教育

科学・技術の最前線 新入生が最先端の知にふれる

科学・技術の最前線 新入生が最先端の知にふれる

本学で2016年に実施した教育改革では、学生達が高い目標を持って、自ら道を切り拓いていく志を胸に抱き、躍進していけるような大学にするため、様々な取り組みが行われました。その中で、新しく入学してきた学士課程1年目の学生が抱く大きな期待と希望をさらに膨らませ、自ら学んでいくマインドを醸成するため、新たな授業が開講されました。

1つは「東工大立志プロジェクト」、もう1つがこの「科学・技術の最前線」です。

第一線で活躍する研究者・技術者が登壇

東工大レクチャーシアターでの講義風景
東工大レクチャーシアターでの講義風景

本学学士課程の新入生は、自らの興味・関心にもとづき「※1」というグループに分かれて日々勉強しています。しかしこの「科学・技術の最前線」では、各類の教員により国内外から招へいされた第一線で活躍する研究者・技術者が講義を担当することで、第1類~第7類までの全ての分野にかかる授業を受け、最先端の科学技術にふれることができます。そして講義内容について、社会での位置付けや自身との関連性などを考察し、学びを深めていきます。

この授業は、2015年に新設された「東工大レクチャーシアター」で実施されます。この講義室は講師が講義・実験を行う場所がすり鉢の底になる形状で、劇場のような臨場感が得られる設計になっています。

魅力的なプレゼンを聴講者に提供する

レクチャーシアターに立ったそれぞれの講師は、実験などを交えながら聴講者を惹きつける、魅力的な授業を展開していきます。「科学・技術の最前線」の授業が初めて開講された2016年には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の各プロジェクトリーダーを招へいした「あかつきとはやぶさ2」(第5類)、2008年にノーベル化学賞を受賞した下村脩氏の研究テーマでもある「GFP-緑色蛍光タンパク質の科学と応用」(第7類)などが行われました。

2017年も科学者・技術者としての夢が広がる授業が行われました。以下に、実施された各類の講義を紹介します。

第2類「サバイバルサイエンスの挑戦」の授業風景
第2類「サバイバルサイエンスの挑戦」の授業風景

第1類

  • 「ナノ炭素の世界」
  • 科学技術振興機構 プログラム主幹 榎敏明

第2類

  • 「サバイバルサイエンスの挑戦」
  • 東京工業大学 教授 原亨和

第3類「あらゆるモノは原子の集合体 —その原子を一つ一つ見る、そして触る—」で実演を行う一杉教授
第3類「あらゆるモノは原子の集合体 —その原子を
一つ一つ見る、そして触る—」で実演を行う一杉教授

第3類

  • 「亀の甲を組み立ててキラル化合物を構成する」
  • 東京工業大学 教授 田中健
  • 「分子のなかで金属をはたらかせる技術 —錯体化学の最前線—」
  • 東京工業大学 教授 村橋哲郎
  • 「あらゆるモノは原子の集合体 —その原子を一つ一つ見る、そして触る—」
  • 東京工業大学 教授 一杉太郎

第4類「腹腔鏡手術用ロボットシステムの開発」で紹介された同ロボットシステム
第4類「腹腔鏡手術用ロボットシステムの開発」で
紹介された同ロボットシステム

第4類

  • 「腹腔鏡手術用ロボットシステムの開発」
  • 東京工業大学 准教授 只野耕太郎
  • 「スターリングエンジン」
  • 東京工業大学 准教授 佐藤進
  • 「ホンダにおけるジェットエンジン開発への挑戦」
  • 本田技研工業 執行役員 輪島善彦
  • 「工作機械」
  • 東京工業大学 准教授 八木透
  • 「ファナックにおける先端産業用ロボット」
  • ファナック 開発部長 呉允鋒

第5類

  • 「ビッグデータと人工知能が切り拓く未来」
  • 東京工業大学 准教授 下坂正倫
    三菱UFJファイナンシャルグループ イノベーション・ラボ所長 上原高志
    LINE DataLab.VA開発チームデータ分析チーム長 橋元泰一
    DMM.make AKIBA総支配人 橋場光央
    士ゼロックス コミュニケーション技術研究所長 増市博

