電力網とされているスマートグリッドについて学ぶ。電気や電力の基本的な性質を確認したうえで、送電網の仕組みについて学んだ。更に、発電・送電・配電・供給がどのように行われているかについても知識を深めることができた。近年の電力供給の傾向及び抱えている課題を踏まえ、スマートグリッドの定義を確認しながら、必要性を学ぶことができた。

●Introduction to Artificial Intelligence and Machine Learning(3 時間)
この講義では、特にエネルギー分野における機械学習とディープラーニングの性質や機能について学ぶ。機械学習やディープラーニング及び人工知能(AI)に関する歴史を振り返ったうえで、現在は知識に基づいたAI よりもデータに基づいたAI のほうが使用されていることを学んだ。

●Technology for smart energy: smart objects and Internet of Things (IoT)(3時間)
この講義では、安全性やセキュリティに着目しながら、“smart objects”やIoTが抱える課題を学ぶ。講義の冒頭では、スマートフォンやスマートデバイス、スマートホームなどにもみられるように、身の回りのあらゆるものが「スマート」になっていることを確認した。また、これらを可能にするインターネットに仕組みやセンサーの仕組みについても学んだ。しかし、これらの“smart objects”の利便性の裏にはセキュリティに関する様々な課題があり、セキュリティ対策は製造段階から適用することが重要だということを学んだ。

実習

●Modeling energy communities with multi-agents systems(9時間)
この実習は3 回にわかれており、エネルギーコミュニティとは何かを学び、SQL データベースとPython を用いて実際に分析する。エネルギーコミュニティの定義について確認した後、これをUML (Unified Modeling Language)で規定された図を描くことによってモデル化した。講義中は何回も演習時間があり、各自で作業を行った。2 回目の実習では、Qlite とDBBrowser を用いて演習を行った。各地域の各家庭における電力消費量や天候に関するデータを基にして、データの関連付けや表示を行った。最終回の授業では、Python のコードを用いた演習を行った。データセットを用いて、それぞれ計算を行いながら、グラフへのプロットをした。また、変数を変えたときにプロットにどのような変化が現れるかも観察した。
●Energy modelling of prosumers: from individual behavior to communities(9時間)
この実習では、研究室の先生方の指導のもとRaspberry Pi やLoRa などを使った演習を行う。ペアに分かれて、自分たちで実際に配線や接続を行った後、センサーで周辺環境を観測したり、様々な条件下で照明器具が作動するようにプログラミングを行ったりした。基本的な演習の後は、自分たちの好きな温度や湿度に設定し、センサーの反応を確認した。

人文系講義

●異文化学習とコミュニケーション(6 時間)
この参加型講義では、コミュニケーションに重きを置きながら、文化における“culture”の定義を確認しながら、その背景には何があるのかを探ったうえで、各国や各文化によって異なるコミュニケーションや性格、ものの見方があることを学んだ。一見関係ないように見える国同士や文化同士がある側面からは非常に近い性格を持っていることも勉強した。更に、プログラム参加者が世界各国から集まっていることを活かし、グループワークではそれぞれの出身国や出身地域に対して持っている偏見や見方を共有し、実際その国ではそれについてどう思われているのか、ということを話し合った。更には、どの文化の人とうまくコミュニケーションを取り、関係を構築するにはどうすればいいかも学んだ。
●プロジェクトマネジメント(6 時間)
この講義では、効果的及び効率的にプロジェクトを進めていくためにはどのような手順に従い、何をすればいいのか学ぶ。プロジェクトとプロダクトの違いの定義から始まり、プロジェクトサイクルでプロジェクト全体の進行を把握・管理する必要があると学んだ。また、プロジェクトにおいては、それぞれのステークホルダーに役割および責任が伴うことも学んだ。また、SOW やタイムマネジメント、コストマネジメント及びリスク管理などプロジェクトの実行をする上で必要なステップを確認することができた。

施設訪問

●MINATEC Showroom
MINATEC は、研究者・学生・産業界の技術移転専門家が集まるヨーロッパのイノベーション・キャンパスであり、マイクロ・ナノテクノロジー分野では世界最高峰の拠点である。イノベーションが生まれるワークショップルームやラボを
実際に見て回った。また、MINATEC の多岐にわたる研究分野での活動紹介を受け、実際に自分たちでその技術を体験することができた。
●Ecoquartier de Bonne
グルノーブル市の中心に位置するBonne は、エコ地区としての再開発がすすめられた地区である。3 つの都市公園と高エネルギー効率アパートを実際に見て回った。公園内に設置されている各施設により、公園内に降る雨水の浸透と貯蓄が可能となり、ヒートアイランド対策に貢献してる他、屋上緑化を行うことで、建物の温熱環境改善にも影響を与えていると学んだ。
●European Synchrotron Radiation Facility(ESRF)
ESRF(日本語訳:欧州シンクロトロン放射光施設)は新世代の高エネルギーシンクロトロンを備えており、世界でも最も明るいX 線を放つ施設である。凝縮体及び生体に関する基礎的かつ革新的な研究に特化した研究拠点となっている。初めに、スタッフの方からESRF が動く仕組みやその背景にある基本原理などの説明を受けた。その後、実際に施設の中や操作室などを見学した。

