社会連携

世界で活躍する同窓生 東工大・清華大学大学院合同プログラム修了生

東京工業大学・清華大学大学院合同プログラムは、東京工業大学と清華大学という日中理工系最高峰の大学から、修士課程において日本と海外の2つの学位を取得できるというダブル・ディグリー(両校から学位を取得できる)プログラムです。ナノテクノロジー、バイオ、社会理工学の3分野で共同で行われる大学院教育は国際的リーダーシップを発揮できる優れた理工系人材養成を目的として2004年よりスタートしました。

開始から10余年を経て、これまでにおよそ150名の修了生を輩出しています。本プログラムの大きな特徴は、専門知識を習得したことを示す学位取得だけでなく、日本語、中国語、英語の3カ国語を駆使できる語学力が取得でき、日中の文化に精通できることです。

中国へ帰国する清華大生と三島学長(当時)
中国へ帰国する清華大生と三島学長(当時)

10周年記念式典にて来日した袁駟教授(元清華大学副学長)と清華大生
10周年記念式典にて来日した
袁駟教授(元清華大学副学長)と清華大生

日中をまたにかけて活躍している本プログラム修了生2名に、現況や今後のプログラムへの期待について聞きました。

信頼関係を築き、新たな技術の開発へ

河野俊司(Kono Shunji)

河野俊司(Kono Shunji)

東レ株式会社 樹脂技術部

2007年東京工業大学大学院理工学研究科有機・高分子物質専攻および清華大学大学院材料工学課程修了(ナノテクノロジーコース修了)。東レ(株)から大学院合同プログラムに派遣され、修了後は、東麗繊維研究所(中国)有限公司上海分公司(現東麗先端材料研究開発(中国)有限公司)を経て、現職。

現在どのような業務をされていますか

上海の研究所にて、中国市場向けの研究開発に従事した後、日本の樹脂技術部で、材料開発を行っています。中国での業務経験を生かし、技術開発のヘッドクォーターの一員として、世界にある開発拠点と連携しながら、グローバルに製品を開発しています。

在籍中の学生生活はどのようなものでしたか

謝続明教授(清華大)と
謝続明教授(清華大)と

上田充教授(現・本学名誉教授)など世界的に著名な先生の下で、最先端の材料開発に携われただけではなく、企業の研究者や学生、特に、中国、インド、タイなど海外からの留学生や研究生との論議や生活は、新たな発見があり新鮮でした。

一方、研究活動以外でも色々な経験ができました。清華大滞在中に研究室の友人2人と行った電車の旅では、夕方には市場で食材を買出し、1部屋1,500円の部屋に3人で泊まり、宿で料理してもらいました。

また、真夏にエアコンも無く、通路に人がびっしり立った汽車の中で、5時間も揺られ移動したことは今でも忘れられません。企業派遣者の私にとっては、学内外の生活一つ一つが、楽しく、良い経験となりました。

東工大・清華大学大学院合同プログラムがあなたのキャリアにどのように影響し、役立っていますか

東麗繊維研究所(中国)時代の仲間たち
東麗繊維研究所(中国)時代の仲間たち

上海の研究所で、7年半にわたり、中国市場向けの研究開発に従事してきました。中国市場に即した技術開発を行うには、中国顧客の意見を正確に捉え、日本の技術を深く理解した上で、技術開発を進めることが必要になります。一方、優秀な中国人研究者や顧客の多くは、英語はできますが、日本語は話せません。私の業務は、優秀な中国人技術者、中国人顧客と日本の技術との橋渡しをしながら、新たな技術を生み出すことでしたが、この際に、プログラムを通じて培った中国語での技術討議の経験が非常に役に立ちました。

中国の技術者や担当者と中国語で直接技術討議をすることは、内容を深く理解出来るだけでなく、信頼関係の構築にもつながります。信頼関係の構築は、さらに多くの、かつ正確な情報収集に役に立ち、業務に直結するものとなりました。中国を離れた今も、研究室の友人や会社の同僚とはSNSを通じて交流しており、色々な情報交換をしています。

今後プログラムに期待することは何でしょうか

大学院学位授与式後にプログラム独自で学位記伝達式を実施
大学院学位授与式後に
プログラム独自で学位記伝達式を実施

海外の優秀な学生は、常に世界をまたにかけた活躍を考えています。また多くの日系企業は、国際的に活躍できる技術者を求めています。学生には、是非、将来の活躍の場を世界に据えて、世界で活躍できる人材を目指していただきたいと思います。

互いの文化を理解して、経済・文化交流の発展を

高揚(Gao Yang)

高揚(Gao Yang)

清華大学(社会科学学院)・野村総合研究所
中国研究センター

2008年清華大学大学院人文社会科学学院科学技術史および東京工業大学大学院社会理工学研究科経営工学専攻修了(社会理工学コース修了)。株式会社カネボウ化粧品に就職後、野村総研(上海)諮詢有限公司北京支社、在中華人民共和国日本国大使館勤務を経て、現職。

現在どのような業務をされていますか

ビッグデータに関する講演会での司会
ビッグデータに関する講演会での司会

清華大学・野村総研中国研究センターでプロジェクトマネージャーとして働いています。著名な研究者や企業の役員が講師を務める講演会や、共同研究や国際シンポジウムのプロジェクト管理を行っています。

在籍中の学生生活はどのようなものでしたか

3年間で清華大学と東工大で必要単位を取り、修士論文を2本書くという生活は厳しく、泣きたくなることもありましたが、大変充実した生活でした。初めての外国での一人暮らしで、大変心細かったのですが、留学生寮の先輩がとても親切にしてくれて助けられました。大学や寮の近くで遊んだり、手料理をご馳走になったり、仲間と一緒に料理を作ったりしたことは、大切な思い出です。

清華大の仲間たちと
清華大の仲間たちと

学位記授与式(清華大)後に清華大学本館前にて記念撮影
学位記授与式(清華大)後に清華大学本館前にて記念撮影

東工大・清華大学大学院合同プログラムがあなたのキャリアにどのように影響し、役立っていますか

カネボウ化粧品に就職し、その後、野村総合研究所、在中国日本国大使館文化広報部を経て、現在の職についています。日中の経済・文化交流を仕事のキーワードに、一貫して北京で活動を行う日系企業へのサポート業務や日本文化の紹介、中国メディアへの取材の調整を行ってきました。

これらは、清華大学だけではなく、東工大で学び、互いの文化を知っているからこそできた仕事だと思います。時として、スピード重視の中国企業と、一つ一つプロセスを踏む日系企業では、仕事の進め方で誤解が生まれることがありますが、こうした場面を仲介することができるのは、プログラム修了生ならではだと思います。

株式会社カネボウ化粧品勤務時代
株式会社カネボウ化粧品勤務時代

上司と講演前の打ち合わせ
上司と講演前の打ち合わせ

今後プログラムに期待することは何でしょうか

学位記授与式後に伊賀健一学長(当時)らと
学位記授与式後に伊賀健一学長(当時)らと

東工大と清華大という2つの学位を持つ修了生は、日中のどんなフィールドでもキャリアを積むことができます。今後もプログラム修了生の輪が広がっていけば、その可能性は無限に広がります。今後もこのプログラムが継続し、修了生が増えてほしいと思います。

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2016年6月掲載

お問い合わせ先

東京工業大学 総務部 広報課

Email pr@jim.titech.ac.jp