第6類「ドクターナダレンジャー —災害のメカニズム—」の授業風景(2016年撮影)
第6類「ドクターナダレンジャー
—災害のメカニズム—」の授業風景(2016年撮影)

第6類

  • 「建築から考える社会デザイン」
  • 東京藝術大学建築科 准教授 藤村龍至
  • 「厳しい海洋環境に挑んだボスポラス海峡横断鉄道トンネル」
  • 大成建設 技術センター 土木技術開発部 土木技術開発部長 今石尚
    同センター水域・環境研究室水域・環境研究室長 伊藤一教
  • 「ドクターナダレンジャー —災害のメカニズム—」
  • 防災科学技術研究所 総括主任研究員 納口恭明
    同研究所 専門員 罇(もたい)優子

第7類

  • 東京工業大学 教授 田口英樹、山口雄輝、村上聡、木村宏
    同 特任教授 TAKAHASHI MASAYUKI

特別講義

  • 「導電性高分子の発見とセレンディピティー」
  • 筑波大学 名誉教授(東京工業大学 博士) 白川英樹

第2類講義動画「サバイバルサイエンスの挑戦」(約30分)

第2類にかかる授業「サバイバルサイエンスの挑戦」の様子を、動画でご覧いただくことが可能です。アンモニア合成法として100年以上の歴史を持つハーバー・ボッシュ法に代わるプロセスが東京工業大学の研究者らにより実現されつつありますが、その最新情報を分かりやすく伝える講義です。

ノーベル賞受賞者の講演

授業が始まった2016年と翌年の2017年の最終回の授業では、2000年ノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士による特別講演が行われました。「導電性高分子の発見とセレンディピティ」というタイトルの講演では、ノーベル賞の受賞理由となった導電性高分子の研究に関する講話や、これから大学生活・研究活動を行う上での心構えを伝え、新入生を激励しました。

白川英樹博士による特別講演の様子(70周年記念講堂で開催)

バックキャスト型の教育

授業が終わると多くの学生から質問の手が挙がり、中にはその数が多すぎて途中で打ち切りとなった授業もあります。また授業後のアンケートでも、「今日の授業を聴講して学習意欲が高まりそうだ」との回答が多数を占めており、受講生の今後につながる良い刺激となっていることが伺えます。

受講者を対象にしたアンケートの結果(2017年)

Q1. 講義内容はあなたにとって新鮮でしたか?
Q1. 講義内容はあなたにとって新鮮でしたか?

Q2. 今日の講義を聴いて学習意欲が高まりそうですか?
Q2. 今日の講義を聴いて学習意欲が高まりそうですか?

Q3. 今日の講義で自分が目指す人物像についてヒントが得られましたか?
Q3. 今日の講義で自分が目指す人物像についてヒントが得られましたか?

Q4. レクチャーシアターを使っての講義をどう感じましたか?
Q4. レクチャーシアターを使っての講義をどう感じましたか?

「科学・技術の最前線」は、学士課程入学直後の高度創造性育成教育に焦点をあてた「国際フロンティア理工学教育プログラム」が展開している、「バックキャスト※2型低学年教育」の核となる授業として位置づけられています。つまり、トップクラスの研究者・技術者によるレクチャーを通じて最初に「頂の景色」を見せ、自分がそのレベルに到達するには、どのような道のりを歩めば良いのかを逆算して学生に考えさせることをねらいとしています。これから東工大で学修を進めていくにあたり、新入生それぞれの中に、将来像の実現に向けた高い志が生まれてくることが期待されます。

※1 :平成31(2019)年4月入学以降の学士課程入学試験より、合格者の入学時の所属を、「類」から「学院」に変更します。詳細は下記をご覧ください。

2019年4月以降の入学を目指す方へ

2019年4月以降の入学を目指す方へ
平成31(2019)年4月入学以降の学士課程入学試験が変わります。
詳細は、下記ページから「入学者選抜要項」をご覧ください。

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学院 | 東工大で学ぶouter

※2 バックキャスト :未来を予測する際、目標となるような状態を想定し、そこを起点に現在を振り返って今何をすべきかを考え、分析、実行すること。

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2017年10月掲載

お問い合わせ先

東京工業大学 総務部 広報課

Email pr@jim.titech.ac.jp