IAESTE/理工系学生のための国際インターンシップ (マカオ大学 2024年7月8日~2024年8月30日)
留学時の学年: |
修士課程2年 |
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東工大での所属: |
生命理工学院 |
留学先国: |
中国 |
留学先大学: |
マカオ大学 |
留学期間: |
2024年7月8日~8月30日 |
プログラム名: |
インターンシップ概要
2024年7月8日から8月30日までの約2か月間、澳門大学にて研修を行った。研修ではProf. Xiaofan Dingの研究室でバイオインフォマティクスに関する研修を行った。日本ではがんの基礎研究をしているため、研修内容は全く未知の分野ではあったが、扱うデータや解析の結果を表す図表は日頃論文でよく見かけるものが多かったため、研究の目的・概略を理解することは難しくはなかった。しかし、プログラミングを学んだ経験がほとんどなかったため、2ヶ月のほとんどをRやPythonなどのプログラミング言語の基礎を勉強したり、模擬データを使って解析アプリケーションの使い方を学ぶなどして過ごし、実際の研究で扱っているデータを使うことはなかった。また、学生には英語が流暢に話せる人はおらず、私自身もあいさつ程度しか中国語を話せないのでコミュニケーションをとるのは難しく、翻訳アプリを多用したが、とても明るく親切に接してくれた。研修を通して研究に貢献できるようなことは何もできなかったが、担当の教授には当初からせっかくだから日本に帰っても活かせるようなことをたくさん学んでいきなさいと言っていただき、私自身にとってはとても実りある研修となった。
インターンシップ内容
1.研修について
所属した研究室では、主にバイオインフォマティクスに関する研究を行っていた。具体的には、がん細胞のRNAやDNAなどのシークエンス(塩基配列)データやがんにおいて重要な因子を探索するためのCRISPRスクリーニングデータの解析、病理組織画像やMR画像を用いた病理学診断AIモデルの構築等など、生物学・医学に関する多種多様な情報を扱う研究をしていた。研究室には学生の他、病理学医など医師としての勤務経験がある方をはじめ沢山の研究員の方も所属していた。データの解析にはプログラミング言語が必要になるのだが、私はプログラミング言語を学んだ経験がほとんどなかったため、最初の2週間は仮想環境の構築や基礎的なスクリプトの実行など、プログラミング言語を扱うための基礎を勉強することに費やした。その後、簡単な図やグラフの作成方法を学び、3週間目からはMR画像から特定の臓器やがん腫瘍を3Dモデル化するアプリケーションの操作やPyrhonで開発された「Pyradiomics」というソフトウェアで3Dモデルから様々な特徴値を算出する方法、それらの値を用いて簡単な機械学習モデルを構築した。研修の後半には数人の新入生が研究室に参加し、各々の自己紹介を兼ねたミーティングが行われた。発表はほとんど英語で行われたため、それぞれの学生がどのような研究に取り組んでいるのかを知ることが出来た。また、香港中文大学の教授の特別講義にも参加し、鼻咽頭癌で特徴的なゲノム異常の解析について学んだ。研修の最後には、がんにおいて重要な因子を探索するために様々な遺伝子の発現を抑制した細胞における全RNA発現量のデータ(CRISPRスクリーニングデータ)の解析にも着手した。ネット上に公開されているデータをダウンロードし、pythonとRで開発された解析ソフトウェアを用いて、重要度が高い遺伝子をランキング化した。その他にも病理組織画像や染色画像の解析など、多様な解析手法や解析ソフトウェア・アプリケーションの活用例を学んだ。
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脳の3Dモデル
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2.生活全般について
澳門大学のキャンパスは比較的最近建設されたこともあり、とても広大で綺麗なキャンパスだった。滞在先として用意されていた大学寮の2人部屋は、2つのベッドの間に仕切りなどがなくプライベートな空間はなかったが、幸いルームメイトとは仲良くできたため特に不便を感じることはなかった。寮の目の前にサークルKやスーパー、フードコート、銀行、パン屋などがあり、大学内には他にもたくさんのカフェやレストランがあるため、とても生活しやすかった。また、街中のスーパーや薬局は日本製品であふれており、ブランドにこだわらなければ日本製品だけを選んで生活することもできるほどだった。またマカオ内には無印良品やユニクロ、DAISOなども数多くある。チーズ、ハムなど一部の輸入品は日本の5倍ほどの値段だったが、その他は日本と同じか物によって安く感じるものも多かった。寮の各階には共用のキッチンがあるが、共用の調理器具はなかったため、電気コンロをIAESTE事務局に貸していただき、その他の調理器具は長期休暇で不在の学生と交渉して貸してもらって週に2,3回ほど自炊をした。
