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留学生向け交換留学プログラム —体験者が語るYSEPとACAPの魅力—

留学生向け交換留学プログラム ―体験者が語るYSEPとACAPの魅力―

東京工業大学では、2000年から、日本語を母国語としない外国人留学生が東工大で学べる機会を積極的に提供しています。その代表的な交換留学プログラムが、2000年に開始したYSEP(Young Scientists Exchange Program)と、2011年に開始したACAP(Academic Cooperation Agreement Program)です。このプログラムでは、基本的に海外授業料不徴収協定校の大学院学生および学部学生が、最長1年間東工大の研究や日本文化を中心に学ぶことができます。YSEPとACAPの体験者、計3名の学生が、それぞれのプログラムの特徴や魅力、体験を語ってくれました。

この記事は2016年8月に行われたインタビューを元に制作しました。2016年8月現在の情報です。

YSEP留学生

ファム・ディン・ゴク(ベトナム)

ファム・ディン・ゴク

  • 専攻分野
    材料科学と技術
  • 出身大学
    ハノイ工科大学
    ※東工大国際大学院プログラム(A)の修士課程学生(2017年7月現在)
  • 研究分野
    放電プラズマ焼結によるマグネシウム/カーボナイトナノチューブ複合材料の合成と特性評価

ACAP留学生

リン・ペイロン(台湾)

リン・ペイロン

  • 専攻分野
    コンピュータサイエンスと情報工学
  • 出身大学
    台湾国立中央大学
  • 研究分野
    音楽検索における機械学習とパターン認識

クラッセン・ジョナス(ドイツ)

クラッセン・ジョナス

  • 専攻分野
    建築
  • 出身大学
    アーヘン工科大学
  • 研究分野
    空間構成の重要な理論と環境要因

東工大の交換留学プログラム、YSEP、ACAPを選んだ理由を教えてください。

ペイロン:台湾国立中央大学は海外協定校が多くいろいろな選択肢がありましたが、当初から日本で交換留学を体験したいという想いがとても強く、東工大のACAPを選びました。ACAPでの経験は大学院に進学するか否かを判断する際に参考になるのではないか、また学士課程段階で研究室での研究指導を受けることにより、専門分野であるコンピュータサイエンスの研究を実際に体験できるのではないかと考えたからです。

ジョナス:私はドイツのアーヘン工科大学で学士課程を修了しました。国際的な経験を得る目的のほか、特に日本の建築や建築家に興味があり、東工大の百年記念館とその設計者である篠原一男先生にはとても興味がありました。大阪に行くという選択肢もありましたが、東工大のACAPを選んでとても満足しています。

ディン:ベトナムの大学で同じ研究室に在籍していたYSEP経験者が、専攻分野である材料科学と生物材料の研究を進める上でYSEPの経験はとても役に立つとアドバイスしてくれました。東工大のウェブサイトでYSEPのことをいろいろと調べた上で応募しましたが、東工大にくるのは私にとって大きなチャレンジでした。実際には教員はとても親身に指導をしてくれて、研究室での研究課題についても大変感銘を受けました。指導教員は大阪で開催された国際的な学会でYSEPでの研究の経験を活かすことや、国際大学院プログラム(IGP:International Graduate Program)への応募を勧めてくれましたので、IGPの受講を決めました。

ジョナス:私の場合は、日本の建築に対する興味が東工大にくるきっかけでしたが、みなさんが留学先として日本を選んだ特別な理由はありますか。

ディン:母校の同級生から勧められたこともありますが、自分の研究を進めるための環境や特別な設備が日本では充実していることを知っていたので、躊躇なくYSEPに応募しました。

ペイロン:私もディンさんと同様に、留学先を選択する上で研究を取り巻く環境を重視しました。日本の技術は世界水準ですので、ACAPを選択することに迷いはありませんでした。

実際にプログラムに参加して特に役に立った経験や楽しんだことを教えてください。

ジョナス:まず、留学生チューターシステムがとても役に立ちました。日本の学生がチューターとして交換留学生とペアになり、日本の生活に慣れるために支援する制度です。銀行口座の開設の仕方など日常生活に必要なすべての疑問に答えてくれます。特に来日直後は分からないことが多く、チューターの助けはとても役に立ちました。日本人学生にとっても留学生と交流できるよい機会となっているのではないかと思います。

ペイロン:研究室での体験はとても貴重で楽しいものでした。打ち解けた雰囲気の研究室は、研究に集中できる理想的な環境であるだけでなく、新しい友達をつくる場でもあります。まだ、ACAPに参加して半年しか経っていませんが、すでに多くの日本人学生や他国の学生と知り合いになりました。研究室ではいつも信頼できる気の合う仲間に囲まれているという安心感を得ることができます。私は学位を取得するため台湾に帰国しますが、東工大での貴重な1年間をこれから最大限活かしていきたいです。

ディン:YSEPで受講することが必須となっているさまざまな授業に加えて、日本企業との協力連携企画はとても有益でした。日産自動車や日立製作所への訪問や、企業の社員による東工大への出張特別講義を受講しました。自分の研究に関して企業から求められていることが明確になりました。

日産自動車への訪問

ペイロン:ACAPの主な目的は自分の研究を進めることですが、YSEPでは多くの授業を受講する必要がありますか?ACAPでは希望する授業を受講することができ、取得した単位は母校の大学での認定が可能です。

