派遣交換留学 ハノーファー大学 2022年10月13日~2023年3月31日

派遣交換留学 ハノーファー大学 2022年10月13日~2023年3月31日

留学時の学年:
学士3年
東工大での所属:
情報工学系
留学先国:
ドイツ
留学先大学:
ハノーファー大学
留学期間:
2022年10月13日~2023年3月31日
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

ハノーファー大学は、ニーダーザクセン州に位置するドイツの国立大学である。日本での知名度はそれほど高くないが、ドイツ国内の工科大学連合であるTU9を構成する主要な大学の一つであり、文理を問わず広く優秀な学生が集まっている。日本からの留学生は数名見かけたが、やはりスペインやイタリアなどヨーロッパ各国からの留学生が多いようであった。韓国やミャンマーなど、アジア圏からの留学生とも交流する機会があった。



留学前の準備

自身の所属する情報工学系では通常4年次の4月に研究室配属が行われるため、研究室配属前である3年後期での留学を選択した。研究室配属や卒業を伸ばすことはしなかったが、研究室配属の際に不利とならないよう、3年の前期に45単位程度取得しておいた。

 留学についての情報は、主に東工大の公式サイト上や友人経由で入手していた。現地での生活情報についてはドイツに在住していた知人がいたため、特に新型コロナウィルス関連の最新情報を中心に幾らか助言を頂いた。

 専門分野の学習については、留学のために特別な準備を行うことはせず、東工大のカリキュラム通りに学習を進めた。一方で語学については計画的に準備を進め、不安のあった英語のスピーキングを中心に、関連する科目を多く履修した。また、アメリカに留学中の友人とZoomを介して現地の学生とスピーキングを練習する機会を作ってもらい、定期的に練習を続けていた。

 滞在許可の取得には大変苦労した。ニーダーザクセン州の場合、2022年10月時点では始めに外国人局の予約を取る必要があった。予約は週に1回、朝5時ごろから開始されるという情報を友人経由で入手したが、毎週朝の8時には既に満席となる状況であったため、朝5時に起きて予約をとった。予約後はスムーズに手続きが進み、外国人局に一度足を運ぶのみで滞在許可が取得できた。所得証明に関しては、用意していた奨学金の受給証明等を提示した。なお奨学金の額はドイツ連邦政府が定めた生活費の額を下回っていても咎められることはなかったが、同じ奨学金でも別途閉鎖講座の開設を求められた知人もいたため、担当者の裁量によるところが大きいのかもしれない。手続きはすべて現地到着後に行ったが、日本の銀行口座のユーロ建て残高証明など、必要となりそうな書類は出発前に念入りに揃えておいた。

 その他、住居は大学が手配した学生寮を選択した。また渡航前に、歯科治療等に対応できる現地の健康保険への加入を大学から求められた。健康保険は公的なものに加入するのが最も簡単だが、東工大指定の保険と二重加入すると金銭的な負担が大きいため、私的な健康保険を選択した。この場合、加入証明のような書類である”Befreiung”を公的な健康保険会社から発給する流れとなり、少々手間がかかった。

留学中の勉学・研究

専門科目を8 ECTS分、履修登録した。少なくともハノーファー大学では多くの単位を取得する学生はそれほど多くないようで、その分一つ一つの科目の負担が大きくなっていた。

 講義スタイルは教員によって異なる部分も大きかったが、いわゆる反転授業を取り入れているものもあり、日本よりも柔軟性が高いように感じた。講義内では積極的に発言するよう教員から働きかけていたものの実際に発言する学生は意外と少なく、この辺りは日本とあまり変わらないのかもしれない。どの講義でも履修登録者に対して出席している学生は1割に満たず、出席数が極めて少ないことが印象的だったが、現地学生の友人に聞いたところドイツではこれが普通とのことだった。ただし講義に出席している学生は真面目で、ディスカッションや課題にも真摯に取り組んでいた。

留学中に行った勉学・研究以外の活動

ハノーファー大学では留学生と現地学生の交流を深めるイベントが定期的に開催されており、それに何回か参加した。専門分野の異なる多くの留学生と知り合うことができ、日本について聞かれる機会も多かった。日本について興味を持つ学生のほとんどがアニメを通じて日本文化を知ったようで、日本はスタジオジブリや新海誠をはじめとしたアニメの国として認知されていることを強く実感した。また、JPOPに興味がある学生もおり、総じてサブカル的な側面で人気を集めているようである。この他、「テクノロジー大国」「技術と歴史を両立している国」「日本の大学はとても厳しい」といった印象を持たれることもあり、今回の留学を通じて「外から見た日本」を知ることができた。

留学中は何度かドイツ国内外への旅行も楽しんだ。ドイツ国内ではベルリンに足を運び、かねてより念願であったベルリンフィルの生演奏を聴くことができた。また、イーストサイドギャラリーなど近現代史を象徴するスポットも多く、歴史と文化について学ぶ契機となった。国外では計6カ国程度を回ったが、中でもブダペストの夜景は想像以上に美しく、料理も日本人の口に合うと思われるため、イチオシである。この他、滞在中にワールドカップで日本と対戦したクロアチアも街並みが特徴的で、強く印象に残った。

  • イーストサイドギャラリー(ドイツ)

    イーストサイドギャラリー(ドイツ)

  • 国会議事堂(ハンガリー)

    国会議事堂(ハンガリー)

  • ドブロブニクの街並み(クロアチア)

    ドブロブニクの街並み(クロアチア)

