IAESTE/理工系学生のための国際インターンシップ ウィーン工科大学材料科学研究所 2022年7月1日~2022年8月31日

IAESTE/理工系学生のための国際インターンシップ ウィーン工科大学材料科学研究所 2022年7月1日~2022年8月31日

留学時の学年:
修士課程2年
東工大での所属:
物質理工学院 材料系 材料コース
留学先国:
オーストリア
留学先大学:
ウイーン工科大学 材料科学研究所
留学期間:
2022年7月1日~8月31日
プログラム名:

インターンシップの内容

所属した研究室では、基盤上に薄膜を蒸着し機械的・化学的特性を向上させる研究を行っていました。工業利用の具体例としては、自動車のエンジン内に使われる金属に薄膜を蒸着し、摩擦抵抗や耐久温度を向上させることなどが挙げられます。実験の主な流れは以下の図のようになっています。研究室内で、私は主に物理蒸着をメインに担当していました。物理蒸着では、蒸着させたい金属に対してアルゴンイオンを衝突させて、蒸発させます。衝突したエネルギーにより、真空中に飛び出した金属原子は基盤上に堆積し薄膜を形成します。これらの現象は真空下、及び高温で生じるため減圧及び加熱が実験操作に含まれます。1つのサンプルを作るためには、おおよそ5時間はかかるため1日に作成することができる試料は最大でも2つです。私自身は、大学の制度上一人で実験をすることはできなかったため、リサーチアシスタントであるBalint氏の実験の手伝いを行っていました。

物理蒸着の主な流れ

物理蒸着の主な流れ

滞在期間は全体で2ヶ月となっており、初めの2週間は見学や装置の下調べを座学として行っていました。3週目からは実際に実験操作をBalint氏の監督下で行いました。また、1ヶ月が終了したあたりからBalint氏が新しいプロジェクトに参加し作成するサンプルの種類が変更になったため、新しいサンプルに関する実験方法の議論や機械の設定変更なども行うようになりました。

主な実験装置 (左:真空蒸着装置 右:ナノインデンテーション装置)

主な実験装置 (左:真空蒸着装置 右:ナノインデンテーション装置)

生活について

宿舎について

宿舎は、ウィーン西駅から徒歩1分の学生寮でした。この量はTU Wienやウィーン大学が共同で運営しており、さまざまな国から学生が入寮していました。部屋の構造は、それぞれに個室と個人用のシャワー・トイレが与えられており、キッチンは共用となっていました。共用キッチンでは、他の住人と話す機会があったため、友人になることができました。

宿舎の場所

宿舎の場所

移動について

ウィーン市内の移動手段については、地下鉄、トラム、バスを使用していました。寮から大学までは地下鉄を利用して20分程度だっため、非常に便利でした。また、市内の端から端までであっても30分程度で移動することができるため、非常にコンパクトで住みやすい街であったと言えます。地下鉄、トラム、バスは定額で一ヶ月乗り放題であったため、こちらも短期滞在者にわかりやすい仕様となっていました。

食事について

食事については基本的に昼食は外食で、夕食は自炊を行っていました。おおよその費用は、外食が15ユーロ(2000円程度)、自炊であれば7ユーロ(1000円程度)でした。ただスーパーは平日は19時で閉まり、日曜日は空いていないため注意が必要となっています。

気候について

夏季については、基本的に半袖で過ごすことが可能でした。最高気温は30度付近であり、湿度も高くないため、過ごしやすい気候といえます。日照時間も大変長く、10時ごろまで日が暮れないような日もありました。一方で、日が暮れた後は急激に気温が落ちるため、注意が必要です。

交友関係について

交友関係は主に3つのグループに大別することができます。1つは所属先の研究室のメンバーです。所属先の研究室は国際色が非常に豊かであり、世界各地の学生が所属していました。国籍関係なく、仲良くなることができたと考えています。就業後にはドナウ川で一緒に水泳をしたり、ボルダリングをしたりと充実した余暇を過ごすことができました。
2つ目はIAESTEのイベントを通じて知り合った友人です。IAESTEのイベントでは、私と同様にヨーロッパ諸国でインターンシップ生として働いている学生と知り合うことができます。彼らとはイベント後も交流を続け、一緒に日帰りの旅行に出かけることもできました。
3つ目はヨーロッパに滞在している同じ大学の生徒です。ウィーンはヨーロッパの中でも人気の観光地であるため、ヨーロッパに留学中でウィーンを滞在した友人を案内したこともありました。また、精神的に疲れた時には相談をすることなども時にはありました。

ウイーン・オーストリアについて

ウィーンには100以上の美術館や博物館が存在します。滞在中は、ヨーロッパの文化や歴史に関しても勉強していたため、美術館や博物館への訪問は大変有効な学習方法となりました。以下では特に勉強になったものをピックアップします。

シェーンブルン宮殿→
シェーンブルン宮殿は、かつて繁栄を極めたハプスブルグ家が夏の離宮として利用した建築物であり、世界遺産の一つです。大変豪華な建築物であり、ハプスブルグ家の権力の大きさを実感することができます。

← ウィーン軍事史博物館
ウィーン軍事史博物館では近代における軍事に関連した展示物を見ることができます。特に第一次世界大戦の引き金となったサラエボ事件の際にオーストリア皇太子が乗っていた車や暗殺された際に着ていた服なども展示されています。

ベルヴェデーレ宮殿 →
もともとハプスブルク家に仕えたプリンツ・オイゲンが、夏の離宮として造らせたものです。建物内には有名なクリムトの「接吻」や教科書にも乗っているナポレオンの肖像画などが飾られています。美術史博物館についで、オーストリアで2番目に大きい美術館です。

← 美術史美術館
オーストリアで最も大きい美術館であり、ヨーロッパ屈指の展示物を所有しています。特にブリューゲルの作品数は世界最大であり右図にあるバベルの塔は美術館内の目玉展示の一つとなっています。

インターンシップを終えて

学生という身分ではありますが、自分で稼いだ給料で、一人で生活したことが最も良かったことだと思っています。今回の経験を通じて、自分一人でも海外でなんとか生き抜くことができると自信を持つことができました。一方で、お金を稼ぐ手段を確保することがいかに重要であるかも実感しました。今回はIAESTEのサポートを受けた上での生活だったため、給料も潤沢に支給されましたが、自分自身の能力のみで稼ぐことが難しいことは容易に想像できます。将来的には、自分自身で稼ぎながら海外で生活してみたいと考えているため、今回の研修はそのためのスモールステップとして良い経験になりました。

当プログラムへの参加を検討している学生へのメッセージ

海外の機関や会社と雇用契約をきちんと結んで、労働するという経験は人によっては人生で1度もないかもしれません。また、留学と異なり給料をいただく以上責任も生じますが、その分充実した日々を過ごすことができます。学生という身分でありながら、海外で働いてみるという経験は滅多にないと思うので、ぜひ挑戦していてください!

この体験談の留学・国際経験プログラム情報

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