ディン:YSEPでは半年コースおよび1年コースともに、プログラムを修了するために東工大で単位を取得する必要があります。学士課程の最終学年をベトナムの大学で修了しなければならないので、東工大で取得した単位を認定してもらえる制度は私にとってはとても便利で助かります。

ジョナス:ACAPの魅力は、希望する授業が受講できる点にあります。受講を希望する授業の単位が認定されるか否かは母校が決定します。ACAP受講学生として、IGPの学生が受講できるすべての授業を受講することはできませんが、旅行や他の活動も合わせて楽しみたい場合は、ACAPで臨機応変に対応できます。東工大で以前勉強したことのあるドイツの学生も同様のことを話していました。また、同じ寮で建築を専攻する他大学の学生と話しますが、東工大を選んだのは正解であったと確信しました。

東工大の交換留学プログラムに参加して、自分にとっての挑戦は何ですか。

ディン:私にとって最大の課題は言葉の壁です。研究室の学生は英語を話せるので口頭でのコミュニケーションは比較的スムーズにいきますが、書類や文献はそうはいきません。研究ではたくさんの装置や機器を使用しますが、英語のマニュアルが必ずしも用意されているわけではありません。研究室の学生から教えてもらうこともできますが、小さな問題が発生する度に頼ってしまうと、自分や他の学生の研究の進行を遅らせることにもなります。

ジョナス:そうですね、確かに言葉の壁は大きな課題ですが、幸いにも私の所属する村田研究室のメンバーは英語でのコミュニケーションに意識的に努力をしてくれます。講義は通常ほぼ英語で行われ、研究室では言語的な不自由は感じません。私は日本語を話さなくても、東京で支障なくやっていくことができると言えます。

村田研究室

ペイロン:私は10年間日本語を勉強しましたので、言葉としての問題はありません。また、台湾人は日本人や日本文化に馴染みがあるので、深刻なカルチャーショックも経験しませんでした。しかしそうは言っても、来日直後の2ヵ月はいろいろと大変で、日本の生活に慣れるには、時間がかかりました。

ジョナス:私は言葉のほか、人生のいろいろな場面で新しい視点を得ることができました。建築、デザイン、文化、食べ物をはじめいろいろなことに対して新たな取り組み方を学ぶことができ、そこで学んだ新たな視点を、ドイツで一般的とされているものと比較することができました。また、ACAPは、他のアジアの国々へ旅行する機会を持つことのできる柔軟性のあるプログラムです。ところで、みなさんは日本にいる間、旅をする機会はありますか。

ペイロン:大阪、奈良、神戸など、日本国内のさまざまな場所を訪れました。

ディン:研究室の学生と新潟にスキーに行きました。生まれて初めて雪を見たので、とても貴重な体験でした。

ジョナス:私の研究室のメンバーは、しばしば一緒に週末に旅行することがあり、これはお互いをよく知るよい機会となっています。このような研究室の文化はヨーロッパで慣れ親しんだ文化とは非常に異なっています。ヨーロッパではそれほど研究室の学生や教授と親しくなることはないのです。

研究室以外の留学生と交流する機会はありますか。

ジョナス:新しい留学生が常に寮に入り、土曜日にはサッカーの試合で集まる学生もいます。また、私と同じ立場にいる学生と問題を話し合い、経験を共有する機会にもなります。他の留学生と交流する機会はたくさんあり、東工大での生活に適応しやすい環境が整っていると思います。

ペイロン:私も寮に住んでおり、そこで毎日他の留学生と交流しています。美味しい食事を一緒に作ったり、さまざまな話題について話し合ったり、とても楽しい経験をしています。

ディン:私も東工大の寮に住んでいますが、もし来年も滞在すると決めた場合は自分自身でアパートを探さなくてはならないようです。

ペイロン:日本語が上達すると、寮のチューターとして、そのまま寮に住み続けることができます。寮のチューターは、寮に滞在している留学生のさまざまな問題を助ける役目を果たします。同じ研究室の学生がチューターとして寮に住み続けており、寮の各フロアにチューターがいます。

東工大でのどのような経験を母国に伝えたいですか。

ディン:私にとって最も貴重な経験は、研究スキルを大幅に向上する機会と、多くのさまざまな方々と勉強する機会を得られたことです。私は修士課程の後、博士後期課程に進学する予定ですので、研究スキルを伸ばすことは不可欠です。私の研究室では、年に数回研究成果を発表しなければならなかったため、プレゼンテーションスキルも大幅に向上しました。

ペイロン:私は未来に価値のあるものを提供したいと毎日考えており、そのために日々の生活を最大限楽しむようにしています。母国にいるときは、ものごとを先延ばしたり、後でその場所を訪れたりすることもできますが、東工大で生活する時間は限られていますので、日々の経験を可能な限り楽しみたいと思います。

東工大の交換留学プログラム、YSEPとACAPを誰に勧めますか?

ジョナス:ドイツにいる時は大学の先輩が東工大と建築学の教授を勧めてくれました。ACAPは、東工大の有名な建築家から直接学ぶ機会を与えてくれました。そこで私は日本とアジアを旅行する機会が得られる柔軟な留学プログラムであるACAPを、建築学を学ぶ学生にお勧めします。

ディン:私はACAPで得られた様々な経験を顧みて、日本で交換留学プログラムを体験したいすべての方にACAPをお勧めしたいです。

ペイロン:YSEPは、研究スキルの向上と日本企業にじかに触れる体験をしたい方に適していると思います。帰国したら、絶対に母国の学生にYSEPを勧めます。

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2017年8月掲載

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東京工業大学 総務部 広報課

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