協定校シーズンプログラム (アーヘン工科大学) 2022年7月4日~7月22日

協定校シーズンプログラム (アーヘン工科大学) 2022年7月4日~7月22日

留学時の学年:
B3
東工大での所属:
工学院システム制御系
留学先国:
ドイツ連邦共和国
留学先大学:
アーヘン工科大学
留学期間:
2022年7月4日~7月22日
プログラム名:

はじめに

私は、東工大で必修科目が開講されない3 年生の2Q の期間を利用して、協定校であるアーヘン工科大学で開催される、サマープログラムに参加した。開講されるコースのうち、Robotics, Communication Networks & Innovation というテーマを選択し、ロボティクス、情報理論、イノベーションについての授業を受講したり、国際交流のレクリエーションを行ったりした。本レポートでは、プログラムの目的・内容や、今回の経験を通して得られたものについて報告する。

参加した目的

私が本プログラムに参加した理由は大きく三点ある。
一点目は、語学力を向上させることである。日本で生活していると、必要に駆られて英語でコミュニケーションをとる機会はほとんどない。そのため、これからの社会で活躍するために、特に英会話の能力が足りていないと感じていた。そこで、日本語の通じない環境に身を置くことで、コミュニケーション能力を向上させるとともに、今後の外国語学習の意欲を高めたいと考えた。
二点目は、自分の専門分野への理解をより深めることである。コロナ禍によって、受ける機会が少なくなってしまった実験科目や実習科目によって得られる経験を補うために、今回のプログラムで行われる実習はよい機会であると考えた。
三点目は、海外経験を積み、異文化での生活に慣れることである。私は、将来的により長期の留学をしたいと思っている。しかし、今までに1 週間程度の海外旅行をした経験しかないため、1 か月程度自立して海外生活を経験することで、長期留学への不安や疑問を少しでも解消しておきたいと考えた。

プログラムの概要

”Robotics, Communication Networks & Innovation”はアーヘン工科大学で開催されるいくつかのショートプログラムのうちのひとつで、3 週間の間、実習や企業・研究室訪問、講義の受講などを通して選択したテーマへの理解を深めるものである。また、このプログラムを主催するRWTH International Achademy では、留学生向けに英語でのマスタープログラムを用意していて、このマスタープログラムに関する説明会や宣伝なども実施された。プログラムの参加者は世界中の国々から集まっていて、私が参加したプログラムには、香港、インドネシア、インド、レバノン、イギリス、バルバドス、トリニダード・トバゴから、計12 人の学生が参加していた。

アーヘンの街

アーヘンはドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州の都市で、オランダ、ベルギーとの三国境の近くに位置する。古代ローマの時代から温泉地として知られる歴史ある都市で、町の中心にあるアーヘン大聖堂は最初に登録された世界遺産のひとつである。アーヘンの人口の約20%は学生で、160 か国以上から集まった25 万人の人々が暮らす国際色豊かな町である。

アーヘン工科大学

アーヘン工科大学(RWTH Aachen University) では、47,000 人以上の学生が学んでいて、そのうち13,000人以上が留学生で、138の国や地域から学びに訪れている。QS の世界大学ランキング2022 年版では、Mechanical Engineering の分野で世界19 位、ドイツ国内ではMechanical Engineering、Material Science、Mineral & Mining Engineering の3 つの分野で1 位である、ドイツ国内屈指の名門大学である。

日程

私が参加したRobotics, Communication Networks & Innovation は、7 月4 日(月) から7 月22 日(金)までの、3週間にわたって実施された。平日に授業への参加や企業見学、レクリエーションなどのイベントが開催され、土日は観光や自習などを行うための自由時間だった。週末にはプログラムのメンバーの一部がベルリンやブリュッセル、アムステルダムといったヨーロッパの大都市に旅行に行ったりしていた。プログラムの3週間の期間のほとんどの時間をプログラムの受講者と過ごすため、相手の国の文化について話したり、将来の目標について話したりしてとても親密な関係を築くことができた。

プログラムの内容

1 週目は初日にオリエンテーションとアーヘンの街でシティラリーを行い、その後は主にRobo Scope というところでグループワークを行った。その合間には、Zoom を利用したBosch 社への企業訪問や、三国境へのハイキングなども行った。
2 週目は、主にFUNUC 社のRoboGuide というソフトウェアを使ってグループワークを行った。グループで自由に作業できる時間が多かったため、2 週目は最もスケジュールに余裕のある週だった。また、広報用のインタビュー撮影、オランダ最古の都市マーストリヒトへの日帰り旅行、カラオケバーでのKaraoke Nightなど、レクリエーションも充実していた。
3 週目は2 週目までとは異なり、講義を中心とした日程が組まれていた。月曜日にはメカトロニックシステムを題材に、エンジニアリングデザインについて学び、火曜日から木曜日にかけて情報理論と情報通信技術の基礎について講義を受けた。金曜日に最終試験とお別れ会を行って3 週間のプログラムは終了した。

【Case Study: Robo Scope】
Robo Scope でのケーススタディでは、教育用のロボットであるEV3 を使って、2,3 人一組のチームを組みいくつかのタスクをこなして、最終的には成果を競う競技会を行い、戦略についてのプレゼンテーションを行った。。競技会は、超音波センサー、カラーセンサー、ジャイロセンサー、ノイズセンサーを使ってロボットが障害物を避けながら目的地へ向かったり、スピーカーから鳴る音の回数に応じて向かう目的地の場所を選ぶといったものだった。ロボットへの命令のプログラミングには、Java を用いた。協議会本番ではあまりいい成績を残すことはできなかったが、チームのメンバーと協力してプロジェクトの作業をしたり、プレゼンテーションをしたりするのは、とてもいい経験になった。また、競技会のプレゼンテーションは、プログラムを通じて初めての機会で、他の学生が自信をもって発表している姿を見て、プレゼン力のレベルの違いに驚き、今後うまくやっていけるのか不安になった。

