国際交流

トップサイエンティストと高校生が科学の明日を語る―Molecular Frontiers Symposium 2017―

トップサイエンティストと高校生が科学の明日を語る ―Molecular Frontiers Symposium 2017―

世界にインパクトを与えた科学者と学ぶ2日間

2017年10月21日~22日の2日間、全国の高校生と、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストらが本学に集結し、科学の面白さやその本質を存分に学ぶことのできるシンポジウム「Molecular Frontiers Symposium 2017 "Science for Tomorrow"」が開催されました。高校生たちは東工大生のサポートを受けながら、国際的に著名な科学者たちと直に交流を深め、また同じチームの一員として専門的な実験とグループワークに取り組みました。

Molecular Frontiers Symposiumは、スウェーデン王立科学アカデミーによって運営される非営利団体 Molecular Frontiers Foundationにより2006年に開始され、毎年世界各地でノーベル賞受賞者等による講演プログラムが開催されています。その開催目的は、分子科学の認知向上にあり、私たちの日常や地球に関するテーマに沿って毎年シンポジウムを開催しています。

そのシンポジウムを、2017年は東工大がコーディネートすることになりました。日本の大学が主催するのは2016年の東京理科大学に続き2回目です。本学では、従来の講演型のシンポジウムではなく、対話を重視した「参加型」をコンセプトに、講演・実験教室・グループワークの3つの構成としました。そして全国から科学に強い関心のある高校生の参加を募ったところ、85名の高校生が、この大変貴重で刺激的なチャンスに名乗りを挙げました。

本シンポジウムに協力した研究者

  • ベンクト・ノルデン博士(Molecular Frontiers Foundation創設者)
  • アダ・ヨナス博士(2009年ノーベル化学賞受賞)
  • ティム・ハント博士(2001年ノーベル生理学・医学賞受賞)
  • ジョセフ・カーシュヴィンク博士(本学地球生命研究所(ELSI)特任教授、カリフォルニア工科大学卓越教授)
  • 大隅良典博士(本学栄誉教授、2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)
  • 白川英樹博士(本学卒業生、2000年ノーベル化学賞受賞)
急遽欠席のためビデオ講演

講演とフィーカ~研究には「curiosity(好奇心)」が大切~

1日目は、科学者5名による講演が行われました。日本語通訳はなく、すべて英語でのプレゼンテーションです。高校生たちは本学の学生が作成した事前課題に取り組み、講演者の研究内容について学びを深めた上で、当日に臨みました。事前課題は高校生にとって大きな手助けとなり、高度な専門的内容を含む講演でしたが、会場からはたくさんの質問が寄せられ、活発な議論が行われました。

高校生に語りかけるハント博士

高校生に語りかけるハント博士

講演の中で、大隅博士をはじめ、科学者たちから共通して出てきた言葉が「curiosity(好奇心)」です。誰よりも好奇心を持ち、研究について楽しそうに話すその姿勢は、本学学生教職員を含め、多くの聴衆を惹きつけました。

また、講演の休憩時間には、前年度に東京理科大学で開催されたときに、高校生から最も良かったとの声があったフィーカ(fika;スウェーデン風コーヒーブレイク)にて、皆で一緒にお茶を飲みながら、交流のひと時を楽しみました。

フィーカの様子

フィーカの様子

フィーカの様子

講演動画

アダ・ヨナス博士 "Next generation environment friendly antibiotics"

ティム・ハント博士 "My Life as a Scientist"

ベンクト・ノルデン博士 "Discovery of a stretched conformation of DNA - could it have a biological role?"

ジョセフ・カーシュヴィンク博士 "Earth's Magnetic Biosphere"

大隅良典博士 "What is autophagy? A dynamic cellular recycling process"

実験教室とグループワーク~Science for Tomorrow~

2日目は、高校生85名が6つのグループに分かれて、「Science for Tomorrow」をテーマに実験教室やグループワークを体験しました。実験教室では、ノーベル賞を受賞した研究に関する実験を科学者とともに行い、グループワークでは、各科学者の研究内容と密接に関わるテーマについてディスカッションを行いました。

プログラム
テーマ
大隅博士実験教室
蛍光顕微鏡によるオートファジー現象の観察
白川博士実験教室
導電性高分子を使った二次電池の作製

アダ・ヨナス博士(村上聡教授)

グループワーク

Futuristic Human:リボソームやタンパク質の機能を明らかにすることにより、どんな未来型ニンゲンが現れる?

ティム・ハント博士

グループワーク

Growth:細胞周期を操ることが出来たら、未来にどんなことが可能となる?

ベンクト・ノルデン博士

グループワーク

Is "Science and Technology" Always Beneficial to Human Beings?:研究者として成功するには?

