国際交流
国際交流
「違い」を超えた交流が多様性を支える
現在、本学には1,200人を超える留学生が在籍しています。その国と地域は75にわたり、東工大を国際色豊かなキャンパスに作り上げています。その一方で、母国を遠く離れ、文化習慣が大きく異なる環境で生活する留学生は日々さまざまな問題に直面します。そのような状況を自分たちの手で少しでも改善しようと積極的に活動する、東京工業大学留学生会(TISA※1:ティサ)を紹介します。
TISA立ち上げのきっかけとなったのは、留学生が抱える問題解決の糸口を見つけるために、各国の留学生会の代表者と留学生センター(当時)※2が話し合いの場を持ったことです。それまで横のつながりを持たなかった各国留学生会が、留学生に共通する問題点を共有し、その解決に向けて力を合わせることを目的として、2007年10月5日に正式にTISAが発足しました。
日本を含む異文化間の交流と理解を深め、さまざまな違いを超えて東工大留学生の利益のために活動するTISAは、いわば留学生の「組合」のような存在です。活動の目的は、主に以下の5つです。
TISAの最も重要な役割は、留学生が東工大コミュニティーの一員であると感じられる環境作りです。メンバーには留学生のほか、国際交流に関心のある日本人学生も加わり、学生が自由に交流できる場を用意します。
基本的にTISAのイベントには留学生、日本人学生を問わず参加できますが、その中でも言葉のハードルが低いスポーツを通じた交流は特に人気があります。設立当初から実施するTISA最大イベントの「スポーツフェスティバル」には現在250名を超える参加者があり、サッカー、バスケットボール、卓球、バドミントン、eスポーツ※3など、留学生と日本人学生が一緒になってスポーツ三昧の1日を過ごします。
そして、2015年から取り組んでいるのが、学内の体育系サークルの体験プロジェクトです。これまでテニス、合気道、セパタクローの3つのサークルと連携して、交流を兼ねた体験会を実施しました。言葉が壁となりやすいサークル活動の紹介も兼ねたイベントです。3回とも大変好評で、今後も連携するサークルを増やしていく予定です。
各留学生の持つ文化背景は、個性であり、母国とのつながりであり、そして、東工大の多様性の基礎となるものです。これを守るためにはお互いの「違い」を理解する必要があるという考えのもと、TISAではさまざまなイベントを学内外で実施しています。
毎週実施しているこのランチタイムのイベントでは、留学生が自分の国を代表する「アンバサダー(大使)」として、国の文化や歴史などを紹介します。“Native(ネイティブ)”には「そこで生まれ育った者」という意味があります。ここでアンバサダーとなった学生は、自分の国を振り返ることで自らの文化アイデンティティを再認し、参加者は異文化の知識を“Native”から直接得られる機会となります。
TISAはキャンパスの外でも活動しています。メンバーが大岡山キャンパス近隣の大田区立清水窪小学校に出向いて文化紹介をする活動を2010年から実施するほか、3年前からは大岡山北口商店街振興組合が主催する大岡山さくらまつりと工大祭に「English Café」を出店し、それぞれの国に伝わる民話や遊びなどを通して交流しています。
TISAの活動は、東工大の留学生がおかれる環境をよりよくすることが目的であり、根本から改善するためには大学側の協力が不可欠です。そのため、これまで積極的に定期的な意見交換会等を通して対話に取り組んできました。このコミュニケーションを強化するために、2016年6月「Weekly TITech Student Forum (WTSF)」(東工大学生フォーラム)を立ち上げました。大学側の代表としてこのフォーラムに参加する水本哲弥副学長(教育運営担当)は、「本学の学生が学生生活を送る上で持つさまざまな疑問に大学側が直接耳を傾け、質問に答えることのできる貴重な機会であり、学生生活の質を向上させるための手段として大学と学生の双方にとって非常に有効だと考えています」と話し、全面的に支援しています。WTSFは現在TISAが最も力を入れている活動であり、これまでに学生支援課や学生相談室、留学生交流課の担当者が出席し、奨学金、キャンパス内での安全、学習・履修、ハラスメント、学生寮やアパート等の問題が話し合われ、留学生の抱える問題解決に向けて一歩一歩踏み出しています。
サラ・アイマン・メトワリさん(エジプト)
大学院理工学研究科通信情報工学専攻修士課程2年
初めて東京に来て、右も左もわからないばかりか、それを聞ける人すらいなく途方に暮れました。でも、東工大に来た最初の日にTISAのメンバーに出会い、それから今日までずっとここでの私を支えてくれています。TISAでなければ決して出会うことのなかった素晴らしい人たちとのたくさんの出会いがあり、その中から親友と呼べる友達もできました。TISAは私にとって東工大の居場所であり、家族です。困ったとき、ただ話を聞いてもらいたいときに耳を傾けてくれる仲間がいる場所です。
キナンティ・ララサティさん(インドネシア)
大学院理工学研究科通信情報工学専攻修士課程2年
TISAには毎年たくさんの楽しいイベントがあって、留学生を中心にいろんな人と知り合うことができる場所です。毎回、世界中からきた新しい友達ができて、留学生にはとってもお勧めです。
各国の留学生会代表数名による問題提起から始まったTISAの活動は、約10年の月日を経て東工大の多様性を支える大きな柱となっています。
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2016年12月掲載