協定校シーズンプログラム (アーヘン工科大学) アーヘン工科大学 2017年8月

協定校シーズンプログラム (アーヘン工科大学) アーヘン工科大学 2017年8月

留学時の学年:
学士課程1年
東工大での所属:
生命理工学院
留学先国:
ドイツ連邦共和国
留学先大学:
アーヘン工科大学
留学期間:
2017年8月
プログラム名:

RWTHAachen Universityへ行って8月14日~9月2日

私は今年の夏アーヘンという町のAachen Universityへ留学しました。留学を終えて、改めて有意義な夏を過ごせたことをうれしく思います。

プログラムの概要

今回私が参加したプログラムはRWTH AachenUniversityの‘‘German Engineering,Language and Culture‘‘Summer School というものでした。元々、慶応大学の理工学部でドイツ語を学んでいる生徒向けに行われていたもののようで、今年から他大生も受け入れるようになったそうなのですが、初の試みということもあり参加メンバー12人中10人が慶応生、後の2人が東工大生という構成になっておりました。

プログラムは8月14日月曜日~9月1日金曜日の三週間にかけて行われました。平日は基本的に、午前はドイツ語やドイツの文化についてドイツ語で学び、午後は物理、化学、生物等に関するEngineeringについて英語で学びました。また、Thyssen Kruppというドイツの製鉄会社の工場を見学したり、Aachen Universityの大学院で研究をしている留学生の話を聞く会もありました。

AachenUniversityについて

Aachen Universityはドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州のアーヘンにある大学です。

アーヘンはベルギーとオランダの国境に面した都市でアーヘン中央駅から7km程の所に三カ国境界があります。近くには西にマーストリヒト、東にケルンがあり、ボンやデュッセルドルフも近く利便性の高い都市となっております。ア-ヘンにはアーヘン大聖堂があり、これは「ヨーロッパの父」と言われているカール大帝が埋葬されていることで有名になっています。1978年にはドイツの最初の世界遺産として選ばれています。

Aachen Universityはエクセレンス・イニシアティブというドイツ連邦政府と諸州が共同で行っている、9つの大学の最高レベルの研究を推進し支援するプログラムに選ばれており、優秀な大学であることがうかがえます。1870年に設立され歴史が長く、2015/16の冬学期の時点で44,517人の学生がおり、そのうち128か国から8556人の留学生を受け入れています(Aachen University 公式ホームページより)。東京工業大学の学生数が2016年の時点で9990人(東京工業大学公式ホームページより)であることから規模がかなり大きいといえます。

今回のプログラムに行く前の目的

短期留学に今回行こうと思った理由は主に3つあります。1つ目は英語で会話をする能力を上げたいと思ったからです。日本人と日本語で仕事をし続けるということはあまり現実的でないし、海外の人とカタコトではなく余裕をもって会話できることは将来どんな仕事をすることになったとしても有利だと思ったからです。高校生の頃に海外派遣に参加したのですが相手が日本語を学んでいたこともあり、そこまで英語を話せるようにならなかったこともきっかけとなりました。2つ目は今後長期的に留学したいと思っていたことがあります。日本は18歳までの教育は世界でもトップクラスだが大学を卒業するころには他の国々に抜かされてしまうという話をよく聞きます。日本の大学生にはあまりない雰囲気を長期的に感じることで自分自身の成長に活かしたいということが目的です。また、将来のことについての考えは日本では偏りがちに思える(大方が『どこかの会社で働ければそれでいい』というように考えているように思うし、意見があってもそれを言う雰囲気はないように感じる。)ので海外の人の考えも聞いてみたいからです。今回の短期留学では長期留学をするにあたって日本でやれることを考えたいという目的がありました。3つ目は早めに短期留学をすることが今後の大学生活にいい影響を与えるのではないかと思ったからです。大学に入学して2か月ほど経って受験していたころと比べかなり気の抜けた生活をしていて頑張っていたころの感覚の残っているうちに行動しないといけないと思い、行くことにしました。

次に、今回のプログラムに応募した理由についてです。1つは単にドイツという国に興味があったからです。前述したように高校生の頃に海外派遣に行ったのですが、その国がドイツでした。英語では話せなかったのですが代わりに日本語でドイツのことについて聞き、日本と違うこと、似ていることについて考えるきっかけとなりました。例えば、高校での授業スタイルについて、日本では教師が教えたことを宿題として持ち帰り覚えることが基本的な形となっているのに対して、ドイツでは先生の出す質問について討論し、意見を通すことが基本の形となっているという違いがあります。意見を主張することが重んじられるため、デモをするために学校を休むことがあるというのは日本では考えられないことです。反対に、国民性が他の国々と比べると真面目であることや、工業系の産業が得意であることは日本と似ています。

もう一つは他の短期のプログラムと比較してこのプログラムが授業を中心としたものであるため長期留学のイメージを持つのに合っていると思ったからです。短期のものだと討論を3日くらいして残りは行った先の国の大学生との交流や観光で終わってしまうものもあり、それでは改めて海外に留学しに行く意味がないと思ったからです。

