Tokyo Tech-MIT Student Exchange Program 2023年8月~2023年12月

留学時の学年:
学士4年
東工大での所属:
環境・社会理工学院 融合理工学系
留学先国:
アメリカ
留学先大学:
マサチューセッツ工科大学
留学期間:
2023年8月27日~2023年12月27日
プログラム名:

留学先大学の概略

写真 1 Great Dome & Killian Court
写真 1 Great Dome & Killian Court


MIT は、アメリカ東海岸のマサチューセッツ州ケンブリッジにある私立大学である。周辺には自転車で 10 分の距離にハーバード大学、橋を渡ればボストン大学やノースイースタン大学などがあり、地域一帯がアカデミックな雰囲気に包まれている。

留学前の準備

【学業について】
学士特定課題研究は発表も含め、出国前にすべて終わらせる計画で準備を進めていた。配属時から研究室の指導教員や先輩にその旨相談し、早めの行動を心がけた。大学院入試は A 日程で通り、学士課程卒業と大学院進学を確定させた状態で留学に臨んだ。研究について一連の経験を積んでいることは MIT でもアピールポイントになり、作成した報告書や発表資料は自分の研究内容の説明に有用であった。
【留学情報の入手】
過去の交換留学生の方々にお話を伺ったり、インターネットの情報を参考にしたりした。東工大の留学支援サークル FLAP に本プログラム 2021年度派遣の方をご紹介いただき、TOEFL 対策や現地での講義の様子などについて伺った。交換留学が決定してからは 2022 年度派遣の方にも寮や現地での生活について伺った。また、工系三学院のホームページで公開されている 2019 年度派遣の方の留学体験記や、東大の OICE のウェブサイトで公開されている交換留学報告書も参考にした。予防接種については MIT MBA 日本人在校生ウェブサイトの情報を参考にした。

留学中の勉学・研究

写真 2 Plasma Science and Fusion Center (PSFC)の研究室が入る建物の外観
写真 2 Plasma Science and Fusion Center (PSFC)の研究室が入る建物の外観

写真 3 APS DPPの国際会議のバンケットの様子
写真 3 APS DPPの国際会議のバンケットの様子

【講義の履修】
MIT では履修を取り消した講義も含め、以下の講義および研究プロジェクト(UROP)を履修した。
①22.01 Introduction to Nuclear Engineering and Ionizing Radiation (12 Units)
②22.016 Seminar in Fusion and Plasma Physics (1 Units)
③22.611 Introduction to Plasma Physics I (12 Units)
④22.67 Principles of Plasma Diagnostics (12 Units)
⑤22.UR (12 Units)
<①22.01> は学部 3・4 年生対象の講義で、原子核物理の基礎的な内容から始まり、原子炉理論や X 線回折といった放射線の応用技術までを広く扱っていた。22.01 の担当教員は昨年までの Short 先生(本プログラムの MIT 側担当教員)に代わり Jossou 先生となったが、講義内容に大きな変更はないようだった。
<②22.016> は学部 1・2 年生向けの講義で、核融合やプラズマ物理についての概論的な内容である。MIT の Plasma Science and Fusion Center(PSFC)の実験装置を見学するツアーもあった。
<③22.611> は大学院生対象のプラズマ物理に関する講義である。プラズマ粒子の運動から始まり、流体モデル、プラズマ中の波動、運動論といった内容を扱っていた。
<④22.67> はプラズマ診断の原理に関する講義である。22.611 が履修前提科目に指定されており、プラズマ物理に関する理解を前提に講義が進んでいく。
<⑤22.UR> は Undergraduate Research Opportunities Program(UROP)と呼ばれる研究プロジェクトである。研究室所属の大学院生の指導を受けながら研究を手伝い、1 週間当たりに行う時間数に応じて単位または給料を受け取る(Credit/Paid UROP)。UROP は基本的に、(ⅰ)受け入れ先の研究室を見つけ、(ⅱ)締切りまでに事務局に申請し、(ⅲ)承認され次第始める、という流れで進んでいく。Paid UROP の場合は Credit よりも(ⅱ)の締切りが早いため、(ⅰ)をなるべく早く終えることが必要である。
【国際会議に参加】
留学中、この大学院生の方に誘われアメリカ物理学会プラズマ物理部門(American Physical Society Division of Plasma Physics; APS DPP)の国際学会に参加した。2023 年の APS DPP はコロラド州デンバーで 10/30 から 11/3 にわたって行われた。APS DPPには MIT(特に PSFC)から多数の教授・大学院生・学部生が参加するため、プラズマ関係の講義の多くが休講となった。発表は行わず聴講のみの参加であったが、ポスターセッションや研究発表、ランチョンやバンケットを通じて多くの研究者の方々と交流することができた。

留学中の勉学・研究以外の活動

写真 4 温かく迎え入れてくださった秀風会の方々
写真 4 温かく迎え入れてくださった秀風会の方々

写真 5 秀風会の一員として出場した第 21 回五葉会 剣道トーナメント
写真 5 秀風会の一員として出場した第 21 回五葉会 剣道トーナメント

【MIT Kendo Clubの発足】
東工大剣道部に所属していることもあり、本プログラムへの応募要件のひとつである「日本文化を広める交流活動」として、現地の剣道コミュニティでの稽古および MIT Kendo Club の発足に打ち込んだ。特に、MIT Kendo Club の活動では MIT の剣道人口を新たに 3 名増やすことができた。ボストンには秀風会と Boston Kendo Kyokai(BKK)という 2 つの剣友会があり、どちらの剣友会の方々にも温かく迎え入れていただいた。秀風会や BKK には駐在やポスドクなどで在米中の日本人も多く所属しており、ハーバード大学やボストン大学の剣道クラブの学生も多数所属している。稽古中には剣道の攻めや理合(りあい)について英語で尋ねられる場面もあった。彼らに説明する中で、剣道の動作が持つ伝統的あるいは戦略的な意味、ひいては日米の文化の違いについても改めて考えさせられた。MIT Kendo Club の発足には、現地の剣道コミュニティの先生や MIT の剣道経験者の方々、そして MIT Global Languages や MIT Japan Program の教職員・学生・交換留学生の方々にご協力いただいた。

