派遣交換留学 ウプサラ大学 2022/8/29~ 2023/6/4

派遣交換留学 ウプサラ大学 2022/8/29~ 2023/6/4

留学時の学年:
博士2年
東工大での所属:
生命理工学院 生命理工学系
留学先国:
スウェーデン
留学先大学:
ウプサラ大学
留学期間:
2022年8月29日~ 2023年6月4日
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

ウプサラ大学は1477年に創設された歴史ある大学で、北欧最古の大学でもあります。大学の本拠地であるウプサラは首都であるストックホルムから電車で1時間弱の距離にあり、スウェーデンで4番目の人口を持つ街です。ウプサラは学生の街として知られており、住民のおよそ3人に1人が学生というまさに学園都市です。ウプサラ大学は海外出身の学生や交換留学生を多く受け入れており、特に修士以上では多様な学生が在籍しています。交換留学は学部・修士の学生が想定されており、基本的には講義を履修することになりますが、学部によっては研究室実習のコースが用意されており、受入先教員の許可を得たり履修条件を満たす必要がありますが、それを履修することができれば研究室に所属して研究を行うこともできます。

留学前の準備

博士1年 秋 派遣交換留学への応募を計画開始

私は東工大の次世代研究者挑戦的研究プログラムに採択され、その要件の一つに3ヶ月以上の海外活動があったこともあり、留学を計画し始めました。派遣交換留学での留学を決めた理由は、私の場合は指導教員からの紹介が見込めず自力で受入先研究室を探す必要があり、その場合に障壁となる留学先での身分や、長期滞在の許可(VISAなど)、滞在先での住居などの問題が交換留学によって解決すると考えたからです。
 留学期間は、せっかくなら業績を残したかったので1年にしました。私の場合は、自分の研究で一定の成果が見込めており、指導教員の許可がもらえたため、修了予定の変更なく留学を行う予定を組みました(ただし、後の進捗次第では半年から一年の修了延期を覚悟の上でした)。

博士1年 秋〜春 受入先探し

ウプサラ大学に決めた主な理由は、スウェーデンが留学生の受入れに積極的であること、親しい友人がスウェーデンに留学しており情報収集が容易だったこと、ウプサラ大学の生命系学部のランキングが比較的上位であったこと、ウプサラ大学に自分の研究内容に近い研究室が多くあったことです。
 ウプサラ大学に決めた後は志望研究室を決め、受入れをお願いするメールを送っていきました。この時は調査不足で気づいていなかったのですが、ヨーロッパの大学の中には、交換留学の制度が学部・修士の学生を前提にしている大学が多くあり、交換留学生が研究室に所属する仕組みがそもそも存在しない場合もあるようでした。ウプサラ大学の場合は、研究室実習のある学科とない学科があり、初めは後者の研究室にメールを送っていたためか、3つほどの研究室に連絡を取りましたが良い返事はいただけませんでした。その後、制度をしっかり調べた上で別の学科の研究室にメールを送ったところ、zoomでお話しした上で受入れていただけることになりました。ここでも、本来ならば半年までしか所属できないところを、受入先教員と学科長が柔軟に対応していただき、一年間の所属ができるように調整していただきました。

博士1年 冬 TOEFL受験

参考書を買って対策した他に、私は特にスピーキングに難を感じていたため、1ヶ月間オンライン英会話を受講して対策しました。無事に派遣交換留学の要件を満たす点数を取ることができましたが、実際の留学ではその程度の英語力では不十分と感じたので、できる限りのトレーニングを早いうちから積んでおくのが良いと思いました。

博士2年 春 住居申請・居住許可申請

交換留学生の住居はウプサラ大学が斡旋してくれるので、指示に従って申し込みをするだけでした。スウェーデンに3ヶ月以上滞在する場合は居住許可(Residence Permit)が必要になります。申請から許可まで1ヶ月以上かかるので、早めに申請するのが良いと思います。

博士2年 8月

留学開始

留学中の勉学・研究

研究室実習の授業に登録するという形で研究室に在籍していましたが、実質的には他の博士学生と同じように研究活動をしていました(ただし最後に論文課題の提出あり)。研究プロジェクトは受入先教員が用意してくださっており、その内容はグループで取り組んでいる大きなテーマの一部分で、教員と指導係の博士学生に監修されつつ、ある程度独立して研究を行いました。他のメンバーと同様にグループ内での進捗発表やJournal Clubへの参加・発表も行いました。私は研究プロジェクトや実験結果に恵まれたこともあり、投稿論文の執筆まで進めることができ、ある程度まで書けた段階で帰国、その後オンラインで修正または現地の同僚や受入先教員に仕上げていただき、投稿する予定です。

留学中に行った勉学・研究以外の活動

大学内では大小様々なイベントがあり、とても楽しみました。日常的なものでいえばスウェーデン伝統のFikaで、10時または15時くらいに共有スペースでお菓子とコーヒーをお供に雑談をするものですが、気楽に他の博士学生や研究者と交流できる良い機会でした。特に私の周囲はスウェーデン出身の人が珍しいほど多様性のある環境だったため、文化的にも多くの学びがある場でした。
 クリスマス休暇や連休には旅行もしました。趣味のカメラを持って北欧の街を回るというとても贅沢な経験も、中長期の留学だからこそできるものだと思います。

