派遣交換留学 ソウル国立大学 2017年8月30日~2018年7月7日

派遣交換留学 ソウル国立大学 2017年8月30日~2018年7月7日

留学時の学年:
修士課程4年
東工大での所属:
社会理工学研究科 価値システム専攻
留学先国:
大韓民国
留学先大学:
ソウル国立大学
留学期間:
2017年8月30日~2018年7月7日
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

ソウル国立大学はソウル南部の冠岳山の麓にメインキャンパスを構え、様々な世界大学ランキングでトップ100に名を連ねる名門大学です。ビジネススクール、公共政策大学院、国際研究大学院などのプロフェッショナル・スクール、更に美術学院、音楽学院も設立されている国立総合大学です。

留学先として英語の講義が多く開設されている国際研究大学院と公共政策大学院で迷いましたが、清華大では公共政策大学院に在籍していたので、他専攻のディシプリンにも触れてみたいと思い最終的に国際研究大学院を選びました。国際大学院には中国研究、日本研究を専門とする教授陣が多く在籍しています。留学時学院長であった朴喆熙教授は、日本研究で有名なジェラルド・カーティス教授に師事したことがある方で国際的にも有名な日本政治学者です。

ソウル大のキャンパスはとても広く、都心型というより郊外型のキャンパスに属すると思います。全寮制ではないので近郊から通っている学生も多く、週末、祝日になるとキャンパス内は少し閑散としています。春は桜、秋は紅葉と四季折々の景色を眺めることができるとても綺麗なキャンパスです。

留学前の準備

私は東工大・清華大大学院合同プログラムにも在籍していましたが、計画段階では両方の大学の論文発表を済ましてからソウル大に行く予定でした。結果的に清華大側の論文発表を半年延期することになり、交換留学の一学期目は清華大側の修論も同時並行で書いていました。清華大の論文の提出と発表で学期中二度北京に行きなかなか大変でした。

国際大学院内の公用語は英語ですが、計画段階では、折角一年弱韓国に滞在するし日常生活レベルの韓国語の習得も目標に入れていました。しかし清華大の論文発表と交換留学の一学期目が重なってしまったため、韓国語学習と引き換えに清華大の論文作成を優先しました。

留学中の勉学・研究

研究面では、一学期目は主に清華大学の修論の作成、二学期目は台湾フェローシップ申し込み用の研究計画書の作成に取り組みました。授業は、毎学期6単位、合計で4科目、12単位を取得しました。国際大学院の卒業所要単位数は最低45単位と多めに設定されており、授業は一コマ3時間で、毎週100ページ以上のリーディングを課す講義も多く、ストレート(二年間)で卒業するにはかなりきつめのプログラムだと思いました。ただ成績評価の印象としては厳しくなく、きちんと課題、期末テストやレポートの対策をしていればB+以上は取得できると思います(最高の評価はA+)。二学期目に取った科目「State, Capital, and Labor in the Era of Globalization」は、毎週100ページ以上の英文文献のリーディングおよび各文献の簡潔な要約と講義での質問を事前に考えてくるというのが毎週の課題でした。英語で講義のディスカッションについていくための事前準備は慣れないうちはとても大変でした。

留学中に行った勉学・研究以外の活動

国際大学院では学生主体で様々なトピックに関するラウンドテーブル(ランチ会)を開催しており、私は中国研究と日本研究のラウンドテーブルに参加し二回発表をしました。一回目はオイゲン・ヘリゲルの「弓と禅」についての紹介で、二回目は中国政治の動向について自分の考えを述べました。日本研究のラウンドテーブルでは定期的に食事会もあり、皆で花見にも行きました。学内では交換留学生と韓国人学生との交流会やフードフェスティバル、国際大学院でも他大学の国際大学院との交流会など様々なイベントがありました。

残念ながらソウル以外の場所には行きませんでしたが、旧正月は両親の中学時代の同級生の家で過ごし、お正月に食べる代表的な料理「トックッ」というお餅の入ったスープを食べたりして、向こうの旧正月の過ごし方を体験しました。

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

東アジア(日中韓)についての理解を深めることが今回の留学の重要な目的でした。価値システム専攻では異なる価値構造のもとで合意形成を取る難しさについて考えさせられ、清華大学では政策科学を学び、共産主義が依然として中国の社会科学のパラダイムになっている現状を見て、パラダイム・価値構造の変化なしに学問の真の発展は遂げられないと考えました。ソウル大に移ってからは、政治・制度面について今まで以上に考えるようになりました。国家の最重要課題を解決するのに政策面だけでは限界があり、どんなに良い政策でも監督機能が十分に働かない専制体制のようなシステムでは政策遂行の過程でそれ自体が変質してしまう可能性があることに気付きました。

