協定校シーズンプログラム (リンシェーピン大学) リンシェーピン大学 2019年7月

協定校シーズンプログラム (リンシェーピン大学) リンシェーピン大学 2019年7月

留学時の学年:
学士課程3年
東工大での所属:
理学院,工学院,物質理工学院,情報理工学院,生命理工学院,環境・社会理工学院
留学先国:
スウェーデン王国
留学先大学:
リンシェーピン大学
留学期間:
2019年7月
プログラム名:

目的

一ヶ月間、海外の大学で世界各国からくる留学生と文化交流を図るとともに、専門分野を学び知識を深める。

日程

  • 到着日    2019/06/28  13:00〜20:00
  • 歓迎会    2019/06/29   18:00〜
  • オリエンテーション  2019/07/01 10:00〜12:00
  • コース日程  2019/07/01〜2019/07/26
  • 送別会    2019/07/26 18:00〜
  • 出発日    2019/07/26 〜12:00

プログラムの概要

6種類のコースから一つを選択する。いずれも授業は全て英語で学士レベルで7.5 ECTSに相当する。

  • Entrepreneurship and Knowledge Implementation for Improved Health Care
  • Exploring Sweden, the Anthropological Way
  • Innovation and Entrepreneurship in a Sweden Content
  • Leadership and Organizational Behaviour in Contemporary Organizations
  • Nanotechnology – Sustainable Challenges and Social Impact
  • The Use (and Abuse) of Culture

このプログラムに参加する前にリンシェーピン大学の協定校で1年以上学ぶ必要がある。(60 ECTS に相当する単位を修得する。)

活動の内容

私はNanotechnology – Sustainable Challenges and Social Impact のコースを受講した。

概要

講義で約1~100ナノメートルほどのとても小さな規模における技術の背景となる基礎、製品への応用例やそれらのメリット、デメリットを知り、環境保全のためにいかに持続可能な社会を目指すかを考えた。また、リンシェーピン大学の研究室見学をしたり、ナノテクノロジーの社会への応用方法を自分なりに考え、二人一組で一組のペアが起業家として投資家役の他のペアへ向けて商品をプロデュースするという設定のもと、投資家役との質疑応答を行った。(ピッチワーク)
また終日に試験を行なった。

Nanotechnology – Sustainable Challenges and Social Impact のメンバー

Nanotechnology – Sustainable Challenges and Social Impact のメンバー

講義

基本的には09:00〜12:00 の午前中で行われた。2日目以降は授業開始時に大学のポータルから前回の内容に関する3択のクイズ5問を5分で回答した。このクイズで3問以上の政界で期末テストのボーナス点に加算される。

  • 1週目は基礎として量子力学やナノ構造を作るためのアプローチ方法など主に物理、化学の内容を学んだ。
  • 2週目はナノ構造の分析のための各顕微鏡やセンサーの仕組みや特徴を学んだ。
  • 3週目は前半では記憶媒体の小型化の利点とその挑戦に立ちふさがる課題の理由やカーボンナノチューブの特徴、LEDが従来の電球より省エネである点や複数の種類のLEDについて、後半ではナノテクノロジーの環境保全への関わり方を学んだ。太陽光パネルの仕組みについての講義資料に東工大の写真が登場した。
  • 4週目はナノテクノロジーの生物学への応用を学んだ。

講義資料に登場した環境エネルギーイノベーション棟。4500枚以上のソーラーパネルにより、棟内の電力をほぼ自給自足できる。

講義資料に登場した環境エネルギーイノベーション棟。4500枚以上のソーラーパネルにより、棟内の電力をほぼ自給自足できる。

研究所見学

7/4の午後にCampus Valla の研究所、7/12の午前中にリンシェーピンから40kmほど離れたノーシェーピンにあるCampus Norrkoping の研究所を見学した。表面解析に用いられる顕微鏡を間近で見られる良い経験であった。Campus Norrkopingは敷地に滝があり、迫力があった。

Campus Valla



Campus Norrkoping

ピッチワーク

ピッチワークは主に起業家が新たなビジネスを行う際にNABC[需要(Needs),導入(Approach),利益(Benefit),既存の製品との競争(competition)]に沿って製品の重要性などに関するアイディアを投資家などと意見を交わしていくことである。

