国際交流
国際交流
チューリッヒの街並み
東工大は早くから世界各国の大学・研究機関等と学術交流協定を締結し、学生や研究者等の交流を進めてきました。本学が全学協定を締結している大学・研究機関等は世界27の国と地域に103機関、本学の研究科等が部局間協定を締結している大学・研究機関等は35の国・地域に146機関あります(2014年5月1日現在)。なかでも、今年日本と国交樹立150周年を迎えるスイス連邦の北部にある、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)は、本学と長い歴史のある、交流の深い協定校です。
ETH本館
同校は、スイス連邦のドイツ語圏であるチューリッヒに1855年に設立された大学です。工学、自然科学、社会科学の分野における16の専攻で構成され、 教員約500名、学生約18,000名※1が在籍しています。各種の世界大学ランキングでは例年上位に名のあがる世界屈指の大学であり、これまでにノーベル賞受賞者を21名輩出、そのなかにはX線の名前で有名なヴィルヘルム・レントゲンや、かのアルベルト・アインシュタインも含まれています。
留学生比率37%、外国人教員比率67%※1という数字は、この大学の研究活動とその実績が、世界各国から学生や研究者を惹きつけてきた結果といえるでしょう。
教員数、学生数、留学生比率、外国人教員比率はいずれも2012年。
ETH Big Band Zurich
同校と本学は1978年に学術交流協定を締結以来、学部学生から博士課程学生、研究者、教員に至るまで、幅の広い交流を40年近く続けてきました。同校との授業料等不徴収協定※2に基づく交換留学では両大学が特別に、博士課程及び優秀な修士課程の学生に対して奨学金による支援を行っています。このような双方の支援、協力の結果、2014年の留学予定も含め直近の10年で同校から本学への交換留学生数は60名、本学から同校への交換留学生数は50名に達します。
2014年2月には同校やチューリッヒ大学等の学生が参加するETH Big Band Zurichが本学にてコンサートを行い、本学の学生ラテンジャズビッグバンドサークルのロス・ガラチェロスと共演しました※3。
同校と本学はこのように今後も学術、文化の双方で交流が進むことが期待されます。
授業料等不徴収協定:交換留学生として留学する場合、本学へは授業料等を支払い、交換留学先大学へは授業料等を支払わなくてよいとする協定。
ステファン マイヤー(Stefan MAIER)
私はずっと日本の建築に興味がありました。スイスやヨーロッパにおける現代建築との共通点が多くあるからです。しかし、より興味深いのは数えきれないほどある相違点です。また、東京は現代日本を象徴する、他に類を見ない都市です。交換留学ではぜひ東京に行きたいと思っていました。東工大は世界的に高い評価を得ていると同時に私の尊敬する建築家の方々がいます。このようなことからETHと協定を結ぶ東工大への留学を決心したのは自然な流れでした。
好きな日本の建築(1)東京カテドラル聖マリア大聖堂
好きな日本の建築(2)桂離宮
ETHにいる時と同様、東工大でも建築を専攻しています。しかし、たとえ専攻が同じでも、その学び方は異なります。ETHで圧倒的に重視されているのはデザインスタジオでの活動で、つまり学生が自分の作品やデザインを作り上げます。一方、東工大では研究室での活動に焦点が置かれています。これは基本的に、教員とともに行う研究やデザイン、論文の執筆などです。東工大の研究室は建築・設計事務所のオフィスのように構成されていますが、ETHでの研究室は建築家が集うアトリエという位置づけが近いかもしれません。
なお、日常の生活においては、両大学間には多くの共通点があります。体育館や音楽練習室などの施設を利用しやすいようにキャンパスが整備されています。キャンパスの活気を比較すると、東工大は屋外で行われている活動が多く、周りの人々を歓迎する雰囲気にあふれています。
共同設計のグループ
(マイヤーさんは下から2番目)
東工大での学びを通じて、スイスよりも遥かに多くの人口を抱えながらも、様々な自然の脅威にさらされてきた東京という都市の建築のあり方について、深い洞察を得ることができました。東京は様々な形でヨーロッパの都市の未来図的な役割を果たすことができるのではないでしょうか。都市計画や建築の仕事に携わる将来、それがスイスなのか、ヨーロッパなのか、またはそれ以外、世界のどこになるのかまだわかりませんが、東工大での多くの野外演習や講義、設計実習を通じて学んだことが大いに役立つことでしょう。
藪 知衣理(やぶ ちえり)
学科の友人と学内BBQ(一番右が藪さん)
世界の理工系大学の中でもトップレベルを誇り各国から留学生が集まる環境の中で学ぶことにより、ただ新しい知見を得るだけでなく、よりグローバルな視点を養うことができる点が魅力だと感じました。将来国際的に活躍するためのステップとして、自分の能力を自覚・向上し、自信を持つことを目標にETHへの留学を決めました。
また、せっかく海外で過ごす1年間で、是非他の言語も学びたいと考えたこともきっかけです。4つの母国語を持ち多くの文化が混在するスイスで、ドイツ語圏ではありながら英語力の向上も見込める点が大きな魅力でした。
学内で開催された舞踏会
主に材料系の授業を履修し、有機、無機、金属などを包括して学びました。様々なグループプロジェクト、最新研究、ケーススタディ形式の実践的課題などが興味深い内容が組み込まれ、周囲の学生と有意義な時間を過ごすことができました。
また、4か月にわたり研究室でディップペン・ナノリソグラフィー※4の研究を行いました。これまでの自分の専門とは異なる分野で苦労しましたが、最終的にはレポートにまとめて成果発表を行い、大きな達成感を得ました。
所属合唱団のコンサートイベント
東工大とETHの共通点は、学生が非常に真摯に物事に取り組む点だと感じます。グループワークに対する姿勢が東工大生や日本人に近いと感じました。
一方で相違点は、留学生や女性の割合が高い点です。授業・研究がほぼ英語で行われており、私のスーパーバイザーはトルコ人の女性でした。また、授業は教員と学生のやり取りが多く、自ら考えて発信することが求められる能動的な雰囲気でした。テストでは、How、Whyといった説明形式の問題が多く、深い理解力と説明能力が問われていると感じました。
友人と出場したバスケットボール大会
(前列左から2番目が藪さん)
既に帰国から1年間が経とうとしていますが、留学後には研究に対するモチベーションの持ち方に変化がありました。すべての知識が直接研究に活きるわけではありませんが、「おもしろい」と感じる知識欲や、研究を進める上での考え方を学びました。
また、来春からエンジニアとして働くことが決まり、世界の様々な国と関わることになるので、ETHで学んできた国際文化を大切にしたいと考えます。さらに、「自分の頭で考え、深く理解したうえで発信する」という意識を忘れずに仕事に取り組みたいと思います。
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2014年9月掲載