自身の専門性と本プログラムがどのようにして能力の育 成に結びついたか

本プログラムに参加して、「エネルギー」そして「持続可能性」という自分の興味のあるテーマに関して、このプログラムでスマートエネルギーについて学ぶことで、より深い理解を得られた。エネルギーに関する現状について学んだうえで、それらの課題を解決するための「スマート」な技術や方法を学び、また実際に体験することで、技術がどのように自分たちの生活につながって、どう貢献しているのかを実感できた。東工大の授業だけでは、技術とその応用がここまで理解できなかったと思う。
また、自分の得意とする語学スキルやその運用能力の更なる向上が図れたと思う。今回のプログラムには日本人参加者はおらず、日本にいる家族や友人ともメッセージでたまに連絡をとる程度だったので、3 週間全く日本語を話さず、朝起きてから寝るまでずっと英語漬けの環境で過ごすことができた。授業はもちろん英語で受けるが、それ以外の会話では、日常会話だけでなく、仲間と政治問題について議論したり、英語のゲームをみんなで楽しんだり、身の回りのすべてが英語だったため、様々な角度から自分の英語を磨くことができたと思う。
そして最後に、このプログラムの目的の一つである多様な文化や背景を持つ仲間と出会うということも達成できた。たったの3 週間だが、世界各国の大切な仲間ができた。お互い文化や言語、考え方も違うが、それを学び合うことがどれだけ楽しいか、ということを改めて感じた。彼らとは今でも頻繁に連絡を取り合っていて、お互いの国を訪問して再会しようという計画を立てている。
今後、ここで得たスキルや能力、考えをより強化していくために、再び留学に行ったり、興味のある分野について英語で調べてみたり、海外でどのような研究がされているのか調べてみたりしたい。また、ここで得た仲間たちと引き続き情報共有をして、彼らがどのような研究分野に進み、進路をどうするのかなどからもヒントを得たいと考えている。今回の短期留学で、最終的には海外で就職したいという気持ちが高まり、より一層、世界に目を向けて今後の学習活動や大学生活を送っていきたいと考えている。

その他所感

食事や普段の生活について

普段の食事は、朝食以外はみんなで一緒に食べることが多かった。昼食は、学校のカフェテリアで食べるか、近くのスーパーやベ ーカリーでサンドイッチかパンを買って食べていた。街のあちこちにベーカリーがあり、定番のクロワッサンやパンオショコラは安くておいしいものがたくさん売られていた。授業が終わった後の夕食は、レストランで外食をするか、レジデンスに戻り各自部屋で調理した食事をコモンルームにもってきてみんなで集まって食べるかのどちらかだった。
授業が終わったあとや、授業のない土日はみんなで集まって何かをすることがほとんどだった。街を散策したり、買い物をしたり、またサッカーをしたりしていた。また、私たちがグルノーブルに滞在中は運がいいことに、毎日のように無料のフェスティバルやコンサートが開催されており、みんなで出かけて音楽や雰囲気を楽しんだ。毎日何かしらのイベントがあり、忙しいがとても充実した日々を過ごすことができた。

話す言語によって性格が変わる

2 つ以上の言語を話す人は言語ごとに違う性格になるという、研究結果を読んだことがあったが、今まではあまりピンと来なく、よくわかっていなかった。しかし、今回の留学で、自分が日本語を話すときと、英語を話すときで、少しではあるが性格が変わることを実感できた。日本にいて日本語を話すときには、他人に判断を任せたり、空気を読んだり、控えめにするということが多い気がする。これは「日本人」のいいところでもあり悪いところでもあると思う。しかし、海外で、英語を話すとなると、こういった「日本人らしい」自分がいい意味で「消え」て、英語を話す「自分」になっている気がした。性格が変わるのがいいことなのか悪いことなのか分からないが、とても興味深いと思った。

様々な国の文化を一度に学ぶ機会

このプログラムには、世界各国から集まった学生が参加していたため、フランスにいながら一度に様々な国の文化や言語、考えなどを学ぶことができた。日常的に、自国の言語のワンフレーズを紹介したり、交通や食べ物などについて共有したりした。また、ある時、自国の料理を作ってみんなで食べよう、という話になり、大学のレジデンスのコモンルームで、各国の料理を持ち寄り、食事をした。日本からは味噌汁を作ったが、スペインのオムレツや、コロンビアの“arepas”、マルタの煮込み料理など、どれも美味しくて、世界一周旅行に行っているような感覚だった。

感謝

コロナ禍に加えて、国際情勢及び円安も厳しい状況の中で、3 週間、非常に充実した、有意義な時間を過ごすことができ、大切な仲間もできた。グルノーブル工科大学のサマープログラムに参加して心から良かったと感じた。ここの場を借りて、留学を支えてくれた家族や学校の先生方、職員の方、すべての人に感謝を申し上げたい。

この体験談の留学・国際経験プログラム情報