今回は二人一組で起業家という設定でナノテクノロジーを用いた製品を考え、他の組にプロデュースをした。私はイギリスで脳科学、心理学を専攻している人とペアになった。私の専攻の応用化学と脳科学をうまく関連付けた製品を考えることにした。私たちの組では、WHOが示した3億人の精神的不安を抱える人々の心を安定させることを目的としたプロテインのような粉状にして水に溶かして飲むサプリメントを考えた。不安を和らげる成分としてセロトニンやドーパミンが挙げられるが、必須アミノ酸であるトリプトファンやチロシンを摂取する必要がある。この成分は、卵などから摂取できるが、世界中で食べられる保証がないため、ベンゼンやアミンからカップリング合成する過程を考え出し、その過程に使うパラジウム触媒についてシリコンナノワイヤーを用いることにより、触媒の量を従来の数万分の一に抑えられるという理化学研究所の発見によってナノテクノロジーがコスト的にも、レアメタルの使用量の削減に貢献できるという内容を発表した。





ピッチワーク資料 (1部)


期末試験

35点満点で3つのパートで構成されていた。
(1)説明問題  1問計3点 全4問  12点満点
 「〜の構造を書いてこれがどのような性質であるか説明せよ」のような形式で加算される
(2)空欄補充  1問0.5点 全12問  6点満点
(3)クイズ   1問1点 全17問  17点満点

講義の最初のクイズと基本的には同じ形式だが4択だった。全17回の講義の最初のクイズで5問中3問以上の正解で1点がボーナスで加算される。(ただしこのパートで17点を超えることはない。)

私の専門性と本プログラムの結びつき

本プログラムでナノテクノロジーについて学んだが、応用化学を専攻する私にとってかなり密接に関わっていたと感じられる。その例としてピッチワークで取り上げた、ナノ構造を触媒に適用させることである。化学で重要な化学反応経路を考える際に、コストを抑える日ことは重要であるが、中には少量でも高価な金属を必要とすることもある。パラジウムは1gで5000円を超える。ナノテクノロジーは開発でコストがかかったとしても、長期的に見て割りに合う働きをするという可能性を感じることができた。そして今回私が留学する最大の目的として、専門分野について英語で意見しあえるようになることであったが、さすがに自由に使いこなせるまでには至らなかったが、英語を母国語とする人とのペアワークを通じて、時間をかけてでも、自分の分野をワークの題材に取り込むかを説明して、両者で納得しあって資料を作ることができたと思う。今回初めて日本語がほとんど通じない環境に一ヶ月滞在して、多少はよくはなったものの外国の人と比べて英語を自在に操れていないことをはっきりと自覚した。グローバルな現代において英語を使いこなせるようになるために、また今回のような環境に身をおく時期を作りたいと感じた。

その他

お金

スウェーデンクローナSEK を使う。1SEK=11~12円ほど。買い物はだいたいクレジットカードがあれば良い。行く前に月の上限度金額を増やすことを勧める。ただ個人営業の店などでクレジットカードが使えないこともあるので、3万円ほどは両替した方が良いかもしれない。私は自転車を借りた時にクレジットカードが使えなかった。

借りたレンタル自転車

借りたレンタル自転車

課外活動

リンシェーピン大学のホストの学生がイベントを企画して、スポーツやバーベキューを 夕方行なっていた。また2週目には1泊2日でストックホルムへ行き、クルーズやノーベル賞博物館などを見学した。ノーベル賞チョコレートがお土産として人気だったので購入した。

ストックホルムでのクルーズ寮
ストックホルムでのクルーズ寮

ノーベル賞博物館での大隈教授の説明
ノーベル賞博物館での大隈教授の説明

Campus Vallaから1kmほどにあるRYDの学生寮に泊まった。一人部屋でベッド、トイレ、シャワールーム付きWi-Fi は有線なのでMacを使っている人は変換アダプタが必要。

キッチンは一つの廊下内の約7〜10部屋程でシェアする。外国人を招いて一緒に料理をする日もあった。特にカレーライスや味噌汁は好評だった。



買い物

寮のそばにスーパーマーケットがあり、食品はそこで購入した。スウェーデンではレジ袋は基本的に出ないので、買い物袋を持っていくと良い。ペットボトルやびんはスーパーの近くでリサイクルでき、リサイクルすると、1SEK分の割引券をもらえる。また市街地にもH&Mをはじめとした様々な店や安値で売っている八百屋がある。

交通機関

一ヶ月間分のバスカードが支給された。リンシェーピンからノーシェーピンの方までバスや一部の電車で使える。ストックホルムやコペンハーゲンに一本で行ける電車などには使えない。アプリで席を予約できる。

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