IAESTE/理工系学生のための国際インターンシップ ENERGOPROJEKT Hidroinzenjering 2022年7月4日~2022年8月26日

IAESTE/理工系学生のための国際インターンシップ ENERGOPROJEKT Hidroinzenjering 2022年7月4日~2022年8月26日

留学時の学年:
学士課程3年生
東工大での所属:
環境・社会理工学院 土木・環境工学系
留学先国:
セルビア共和国
留学先大学:
ENERGOPROJEKT Hidroinzenjering
留学期間:
2022年7月4日~2022年8月26日
プログラム名:

インターンシップの概要

私はENERGOPROJEKT Hidroinzenjeringという企業でインターンシップを行った。セルビアの首都ベオグラードに本社を構え、ダムや上下水道などの設計、河川の水質調査などを行っている、創立70年と歴史の長い企業である。私はダムの設計を行っている部署のFilipという社員さんの下に付かせてもらうことになり、8週間の研修の中でいくつかのプロジェクトを担当した。

インターシップの内容

1~2週目

初めの週は、ドナウ川の水質調査の報告書を読んで、生態系や環境問題について学んだ。ドナウ川はドイツ南部の森を水源とし、10か国以上を通って黒海にそそぐ国際河川であり、セルビアにとって非常に重要な河川である。

2週目は、セルビア国内の山間部に建設される水力発電所のための地下トンネルにおけるエネルギー損失の計算を行った。公式を参照して損失水頭を計算する過程は、大学の実験で行ったものと全く同じであり、自分が学んだことが実際の業務でも使われていることが分かったため、今後の勉強にも熱意をもって取り組める起爆剤となった。また、トンネルの直径を変化させたときにエネルギー損失がどのように変化するかを計算し、最適な大きさの検討を行った。

3-4週目

3週目は、イラクに建設が予定されているダムに設置される魚道の形状を検討するため、プランの読み込みと、魚道の形状についてのリサーチを行った。階段式、アイスボックス式などいくつかの種類がある中から、通る魚の大きさを考慮して流速の計算を行った。また、魚道が設けられている日本のダムについてのリサーチも行った。

4週目は、2週目に取り組んでいたプロジェクトの続きとして、CADを用いてトンネルの断面図の作図を行った。地盤の性質にあわせて、区間によってコンクリートの厚みや鉄筋の量、アンカーの本数などが異なるため、それぞれの種類の断面図を、4パターンの直径のサイズについて作成した。

5-6週目

5週目は、4週目に作成した断面図を用いて、工事に必要なコンクリートの体積や、鉄筋、アンカーなどの必要量の算出を行った。

6週目は、3週目に取り組んでいたイラクに建設予定のダムについて、HEC-RASという水理シミュレーションソフトを用いて、断面の形状に対して流量を導入し、水深を求めるシミュレーションを行った。

7-8週目

7週目は、ダムの施工の際に作られる仮の水路の水深を求めるための計算を行った。6週目に行ったシミュレーションにおいて、一部区間で想定される水面高さが高すぎるという結果が出ていたため、仮水路のルートを再検討し、断面図を作成した。

8週目は、2週目に行った、トンネルにおけるエネルギー損失の計算の続きを行った。垂直部を設け、ポンプを2か所にすることで、工事費を同水準に抑えたままエネルギー損失を減らすことを目指して積算を行った。また、7・8週目に行った計算の結果をまとめたテクニカルレポートの作成も行った。

平日と休日の過ごし方

研修期間中はベオグラード市内にある高校の寮に滞在した。私が研修を行っている間は現地の高校は夏休みのため、高校生はいなかったが、同時期に研修を行っているIAESTEのほかの研修生や、他の機関から同じようにインターンシップのために派遣されてきた大学生など、出入りはあるが常に60人ほどが寮にいたため、積極的に交流し様々な国の友人を作ることができた。平日の夜や週末は、寮の友人たちとともに、市内を観光したり、近郊の街に出かけるなどしてセルビアを満喫した。

