国際交流
国際交流
本学では、さまざまな国際大学院プログラム(IGP)を通して、海外からの優秀な学生を積極的に受け入れています。そのうちのひとつに、本学と国立研究開発法人理化学研究所(以下、理研)が連携・協力して、博士後期課程の学位取得を目的とする留学生を受け入れる「理研連携国際スクール」があります。2007年から始まった同スクールでは、本学と理研の双方の研究者が共同で教育研究指導を行うほか、学生は理研の「国際プログラム・アソシエイト(IPA)※」の認定を受けて、資金援助と宿舎支援を受けながら両機関でより幅広い研究を行うことができます。このユニークなプログラムの魅力を、在学生と修了生が語ってくれました。
3年を上限に、滞在費や宿舎費等の補助を受けることができる理研の認定制度および身分
所属
2015年4月~
<東工大> 大学院総合理工学研究科創造エネルギー専攻博士後期課程3年 脇研究室
<理研> Kim表面界面科学研究室
私はUBCでの燃料電池触媒の研究経験から、リチウム電池を使ったリチウム空気電気化学の非水系の性質に興味を抱くようになりました。リチウム空気電池は、現在使われているリチウムイオン電池の寿命の何倍にもなる可能性がある電池です。この研究が、理研のビョン・ヒィエリョン博士が率いる研究室で行われていることを知った私は、実際に研究室を訪れ、自分の望む研究がそこでできることを確かめました。その後、東工大と理研が連携する理研連携国際スクールの存在を知り、東工大では博士後期課程学生として学び、そして理研では研究者とともに研究できるという点で、自身の研究能力を最大限に伸ばせる環境だと確信し、プログラムへの応募を決めました。
プログラムの大きな魅力は、東工大と理研から各1名の指導教員がつくため、手厚い研究指導と支援が受けられるとともに、課題に取り組む上で複数の視点を得られることがまず挙げられます。これに付随して、両機関の実験設備の利用が可能なこと、さらに、理研には博士後期課程を修了して間もないポスドク研究者が数多く在籍していることから、より近い立場で有意義な指導が受けられることも魅力です。
2つの機関を頻繁に行き来して実験研究を行う分、時間管理はどうしても煩雑になります。研究計画と目標を綿密に立て、円滑なコミュニケーションを図ることによって、その負担は大きく軽減することができますが、そのためには適切な研究課題、つまり、自分が面白いと感じるだけでなく、両指導教員が認め得る十分に新規性を持ったテーマを見つけることが非常に重要だと感じました。
研究室の仲間との誕生日会(左から3番目がウォンさん)
私は博士後期課程の3年間の研究生活の中で、多くの貴重な経験を得ました。与えられた課題をこなしていくことはもちろん、このプログラムをやり遂げるには、研究の過程全体に対する強い興味と、いかなる困難に直面しても解決策を模索し続けられる意欲と粘り強さが必要です。しかし、目の前の課題と向き合い、それをやり遂げることによって問題解決とコミュニケーションのスキルは確実に磨かれていきます。こういったスキルは、産業界や学術界を問わず、その後のキャリアに非常に有益です。研究への強い意欲とやり遂げる強い意志を持った人には、ぜひ理研国際連携スクールに挑戦して多くのものを得て欲しいと思います。
所属
在学時(2012年10月~2015年9月)
<東工大> 大学院総合理工学研究科物質電子化学専攻博士後期課程 原・林研究室
<理研> 近接場ナノフォトニクス研究チーム、Kim表面界面科学研究室
現在
理化学研究所 光量子工学研究領域 フォトン操作機能研究チーム 日本学術振興会外国人特別研究員
このプログラムを選んだ理由はいくつかあります。東工大は日本のトップの理工系大学であり、理研は基礎科学分野(物理、化学、生物学)における日本を代表する研究機関です。この日本で最も優れた2つの機関で学びと同時に研究ができることに加え、専門としたかったナノフォトニクスを利用した走査型プローブ顕微鏡の研究が、走査型プローブ顕微鏡の専門家である東工大の林智広准教授と近接場ナノフォトニクスの専門家である理研の早澤紀彦専任研究員の指導のもとでできることに、私は大きな魅力を感じました。また、理研所有の世界最先端の設備や技術が利用可能である点と、これらすべてが英語で行われる点で、これ以上の選択肢はないと思いました。
このプログラムで得るものを3つの言葉で要約すると、「時間」「お金」「効率」です。博士後期課程プログラムである理研連携国際スクールの3年間はあっという間で、IPAとして日々の生活に十分な経済支援を得られる反面、その期限は厳密です。さらに、課題や実験、ミーティングなど、ほぼすべてが単独機関のプログラムの2倍になり、それをこなすための時間をやりくりすることは決して簡単なことではありません。しかし、そういった日々を通して、円滑なコミュニケーションと情報へのアクセスの重要性を学び、限られた時間を効率的に使うスキルを身に付けました。今振り返ると、研究だけでなくこの点も大きな収穫だったと感じています。
このプログラムでは、東工大と理研の指導教員2人だけでなく、ノーベル賞受賞者を含む多くの研究者や専門家と個人的に交流できました。多くのディスカッションや会議への参加をとおして、未来の偉大な知性を育てる教育者になるという私の夢は、より現実的なものとなり、そのためのアイデアも大きく膨らみました。3年という時間は早くもあり、長くもあります。このプログラムを目指す人には、研究したい課題と指導教員を慎重に選び、一緒に研究し切磋琢磨できる仲間を見つけてほしいと思います。そして、最も重要なことは日々ベストを尽くして楽しむことです。自分がやりたいと思ったことには積極的に参加し、2つの機関で研究を行うという貴重な機会を最大限に活用してください。
理研連携国際スクールは、海外在住者を対象に毎年3月頃に募集を行います。9月入学でスタートする3年間のプログラムとなっています。プログラムの詳細については、関連リンクをご参照ください。
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2017年3月掲載