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

今回の留学を通じて、自分自身の置かれている環境を客観視できるようになった。自分自身はこれまで海外で生活した経験がなかったため、無意識のうちに日本の置かれた環境を当たり前のものとして捉えていた。しかしながら今回、言語も社会も異なる環境に長期間身を置いたことで、これまで自分が生活していた環境の長所や短所が改めて見えてきた。

日本は極めてインフラが整備されていること、日本のサブカルは世界に通用すること、一方で労働環境には改善の余地があること、アカデミアとビジネス双方において閉鎖的な環境にあることなど、今回の留学で気づいた多くのことを糧に、今後も視野を広く持ち続けたい。またこういったことには、単なる旅行やインターネット上での交流ではなかなか気づけなかったと思われるので、そのような意味でも海外に長期間居住することには意義があったと感じる。

留学費用

渡航費については、往復で計16万円ほどであった。自身の渡航した時点では、直行便はとても手の届く価格ではなかったため、往路はアブダビ、復路は桃園で乗り継ぎを行った。フランクフルト国際空港到着後は事前にチケットを購入したDBで寮まで移動したが、こちらは数千円に収まった。

 ハノーファーはドイツの中でも物価が安く、生活費は月々4万円程度に収まった。学生寮だったため水道光熱費や通信費は負担する必要がなく、生活費の内訳はほとんど食費である。滞在中は月に数回程度外食をしていたが、これを控えればさらに安く収まると思われる。住居費としては、家賃が月々5万円弱かかった。学生であればトラムに無料で乗ることができるため、大学までの交通費はかかっていない(ただし、渡航前に学生連合への加入費は支払った)。

 保険料は、東工大指定の保険と現地の私的健康保険で、半年の合計が12万円ほどかかった。この他の主な初期費用として、学生連合への加入代と学生寮の敷金がそれぞれ5万円、ビザの取得が約1万円を負担した。

 奨学金は、JASSOから月々8万円を受給した。食費を切り詰めればこれだけでも生活は不可能ではないと思うが、これだけで外食や旅行は厳しいため、以前から取り組んでいたオンラインでのアルバイトを現地でも続けた。奨学金を探すのがギリギリになってしまったためJASSOを受給したが、さらに手厚い奨学金は他にいくらでもあるため、留学が決定したらなるべく早く奨学金を探すのがよいかもしれない。

留学先での住居

留学前に大学から住居について聞かれたため、希望する家賃とともに返信し、手配して頂いた学生寮に居住した。洗濯機のみは共用だったが、キッチンやシャワーなどその他の設備はすべて専用のものがある部屋で、家賃は月々5万円ほどであった。学生寮であったため深夜までパーティーが開かれている時もあったが、身に危険を感じるほどの治安の問題はなかった。

留学先での語学状況

学部生向けの講義はほとんどドイツ語で行われているが、修士向けの科目は一部が英語で開講されており、それらを中心に履修する形となった。ドイツの学生は皆かなり英語が上手なため、普段のコミュニケーションはスムーズだった。複雑な内容のディスカッションとなるとうまく話が噛み合わないこともあったが、図表や数式を用いて工夫しながら乗り切った。なお自身の英語力に関しては、渡航前に受講したTOEICは910点、IELTSは6.5点であった。ドイツ人の英語はイギリスの発音に近くほとんど聞き取りやすかったが、一部の教員は早口で、英語にもやや癖があったため、初めの数回は苦労した。

 ドイツ語を使う機会はあまりなかったが、スーパーや飲食店で使うような基本的なドイツ語は覚えておくと便利だと思う。また、ドイツ語をさらに学習しておけば、現地学生のみならず現地人ともさらに交流できたかもしれないと感じた。

単位認定(互換)、在学期間

東工大で単位認定を行う予定はない。半年間の留学であったが、在学期間の延長も行う予定はない。

就職活動

留学先では特に就職活動に取り組むことはなかった。学部卒業後は修士課程への進学を考えているため帰国後も就職についての活動予定はないが、今回の経験を活かし、海外も含め幅広い進路を検討したい。

留学先で困ったこと(もしあれば)

ドイツ北部での冬を経験したが、とにかく日照時間が短かった。特にクリスマス前後は、毎日曇りか小雨で、日中稀に日が出ていても午後3時にはもう薄暗くなっていることがある。人によっては憂鬱になることも考えられるため、サプリを持っていく、過ごしやすい夏に留学するといった対策を取る必要があると思われる。気温は上下が激しく、暖かい時は東京の冬と同程度かそれ以上の気温であったが、寒い時は氷点下20度まで冷え込んだ。

留学を希望する後輩へアドバイス

旅行からドイツへ帰国する際、電車の遅延により深夜1時から3時半まで駅構内で待たされたことがありました。時間通りに運行することはほとんどないDBにはストレスを感じましたが、駅の窓口に向かうと英語で丁寧に次のチケットを手配してもらえました。さらに、同じく電車を逃したドイツに住むモンゴル人と愚痴を言い合っているうちに、偶然お互いコンピュータサイエンスを専攻しているということで話が弾み、深夜の待ち時間はそれほど苦痛ではなくなりました。

現地で生活する際には、手続き的な完璧さよりも、その場でのコミュニケーションを大切にするべきだと感じます。私はできる限り事前準備を万端にしてトラブルを未然に防ぎたい性格なのですが、海外で生活する上ではあまり全てを完璧にこなそうとしない方がよいです。あえて過度に一般化するならば、日本ではトラブル発生前の対策を重視するのに対し、海外ではトラブル発生後の対処に重点をおく傾向があるように思います。ビザ取得や履修手続きなど、様々な場面をほどよく適当にこなしていく姿勢が、海外でストレスなくサバイブする知恵なのかもしれません。

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