ルームメイトは同じくIAESTEのプログラムで来ているオーストリア人で、隣の部屋にもIAESTEの留学生が2人いたので、主に4人で一緒に行動することが多かった。マカオには歴史的な観光名所の他、リゾートホテルや巨大なショッピングモールがいくつもあるので、休日にはマカオ内を観光したり、買い物をしたりして過ごした。香港にも入国審査込みで片道2~3時間ほどで行けるので、2か月の間に3回遊びに行った。
言語に関しては、マカオの公用語はポルトガル語と中国語(広東語)で、英語表示がないこともある。実際にはほとんどの方が中国語を話しており、ポルトガル語を耳にする機会は多くなかった。また、リゾートホテルや観光客が多い店以外はまず英語は通じない。大学内のフードコートやコンビニの店員さんも英語を話せる方はほとんどいなかったため、翻訳アプリを活用しながら生活していた。
プログラムが始まった7月は夏休み期間であったため、学内にほとんど人がいなかった。しかし8月中旬になると新学期が始まり、留学生もよく見かけるようになり、偶然日本人留学生とも出会った。マカオ大学には10人ほどの日本人留学生がおり、一度食事にも行った。また、バーの店員やクラブで出会った学生などとも知り合い、色々な話を聞くことが出来て視野を広げる良い経験になった。
私はこれまで一人暮らしをしたことがなかったが、今回の研修を通して掃除洗濯自炊を一人でこなすことや海外でもなんとか生活していく自信がついた。将来仕事で海外に行く機会があれば積極的に挑戦したいと考えていたので、海外で生活するというハードルが下がったのはとても良かった。一方で語学力に関しては課題を感じる場面が多かった。日常の2,3往復程度の会話であればなんとかなったが、各国や自国の政治や制度・歴史、研究内容などについて深い話をしたり、微妙なニュアンスを説明したいと思うときなどにうまく言葉が出てこないことがよくあった。今後国際学会や仕事で英語をしようする上での課題が明確になり、語学学習への意欲が高まった。
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澳門大学キャンパス
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寮の部屋
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IAESTEメンバー
3.IAESTEのイベント参加や週末の過ごし方について
IAESTE事務局主催ではないが、大学内の留学生のためのInternational Nightというパーティーに参加した。それぞれの国の伝統衣装や文化の紹介などがあり、日本人留学生の中には浴衣を着ている人もいた。研修期間の最終日ではあったが、たくさんの友人を作ることが出来た。
平日の夜は他の留学生とともにショッピングや夜ご飯を食べに街に出かけることも多かった。土日には観光したり、香港にも2回ほど行った。
4.給与について
週単位: 現地通貨(990 MOP) 日本円( 約 18,000円 )
全支給額: 現地通貨(7920 MOP) 日本円( 約 140,000円 )
所持金は香港ドルで、日本円に換算して2万円程度を持って行った。ほとんどどこでも(タクシー以外)クレジットカードが使えるので現金が必要な場面は多くなかったが、滞在中(2か月間)で3万円ほどキャッシングした。
日本出国前に準備をしておいた方がいいこと
1.研修について
派遣先の研究室の論文を何報か読み、現地で行う可能性か高そうな実験や解析手法の原理を勉強した。実際の研修では予想と異なり、アプリケーションやプログラミングを使った実践的な解析が主であったため役に立ったことは多くはないが、研究室が行っているプロジェクトを大まかに理解してから行けたのは良かったと思う。
2.語学について
英語の勉強!話せれば話せるほど研修が楽しく実りあるものになると思います。また、マカオは英語を話せる人がとても少ないので、中国語(広東語、普通話どちらでも)を話せるとトラブルが減ると思います。
3.日本からの持参品
ピンチ付きハンガー、観光ガイドブックが役に立った。
IAESTE研修を通して感じたこと
異国の地でも自分でコミュニティを作り、生活環境に適応して生きていく自信がついたこと。
実験結果の解析にプログラミングや専門的なアプリケーションを使うのは初心者には難しいだろうと偏見を持っていたが、実際にやってみるとほぼすべてが自動化されており、とても簡単に使うことが出来たため、今後の自分の研究に取り入れていこうと思った。
これまで旅行などで海外を訪れたときには文化や言語、生活環境が日本とは全く違うと感じていたが、今回の研修を通して言語や文化が違っても共感して一緒に楽しめることがたくさんあり、生活環境にも案外簡単に適応することが出来ると感じ、国境を気にせずに色々な機会に挑戦しようと思うようになった。
後輩への一言
今回の私の研修のように2~3か月では英語力を向上させるには短い期間ですが、専門分野の最新の知見に触れ、各国における学生や研究者の受け入れ態勢や労働環境を知るには十分な期間だと思います。また、他の留学生とも長い期間をともに過ごすことで、政治から恋愛観まで様々なトピックについて深く語り合う機会もあり、視野を広げる良い機会になると思います。手厚いサポートも受けられるので、深く考えすぎず是非参加してみてください!
この体験談の留学・国際経験プログラム情報
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