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

写真 6 交換留学生の誕生日ディナー
写真 6 交換留学生の誕生日ディナー


MIT での生活を通して、リスニングおよびスピーキングの能力を鍛えることができた。渡米直後は集団での会話についていけず、周りの反応に合わせて笑うことしかできない自分に焦りを感じた。この状況を打開すべく日頃から積極的に話しかけるよう心がけ、部屋でもポッドキャストを聞いたり独り言を英語で唱えたりした。その結果、落ち着いた場所では複数人での会話、賑やかな場所でも 1 対 1 での会話であれば自信を持って行えるようになった。帰国直前に行われた他の交換留学生の誕生日ディナーでは積極的に会話に参加することができ、自分の成長を実感した。

留学費用

留学準備および MIT での 4 ヶ月の生活にかかったおおよその費用は以下のとおりである。奨学金は業務スーパージャパンドリーム財団から支援を受けることができた。海外送金には Wise というサービスを利用した。
【留学準備】予防接種 6 万円、ビザ取得 6 万円、海外保険 6 万円、航空券(往復) 32 万円  合計 50 万円
【奨学金】105 万円
【現地生活】寮(Baker House) $7060、ミールプラン(125 食) $2110、MIT 医療保険 $1350、他 
合計 $14970

留学先での住居

MIT の学部生用の寮である Baker House に住んだ。Baker の居住スペースはラウンジを境に東西に分かれており、私が住んでいた 1 階西側(1W)は全室一人部屋で、東側(1E)は全室複数人部屋だった。ボートやサッカー、ラクロスといった Varsity に所属している学生が多いことや、MIT の寮で唯一各部屋に洗面台があることが特徴である。キャンパスや Bluebikes のステーションといった周辺各所への距離も程よい。Baker に共用キッチンはなく、入居者はミールプランの購入が必須である。ミールプランでは入居している寮に限らず、どの寮のダイニングでも自由に食事することができる。ダイニング付きの寮の 1 階に住んでいたこともあり、虫やネズミ対策には注意を払った。MIT 周辺は電車やバスといった公共交通機関が発達している。Blubikes という自転車シェアサービスも人気で、MIT の学生・教職員であれば通常よりも安い金額で年間メンバーシップを購入することができる。Trader Joe’s に買い物に行く際は常に利用していた。

留学先での語学状況

留学中の講義・研究・生活では主に英語を使用した。TOEFL iBT のスコア要件(100点)を突破していたものの、最初の 2 か月は苦労した。TOEFL と実生活との間の大きな違いは、声の聞き取りやすさと文字の読み取りやすさである。特に、MIT での講義全体を通して、板書の文字(筆記体)の読み取りに苦しんだ。ある程度綺麗な筆記体であれば読めるが、黒板・チョーク・走り書きの三拍子が揃うと、他の学生と同じ速さで理解することは困難であった。TOEFL はあくまでも理想的な環境を想定したものであって実際の場面に即したものではない。馴染みのないアクセントの聞き取りや癖のある筆記体の読み取りなど、様々な状況を想定して対策しておくことをおすすめする。

単位認定(互換)、在学期間

履修した講義の単位認定および在学期間の延長は行わない予定である。また、報告書と報告会をもって、グローバル理工人育成コースの修了要件のひとつである「LAW.X304 グローバル理工人海外研修 1D」の単位が付与された。

就職活動

ボストンキャリアフォーラム(ボスキャリ)に参加した。ボスキャリはバイリンガルの学生を対象とした就職イベントで、今回は 11/17 から 11/19 の 3 日間にわたって行われた。ボスキャリでは、メーカー以外にも外資系企業や総合商社といった幅広い企業の説明会に参加した。ウォークインと呼ばれる、履歴書を実際に企業のブースに持ち込んで選考を受ける応募方式にも挑戦した。企業の理念や社会貢献への熱い思いを伺うことができ、進路選択の視野が広がった。

留学先で困ったこと

現地の Bank of America で開設した銀行口座への送金が上手くいかず困った。口座開設後にデビットカードが寮に届かず、送金手続きに必要な住所確認書類を渡米後すぐに入手できなかった。そのため、9 月分の明細書が送られてくるまでは現金や日本のクレジットカードで支払わなければならなかった。

留学を希望する後輩へアドバイス

この留学を通し、MIT やハーバードの学生と文字どおり肩を並べて勉強・研究に打ち込み、世界トップレベルで優秀な彼らをより現実の相手としてとらえられるようになった。また、当初は夢物語だった MIT Kendo Club の発足を実現できたことは、我ながら驚くべき結果である。昨年度派遣の方の体験談にもあるように、この交換留学は自らの殻を破る絶好の機会だ。限界の先にある新たな自分を発見する道のりを、次に続く学生たちにも歩んでいってほしい。

この体験談の留学・国際経験プログラム情報

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