国際交流
国際交流
東京工業大学は、アジアの理工系トップ大学によって構成されるASPIRE(アスパイア)リーグに加盟しています。リーグの正式名称は、Asian Science and Technology Pioneering Institutes of Research and Educationで、その頭文字を取って通称ASPIREリーグと呼称しています。香港科技大学、韓国科学技術院、南洋理工大学(シンガポール)、清華大学(中国)、そして東京工業大学の理工系5大学で構成されているコンソーシアム(連携体制)です。アジアにあること、ハイレベルの理工系学部を持つ大学であること、という2つの大きな共通基盤を活かして、研究者間の共同研究を促進するグラント(助成金)の提供、学生間のワークショップ、サマープログラム等の活動を行っており、各加盟大学が大学全体で支援しています。今回はASPIREリーグの設立の背景を含め、加盟大学の特徴やコンソーシアムで行っている活動等についてご紹介します。
ASPIREリーグ設立のきっかけは2009年にさかのぼります。競争的なグローバリゼーションのなか、理工系トップ大学が教育研究や人材育成においてコンソーシアムを作ることの重要性が広く認識されてきた時期でした。また、持続的社会の構築に向けて、科学技術的側面から大学が大きな貢献を果たすことが期待されていました。そこで東工大がイニシアティヴをとり、アジア地域における理工系トップ大学のコンソーシアム構築を図ることを目的に体制づくりが進められ、2010年に正式な覚書調印に至りました。
ASPIREリーグはアジアにおけるコンソーシアムですが、ヨーロッパにおける理工系大学間コンソーシアムであるIDEAリーグ※とも連携して活動しています。コンソーシアム間でも、それぞれで実施するワークショップやサマープログラムへの参加者の招待等の交流を行っています。
IDEAリーグ:デルフト工科大学(オランダ)、スイス連邦工科大学チューリヒ校、アーヘン工科大学(ドイツ)、シャルマーズ工科大学(スウェーデン)の4校で構成される理工系大学間コンソーシアム (2015年1月現在)。
2004年より東工大と大学院合同プログラムを行っている清華大学を含め、ASPIREリーグの加盟大学はそれぞれ各国を代表する大学であり、特色豊かな大学です。
1991年に香港に設立された研究型大学で、理工系学部のみならず、ビジネス・マネジメント学部や人文・社会科学部も備えています。2011年から3年連続でQSアジア世界大学ランキング1位を獲得するなど、世界的評価も高い大学です。
英語略称よりKAIST(カイスト)と呼ばれる同大学は、1971年に科学技術分野のエリート人材を養成する研究型大学として設立されました。世界的企業であるSamsung Electronicsの研究開発職にある人材を多く輩出するなど、人材養成機関としても重要な役割を果たしています。本学ともASPIREリーグの他、日中韓先進科学技術教育環(TKT Campus Asia)など、様々な交流があります。
1991年に設立され急速に発展する同大学も、QS世界大学ランキング2014-2015で39位に位置する理工系大学です。工学部、理学部の他、ビジネススクールや人文系学部、インペリアル・カレッジ・ロンドンと共同で設立した医学部などを備え、学際性豊かな大学です。
同大学は政府派遣によるアメリカ留学に向けた準備機関として1911年に設立され、法学部や人文学部も備え、政治家や理工系人材を多く輩出してきた中国屈指の有名大学です。本学とも30年に渡る交流があり、日中韓先進科学技術教育環(TKT Campus Asia)などの交流事業を行ってきました。大学院レベルとして日本初のダブル・ディグリープログラムである「東京工業大学・清華大学 大学院合同プログラム」は2014年に10周年を迎えました。
ASPIREリーグでは、毎年7月に各校の副学長等が集い、各校の過去1年の活動や国際交流、共同研究の状況等を発表するASPIREフォーラムを開催しています。このフォーラムではこの他、各校の学生が集まってテーマ別に議論を行うワークショップや、研究者を招待して講演を行うシンポジウムなど、短期間に充実したプログラムが組まれています。
