派遣交換留学 アアルト大学 2018年8月29日~2019年6月18日

派遣交換留学 アアルト大学 2018年8月29日~2019年6月18日

留学時の学年:
修士課程2年
東工大での所属:
情報理工学院 情報工学系 知能情報コース
留学先国:
フィンランド共和国
留学先大学:
アアルト大学
留学期間:
2018年8月29日~2019年6月18日
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

フィンランドのアアルト大学に留学した。メインキャンパスはヘルシンキの隣のオタニエミにある。建築分野では世界7位、設立50年未満の世界大学ランキングでも大学全体で7位を獲得している一流大学である。

留学前の準備

大学院1年目の夏から1年間の留学を行った。以下に時系列的に準備の流れを記載する。

学部4年4月

このころから留学を行いたいと考えていた。English Cafeに積極的に参加したり、研究室で留学生の部屋に席を移してもらったりして、とりあえず英語力を鍛えていた。授業でも英語で開講されている科目を履修して留学の練習としていた。

学部4年7月

大学院入試も一段落したころから留学先の選定を始めた。条件は、自分の専門分野の授業が開講されていること、留学生の研究室所属を認めていること、そして自分の専門分野の研究が行われていること、の3つとした。協定校全てのホームページを全て見て回り、最終的にフィンランドのアアルト 大学、スイスのETHとEPFLが候補になっていた。

学部4年8月

留学生交流課が行っている留学コンシェルジュに面談をお願いし、留学生交流課の方に相談に乗っていただいた。このころアアルト大学へ出願することを決めたと思う。決めては学食が€2.6で食べられることだった。

学部4年11月

留学の学内選考の最初の募集には間に合わなかったため、12月に締め切りがあった追加1次募集に応募することとなった。必要書類を書いて提出し、面接は普通に受け応えて年内に無事合格を頂くことができた。

学部4年2月

学会への論文投稿と卒論の締め切りで忙しかったが、トビタテの応募締め切りが2月中だったので応募を行った。また、グローバル理工人の恩恵でTOEFLを無料受験する機会があったので、2月末にTOEFLを受験した。前日から勉強を始めた結果89点となった。アアルト大学で研究活動を行うには92点以上あることが望ましいとされていたので少し足りなかったが、最終的にこのスコアで応募することになった。

大学院1年4月

いよいよ アアルト 大学へ本応募を行うことになった。締め切りは4月末だったが、4月最後の週にフランスでの学会発表を控えていたため、急いで出願準備をした。アアルト大学のコース一覧を読み、履修計画を立てて、CVを書いて出願した。以外とすぐに終わった。

アアルト大学では研究活動を行いたいと考えていたので、受け入れている教授探しを行っていたが、ちょうどフランスで参加した学会に第一希望の研究室の教授が来ていたので簡単な挨拶をしておいた。これが教授とのファーストコンタクトだった。

大学院1年5月

アアルト大学から出願を受け取ったというメールが来るが、この時点から部屋を借りるための応募を行うことが可能になる。HOAS,AYYの2つの学生団体に応募したが、応募が少し遅れてしまった。メールを受け取った日のうちにHOAS, AYY双方に応募することをお勧めする。

フランスの学会で会った教授にCVを添付したメールを送り、留学を行うので研究室に受け入れて欲しいと言う旨を伝えた。6月上旬にスカイプ面接の約束を取り付けた。

大学院1年6月

6月初めにAalto大学から合格通知をいただいた。この瞬間から渡航の準備を行う必要がある。特にビザは準備にも取得にも時間がかかるので可及的速やかに準備を始めることをお勧めする。銀行の残高証明を取得したり、留学用の保険に申し込んだりする必要があるが、どれも結構面倒だった。また、航空券もさっさと購入しないと値段がどんどん上がっていくので早めの購入をお勧めする。合格通知を頂いた後に現地教授とのスカイプ面接があり、その時に即決で受け入れていただけることとなった。フランスの学会でワークショップではあるが、論文を投稿していることが効いたと思う。海外では学士、修士で大した研究を行わないので、それほど身構える必要もなかったかもしれない。

中旬にはトビタテの合格通知を受け取ることができて、一安心した。下旬にはHOASから部屋のオファーを頂いたため、速攻で銀行に行ってデポジットを振り込んだ。なお、振り込み手数料がかなりかかるのでヨーロッパに口座を持っていたりすると非常に便利である。ちなみに私に割り当てられた部屋は大学から40分のところにあったため少しがっかりしたが、ヘルシンキは公共交通機関がしっかりしている上バスでも毎日座れたので特に問題はなかった。

大学院1年7月

7月にビザの申請を行ったが、結構ギリギリだったと思う。やはり早く申請するべきだった。

大学院1年8月

大体の準備は終わっていたので、大きなスーツケースを買ったり、持っていくものを決めたりと現実的な準備を始めた。東工大でお世話になった先生や事務の方に挨拶を済ませて、8月末に渡航した。

留学中の勉学・研究

私の場合は研究活動をメインに考えていたため、結果的に授業はあまり取らないこととなった。しかし取った授業はどれも授業のレベルが非常に高く、留学して良かったと思えた。どの科目も毎週、あるいは隔週でレポートを提出する必要があり、本当に忙しかった。レポートの量は、東工大の5~6倍と思って良い。またアアルト 大学の授業は期間の前半が講義、後半がプロジェクトレポートに割り当てられていたため後半は登校する必要がない。しかしプロジェクトレポートは、学士論文に匹敵するほどのワークロードがあるので暇ではなかった。履修した科目については、レポート等を頑張ったため評価5を2つとることができた。Complex Networksで評価3を取ったのが少し残念だったが、アアルト 大学では3が取れれば十分良い出来と言われているのでひとまずは良いと思う。もう少し他の授業、Reinforcement LearningやData visualization等も取りたかったが、研究活動を優先していたため我慢した。アアルト 大学は提供する授業の種類や専門性が高いため、授業メインの留学でも良かったかもしれないと思う。