  • リンネ庭園

    リンネ庭園

  • ウプサラ中心部を流れるフィリス川

    ウプサラ中心部を流れるフィリス川

  • ウプサラ城周辺

    ウプサラ城周辺

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

私にとって、北欧の街に暮らして他国の人たちと交流をするという経験そのものが、自分の価値観を塗り替える重要な経験だったと感じています。これは研究面でも文化面でも同じで、日本人と価値観の大きく異なる人たちに囲まれて生活・研究することで、これまで気づかなかった様々なことに気づかされました。特に感じたのは、これまで自分が見聞きしてきた海外に関する価値観の多くは不正確であり、自分は日本の外のことをほとんど理解していなかったということです。私は将来的に海外で働くことも考えており、今回の留学はそのお試しも兼ねていたのですが、これまで気づかなかった海外・日本の良いところ悪いところ、好きなところ嫌いなところを多く発見することができ、自身の将来設計のためにとても重要な経験となりました。

留学費用

渡航費:約24万円(往復)
生活費:約5万円/月(食費2.5万(自炊8割)、その他雑費)
住居費:約5.8万円/月
収入:26万円/月(次世代研究者挑戦的研究プログラムによる毎月15万円の奨励費に加えて、学外研鑽プラスという追加支援制度による月換算で11万円の補助)
保険料:0円(次世代研究者挑戦的研究プログラムによる追加支給が出張に係る旅費扱いだったため、保険料は大学負担)

留学先での住居

ウプサラ大学に斡旋された学生マンションに入居しました。申請は留学3ヶ月ほど前に届いた案内に従うのみで、比較的簡単だったと思います。住居は複数の選択肢がありましたが、希望が通るかは抽選次第です。入居した住居は学生が集まる団地の様な場所で、キッチンは12人の留学生で共有でした。他の留学生と交流できたのは良かったですが、キッチンを汚く使ったり掃除当番をサボる学生が複数いたことはとても大きなストレスでした。他の選択肢を見てもキッチンが共有の住居が多かったですが、中には完全に独立した部屋もありました。家賃は選択肢の中でもっとも安く、相場と比べてもかなり安かったです。大学までは比較的遠く、通う建物によって大きく異なりますが、自転車で15分ほど、バスで30分弱でした。



留学先での語学状況

基本的には大学内外に関わらず英語のみで十分でした。英語が得意な人より苦手な人を探す方が大変な国でした。スーパーの値札など、たまにスウェーデン語が必要になる場合がありますが、スマホで翻訳すれば特に問題はありません。
 研究を行う場合は、ある程度の英語力が最低限必要で、そこから英語が得意であればさらに有意義に研究できると思います。私のTOEFLの点数はCEFRでぎりぎりB2でしたが、リスニングとスピーキングが苦手ということもあり、ディスカッションがギリギリなんとかできるというレベルでした。少なくとも余裕でB2に入る会話力が、できればC1くらいの能力が充実した研究には必要だと感じました。留学中にも英語の勉強は続け、大きく進歩したとは思いますが、それでもまだ周囲の博士学生とは天地の差があるように感じます。

単位認定(互換)、在学期間

留学が単位となる「博士インターンシップ」を履修しました。2セメスターの留学で6単位が取れる予定です。在学期間の延長は、帰国した博士3年の6月時点では予定していません。



就職活動

卒業後はアカデミア志望のため、留学中に学振PDの申請書を書きました。志望先の教員とはメールやzoomでやりとりをしました。

留学先で困ったこと

スマホ関連で苦戦することがしばしばありました。SIMカードは比較的簡単に入手できたのですが、SIMを契約するためにインターネットに繋ぐ必要があり、そのためにフリーWi-Fiを求めて彷徨うこととなりました。スマホが使えない状況をあまり想定していなかったので、事前にしっかり準備・計画しておくべきだと反省しました。
 また、あやうく日本からのSMSを受け取れずに問題となるところでした。盲点だったのが、日本の銀行口座からオンラインバンキングで現地に生活費を送金する際に、SMS認証が日本で使っていた電話番号に送られることがあり、その際に確実に受信できなければ送金ができなということです。幸い、日本で使っていた格安SIMは契約を継続しており、簡単な契約変更で海外でもSMSが受信できるようになったため事なきを得ましたが、かなり肝を冷やす出来事でした。

留学を希望する後輩へアドバイス

研究留学をしたいが指導教員のつてを頼れない人にとって、派遣交換留学は良いシステムだと思いますが、博士学生のように研究のみを目的とした交換留学は受入れ大学によって扱いが大きく異なることに注意が必要だと思います(そもそも博士学生の交換留学が想定されておらず、大学によっては交換留学生が長期で研究室実習に専念する仕組みが用意されていないなど)。そういった情報は自分で集めるしかないため、事前に志望大学の状況を念入りに調べるべきだと思います。また、研究留学が可能な場合でも、教員が受け入れてくれるかはまた別問題です。派遣交換留学は受入れ研究室が確定していなくても申請することができましたが、もし申請後に志望研究室から断られた場合に、別の大学に変更するのも制度の仕組みからして難しいかと思います。そのため、可能ならば派遣交換の申請時には受入研究室に内定しているのが望ましく、そのためにはかなり早い段階から大学・研究室探しを始めるのが理想だと思います。



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