協定校シーズンプログラム (ベルリン工科大学)2022年8月

協定校シーズンプログラム (ベルリン工科大学)2022年8月

留学時の学年:
B3
東工大での所属:
工学院システム制御系
留学先国:
ドイツ
留学先大学:
ベルリン工科大学
留学期間:
2022年8月15日~26日
プログラム名:

プログラムの目的

Python for Engineerに参加。
プログラミング言語の一つであるpython の基本的な使い方を習得する。ソフトのインストールからはじめ、データ解析に欠かせないnumpy の使い方、およびplot の使い方を含め、実際のデータを図示できるようになることが最終目的である。授業内課題はパートナーと協力して取り組むため、自分で考えるだけでなくお互いの考えを伝えあったりどのように課題を解決していくかを話し合うことも求められる。最終日は試験があるため、それまでの授業をよく復習し教わった関数やソフトの使い方をきちんと覚え正しく使う能力を身につけることが必要である。以上をまとめると、プログラミングの技術を身につけること、ペアワークなどを含めたコミュニケーション能力を伸ばすことがこのプログラムの大きな目的であるといえる。また私にとってのこの留学の目的は、留とはどんなものなのかを体験し今後の進路について考えることと、苦手意識のあるプログラミングに慣れ少しでもpython を触れるようになること、の二つである。今回が初めての留学であったので、今後⾧期の研究留学をするなら海外の大学の環境を知ることが必要だと思い参加した。

日程

8/15~8/26 が授業期間である。8/25 に試験があり、それまでのいくつかの課題とこの試験で成績が決まる。8/26 はさらなる応用的なpython の使い方の講義と修了式が開催された。授業がかなり速いペースで進められたため、土日も自主的に復習する時間をとる必要があった。

プログラムの概要

Python でのデータ解析の方法の勉強及び課題、試験での定着力確認。基本的にペア、また席の近い周りの人たちと相談しながら取り組む。午前中は主にソフトの使い方を講義形式で学び、午後は自主活動という形式であった。自主活動時間は助教授が学生の質問に答えてくれ、気軽に課題や授業内容の質問をする機会が設けられていた。初週は基本的な使い方、二週目はグラフのプロットやデータ読み込みなど少し発展的な内容も扱った。週に2,3 回カルチャープログラムという美術館や市内をめぐりベルリンについて学ぶ時間があり、この時間は違うコースをとっている人と交流することができた。たくさんの人と話す良い経験となった。

活動の内容

初日の午前は顔合わせをし、違うコースの人とあいさつをし、全員でお昼を食べるなどした。ヨーロッパ系の人が多かった印象ではじめは緊張したが、目を合わせて話を聞いてくれるためリラックスしながら自己紹介や会話ができた。アジア系の人たちは日本のアニメの話が通じたため一緒に盛り上がることができた。お昼は立食パーティーのような形式だったため20 人前後の人たちと気軽に挨拶をし、お互いの出身国についてや、いつドイツに来たのかなど簡単な話をした。講義は午後から始まり、まずanaconda をインストールすることでpython を自分のパソコンで使えるよう環境構築する。その後jupyter notebook というソフトからコードを記述するページを作る。初日はこの準備をし、セルの追加、削除、編集モードの変更や文字の表示方法の変更の仕方など基本的な操作を学んだ。二日目から本格的な機能の使い方を学び始めた。文字列のタイプが数字なのか、文字なのかの判別や、それらのリストを作成しそのリストの特定の要素の取り出し方などを学んだ。同じ操作でもより短いコードで表せたり、実行時間を短くできる工夫を教わり、実際に自分で記述し確認するなど実践的に取り組む機会が多かった。初回の課題は自力でできたが、うまくペアに説明し納得させるのが難しかった。自分で書いた図を用いるなどして工夫できたため、無事ペアワークを提出することができた。ペアの人はベルリン工科大の人だったのでお昼に学食を案内してくれるなど優しく接してくれた。課題の説明途中にもいくつか質問をしてくれたため、私自身自分の説明不足に気づくことができ、お互いの理解を深める良い経験ができた。プログラムを通してずっと同じペアだったため、ペアワークを進めるごとに仲良くなり最後には冗談を言いながら笑い合えるまでになれたことがうれしかった。私はあまり質問をするのが得意ではなかったが、ペアが「分からない説明があったら何でも聞いてね」といつも言ってくれたことと、最後に教授に自分で説明しなければいけなかったため、積極的に聞く姿勢を持つことができた。日本と違いペアとの会話の中だけでなく講義中にも質問が飛び交う環境にはじめは驚いたが、ほかの人からの質問から新たに学ぶこともあり、日本で受けている普段の授業で私は聞き流していることが多いのではないかと気づいた。授業の進度が想像以上に早く、二日目にはfor,while などのループ文、if,else,elif などの条件文を学び、実際に実装する演習を行った。また三日目には関数の記述方法を学んだ。これまで習ったコードの組み合わせをしながら実際に音声データの解析を行った。下の画像はドイツにおける騒音を計測したデータを、それぞれの月の最大値を取り出しリストにしたものである。