2014年は7月7~11日にかけて、清華大学にて開催されました。今回のテーマは「新エネルギー研究開発における新材料技術の役割」"The Role of New Materials Technology in New Energy R&D"であり、7~9日の3日間、参加学生は清華大学が企画した徳州市の工業地帯訪問や北京市内の工業地域の見学に参加し、10日午前中に開催されたシンポジウムでは、本学の教員も講演を行いました。
参加した東工大理工学研究科有機・高分子物質専攻修士1年 ホアン・タオさんの感想
企業をいくつも見学し、分野の異なる参加学生とプレゼンテーションを行うなど、多くの予定が組まれた5日間でした。清華大学での日々は結構大変でしたが、参加者全員が新しい友人を作ることが出来たことを喜んでいましたし、異なる発想、文化、言語で交流することができました。かなり刺激的なプログラムだと思います。
私自身、他大学の参加者と友人になることができましたし、研究やキャリアや人生について意見交換できて、幅広くかつ深い議論ができました。そのため、文化や自己啓発、国際交流について、他の参加者から多くを学ぶことができました。
ASPIREリーグでは活動のひとつとしてサテライト・ラボを設置することを決定し、この実施のため、東工大では共同研究に必要な研究グラント(助成金)を創設し、2011年度から募集を行っています。本グラントにおいて、2011年度から2014年度までの4年間に様々な分野の12プロジェクトが採択されました。これらのプロジェクトでは、東工大の研究代表者とASPIREリーグ加盟大学に所属する共同研究者との間で共同研究が実施され、多数の学生を含めた研究者の交流が行われました。そして、グラント採択期間以降も数多くの研究者が交流を継続しています。2014年に採択された応用化学専攻 和田雄二教授のプロジェクトには、ASPIREリーグ加盟大学の5大学全てから研究者が参加し、東工大や清華大学で会議を開催するなど、活発な議論や研究が行われています。
研究グラント採択者の声:大学院理工学研究科応用化学専攻 和田雄二教授、米谷真人特任准教授
2014年度採択:共同研究テーマ「高効率有機・無機ハイブリッド太陽電池の理想電荷移動界面の構築と迅速フレキシブルデバイス形成技術の創出」
私たちの提案書が、2014年の公募で採択された後、ASPIREリーグ内4大学からのメンバー採択作業に加わり、本プロジェクトにふさわしいシーハ・ヤン教授(香港科技大学)、ブンヤ・シン博士(韓国科学技術院)、ヌリパン・マシューズ博士(南洋理工大学)、ホン・リン教授(清華大学)の4名の研究者をメンバーとして決定しました。本プロジェクトでは、太陽電池研究の中でも最近高い変換効率が得られることで注目を浴びているペロブスカイト太陽電池の基礎研究から応用までを視野に入れた研究目的と計画を掲げています。和田・米谷グループでは、過去に蓄積してきた色素増感太陽電池研究の成果をペロブスカイト太陽電池に活かし、高い変換効率を維持しつつ安定・長寿命の太陽電池の創製を目指しています。上記4名の研究者は、それぞれの国におけるぺロブスカイト太陽電池研究のリーダーであり、5つのグループが集まることによって、本プロジェクトは、アジア圏における「ペロブスカイト太陽電池研究拠点」を形成し、研究を牽引する役割を担います。
この他、各加盟大学にてASPIREリーグ加盟大学の学生等を招いて各種のイベント、プログラムを行っています。2014年7月13~17日にかけて南洋理工大学で行われたASPIRE Undergraduate Research AcademyはASPIRE加盟大学の学部生向けのプログラムで、今回は「持続可能なエネルギーと環境(水、エネルギー、気候変動)」をテーマに、講義や研究室、研究所訪問等を行い、学生達はそれぞれ自分の研究分野の発表を行いました。昼間の活動だけでなく、夜のサファリツアーなどシンガポールツアーも含む充実のプログラムでした。
またこの他、韓国科学技術院では2014年8月にASPIRE E-Olympicsを開催、バスケットやウォーターチャレンジ、クイズなどの活動を通してASPIREリーグ加盟大学の学生が交流しました。
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2015年2月掲載