各活動の内容

まず、ドイツ語の授業についてです。前述のとおりドイツ語の授業はドイツ語で行われました。日本ではあまりないですが、ドイツではこれが一般的だそうです。ドイツ語を学ばずに行った私にとってこれはかなり厳しいものとなりました。慶応大学では1年以上ドイツ語を学んでいることがこのプログラムに行く条件となっていたのですが、東工大ではその条件がなく、留学に行く前に勉強すれば間に合うだろうと思っていました。しかし、間に合うわけもなく、ドイツ語の先生も考慮はしてくださいましたが、知らないことの多い状態での授業は大変でした。授業の内容は、最初は知っている単語を挙げていくことから始まり、例文に言葉を当てはめる、文を作る、主題を読み取るという風に徐々にレベルが上がっていきました。常に集中していないと内容が分からなくなってしまう状態だったので、普通の人が3週間で学ぶよりもずっと速い速度で勉強できたように思います。また、授業ではドイツの文化や実生活にかかわることを主に扱っていたのでドイツについて知ったことも多かったです。東西冷戦時代のことや移民に対する国民の見方についての話があったり、店での注文、勘定の流れやドイツ人の討論するときの思考についての話があったりして生活するうえでの参考になりました。

Engineeringの授業は機械、生物、材料、化学、物理、エンジン、ロボティクスについて行いました。どれも英語で行われていたため、ゆっくり話していても単語そのものが分からなかったり、一つ一つの単語はわかるのに熟語が分からないということがありました。Differencial equationは微分方程式という意味で何度も日本の授業では出ていましたし、differencial もequationもわかるのに理解できなかったのはもどかしかったです。Composite、obstacleのような文で読むときにはわかりそうな単語が耳で聞いていると思い出すのに時間がかかり、思い出している間にも話が進んでいるというのもきつかったです。生物・物理の授業では実験があったのですが、英語で聞いたことを整理して、実験の方法を考えて結果を考察するという過程は慣れないものでよい経験ができたと思いました。これ以外にもThyssen Krupp Steel Europeという製鉄会社に行ったり、Aachen Universityの留学生の会、INCASの行事に参加したりしました。

三カ国境界(ドイツ、オランダ、ベルギー)

三カ国境界(ドイツ、オランダ、ベルギー)

今回のプログラムで初めて知ったこと

大学生の様子編

今回Aachen Universityの大学生たちとかかわって、ドイツの大学生は日本の大学生と比較して自立志向が強いなと思いました。

日本では、成人するのは20歳からでお酒・たばこ以外にも様々な権利が20歳から与えられます。つい最近まで選挙権も20歳から与えられていました。大学生になれるのは早いと18歳からで卒業は22歳。この場合、大学生生活の半分が未成年ということになります。こういうこともあってかはわかりませんが、日本人の大学生はまだ大人として自立しきれていない中途半端な位置というイメージが強いです。実際、大学に行く費用はもちろん、実家で暮らし、生活費や交際費まで親に頼っている人は少なくないと思います。

一方、ドイツは18歳から成人となっており、大学に入るころには皆親から自立していくそうです。ドイツでは大学に通うのにほとんどお金がかからないように国が費用を負担していて、アルバイトや奨学金を借りて、仕事をして返すなどして、学費、寮、生活費は皆本人が負担するそうです。また、大学生になって親元で暮らすのは恥ずかしいことらしく、大学と実家が近くても家を出るそうです。このように自立志向の強いドイツの大学生の学業はどうなのかというと、やはり本人で大学に行くお金を負担しているだけあって意識が高いように思えました。留学プログラムでは、バディーとともに行動する機会が何度かあったのですが、バディーを呼ぶと、会う時の直前も勉強、あった直後も勉強という感じでした。テスト週間なのかと聞いてみると、テスト週間というものが特別あるわけではなく教科ごとにテストがまばらにあるといっていました。一年中勉強していると思うと日本の大学生も負けてはいられないと思いました。

理工系編

Aachen Universityで理工系の授業を受けて驚いたのが、実験の設定の自由度の高さです。日本では授業で行う実験といえば、実験の方法が書かれたプリントや教科書が渡され、その通りに実験をして、出るはずの結果とどのくらい近いか、差が出たのはなぜか考察するのが一般的だと思います。ドイツではそんなことはなく、実験の方法はある程度決まっているのですが、その試料や使用するものについては自由でした。やはりここにも本人の考えを優先するという国の文化が出ているのかもしれません。

今後意識していきたいこと

今回の留学を経て多くのことを考えさせられました。その一つは周りの雰囲気に流されず、自身の成長のためにもっと時間を使いたいと思いました。私は高校の時はあまり成績のいい方ではなく、高校3年になって1日中勉強することに時間をかけて東工大に入りました。その時と比べると今はだいぶ怠けた生活を送っている気がします。せっかく成長できる時間があるのにそれを浪費していて、一方でドイツの大学生たちは一つ一つの行動に力を入れていると思うともったいないなと思いました。

次に英語力を上げたいと思いました。ドイツ人やほかの国の留学生たちが流ちょうに英語で話しているのを見て、自分もその中に混ざりたいという気持ちが高まりました。また、通じたときにそもそもの考え方が国によって違っていて、会話の進み方まで違うのを感ました。日本人同士で話しているときにはない頭の使い方をするので新鮮でした。この感覚を大切にするためにも英語には特に力を入れたいと思いました。

もう一つ思ったのが、やりたいことはできるだけ早くやるべきだと思いました。今回のプログラムで参加したメンバーには1年生から3年生までいました。3年生の方が1年生よりもできることが多いようには感じました。しかし、プログラムで海外の院に行きたいとか、長期留学したいとか、もっと勉強していきたいと思っても大学にいられる期間は短くなってしまいます。できるだけやりたいことは早くやることが今後を変えやすくなるのではないかと思いました。

この体験談の留学・国際経験プログラム情報

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