教育

グローバルリーダー教育院

グローバルリーダー教育院

東京工業大学には、文部科学省の博士課程教育リーディングプログラム※1に採択されている特徴的な教育プログラムが複数あります。今回は、全学から学生を募集し、専攻する分野によらず国際的リーダーとなる人材の養成を目指している、グローバルリーダー教育院(Academy for Global Leadership = AGL)を紹介します。

文理共鳴リーダーを目指して

AGLは、それぞれの専攻分野での深い専門知識をベースに、他分野を俯瞰して理解できる能力やコミュニケーション力、日本と世界の文化、企業経営に関する知識などを備えて、これからの世界の発展を牽引する「真のグローバルリーダー」を育成することを最大の目的としています。このため、AGLの教育プログラムは、修士・博士を一貫した体系をとっており、一橋大学と連携して運営されています。

所属希望者は修士課程入学後、東京工業大学と一橋大学が提供する「リーダーシップ基礎科目群」から所定の単位を修得し、さらに、ディベートやプレゼンテーションの素養を試される2泊3日の選抜合宿をクリアする必要があります。所属後は、コミュニケーション力や合意形成力、異文化理解力などの養成を自分の専攻の教育研究と両立しなければなりません。このようなハードな教育課程に集中できるよう、所属後の授業料は全額免除※2され、キャリアアドバイザーによるキャリア支援などを受けることができます。

実践的な力を磨く「道場教育」

AGLの特徴的な教育の一つに、道場科目群があります。道場科目はディベートやグループワークを中心とした科目です。企業のトップや識者からの問題提起に対し、専攻分野や国籍・文化的背景、東京工業大学と一橋大学といった所属が異なる学生同士で討論を行い、「自分たちにできること」に気づき、それを実社会でどう実現するかを考えていきます。こうした取り組みを通して異分野の相手を理解しながら、実戦で通用する対話力とリーダーシップの獲得を目指します。





道場には科学技術系道場と人文社会系道場とがあり、本学の強みである科学技術分野だけでなく、社会や経済を切り口にした議論の場が用意されています。

自分の能力を社会で試す「オフキャンパス実習」

自分の能力を社会で試すオフキャンパス実習01

もう一つの特徴的な教育が、国内外の企業や研究機関で6か月以上のプロジェクトに取り組むオフキャンパス実習です。長期のインターンシップと似ていますが、一般的なインターンシップが「体験する」機会であるのに対し、オフキャンパス実習は「学外で自分の力がどこまで通用し、何が足りないかを学ぶ」機会です。学生は目標を明確にし、その実現に適切な受入先を探すところからスタートします。また、所属する専攻における論文研究と直結しないプロジェクトに参加することを原則としています。オフキャンパス実習をサポートするコーディネーターは、「敷かれたレールの上を走るのではなく、自らレールを敷いて適切な行動をしてほしい」と学生にエールを送ります。

自分の能力を社会で試すオフキャンパス実習02

オフキャンパス実習実績(2012年~2014年)

  • シドニー工科大学 日本文化理解促進プロジェクト

  • ベルリン自由大学 環境政策に関する調査プロジェクト

  • 光学機器メーカー 有機EL光源開発プロジェクト

  • カリフォルニア大学バークレー校 科学技術政策に関する調査プロジェクト

  • ケニア 再生可能エネルギーによる地方電化推進のための人材養成

  • スタンフォード大学 紛争解決手法に関する調査プロジェクト

  • 国際コンサルティングファーム 新規事業開拓支援プロジェクト

  • ゲーテ大学 ベンチャーファイナンスに関する調査プロジェクト

  • 気象ビジネス企業 新規ビジネス開発プロジェクト

修了生の声

2011年から始まったAGLは、2015年に最初の修了生を輩出しました。第1期修了生となった畦地啓太さんに、課程を終えての感想を聞きました。

修了式であいさつする畦地さん
修了式であいさつする畦地さん

修士2年の後期からAGLに参加し、あっという間の3年半でした。東日本大震災が起こった2011年、博士課程に進学するか悩んでいるときに、AGLの1期生募集のポスターを見かけました。「もっと研究がしたい」と強く思い、博士への進学とAGLへの所属を決めました。1期生として、まさにAGLを作り上げながら、試行錯誤を繰り返した3年半です。第1号の修了生として今日の日を迎えることができて、とてもうれしいです。

AGLではとにかく先生方との距離が近く、密にコミュニケーションをとれたことが収穫です。いろいろなことにチャレンジさせてもらい、なかでもオフキャンパス実習として私が提案した海外実習を実現できたことは思い出深い体験です。

自分の専門分野の研究以外のたくさんのことをAGLで経験しました。すべてのことを消化できたかどうかはわかりませんが、きっとこの経験が私の血となり骨となり肉となり、これからの人生のエンジンになると確信しています。 社会では近年の日本社会を「失われた20年」と揶揄しますが、AGLでの経験を活かし、将来の世界を担っていくことに貢献したいと思っています。僕らの世代が、ターニングポイントだったと思ってもらえるように、進んでいきたいです。

※1 博士課程教育リーディングプログラム

専門分野の枠を越えて、世界に通用する博士課程前期・後期一貫の学位プログラム構築を支援する事業。俯瞰力と独創力を備え、分野や国境を超えて活躍するリーダーの養成を目的としている。

※2 所属後の授業料の全額免除

標準修業年限以内に限る。

SPECIAL TOPICS

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2015年5月掲載

お問い合わせ先

東京工業大学 総務部 広報課

Email pr@jim.titech.ac.jp