ジョセフ・カーシュヴィンク博士

ミニ実験及びグループワーク

The Sixth Sense - Magneto-reception:地磁気受容体の研究を生活に応用すると100年後何ができる?(磁性細菌顕微鏡観察含む)
急遽欠席となったアダ・ヨナス博士に代わり、ヨナス博士と親交のある本学の村上聡教授がグループワークを担当しました。

2日目のプログラムは、科学者と高校生との対話を増やすことを目標に本学が今回から新たに追加したものであり、世界トップレベルの難しい研究を、高校生が実体験を通じて自分のものとして吸収し、楽しんでもらうことがねらいでした。高校生たちはそれぞれの課題についてアイデアを出し合い、実験等からデータを集め、発見したことなどについてプレゼンを行うなど、科学者の指導を受けながら科学の醍醐味を味わいました。

大隅博士実験教室で、オートファジー現象の発見を追体験する高校生たち

大隅博士実験教室で、オートファジー現象の発見を追体験する高校生たち

2日目の実験教室・グループワークを実現するために、科学者と高校生の架け橋となったのが本学学生です。このシンポジウムの開催を知って、「ノーベル賞受賞者とシンポジウム運営なんて面白い!」と興味を持った学生や、普段は子供向け科学教室を企画している学生サークルのメンバーなどの有志28名が集まりました。学生アシスタントは実験教室の手伝いを担当し、学生メンターは、グループワークの課題を決めファシリテーターとして対話を促進する役割を担いました。

2日目の様子

2日目の様子

2日目の様子

2日目の様子

2日目の様子

この記事の最後に、学生アシスタント・学生メンターのレポートを載せておりますので、ぜひご覧ください。

シンポジウムを終えて

シンポジウムに参加した高校生は、「最先端の科学、まだ解明されていない科学に触れることにワクワクやスリル感を覚えました」「夢のような最高の2日間でした」「世界一流の科学者と直接対話ができて、距離を近く感じました」など、トップサイエンティストと一緒に過ごした高揚感と、今後につながる手応えを掴んだようでした。また「他の学校の高校生と交流できて良かった」という声も多数寄せられ、自分と同じく科学に関心の高い同世代との出会いにも、強い刺激を受けていました。

1年間をかけて準備をしてきた本シンポジウムでは、研究者6名、本学学生28名、参加高校生85名との世代を超えた密な対話が実現しました。台風による影響で2日目午後に予定されていた全体成果発表を急きょ、各グループで行うという変更もありましたが、それがかえって良い結果を生むことになり、各グループにおいて理解を深めることができました。最後に担当した科学者より一人一人の高校生に修了証が渡されると、全プログラムをやり遂げた高校生からは満面の笑みがこぼれ、今回のシンポジウムに関わった本学学生・教員・職員全員の苦労を吹き飛ばしてくれました。人類の未来に多大な貢献をした世界の科学者たちと一緒に実験し、議論して考えたこの2日間の経験は、高校生たちがこれから歩む道の原点となっていくことでしょう。

本シンポジウムを支えた科学者と本学学生・教職員

本シンポジウムを支えた科学者と本学学生・教職員

本学学生28名の紹介とメッセージ

学生アシスタント12名と学生メンター16名のメッセージをご紹介します。学生達のコメントからは、このシンポジウムで得た経験を糧に、今後の自身の研究や教育活動に更なる意欲を燃やして臨んでいこうとする気概が感じられます。ぜひご覧ください。シンポジウムの裏話や高校生へのメッセージも必読です。

白川英樹博士実験教室担当 学生アシスタント

白川博士による実験教室のグループでは、導電性高分子(ポリピロール・ポリアニリン)を使った二次電池実験を行いました。皆、用意された白衣、防護メガネ、手袋を身にまとい、研究チームの一員として真剣に実験を行いました。本学の学生アシスタント12名は、高校生をサポートするために白川博士と事前に実験を行い、綿密に準備を進めました。

白川博士による実験教室のグループでは、導電性高分子(ポリピロール・ポリアニリン)を使った二次電池実験を行いました。皆、用意された白衣、防護メガネ、手袋を身にまとい、研究チームの一員として真剣に実験を行いました。本学の学生アシスタントは、高校生をサポートするために白川博士と事前に実験を行い、綿密に準備を進めました。

8年ぶりの再会を喜ぶ白川英樹博士と加藤さん
8年ぶりの再会を喜ぶ白川英樹博士と加藤さん

加藤颯太さん(物質理工学院 応用化学系 修士1年)
加藤颯太さん
(物質理工学院 応用化学系 修士1年)

中学2年次に白川先生が塾長を務めるソニー教育財団「科学の泉–子ども夢教室」(第4回)に参加し、導電性高分子を使った実験教室を体験しました。「科学の泉」の後に東工大の高分子工学科に所属し、さらに修士課程に進学した今、自分が研究に携わる立場として高校生に貴重な体験をしてもらう一助となればと考え、参加致しました。本イベントが高校生にとって科学により関心を持つきっかけとなることを祈っています。