莫大な量のデータの中からすぐに最大値、および最小値、平均や分散の値を取り出すことができるようになり、データ解析におけるはじめの一歩を踏み出せた。
一通りこれらを習得したのち、さらなる関数についての説明を受けた。map,lambda,filterなどである。これらは関数をより短く記述する際に用いられる関数であり、一つに文に条件文やループ文を記述できる点が特徴である。一方で面倒な記述を省いて省略しているため、私には逆に見にくく、結局あまり使う機会はなかった。しかしいろいろな記述方法を学ぶことができ、プログラミングに慣れ始めたら便利に感じるかもしれないと思いながら講義を受けた。プログラミングは人の数だけコードの数があるといわれているが、本当にさまざまな記述方法があるということを学ぶいい機会であった。今後はこのような関数を使い、より実行時間を短くできるような書き方ができるようになりたいと思っている。
次のペアワークは円錐を逆さにした容器から水を抜いていく場面を想定したとき、どのような速度で水面が下がっていくかを図示するというものであった。下のグラフが深さと時間の変化を表したものである。

時間がたつごとに深さdepth が0 に近づくことが分かる。これらの解析は、ダムの放出水量の計算や湖の枯渇問題の解決につながるのではないかと考える。グラフの色や軸目盛の調節の仕方も学んだ。円錐の体積や深さの計算方法および漸化式で表される残りの水量の記述方法などペアと話し合いながら取り組むことができ、妥当性のあるグラフが得られたときは大きな達成感を感じた。一週目の最終日はモジュールについての講義を受けた。コマンドでのファイルの作り方、開き方及び記述方法やmath,random といった計算ソフトとしてpython を利用する上で欠かせない関数の使い方も教わった。具体的にはπ、三角関数を使用するときや乱数を得たい時などに使うことができる。インポートしなければいけないため、先頭にそれを記述する必要がある。これらのモジュールも二週目の課題に取り掛かるうえで非常に重要であった。
二週目は主にnumpy についての講義とこれまで習ったことを確認するためのペアワーク、期末試験、python の応用例の講義によって構成された。はじめにnumpy で行列を表すarrays の使い方を学び、実際に乱数行列を作り次元やタイプの確認、特定値の抽出を実際に行った。最後のペアワークが出されたが、非常に難しくペアと協力しながら3日ほどかけても最後まで解ききれなかった。次に、Numpy arrays により行列化されたデータをmatplotlib というモジュールを用いて視覚化する方法も教わった。おそらくここがこのコースの山場であっただろう。データを見やすくするにはどのようなグラフが適しているかを考えながらプロットする練習をした。関数だけでなくグラフ表示に必要な記述も学び、書くことが増えてはじめはかなり混乱した。コードを描きながら自分が何をしたいのかわからなくなってしまったときもあったが、ペアからのアドバイスのおかげで結果うまく課題をこなすことができた。Matplotlib を用いてプロットしたものを一つ挙げよう。下の画像のようにMatplotlib のcolorbar という機能を使えば、視覚的に数値が見やすくなる。これから研究室に所属し得たデータを解析する際、これは非常に役に立ちそうだと感じた。

matplotlib というモジュールに関しては一通りデータを視覚化する方法を学ぶことができた。そして最終試験は期限が1 日中、これまでの資料とネット検索は可能だが人と協力してはいけないという条件で大問が4,5 個出された。どれも授業内にやった内容を応用すれば解ける問題であったが、少し工夫しないと解けない問題も多かった。講義資料を見返し悩みながら解いたため、2 週間分の復習はもちろんまた新しいコードの書き方に気づいたりと、試験問題を解きながらもプログラミング能力を伸ばすことができた。
最終日はこれまでのまとめと修了式をした。
基本的に午前の講義は教授がパソコン画面をスクリーンに表示し、どのコードがどのように働くか、実行したら何が表示されるかなどを実験的に見せながら進めていた(下の画像)。途中の記述をコメントアウトしたり数値を変えるなどして何度か実行していたため、それぞれの文や値がどのような意味を持っているのか、どのように働くのかを具体的に見ることができた。自分でもエラーが出た時に、同じように所々変えながらどう直したらうまくいくのかを探すことができた。おそらくほかのコースに比べると講義時間は短く、自分で考えペアと話し合うという活動の時間が⾧かったと思うが、どちらも集中して取り組めたと思う。