【Robotics & RoboGuide Project】
RoboGuide プロジェクトでは、FANUC 社のソフトウェアを使って、ロボットアームでオブジェクトをつかんで移動させるシミュレーションを行った。2,3 人のグループで協力して、6 軸のロボットアームを使って、4 つのオブジェクトをある地点から別の地点に移動させるシミュレーションをプログラミングしてその出来栄えを評価するというものだった。限られた時間でのプログラムのため、実際のロボットを動かすようになるには時間が足りず、かといってシミュレーションだけでは時間を持てあましてしまい、少し消化不良な印象だった。ただ、空いた自由時間に班のメンバーと雑談をしたり、遊びに出かけたりすることで、コミュニケーション力が向上したように感じる。

【Fundamentals of Mechatronic and Systems Engineering】
このパートでは、メカトロニックシステムを題材としてエンジニアリングデザインの方法論について学んだ。卓上掃除機について、主な機能は何なのか、物質・エネルギー・信号のインプット、アウトプットはどのようなものかなど、一つの製品の機能や構造についてグループディスカッションを通して分析した。本プログラムのテーマのひとつである、イノベーションを生み出すための重要なステップについて理解を深めることができた。

【Information Theory and Systematic Design of Communication Systems】
このパートでは、シャノンによる情報理論の基礎、エントロピーの概念や相互情報量についての授業から始まり、コーディングやデコーディングについて学んだり、数理計画法、最適化問題の基礎について学んだりした。東工大での一般的な講義とは異なり、授業中には自発的、積極的に発言することが求められ、途中で行われる練習問題では、皆の前で自分の解答のプレゼンテーションを行ったりした。はじめは自分の解答を前に出て発表することに抵抗があったが、先生から、積極的な授業態度が奨学金や成績の評価に影響することもあると諭されて、勇気を出して何度も自分の答案を発表することができた。その結果、他の学生に一目置かれて、授業の後や試験の前夜などに授業の内容について質問されることが多くあった。プレゼンテーションなどの能力では敵わずとも、問題解決力や思考力では海外の学生にも負けていないと、自信につながった。

【企業訪問・研究室訪問】
企業訪問では、欧州を代表するテクノロジー企業であるBosch 社で働く技術者が、Zoom を通して彼らの事業や採用の機会について説明し、後半にはエクササイズとして、いくつかのテーマについてプレゼンテーションを行った。研究室訪問は機関によって大きく異なり、実際のロボットを触りながら研究の説明をするところや、様々なラボをめぐってそれぞれのプロジェクトについて説明するところ、講義のような形式でスライドを使って説明するところなど、多種多様であった。

授業以外のイベント

【City Rally】
プログラム1 日目の午後に、RWTH に所属するメンターを含む4~5 人の班に分かれてアーヘンの街を探検するCity Rally を行った。日本の大学のように大学の施設が一か所に集中しているのではなく、街中いたるところに大学の施設があり、まさに学生街という雰囲気で、新鮮だった。班についてくれたメンターの学生は、RWTH で日本語を勉強していたらしく、日本についての会話を楽しむことができた。

【Border Triangle】
1 週目の金曜日には、大学からほど近いところにある三国境の地点までハイキングツアーを行った。ここで話したメンターの学生も、日本語を勉強しており、日本語の意外な人気の高さに驚いた。

【Maastricht】
2 週目の水曜日には、バスを使ってオランダ最古の街、マーストリヒトへ日帰り旅行をした。

【Karaoke Night】
2 週目の金曜日の夜は、他のプログラムの学生と、街にあるカラオケバーでお酒を飲んだり、食事をとったりした。日本のカラオケボックスとは違い、かなり多くの客がいるカラオケバーで、一部の学生はステージに上がって歌っていた。大勢の不特定多数の人の前で歌うのは、どれだけ気分が良くても自分にはとてもできないと感じた。

【BBQ】
3 週目の火曜日にも、他のプログラムの学生と一緒にBBQ をするというイベントがあった。ただ、この日はヨーロッパが熱波に見舞われた日で、アーヘンでも最高気温が38 度まで上がったため、屋外で食べる形式で開催された。

身についた能力

コースを通してプレゼンテーションの機会が何回かあったが、その多くが1 時間以下の短い時間で準備するものだった。日本の授業ではこのような簡単なプレゼンテーションをする機会は少ないため、はじめはうまく話すことができなかったが、プログラムの後半では最初と比べて自信をもって自分の考えを発表できるようになったと感じた。

将来への展望

本プログラムを通して、当初考えていた目標や目的を達成できただけではなく、それ以上に多く得るものがあった。語学力については、自分の勉強量が足りていないことを実感したが、間違いを恐れずに自分の言いたいことを発言する度胸がついたと感じる。専門分野への理解については、Robotics の部分については、東工大の授業と重なる部分も多々あったが、よい復習の機会になった。情報理論の基礎の部分は、今まで学んでこ
なかった分野で、新しい知識を得ることができたと感じる。最後に、1 か月近くの海外生活を経験したことで、より長期間の留学をやり遂げる自信がついた。

  • Border Triangle

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  • EV3 ロボット: Robo Scope

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  • RoboGuide

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