教育
教育
社会や東工大の未来に何が出来るか、理系学生の立場から考える。そのために活動を企画し、行動を起こす学生グループが東工大にはあります。そこでは、「教養」という視点から様々な目標を設定し、行動します。それを実現する過程で自らの教養を深めることを軸に、様々な活動が生まれています。
専門性に重点がおかれがちな日本の大学教育。しかし、複雑化する現代の諸問題を前に、人間性・社会性を育む教育がますます求められるようになってきました。
そのような時代を背景に、2011年、「人間としての教養」を追い求め、実現していく場として設立されたのが「リベラルアーツセンター」です。センターでは多様な教養科目を提供するだけでなく、学生が教員とともにリベラルアーツ教育の創造に参加する機会を設けています。それがリベラルアーツセンター学生プロジェクトです。
なお、2016年4月、リベラルアーツセンターを改組し、東工大の教養、語学、健康教育などを司る「リベラルアーツ研究教育院」が発足しました。
2012年5月10日に行われたセンターの設置記念講演会。その企画・運営に、20人の学生有志が関わりました。メンバーにとって準備の過程は、改めて「教養」を考え学ぶ機会であり、新たな教養教育の可能性を感じる時間でした。
「その場限りで終わってはもったいない。」、「行動を通して教養を考える経験を共有するべきではないか。」といった学生たちの問題意識が学生プロジェクトの始まりでした。センター長の桑子敏雄先生のもと学生プロジェクトの構想が作られ、活動が本格化したのが2012年6月でした。先生方、職員の方々を始め、様々な方のご協力を得て、今に至ります。
参加した学生が次の学生を巻き込むことでメンバー数は増え続け、すでに50名以上が活動に関わりました。男女比7:3、学年も専攻も様々な学生たちが、今日も活動しています。
学生プロジェクトでは、学生が自身の夢や問題意識のもと定めた目標の実現に向け、約6ヵ月で企画・運営を行っています。活動内容は様々ですが、全プロジェクトの目標と過程は「教養」と関係しています。学べる教養は多種多様です。例えば、プロジェクトマネジメントの方法や合意形成のプロセス、社会で通用するマナーを、経験を通して身につけています。また、教養を学ぶ意味を自分自身で見出し、教養について考え議論するという雰囲気づくりをしています。そのように教養を学ぶことは、専門教育を深化させ、理工系の資質をより広く活かす事に繋がるはずだと考えています。
これまで10のプロジェクトが実施済、もしくは進行中です。そのうち、活動が終了したいくつかについて簡単にご紹介します。
未来型教養デザインプロジェクト
教養のある人というのは、単に知識がある人と捉えられることがあります。
しかし、情報化が進んだ今、単に知識を蓄えているだけでは、社会に求められる人材になることはできないでしょう。社会の先行きも不透明な中で、幸せな未来を手に入れるためにはどんな教養が求められるのでしょうか。
本プロジェクトでは「幸せな未来を手に入れるために、必要な教養を明らかにする」事を目標に、社会の第一線で活躍されている方々と、東工大生とでディスカッション(テーマ例 コミュニケーション・ワークスタイル・マーケティング・研究者に求められるもの)を行い、その内容を記事としてまとめました。
さらに、プロジェクトメンバー同士で、これからの東工大の教養教育の在り方について議論し、提言書を作成しました。
理系女子応援プロジェクト
理系女子ならではの可能性や悩みは?社会で活躍するために、今身につけておくべき素養は何だろう?といった切り口から、理系女子が活きる社会とはどのようなものなのかを、男性を交えながら学び、議論する場を設けることを目標に活動しました。
具体的な活動としては、社会で活躍する理系女性、及びそのような女性に関わる方々を訪問して話を聞く"スタディツアー"を行いました。更に、そこで得た成果を多くの人達と共有し、将来を考える上での参考にしてもらいたいという気持ちから、刊行物「RIKEJO 8」の作成と、ディスカッションイベントの企画・運営を行いました。
イベントは、スタディツアーでもお世話になった輝く女性お二人をお招きし、対談形式の講演会と、学生を交えたディスカッションの二部構成で、多様な年齢、性別、分野の方が約60名参加してくださいました。
すずかけ台講演会プロジェクト
すずかけ台キャンパスで、リベラルアーツセンターの池上彰先生と、パトリック・ハーラン(パックン)先生による講演会を行いました。イベントのテーマは『伝える』。分かりやすく、面白く伝えることについて、お話しいただきました。後半は、学生も登壇し、ディスカッションが行われました。また、当日の様子はニコニコ動画にて生放送され、約26,000人もの方が視聴してくださいました。
その他にも、
など、多様なテーマの学生プロジェクトが存在します。更に、教養を軸とした学生及び教職員の討論会や交流会なども行っています。
「このようなことをしたら、東工大がもっと良くなるのではないか」、「こうした場が東工大生には必要なのではないか」。多くの学生がそれぞれに抱いている考えがあると思います。学生プロジェクトはそうした面白いアイデアを紡ぎ、人々を繋ぐ出発点となることを目指します。様々な学生や教員、社会全体を巻き込みながら、未来に向けた行動がこれからも生まれてくることでしょう。そして、教養や科学技術に対して学生の立場から問を発していきます。
東工大生の皆さんが私たちの活動に参加してくださることを願っています。
リベラルアーツセンター 学生プロジェクト
田川翔・原田真実
リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。
スペシャルトピックスでは本学の教育研究の取組や人物、ニュース、イベントなど旬な話題を定期的な読み物としてピックアップしています。SPECIAL TOPICS GALLERY から過去のすべての記事をご覧いただけます。
2013年6月掲載