教育

地惑巡検 ハワイ諸島

地惑巡検 ハワイ諸島 日本では見られない、地球の姿を見に行こう!

地惑巡検の歴史

地惑巡検は理学院地球惑星科学系が学士課程(2年目)の学生を主な対象として実施している海外地質観察旅行です。

これまで訪れた場所は、アメリカを中心として、グランドキャニオン、ヨセミテ渓谷、デスバレー、アリゾナクレーター、キラウエア火山など、地質学的に多様で極めて興味深い土地ばかりです。アメリカ本土への巡検が13回、ハワイ島への巡検が7回、そしてニュージーランドも1回訪れています。

地惑巡検のねらい・概要

地球惑星科学系では、グローバルな視野を持つ新しい世代の地球惑星科学者、技術者を育てることを目指して学生教育に当たっています。この教育の一環として、地球惑星科学系では、「地惑巡検」という授業を実施しています。自然に直接触れることが大切な学問分野であること、また昨今、科学者に限らず、広く全地球的な認識が求められていることを鑑み、地惑巡検を海外で実施しています。

日本列島はアジア大陸の縁辺に位置し、火山および地震活動に代表される特徴的な地球科学現象が観察される場所です。しかし、国内では直接観察できない、多様な汎地球規模の自然現象や重要な地学現象が世界にはたくさん存在します。それ故、諸外国に赴き、直接現地でそれらを観察することがグローバルな視野を持つ人材の育成に必要です。またこの機会を利用して、諸外国で他大学の研究者や学生たちと直接交流を図ることは、若い学生たちの将来にとって大変有意義なことでもあります。

2013年度は2月19日から2月27日にかけて、ハワイへの地惑巡検を実施しました。オワフ島とハワイ島に滞在し、ハワイ大学やハワイ火山観測所などで専門の講義を受け、キラウエア火山の山頂クレーターから海岸の赤熱溶岩台地を巡り、そしてマウナケア山頂のすばる望遠鏡施設見学までと、幅広い学習を行いました。

2013年度地惑巡検

1. 事前学習

地惑巡検は、単に海外へ「おでかけ」するわけではありません。巡検出発前から、巡検先に関する講義を実施するのはもちろんのこと、学生が渡航先の地質諸現象に関する英語の科学論文をグループ学習して、そのプレゼンテーションを行うなど、高い自主性と創造力を養うよう計画されています。

「旅行のしおり」もお手製です。学生自身が、専門の科学論文の内容を日本語でまとめ直し、様々な参考資料や教員への質問を通じて調べた成果の集大成を現地のガイドブックとして渡航の際に持参します。そして現地では、要所要所で、教員による解説に加え、それぞれの班による解説が行われます。

学生作、巡検のしおり。A4で100ページ以上もある。
学生作、巡検のしおり。A4で100ページ以上もある。

事前発表会。小グループでのハワイの火山などについて調べた内容をプレゼンテーション。
事前発表会。
小グループでのハワイの火山などについて
調べた内容をプレゼンテーション。

2. 巡検の様子

最初の目的地は、オワフ島のハワイ大学です。Mike Garcia教授にハワイ諸島の全体的な成り立ちについて、レクチャーしてもらいます。学生たちは、英語での質問もドキドキしながらも果敢にチャレンジします。

Mike Garcia教授のレクチャー。もちろん英語です。
Mike Garcia教授のレクチャー。もちろん英語です。

マカプーヘッドへ!
マカプーヘッドへ!

ハワイ諸島全般の形成について詳しく学んだ翌日は、オワフ島巡検です。ヌーアヌパリとマカプーヘッドで地形などを観察します。ヌーアヌパリは1,500mの垂直の断崖で、薄い溶岩が積み重なって火山の山体が形成していることが見て取れます。マカプーヘッドでは、「ピクライト」と呼ばれる黄緑色の小さい鉱物がたくさん含まれている岩石を採取します。オワフ島は溶岩の島です。オワフ島では地球内部から直接マグマが昇ってくるため、こうした鉱物を見ることができるのです。