日中韓と一周して思うことは、やはり東アジアには儒家思想の影響など多くの共通点があるということです。今後の東アジアは西欧に追いつけ追い越せの時代ではなく、東アジアとして独自に世界へ発信できる何か新しい価値観や思想を模索、構築していく時代に入っていくと思います。東アジアの人々が今後交流を深め、東アジアの伝統文化、価値観を再認識して、そして改善しより良いものに再構築していけば、その過程で世界へ発信できる何か新しい価値が創造されるものだと清華大、ソウル大と留学を終えた今強く信じています。

このような素晴らしい留学機会を与えて下さった大学、また留学期間中、親身になって留学生活をサポートして下さった留学生交流課清華事務室及び派遣担当の皆様方に心より感謝申し上げます。

留学費用

渡航費は行きのフライトが32,990円でした。奨学金はJASSOより月額7万円、10ヶ月間の給付型奨学金を受けていました。住居費は最初の3ヶ月間は家賃47万ウォン、その後は家賃33万ウォンでした。保険は東工大所定のものに11ヶ月間加入し保険料は118,068円でした。生活費は、月々大体3~6万円でした。

留学先での住居

渡航前に学生寮に申し込みましたが、入居許可がすぐに下りなかったため、事前に家賃47万ウォンするコシテル(トイレとシャワーがついた畳4帖程度の部屋)を3ヶ月間契約しました。その後寮の入学許可が来ましたが、途中で契約を解除したくなかったため学生寮を諦めて、契約満了後大学近くの学生街で賃貸を探すことにしました。最終的に友人の紹介で家賃33万ウォンのワンルームを見つけることができました。友人が大家と交渉してくれたらしく相場より割安で入ることができました。

留学先での語学状況

授業は全て英語でした。交換留学はTOEFL73点で申請しました。ただソウル大は88点以上を推奨しています。レクチャー主体の講義は知識の量で語学力を補えると思いますが、ディスカッション主体の講義は自分の考えを纏めてから発言するとタイミングを逸してしまうので、ある程度発言のポイントが絞れれば話題が変わらない内に発言してしまうことが大事だと思います。

単位認定(互換)、在学期間

4科目、合計12単位を留学期間中に取得しました。JASSO奨学金の受給要件に「留学先で取得した単位や研究成果は原則東工大の単位として1単位以上付与・互換・認定される必要がある」とあるので、「State, Capital, and Labor in the Era of Globalization」という科目を英語の科目名で単位認定申請をしました。標準在籍期間が二年半の東工大・清華大大学院合同プログラムに在籍したまま、更に一年東工大の学籍期間を延ばして交換留学に行きました。

就職活動

卒業後も研究を続けたいと考えており、シンクタンク・研究機関を中心に就職活動をしています。将来的には、PhDの取得も考えています。交換留学の二学期目では台湾フェローシップの訪問学者プログラムに申し込むために研究計画書を作成し2018年7月に応募しました。9月中には審査結果が出るかと思います。

留学先で困ったこと(もしあれば)

一学期目の期末期間に期末対策と並行で清華大の論文を書いていたときに爪周囲炎に罹りました。酷いときはタイピングのときも激痛が走りました。論文の提出で清華大に行った際に、大学付属の病院で治療を受けました。大変な次期は得てしていろんなことが重なるものだと改めて感じました。そういう事態にならないように、やはり普段からコツコツと実行を積み重ねておくことが大事だと反省しました。

留学を希望する後輩へアドバイス

東工大では海外に留学したい学生向けに様々な制度が設けられています。私は二年半の東工大・清華大大学院合同プログラムに在籍したまま、更に東工大の学籍期間を一年間延長してソウル大に行ったので、三年半掛けて日中韓を一周したことになります。東工大の留学制度をフル活用させて頂きました。最近ではトビタテなど留学希望者向けの給付型奨学金も増えてきて、国内より海外に留学に行ったほうが給付型奨学金を貰える機会が多いのではないかと思ってしまうくらいです。留学の目的はいろいろありますが、サマープログラムなど短期のプログラムも充実していますので、是非皆さんにも東工大の制度を活用してもらい留学を通して充実した学生生活を送っていただきたいと思っています。

留学を通じて自分の専門分野を深めることはもちろん留学の重要な目的の一つだと思いますが、私はダイバシティーな環境に学生のうちから慣れておくことも留学のメリットの一つだと思っています。何か事業を推進していくにあたり、同調圧力がかかるような組織体系では、均一性の維持が優先されやすく、新たな価値が生まれにくい環境に陥る危険性があります。既存の価値観、行動・思考パターンにとらわれないような組織を作るには、やはりダイバシティーを推進することが最も重要で有効である思います。とりわけグローバルビジネスを手がける組織は、ダイバシティーの推進を今後も最重要の人材戦略として展開していくはずです。そういった素養を身につけるためにも、学生のうちからダイバシティーな環境に身を置いて様々な価値観に触れておくことはとても有意義なことではないでしょうか。

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