IAESTE/理工系学生のための国際インターンシップ ドイツ航空宇宙センター 航空宇宙医学研究所 2021年9月1日~2021年10月31日

IAESTE/理工系学生のための国際インターンシップ ドイツ航空宇宙センター 航空宇宙医学研究所 2021年9月1日~2021年10月31日

留学時の学年:
修士課程1年
東工大での所属:
生命理工学院 生命理工学系
留学先国:
ドイツ
留学先大学:
ドイツ航空宇宙センター
留学期間:
2021年9月1日~2021年10月31日
プログラム名:

インターンシップの概要

2021年9月1日から2021年10月31日までの期間、ドイツ航空宇宙センター(DLR)の航空宇宙医学研究所 放射線生物学部門にて、2ヶ月間の研修を行った。今回の研修は、新型コロナウイルスのパンデミックが収束しきっていない時期での実施だった。そのため、参加が決定するタイミングも例年よりもかなり遅く、また渡航に関する手続きなども煩雑であった。特に、現地での滞在場所がなかなか決まらず、本来は寮で生活する予定がアパートに一人暮らしとなってしまった。しかしいくつかこうしたトラブルはあったものの、結果として非常に充実した、学びの多い2ヶ月間を過ごすことができた。
研修では、実験の詳細について明かすことはできないが、被験者を何人も抱える大きなプロジェクトに携わることができた。実験室で完結する研究とは異なり、実際に被験者から得たサンプルを扱う実験は新鮮で、興味深いものであった。DLRで行った研修は日本の大学院で行っている内容とは少し異なる分野の研究だったため、研修開始当初はついていくのに必死だった。日本では英語の日常会話ばかりを練習していたが、専門用語について英語でもう少し学んでおけばよかったと後悔している。しかしDLRの人達は本当に皆優しい人ばかりで、どんな小さな質問にも真摯に取り合ってくれ、おかげで研究に対する理解度の向上も早かった。
また、研修では、研究から得た学術的な学びのみならず、人との交流や現地で生活してみたことで得られた学びも沢山ある。周りの人から多くの刺激をもらうことができ、今後の研究に対するモチベーションの向上にも繋がった。

研修について

私が配属された研究室は、放射線生物学の研究をしている研究室であった。同じ生命科学の研究分野ではあるが、日本の大学院での専門分野とは異なる馴染みのない学問であった。簡単に述べると、特定の環境における細胞の放射線損傷と修復を分析する学問である。実際に研修では、あるプロジェクトに参加している被験者から得た血液細胞にX線を照射することにより、DNAの損傷及び修復レベルを評価するという実験を行っていた。
具体的な実験の流れは、被験者から血液を採取→遠心分離により血液細胞(PBMC)を取得→X線照射→免疫染色→フローサイトメトリー及び顕微鏡観察、というものであった。
DLRは非常に規模の大きい研究期間で、ヨーロッパにとどまらず様々な国から研究者が集まり研究をしていた。雇用されている研究者の他に、修士号や博士号取得のための研究をしている学生、インターンシップをしている学生もいた。同じ研究棟にも他分野の研究グループがいて、相互交流が非常に活発であった。DLRの研究者たちは多くが英語ネイティブでないものの、当たり前のように日々の会話やディスカッションは英語で行われていた。英語はもちろん、何カ国語も操る人がほとんどであった。

研修先の研究棟

研修先の研究棟

ケルンについて

私の研修先であるケルンは、ドイツで4番目に人口の多い都市だ。市街地はライン川の両側にまたがり、長い歴史を持つ、古く美しい街であった。ケルン中央駅を出るとすぐ、世界遺産のケルン大聖堂が目に飛び込む。初めてみたときはその大きさ、荘厳さに思わず息を飲んだ。私の滞在場所はケルン中央駅から2駅の場所にあったため、研修期間で何度も大聖堂を訪れることができた。ケルンは歴史の長い古い街であるが、レストランや各種ショップは充実していて、生活に困ることは全くなかった。しかし、ヨーロッパではよくあるようだが、日曜日はほとんどの店(スーパーやドラッグストア、レストランまで)が閉店し、土曜日の内に食糧等必要物資を調達しなければならなかった。