ピクライトの観察と採取。
ピクライトの観察と採取。

マカプーヘッド遠景。真っ青な海にはクジラが泳いでいました。
マカプーヘッド遠景。
真っ青な海にはクジラが泳いでいました。

地上で最も有名な火山の1つ、キラウエア火山目指して、一行はオワフ島からハワイ島へと渡ります。まず、ハワイ火山観測所を訪問し、国際的に有名な火山学者Don Swanson博士からキラウエア火山についてレクチャーを受講し、実際にキラウエアイキクレータを徒歩で渡りました。

キラウエアイキの東には500年ほど前にキラウエア山頂を形成していた楯状溶岩丘があり、溶岩トンネルが残されています。その中も歩いて観察を行いました。

キラウエアイキ溶岩湖の徒歩見学。まだ所々で蒸気が昇っています。
キラウエアイキ溶岩湖の徒歩見学。まだ所々で蒸気が昇っています。

溶岩トンネル入口。
溶岩トンネル入口。

溶岩トンネルの中。このトンネルを通じて溶岩が流れ出ていました。
溶岩トンネルの中。
このトンネルを通じて溶岩が流れ出ていました。

キラウエア火山は現在も活動中の火山です。今も溶岩が海へと流れ出しています。

年によっては、流れる溶岩に触れられる距離に近づくことができますが、今年は残念なことに赤熱溶岩は道からかなり遠くを流れていて、すぐそばまで行くことはできませんでした。代わりにヒリナ断層やクレーターロード付近の比較的新しい溶岩を見学しました。パーホイホイ溶岩と呼ばれる縄目状の真っ黒な溶岩がダイナミックな風景を作り出しています。

巡検5日目、クレーターロード終点の溶岩観察。

巡検5日目、クレーターロード終点の溶岩観察。

巡検5日目、クレーターロード終点の溶岩観察。

国立天文台の協力を得て、マウナケア山頂のすばる望遠鏡と山麓施設の訪問も行いました。山麓施設ですばる望遠鏡や宇宙についての講演を受けたのち、4,200mにあるすばる望遠鏡へ向かいます。南国ハワイにありながら、気温が0度付近で、気圧も地上の6割程度という厳しい環境ですが、諸外国の大型望遠鏡が立ち並ぶ風景は圧巻です。

標高4,200mにあるすばる望遠鏡のドーム。
標高4,200mにあるすばる望遠鏡のドーム。

すばる望遠鏡の下部で解説を聞いているところ。
すばる望遠鏡の下部で解説を聞いているところ。

参加学生の感想

今回の地惑巡検では、残念ながら、溶岩自体を見ることはできませんでしたが、実際の火山が作り出す景色をただ見るのではなく、専門の先生の解説をうかがい、参加者同士で議論しながら観察することで、より深く理解することができたと思います。また、個人で行くにはハードルの高いすばる望遠鏡の見学ができたことも、巡検の素晴らしい点だと思います。加えて巡検中は、自分で食事を用意する必要があったため、実際に現地の生活、文化に触れることができ、貴重な体験となりました。(地球惑星科学科2年・女子学生)

フィールドでは先生がその場所の地質の説明だけではなく、何がまだわかっていないのかをはっきり教えていただけたので、学生の身であっても主体的に取り組みやすかったです。 例えばなぜこの断崖絶壁ができたか、といった問いを示され、その場で考えます。そういった作業の中で火山とはこういうものだという自分なりのイメージを自分の中に持つことができたことがこの巡検の収穫といえます。自由時間も十分あり、各自ハワイの雰囲気を楽しみました。(地球惑星科学科2年・男子学生)

2013年度地惑巡検は、当時の理学部地球惑星科学科により実施されました。

ワイキキビーチの夕焼け 帰国後には、巡検レポートを作成して提出です。
ワイキキビーチの夕焼け。
帰国後には、巡検レポートを作成して提出です。

特に地惑巡検で初めて海外を経験する学生にとっては、異文化に触れる良い機会にもなったようです。この経験を糧に、海外でのワークショップなどにも怖がらず参加できるようになってほしいと思います。

次回の地惑巡検は、グランドキャニオンやローウェル天文台など興味深いスポットのあるアメリカ西海岸を訪れる予定です。

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2014年6月掲載

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東京工業大学 総務部 広報課

Email pr@jim.titech.ac.jp