セルビアの見どころ

いくつか私が気に入った場所や食べ物を紹介しようと思う。

カレメグダン要塞→
原型が作られたのは紀元前にまでさかのぼる、歴史の深い要塞。ドナウ川を見下ろす小高い丘の上に位置しており、ベオグラードの支配者が変わるたびに、改修・増築を繰り返されてきた。今では敷地内にカフェやバーなどもあり、イベントが開催されることもあるため、市民にとってなじみの深い場所となっている。

←クネズミハイロバ通り

ベオグラードの銀座。市内で一番ヨーロッパらしい町並みである。高級ブランドの販売店が立ち並ぶ。

アダ湖→
サバ川のほとりに人工的に作られた湖。セルビアは内陸国なので、市民にとって数少ないビーチの一つである。週末は混雑している。

←ブランコ橋とボートハウス

サバ川を渡る橋はいくつもあるが、その中で一番北に位置し、市街地に近いのがブランコ橋である。夜はセルビアの国旗の色にライトアップされる。旧市街側からブランコ橋を渡ったところにはボートハウスがいくつも浮かんでおり、週末の夜は音楽を楽しむために若者が集う。

シェバピ→
ケバブと混同されがちだが、似て異なるセルビアの伝統料理。指くらいのサイズに成形されたあらびき肉のソーセージが、ピタのような生地に包まれている。

←カラジョルジョ

こちらも伝統料理。シェバピよりも柔らかい肉に衣をつけて揚げた、セルビア風ロースカツとでもいえばよいだろうか。サワークリームがよく合う。

インターシップを終えて

自分は高校生の時にアメリカに1年間滞在していたので、今回セルビアに滞在している間は、治安や町の雰囲気など無意識にアメリカと比較していたように思う。また、比較する際に評価基準として、将来この国に永住したいか、この国で仕事をしたいかという観点があったこと、そしてそのような観点を持ち始めたのが今回のインターンシップで得たものとしてとても大きかったと感じている。

日本人はシャイだとよく言われるので、今回自分はその先入観をどれだけ壊せるかを試すつもりで積極的に量の友人たちと交流した。国籍も違えば、今まで過ごしてきたバックグラウンドとなる環境が全く異なる人たちにもまれる中で、日本で生まれ育ってきたことの強みと弱み、例えば安全面や、安定した経済など、を改めて実感した。彼らは生きていくため、稼ぐために英語がどうしても必要で、スキルアップのために勉強している日本人とは緊急度合いが異なっていることが印象的だった。また、アメリカにいたときにネイティブと英語で話すと、相手が私のレベルに合わせてくれているのを感じられ、深い会話はできないと感じることが多かったが、今回英語ネイティブはだれもいなかったので、外国語として英語を学んだという対等な条件で会話できたことが自分の中で自信につながった。将来海外で働くことを考えたとき、仕事の言語としての英語と、日常会話レベルで現地の言葉ができる状態を当面の目標に据えて勉強していきたいと思う。

また、国際的に活躍できる技術者として言語以外に自分に何が必要か考えたときに、専門分野の知識に加えて、わかりやすいスキル、自分の場合はCADとExcelができると明確な強みになると感じた。建設関連の企業で即戦力としてどの国に放り出されても活躍できるタフな人材を目指したい。

渡航前は、他のインターンシップ生との交流は想定しておらず、会社の社員さんたちや現地のイアエステ生との交流に限られた修行のようなインターンを想像していたため、世界中に友達ができ、自分の価値観もキャリアプランも変わってしまうような貴重な経験ができたことに感謝している。

このプログラムへの参加を検討している学生へのメッセージ

言語レベルや海外経験の有無にかかわらず、積極的に交流したいという意思があるのならぜひ参加すべき。研修先では学生なので丁寧に指導してくれるが、寮にいるほかの留学生たちは対等な立場なので、おどおどしていたら輪に加われずにおいていかれる。主張が強い人たちのなかで居場所を確立できるかどうか、私が参加した研修先が大学生が数十人同じ建物に住んでいるという少し特殊な環境であったこともあるが、人間関係でうまくできるかどうかが、同じ期間で充実した経験ができるかどうかの差だと感じた。

この体験談の留学・国際経験プログラム情報

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