アダ・ヨナス博士(村上聡教授)グループワーク担当 学生メンター

アダ・ヨナス博士のグループでは、急きょ欠席となってしまったヨナス博士に代わり、博士と親交のある本学の村上聡教授の指導の下、「Futuristic human」をテーマに、リボソームやタンパク質の機能を明らかにすることにより、どんな未来型ニンゲンが現れるかについて議論を行いました。

アダ・ヨナス博士のグループでは、急きょ欠席となってしまったヨナス博士に代わり、博士と親交のある本学の村上聡教授の指導の下、「Futuristic Human」をテーマに、リボソームやタンパク質の機能を明らかにすることにより、どんな未来型ニンゲンが現れるかについて議論を行いました。

髙橋雄大さん(生命理工学院 生命理工学系 修士1年)
髙橋雄大さん
(生命理工学院 生命理工学系 修士1年)

グループワークが実際に始まって軌道に乗り始めると、メンターの助けがなくとも高校生たちは活発なディスカッションを繰り広げてくれ、またメンター側では全く考えもしなかったような発想を披露してくれました。
その様子を見ていて、「何事も臆することなく、自由なアイデアをぶつけてみる」ことの持っている力を身に沁みて感じました。

ティム・ハント博士グループワーク担当 学生メンター

ティム・ハント博士のグループでは「Growth」をテーマに、細胞周期を操ることが出来たらどんなことが可能となり、一方それによりどんなリスクが生じるのかをめぐって、アイデアを膨らまして議論を行いました。

ティム・ハント博士のグループでは「Growth」をテーマに、細胞周期を操ることが出来たらどんなことが可能となり、一方それによりどんなリスクが生じるのかをめぐって、アイデアを膨らまして議論を行いました。

浅輪泰允さん(生命理工学院 生命理工学系 修士1年)
浅輪泰允さん
(生命理工学院 生命理工学系 修士1年)

はじめは高校生たちが緊張をしてしまい、ほとんど先生と話ができませんでした。そこで日本のどこが好きかや朝ご飯何食べたかなど他愛もない話で会話を楽しんでもらい、英語で話すことの壁を取り払いました。
すると高校生たちは積極的に先生に話しかけられるようになりました。
この経験から言語の壁を越えたファシリテーターとしての自覚を持てました。

ベンクト・ノルデン博士グループワーク担当 学生メンター

ベンクト・ノルデン博士のグループでは「Is "Scince and Technology" always beneficial for human beings?」をテーマに、若者が科学者として成功するポイントは?を切り口に議論をしました。

ベンクト・ノルデン博士のグループでは「Is "Scince and Technology" always beneficial for human beings?」をテーマに、若者が科学者として成功するポイントは?を切り口に議論をしました。

崎村広人さん(物質理工学院 材料系 博士後期課程1年)
崎村広人さん
(物質理工学院 材料系 博士後期課程1年)

シンポジウムの2日間はもちろんですが、準備段階で学生同士、時には先生方も交えながらグループワークの内容について語り合ったことが最も印象に残っています。
参加者の高校生にグループワークで何を考えてほしいのか。それを通して何を持ち帰ってほしいのか。
これらは普段の研究生活にはない視点からの発想が必要で、議論を重ねるたびに自分自身の視野が広がっていくのを感じることができました。

ジョセフ・カーシュヴィンク博士グループワーク担当 学生メンター

ジョセフ・カーシュヴィンク博士グループワーク担当 学生メンター

サンプル採取を行うカーシュヴィンク博士と学生メンター
サンプル採取を行うカーシュヴィンク博士と学生メンター

ジョセフ・カーシュヴィンク博士のグループでは、磁性細菌の顕微鏡観察の後、地磁気受容体の研究を生活に応用すると100年後どのようなことが出来るようになるかについてクリエィティブな議論を行いました。博士の提案で実験教室も行うこととなり、学生メンターと博士は事前に本学近くの洗足池に出向き、当日使用するサンプルを採取しました。

徳永唯希さん(理学院 化学系 修士課程2年)
徳永唯希さん
(理学院 化学系 修士課程2年)

私自身が中高の理科教員免許を取得していたため理科教育に対して関心があったこと、昨年夏にスウェーデンのノーベル博物館の見学をしていたことが今回のイベントに興味を持ったきっかけでした。

私たちのアイデアを先生や事務のスタッフの方が全力でサポートしてくださり、ただのお手伝いとしてのメンターではなく一緒にイベントを作る仲間として受け入れていただいたことがやりがいに繋がっていたと思います。今回のイベントが高校生の皆さんにとってScience for Tomorrowへの一歩になっていれば幸いです。

ノーベル生理学・医学賞2016 大隅良典栄誉教授

大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。

ノーベル生理学・医学賞2016大隅良典栄誉教授

SPECIAL TOPICS

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2018年4月掲載

4月10日14:00 学生の学年を一部修正しました。