国際交流

世界トップレベルの理工系教育システムとは

東工大教育改革国際シンポジウムより

東工大では、創立135周年を迎える2016年4月のスタートに向けて、新しい教育システムの構築を進めています。その一環として、2014年3月14日、東工大大岡山キャンパス70周年記念講堂にて、「教育改革国際シンポジウム」を開催しました。

同シンポジウムではまず、理工系分野で世界トップレベルの大学の教育責任者である、マサチューセッツ工科大学(MIT)副総長 (学術振興担当)のエリック グリムソン氏、ならびにカリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)学長特別補佐 (国際連携担当)のロナルド グロンスキー氏が登壇し、それぞれの大学の教育理念や教育システムについて講演されました。つづいて、三島良直学長(当時)が、本学の教育改革の内容を紹介しました。

三島 良直 学長(当時)

三島 良直 学長(当時)

講演後は「世界トップレベルの理工系高等教育システムのあり方」というテーマで、パネルディスカッションが行われました。前半は、三島学長(当時)、MITのグリムソン副総長、UCバークレーのグロンスキー学長特別補佐の3名による討論が行われ、後半は、産業界から日本アイ・ビー・エム相談役で、学校法人国際基督教大学理事長の北城恪太郎氏、米国国立科学財団(NSF)東京事務所長のケリーナ クレーグ・ヘンダーソン氏、そして、日立製作所相談役で一般社団法人蔵前工業会理事長の庄山悦彦氏の計3名のパネラーが加わり、討論が深められました。

教育改革に不可欠なこととは

グリムソン副総長 教育改革における東工大、MIT、UCバークレーの共通課題として、1つ目に、学生を能力ベースで評価すること、2つ目に、グローバル社会の中で競争できる能力を持った学生を育成するということが挙げられます。

グロンスキー学長特別補佐 オンラインツールを使って、学生が教員を迅速に評価できるシステムを導入することが重要です。

三島学長(当時) 教育改革に関して、おふたりも同様の問題意識を持っておられることを知り、非常に心強いです。新たな教育環境として、今後アクティブラーニングとオンラインによる遠隔教育にも積極的に取り組んでいく考えです。

グリムソン副総長 グローバル人材を育成するには、海外留学やインターンシップを促進する必要があります。

グロンスキー学長特別補佐 シリコンバレーでは、優れた技術者を数多く採用していますが、この2年間で変化が見られています。それは、海外経験のある学生をより積極的に採用しようという傾向が強まっていることです。社会のグローバル化が進む中、海外留学の重要性は増しています。

エリック グリムソン副総長

エリック グリムソン副総長

ロナルド グロンスキー学長特別補佐

ロナルド グロンスキー学長特別補佐

日本の大学も世界規模の競争の時代へ

北城氏 今まで日本の大学は国内での競争が中心だったことから、いわば国体で戦っているようなものでした。それに対し、今日の講演を聴き、日本の大学も、いよいよオリンピックで戦わなければならなくなったということを痛感しました。しかしながら、そのためには、オンライン教育など新たなシステムや環境の整備が必要であると感じました。
特に交換留学を行う場合、日本の大学は、留学生を受け入れるための準備として、英語で行う授業を増やす必要がありますし、寮などを整備しなければなりません。

北城 恪太郎氏

北城 恪太郎氏

ケリーナ クレーグ・ヘンダーソン氏

ケリーナ クレーグ・ヘンダーソン氏

庄山 悦彦氏

庄山 悦彦氏

さらに、教育改革を行う上では、教員が、教えられるものを教えるというこれまでの姿勢から、教えるべきものを教えるという姿勢に転換する必要があります。
これらは容易なことではありませんが、文部科学省の中央教育審議会大学分科会では、大学のガバナンス改革を行うということで検討が進んでいますので、東工大には是非、先頭を走っていただき、オリンピックでメダルを取ってほしいと期待しています。

クレーグ・ヘンダーソン氏 NSFは1950年、バイオメディカル以外の基礎研究を支援するための連邦機関として設立されました。現在、研究における国際連携に力を入れており、NSFが資金提供するプログラムの多くはグローバルパートナーシップを要件としています。大学や研究者、学生が国際連携を進められるように、研究設備を支援対象にしたプログラムや教員交流プログラムを推進しています。

庄山氏 グローバル化に関しては、教育機関のみならず、産業界においても大きな課題となっています。また、マーケットの変化から顧客のニーズが以前に比べて多様化しており、イノベーションの重要性が強く求められていることを感じます。それゆえ、今後は、専門知識に加え、幅広い知識や知恵、気づき、強い発想力を持った“人財”が不可欠であり、どのように育成していけば良いかについて深く考えていく必要があると強く感じています。また、日本の製品は信頼性の高いことを誇りとしていますが、モノづくりでの高い志とチームワークの良さの倫理を大切にしたいものです。

優秀な東工大生をきちんと育て上げることは東工大の責務

グリムソン副総長 どの国、どの大学であろうと、次世代のリーダーを育成していかない限り、繁栄や成功は望めません。今後、我々教育機関は、リーダーシップを発揮でき、高いコミュニケーション能力を持った人材を育成していく必要があります。三島学長(当時)の教育改革への取り組みは、大変素晴らしいと思います。MITでも、次世代の学生をどうやって育成していけばよいのか、どういった新たな教育法が求められているのかなど、東工大と同じ課題を抱えています。東工大が新しい教育システムを開始する2年後を楽しみにしたいです。

グロンスキー学長特別補佐 三島学長(当時)は高いビジョンを持った方だと思います。しかしながら、特に東工大のように、豊かで長く、伝統のある組織においては、改革を行うのは非常に難しいことです。そこで、三島学長(当時)に申し上げたいのは、伝統とイノベーションのバランスが、成功の鍵を握っているということです。私は、伝統の中に上手にイノベーションを取り込まなければならないと考えています。実行に移すのはまさに今であり、その課題を成功に導くため、我々は今後も協力し合っていきましょう。私たちの協力関係は双方に恩恵をもたらすはずです。東工大の教育改革の成功を信じています。

パネルディスカッションの様子

三島学長(当時) 東工大が今後推進していこうとしている教育改革は、確かに非常に困難を伴うと思っています。しかし、今、始めなければもうできないのではないかという思いを強くしています。東工大に入学してくる学生は皆、非常に優秀です。それゆえ、彼らをきちんと育て上げることは、東工大の責務だと考えています。ですので、彼らが、MITやUCバークレーの学生のように、『自分の手で世界を変えるんだ』『社会を良くするんだ』といった高いビジョンを掲げ、イキイキと勉学に励んでもらえるように、最適な環境を整えていくことが、我々の使命であるということを強く心に刻み、今後もぶれることなく、教育改革にまい進していく所存です。

パネルディスカッションは、三島学長(当時)の強い決意によって締めくくられました。

当日の模様

  1. 1. 「開会の挨拶と来賓挨拶」 - YouTube
  2. 2. 「MIT副総長による講演」 - YouTube
  3. 3. 「UC Berkeley 学長特別補佐による講演」 - YouTube
  4. 4. 「東京工業大学学長による講演」 - YouTube
  5. 5. 「パネルディスカッション」 - YouTube
  6. 6. 「閉会の挨拶」 - YouTube

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

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2014年4月掲載

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東京工業大学 総務部 広報課

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