ケルンの夜景

ケルンの夜景

平日の過ごし方

本来は寮で生活するはずが、参加決定が遅れた影響でアパートに一人暮らしとなってしまった。入国直後に部屋のリフォームが完了しておらず部屋に入れなかったり、Wi-Fiが1ヶ月部屋に設置されなかったりといくつかトラブルがあった。慣れない海外での一人暮らしで、こうしたトラブルに対応することはかなり大変なことであった。しかし1ヶ月経った頃にはトラブルも解消され、後半の1ヶ月は落ち着いた生活を送ることができた。

◆ 07:00 起床。

◆ 08:00 出勤。
電車とバスを使った。ストライキや建設関係の問題?で電車がキャンセルさ れることもしばしば。
1時間半プラットフォームで電車を待った日もあった。

◆ 09:00 勤務開始。

◆ 12:00 昼食。DLRの構内に食堂があり、同じフロアの研究者たちと昼食を取る日も。

◆ 16:00 勤務終了。
終了時間はまちまちで、実験が長引くことあれば早くに終了することもあった。

◆ 17:00 帰宅。帰宅後は買い物やお出かけ、作業の時間に当てた。

◆ 23:00 就寝

勤務後は、DLRの人とごはんやお出かけをしに行ったり、現地のIAESTE委員会が企画してくれたイベントに参加することもあった。
食べ物に関しては、じゃがいもとビール・ソーセージ・パンがとにかく多い印象だった。食べ物は安く、食堂でのランチは3 €ほど、スーパーに売っている乳製品・パン・肉類などほとんどが日本よりも安く買えたのが嬉しかった。

休日の過ごし方

休日は積極的に外出するようにした。初めの週末にはIAESTE Bonn委員会が企画してくれたイベントに参加し、ドイツでIAESTE研修をしている他の研究生たちと交流をした。研修生はヨーロッパのみならず世界各国から集まっており、一日を通して様々な話をして刺激をもらうことができた。10月の週末にはIAESTE Köln委員会がケルンでイベントを開催してくれた。ライン川のクルーズをしたり、ドイツ料理を堪能したりと素敵な時間を過ごすことができた。

現地のIAESTE委員会が開催してくれたイベントの様子

現地のIAESTE委員会が開催してくれたイベントの様子

残念だったことは、パンデミックの影響により例年より週末のIAESTEイベントが少なかったことだ。しかし、その分自分で外出や旅行の予定を立てることで、毎週末充実した時間を過ごすことができた。研修期間では、ドイツの都市以外にもフランス、ベルギー、オランダに訪れることができた。ケルンは隣国へのアクセスが非常に良く、パリへは3時間半、ブリュッセルへは2時間、アムステルダムへは4時間などと、日本の国内旅行をする感覚で様々な国に移動することができた。10月には、同じ大学から別のプログラムでヨーロッパに留学に来ていた友人と予定を立ててパリに旅行に行った。

Paris, Brussels, Amsterdamの様子

Paris, Brussels, Amsterdamの様子

言語について

ドイツ語は全く喋れなかったが、ヨーロッパ圏の人々は英語が達者ということもあり、生活の中でのやりとりは全て英語で十分だった。しかし、日常会話は差し支えなかったものの、研修の中ではやはり英語に苦労した。伝えたいことの半分も伝えきれず、相手の発言も7,8割程度しか理解できない状況に、焦りと悔しさを感じた。意思疎通がスムーズにできないということは想像以上にストレスがあり、そして同時に相手に対して申し訳なさを感じるものであった。しかし、慣れというものはあるもので、研修終盤には意思疎通もかなりスムーズになっていた。研修を通して、正しい文法や発音というものが重要なのではなく、コミュニケーションにおいて一番大切なことは、いかに相手に伝える意志があるのかだということを学んだ。

最後に

今回の研修を通して、沢山の経験をし、沢山の学びを得ることができた。もちろん、楽しい経験のみならず、苦労したことも数えきれない。しかしこれら全て含めて本当に貴重な経験をすることができ、充実した2ヶ月間を過ごすことができた。

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