また授業外の時間に、何度かカルチャープログラムというものが用意されており、課題が忙しかった日以外はすべて参加することができた。ボートに乗りそれぞれの建物の説明を受けながらベルリン市内を周遊する回、オーケストラを見に行く回、電車でポツダムへ行き美術館や宮殿の中を案内してくれるツアーに参加する回、ベルリン市内の美術館とドイツの政治家の生い立ちや記念品の展示を見る回などがあった。特に印象に残っているのはオーケストラである(右の写真)。音楽にあまり興味がなかったので、オーケストラ自体初めて観たが、丁寧な演奏と演出、迫力のある会場に圧倒された。チェロのソロ演奏もあり、本場の芸術に触れる良い機会であった。授業だけでなくベルリンの文化的、歴史的な面についても学ぶことができる良い経験となった。

自身の成長と変化について

今回のプログラムを通して、与えられた課題をまず自分で考え、できるところまで解いた後それを他人に分かりやすく説明する能力が伸びたと自分で感じている。これは研究室に所属した後も実験から得られたデータを解析し、結果だけでなくなぜこのような考察をしたのかを伝える際に必要な能力であると考える。これはグローバル理工人育成コースにおける解決力、コミュニケーション力、実践的能力の向上につながるだろう。今回のペアワークを通して何度かペアや教授からどうしてこのようにコードを記述したのかを問われ、詰まってしまうことが何度かあった。頭の中では整理できているつもりが、英語で順序良く伝えようとするとうまく言えず、専門用語の英単語の勉強不足を痛感した。最終的に図を描きプログラムを何度か回して納得させることはできたが、日本語であればもっと簡潔に説明できただろうなと感じた。これからは数学や物理、そして研究内容に関する英単語を使えるようにしたいと思っている。そのために日々の東工大の授業で理工系の単語が出てきた際に英語を調べる、論文を読み始めるなど、積極的に世界の研究に触れていく必要があると感じた。また数回のカルチャープログラムを通してベルリンの芸術文化や歴史に触れることができた。少ない時間ではあったが、これらは異文化理解力の育成に結びついたと考える。自分自身あまり芸術に興味がないという点も考慮しなければいけないが、市内にたくさんの美術館があり、電車で数分で大きなオーケストラ会場に行ける環境は日本には少ないのではないかと思う。生活面では、日曜日はキリスト教の教えに倣ってほとんどのスーパーが閉まっていたのは日本と大きく違う点だと気づいた。土曜に買い物をしておかなければいけないという文化、慣習についてもベルリンで体験することができた。国際意識に関して、今回はプログラミングがメインであったため世界的な環境問題の解決などは学ばなかったが、いずれ自分の研究が世界でどの場面に役に立つのかを考える機会が訪れると思うので、国際問題に関しても日ごろからニュースを聞くなどして意識を向けておくべきである。これは理系分野という縛りに関係なく、政治や民族問題にも言えることだと考えている。カルチャープログラムでポツダムへ行った際、ザンビア、トルコからきている女の子と友達になった。

一緒にお昼を食べた際、それぞれの国の政治について話してくれ、その際女性の扱いや選挙へ行き投票するという行動の重要性が国によって大きく違うことを知った。日本にいては知らないことも多いのだと驚いたが、同時に自分が他の国の政治に興味、知識があまりにもないと痛感した。ドイツにいて、ウクライナからの移民が戦争に反対する活動をしている場面に何回か出会ったり、実際に何か食べ物を買ってくださいと声をかけられたこともあった。日本は島国でウクライナからも遠いため、日常的に危機を感じることは少なかったが、ロシアとウクライナの現状は市民にも影響するほどの国際問題なのだと気づいた。私自身の国際意識を高めなければいけないという危機感は、今回の留学を通して大学以外で学んだことの一つとして挙げられるだろう。今回、このような実地で肌で感じた育成すべき能力を今後伸ばしていくため、先にも述べた通り専門の勉強はもちろん、日ごろからニュースやそれに対するSNS の反応を見るなど世界への意識を持って生活していきたいと思う。コロナ禍のなか現地でこのような素晴らしい体験をすることができ、留学準備から帰国まで支えていただいた東工大留学情報館の方々、奨学金を給付してくださったJASSO の方々、両親、今回関わったすべての人に感謝の気持ちを忘れず、これからの自分の勉強や研究に励みたい。

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