教育

高大連携サマーチャレンジ 2013

高大連携サマーチャレンジ 2013

東工大の高大連携教育

東京工業大学では、附属科学技術高校(以下東工大附属高校)と連携し、生徒に大学レベルの教育を体験させる取り組みを、2004年度より行っています。高校時代から将来を見据え、目的意識をもって大学に入学することにより、高校から大学の教育へとスムースに移行させ、科学技術の将来を担う若者を育成することを目的としています。
1年次には、東工大の研究室を訪問し、科学技術への関心を喚起する「オープンキャンパス」、2年次は、東工大キャンパスで東工大の教員による夏季特別講義を受講した後、希望する研究室を訪問し、最先端の研究に触れる「サマーレクチャー」、そして3年次の夏は、希望者から選抜された約50名が超高校レベルの6つの課題に取り組む2泊3日の「サマーチャレンジ」に臨みます。

サマーチャレンジ2013

毎年夏に湘南国際村を舞台に開催されているこのサマーチャレンジは、今年でちょうど10年目を迎えました。本年のサマーチャレンジに参加したのは、東工大附属高校から43名、お茶の水大学附属高等学校から9名、計52名の高校3年生です。

 東工大の教員からなる講師陣渾身の課題が参加者を待っています。高校では習っていない大学レベルの講義と課題をぶつけて、生徒の発想力や柔軟性を、また、グループワークによる実験や作業を通し、プランニングする力や各自の個性を引き出す6つのチャレンジに挑みます。どんなチャレンジが待っているかは当日まで参加者には知らされません。

【サマーチャレンジ2013概要】

【サマーチャレンジ2013概要】

日 時:
2013年8月6日~8日
場 所:
神奈川県三浦郡葉山町 湘南国際村 IPC生産性国際交流センター
参加生徒:
52名
(東工大附属43名 お茶大附属9名)
参加教員:
30名
(東工大教員22名、東工大附属高校教員5名&お茶の水大学附属高校教員3名)
事務職員:
10名
見学教員:
8名
100名

【チャレンジ1:隕石チャレンジ】 ◆「春にロシアに落ちた隕石の大きさを推測しよう!」

【チャレンジ1:隕石チャレンジ】 ◆「春にロシアに落ちた隕石の大きさを推測しよう!」

いきなり隕石が降ってくる映像から、サマーチャレンジ2013は始まりました。「手がかりは不鮮明なYouTube映像のみです。しかし、この映像から立派な科学的推論ができます。光ってから衝撃波の到達まで何秒経っていますか?隕石の明るさは太陽の何倍くらいありましたか?」河合誠之先生(基礎物理学専攻)の絶妙なエスコートに導かれ、班ごとに次々と推計値がはじき出されていきます。「高校の物理の知識でNASAに十分対抗できる!」大学レベルの講義についてゆけるかな、という生徒たちの不安を一挙に吹き飛ばす隕石チャレンジでした。

【チャレンジ2、3:分解チャレンジ】 ◆「身近なモノを分解してみよう!」

【チャレンジ2、3:分解チャレンジ】 ◆「身近なモノを分解してみよう!」

テーブルに並んだのは芯がくるくる回るシャープペン、100円のアナログ水晶時計、真空パックとボトルに入った醤油。真空パックの醤油は部品もないのになぜ注ぎ口がぴたっと閉まるのか?中身が減っていっても醤油の敵である空気がボトル内に侵入してこないのはなぜか?篠崎和夫先生(材料工学専攻)のリードで、生徒たちはモノを分解し、さまざまな角度から観察し、分析を進めていきます。身近なモノを分解し、その材質や機構がどうやって機能に結びつくのかを考える課題なのです。翌日には各班で分解したモノの仕組みについてプレゼンテ—ションを行いました。

【チャレンジ5:ユスリカチャレンジ】 ◆「ユスリカを蘇生させよう!」

【チャレンジ5:ユスリカチャレンジ】 ◆「ユスリカを蘇生させよう!」

 デジタル顕微鏡とモニターが置かれた各班のテーブルに、櫻井実先生(生体分子機能工学専攻)がにこやかに配ったのは小さな小さなエビせんべいのような「ネムリユスリカの幼虫」です。ネムリユスリカの幼虫は、ナイジェリアの50℃の岩盤で生まれ、水が無い環境で育つため、トレハロースをガラス化して乾燥休眠状態に入り、細胞を守っています。
「ゆっくりお湯を注いでください。生き返りますよ。」トレハロースとスクロースの識別実験をしながら待つこと30分。「動いた!」 最初の班から歓声が上がります。カチカチの赤い胴体の頭部が白っぽく変色し、ゆっくりと身を震わせたかと思うや、すぐに顕微鏡の視野から飛び出すくらい元気に泳ぎ始めました。各テーブルで12の瞳がモニターを見つめます。いのちの蘇生の瞬間を自らの手で為し得たという心の震えは若きサイエンティストたちの大切な原点となるでしょう。

 他にも、青木洋貴先生(経営工学専攻)の【チャレンジ4:竹ひごカットの経営工学】、伊東章先生(化学工学専攻)の【チャレンジ6:暑さ寒さの化学工学】など、興味つきせぬ6つのチャレンジをくぐり抜け、全員無事に3日間の行程をゴールインしました。

次の10年へ

スタートから8年目の2011年度にはお茶の水女子大学附属高校が参加校に加わりました。東工大附属高校の生徒の班に別の環境で学んできた女子生徒が新たに加わったことで、各班のモティベーションも実行力も上昇しています。そのような生徒たちの様子から、参加高校を増やすことも検討しています。
10年の節目に客観的な評価を得るために、今年は参加高校以外の高校教員を対象にサマーチャレンジの見学会を実施しました。国立附属高2校、私立中高一貫6校の計8校からご参加いただき、有意義な情報交換が実現し、「ぜひ、うちの生徒にも参加させたい」という心強い応援メッセージとともに、高校教育の現場からたくさんの改善のヒントをいただきました。
10年の蓄積を力に、サマーチャレンジは進化し続けます。

高大連携学部入試専門委員会委員長 山室恭子

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2013年8月掲載

お問い合わせ先

東京工業大学 総務部 広報課

Email pr@jim.titech.ac.jp