国際交流
国際交流
オーストラリア大陸の南東部に位置するメルボルンは、ロンドン、ニューヨーク、パリに匹敵する世界有数の国際学術都市です。そこで中心的な役割を果たすのがメルボルン大学、東工大のパートナー大学です。
1853年に設立された州立総合大学のメルボルン大学は、オーストラリアで2番目に歴史のある名門校です。その歴史は、現在のオーストラリア連邦の設立(1901年)よりもさらに50年近く前、英国による植民地時代にまでさかのぼります。これまでにノーベル賞受賞者8名、そして同国の首相をはじめとする多くの歴史的人物を輩出しています。世界大学ランキングで常に上位にランクするメルボルン大学には、同校を取り巻く環境や治安の良さも手伝い、世界中からたくさんの留学生が集まります。その数は、総学生数の26%(約12,000人)にも上り、出身国は130か国にも及びます。(2016年現在)
メルボルンの街並み
東工大とメルボルン大学は1994年に大学間交流協定を締結して以来、さまざまな交流を実施してきました。特に学生の交流については、協定校間ならではの交換留学プログラムを始め、複数のプログラムを通して双方向の交流が活発に行われており、良好な関係が続いています。また、東工大が主要立ち上げメンバーであるアジア・オセアニア工学系トップ大学リーグ(AOTULE)(English)に、メルボルン大学が2010年に加盟したことにより、両大学間の交流、特に工学分野での若手研究者や学生交流がさらに充実しました。
メルボルン大学キャンパスの様子
村田准教授とロビさん(右)
ラウ ウェン クイン ロビ ディーン(通称:ロビ)
メルボルン大学 メルボルン・デザインスクール
建築学専攻 修士課程2年
東工大への留学
東工大の建築学のレベルの高さは、日本の大学の中でも際立っています。その東工大の建築家たちのもとで学べることは、建築学生にとって単に魅力的というだけでなく特権だと思いました。加えて、東京には丹下健三氏設計の国立代々木競技場や伊藤豊雄氏設計の多摩美術大学八王子図書館など、素晴らしい建築物が数多くあります。東工大への留学中、日本の文化や食べ物、言語、そして日本人との交流を通して「日本に住む」というのはどういうことかを体験し、日本人の建築家たちがどのように自分の作品を思い描き、形にしていくのかについて理解を深めたいと考えました。
多摩美術大学八王子図書館
東工大もメルボルン大学も、キャンパスの雰囲気は似ています。しかし、教育システムでは異なる点も多く、特に学生が研究室に所属するというのは、いい意味で異文化体験そのものでした。学士課程から博士課程までの学生が出入りする研究室では、専門的な意見交換や情報共有ができるだけでなく、指導教員から直接指導を受けられ、自信を持って課題に取り組むことができます。また、日本人学生がチューターとして留学生の面倒を見てくれたので、短期間で研究室の環境に馴染むこともでき、毎日授業が終わった後、研究室に「帰る」のが楽しみでした。一方、メルボルン大学では、授業や研究は建築学部の建物内のさまざまな教室やスタジオで行われ、建物全体が居場所といった雰囲気です。
研究室の見学ツアー
研究室での食事会
東工大で過ごした5ヵ月間で得た経験や知識は期待をはるかに上回るものでした。おかげで、建築家の文化やビジョンの重要性という点で、これまでとは違った視点で建築を見ることができるようになりました。この経験から学んだものを仲間や後輩と分かち合うのはもちろんのこと、将来建築家として成長し、より良い社会構築を目指すうえでの糧にしたいと思います。
針谷 駿
大学院総合理工学研究科 環境理工学創造専攻 修士課程2年
メルボルン大学への留学
新しいチャレンジができる環境に身を置くことで、どこへ行こうとも成長できると考えていたので、留学先を選ぶにあたり、特定の国や言語、大学を考えていたわけではありませんでした。まず、候補を地球科学について学べる大学にしぼり、最初はインドネシアを検討しました。しかし、最終的には、世界中から集まる留学生たちが英語を当たり前に話す環境は自分を試すのにはいいと思い、メルボルン大学に決めました。現在は、地球科学専攻に所属し、物理探査手法やアカデミック・ライティングの授業の履修を終え、「地球潮汐重力計を使った重力探査を地下水変動の推定に役立てる」という研究をしています。
大学の学生寮「レジデンシャル・カレッジ」
ビクトリア州立図書館内の様子
両大学に共通しているのは、熱心で探究心のあるところだと思います。学生が各自の課題や研究に打ち込むのはもちろん、グループワークでも一人ひとりがきちんと役割を果たそうとします。一方で、日本では「理系」を型にはめる傾向がありますが、メルボルン大学ではそういったことはなく、本当に色んなタイプの学生がいると感じました。特に印象的なのは、コミュニケーション能力、リーダーシップなど、日本の理系学生が普段意識しないようなスキルを貪欲に身に付けようとしている姿勢を多くの人に見ることができたことです。
フィールドワークで訪れたメルボルン郊外のギプスランド
市内にあるお気に入りのスポット
自分の意見やライフスタイルをしっかり持ちつつ、自分とは違う意見を持つ人を受け入れることができるようになったのは大きな収穫でした。様々な背景や経験を持つ人々との交流を通して、今まで考えが及ばなかった事柄について考える機会を得ることができ、視野が広がりました。また、ここで研究や生活をする上で、自分で考え、決断し、解決していくこともよい経験となっています。いい意味で貪欲になりました。この経験で身に付けたことを今後の研究や仕事に活かしていく自信もついたと感じています。
大学の友達とバドミントンを楽しむ針谷さん(左端)
図書館内のチェスコーナー
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2016年5月掲載