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東工大版クリスマスレクチャー

東工大版クリスマスレクチャー

「クリスマスレクチャー」は、英国で長い歴史を持つ伝統的な科学実験講義です。"電磁気学の父" として知られるマイケル・ファラデーが1825年のクリスマス休暇に子供たちへのプレゼントとして始めてから今日まで、英国王立研究所(Royal Institution、以下Ri)で毎年行なわれています。日本でも1990年から毎年夏に開催されており、第25回目となる日本公演が初めて東京工業大学で開催されました。

英国王立研究所でクリスマスレクチャーを行うマイケル・ファラデー

英国王立研究所でクリスマスレクチャーを行うマイケル・ファラデー

夢を膨らませる実験講義

クリスマスレクチャーが東工大にやってきた背景には、2016年4月に本格始動する教育システムの抜本的な改革があります。その目玉のひとつに「科学技術の最前線」を始めとする実験講義の実施があり、そのモデルとなっているのがクリスマスレクチャーです。改革の目標は、科学技術の力でグローバル社会に寄与できる人材を育成することです。実験講義をとおして、夢と希望を持って本学に入学する学生に、科学技術の持つおもしろさ、奥深さ、そして、「社会を変えられる力」を再認識してもらい、将来の自分のビジョンを描いて勉強や研究に臨んでもらうことが狙いです。

英国王立研究所レクチャーシアター(協力:ブリティッシュ・カウンシル)

英国王立研究所レクチャーシアター (提供:ブリティッシュ・カウンシル)

効果を最大限に引き出す環境設備

実験講義では、本学を含む国内外から最先端の研究者やノーベル賞級の科学者を講師に招いて開講される予定です。その効果を最大限に引き出すための環境として、大岡山キャンパスの講義室を改修し、「東工大レクチャーシアター」(TLT)が整備されました。2015年春にオープンしたこの施設は、実演や実験が行われる演台を広くとり、それを取り囲むように急勾配の階段席を設置する等、空間、演台、座席、オペレーター室、照明演出に至るまで、魅せられる講義、臨場感のある演出が実現できるよう様々な工夫が施されています。

東工大レクチャーシアター外観東工大レクチャーシアター外観

東工大レクチャーシアター内観(公演の様子)東工大レクチャーシアター内観(公演の様子)

一体感が共有できた公演

今回の公演テーマは、本場Riで2014年に開催されたテーマのひとつ、「Sparks will fly: how to hack your home(ひらめきが飛ぶ:どのようにしてあなたの家に浸透したか)」を改題した「『すごい』を伝えよう!」です。日本風、東工大風にアレンジし、歴史的装置・技術、原理的実験、先進技術等を交えながら、離れた場所にいる人との「五感」の共有を目指しました。講師はRiと同じ、マンチェスター大学のダニエル・ジョージ教授です。

ジョージ教授はまず、グラハム・ベルが用いた装置を再現し、「音声(聴覚)」の伝達に成功しました。次に、バケツやお手玉、懐中電灯等を使って、映像記録センサーや光ファイバー通信の原理をわかりやすく説明し、「視覚」を伝達。続いて、薄い板状に立ち昇る霧でできたスクリーンに投影された本学修士学生のマイケルさんとロボットハンド※1で握手し、離れた場所にいても「触覚」が伝達できることを示します。残るは味覚と聴覚です。英国で開発された電気ロリポップ※2で「味覚」を、そしてスマートフォンにつなげると特定の「匂い」を噴射することができる装置で「嗅覚」をマイケルさんと共有し、五感すべての伝達に成功しました。

1時間15分程度の間、参加者をどんどん巻き込みながら、次から次へと実験、実演が繰り広げられ、会場全体が一体となって盛り上がり、楽しく魅力ある公演となりました。

※1
離れた場所にいる人の手の動きに同期して動く手型の装置
※2
舌で触ると特定の味覚が再現される装置
公演の様子1
公演の様子2

公演の様子

参加型講義の効果を実感

公演が終わると、大勢の子供たちがステージ上のジョージ教授やアシスタントの学生たちを取り囲み質問をしたり、実演・実験装置に触れて自分で体験・操作したり、次の公演や片付けに支障が出るほどの賑わいを見せました。参加者を対象に行われたアンケートでも、講義内容の評価が大変高く、「講師との距離が近く、技術のすごさや面白さがより共感できました」といったコメントがあるなど、参加型講義の効果が実感できた様子が伝わってきました。

また、今回の公演では、20名を超す本学学生がスタッフに加わり、予備実験から当日の公演まで精力的に活躍しました。学生たちはリハーサルを重ねるうちに驚くほど成長していき、学生自身が成長するまたとない機会にもなりました。

公演終了後も続く賑わいの様子

公演終了後も続く賑わいの様子

科学技術で未来につなぐ

2回の現地視察等準備を重ね、実現にこぎつけた東工大初のクリスマスレクチャー。公演の最後に、ジョージ教授は参加者に、「五感の伝達といっても、まだまだ不完全な部分が多いの。これから先、それを完成させていくのはあなた達の仕事。身近にあるものを使って、新しい実験をしたり、新しい機能を考えたりすることに挑戦してほしい。そのために、今からいろんなスキルを身につけてください」とエールを送りました。東工大では、今後もクリスマスレクチャーの開催を予定しています。ぜひ東工大で「すごい」を感じて、夢を膨らませてください。

公演に参加した子供たち

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2015年12月掲載

お問い合わせ先

東京工業大学 総務部 広報課

Email pr@jim.titech.ac.jp