研究については、教授と毎週1回の個人ミーティングを通して取り組んでいった。東工大では機械学習等を用いた応用研究を行っていたが、アアルト 大学では極めて理論的な研究を行っていたため、最初のうちは論文を読んで知識をつけるのが大変だった。個人ミーティングにおいてもあまり進捗を出せない時もあり、悔しく思うこともあった。当初は、私がやりたいと思っていたテーマに近いテーマに取り組んでいたが、ただただ計算量的に不可能であることを示すばかりで、なかなかポジティブな成果を挙げられなかった。そこで2月ごろに研究テーマを変更して取り組んでいたが、こちらもなかなかポジティブな成果を得られない期間が続いた。4月末にやっと良いアルゴリズムを思いついたので、最終的にそれを論文にし、6月初めに締め切りがあった国際学会に投稿することができた。多少ではあるが、理論的な側面に対して強くなったと思うし、研究面で非常に大きな成果を挙げられたと思う。

留学中に行った勉学・研究以外の活動

旅行の面では、フィンランドの北にあるラップランドと呼ばれる場所に旅行に行った。現地ではトナカイを育てて暮らしている人々がおり、フィンランドの伝統的な暮らしについてしることができた。またオーロラも見ることが出来た。非常に寒くダウンの上にダウンを着て過ごしていた。自然と共に暮らすフィンランドでは、時間の感覚や生きると言う行為そのものについての考え方が、東京とは全く異なると思う。

他にもエストニア、ノルウェイ、チェコ、ハンガリー、オーストリア、ポルトガルなどに旅行したが、どの国にも個性があって興味深かった。特にチェコやハンガリーは共産主義時代の負の遺産がいくつもあり、戦慄することも多々あった。歴史を知る上でもとても良い経験になった。

大学では、バスケットボールを隔週で行っていた。以前バスケットボール部に入っていたので、フィンランドでもプレイ出来て楽しかった。フィンランドはスポーツが盛んで、子供も大人もスポーツをしている。フリスビーやフロアボールと言ったマイナースポーツもよく行われていた。また現地の日本人の社会人の人とバスケットボールをする機会もあり、現地の暮らしについていろいろと知ることが出来て良かった。他にも現地で人気のフロアボールや競技フリスビーなどもあった。

私が渡航した年は、フィンランドと日本の国交100周年の節目だったため、それを祝うイベントがあり、ボランティアとして参加した。神輿がヘルシンキ市内を練り歩くというイベントであり、イベントの休憩所の手伝いやごみ拾い等をおこなった。日本とフィンランド双方に関わるイベントで役に立てて良かったと思う。

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

個人的なことを言うと、自分に自信が持てるようになったと思う。語弊を恐れずに書けば、個性的であることに不安を感じなくなった。留学先には多様な人がいた。その中では、日本に特有の「こうあるべき」「こうすべき」と言った雰囲気はまったく感じられず、皆が自由に生きていたと思う。その中で生活していたため、自分も自分の良いと思うようにいられたと思う。また、英語を使っていたためか、Yes/Noをかなりハッキリ言えるようになったと思う。

授業や研究の面では、英語で学ぶこと、英語で書くこと、英語で考えることがスムーズにできるようになったと思う。特にアカデミックなしっかりしたレポートを素早く書けるようになった。留学の最後の授業で提出したレポートでは、他の学生から「このレポートを出した学生は、ただの学生ではなく、本当の研究者なのだと思う」と評価されたため、とてもうれしかった。留学を通して書く力がついたのだと思う。

留学費用

準備費用

  • 渡航費行き10万円、帰り4万円
  • 旅行保険12万円(10か月分)

現地生活費

  • 家賃385ユーロ/月
  • 交通費53ユーロ/月
  • 通信費20ユーロ/月
  • 食費200ユーロ/月

生活費合計約86000円/月(1ユーロ=130円)
準備費用+現地生活費*10カ月=約120万円
その他の旅行等におそらく50万円ほど出費した。

留学先での住居

前述したようにHOASとAYYと言う団体から部屋を借りることができる。HOASからkannelmäkiにある部屋を借りることができたが、家賃が385ユーロと少し高めだった。AYYの部屋は300ユーロを下回るらしかった。部屋は1ユニットに3人で住み、キッチン、トイレ・シャワールームを共有する。ルームメイトがきれい好きだったので総じてユニット全体もきれいだった。ヘルシンキの公共交通網は十分発達しているので、大学から距離があってもスムーズに通える。また、Prismaと言うスーパーがすぐそこにあったので、非常に暮らしやすかった。不満と言えば、寮全体で共有する洗濯機とサウナの数が住人の割にすくなく、予約に苦労したことくらいである。

日本の寮のように厳しくないので、ルームメイトが許せば、家族や友達、彼氏/彼女を泊めても全く問題ない。長期旅行中に部屋を他の誰かに賃貸しても問題ない。日本よりも自由だし、部屋も広いし東京より暮らしやすい。

留学先での語学状況

自分は、学部のころから英語を鍛えていたので、語学で問題になることはなかった。留学前から、英語で開講されている専門科目を受け、英語でレポートを書き、研究室では留学生と英語で話し、英語でゼミ発表していたので、授業・研究に関して全く問題なかった。留学前のTOEFLは前日に勉強を始めて89点だった。

フィンランドは、フィンランド語とスウェーデン語が公用語だが、若い人も大人も完璧に英語が話せるので、フィンランド語の「こんにちは」と「ありがとう」しか覚えてない自分でも生き残ることができた。ただフィンランド入門の授業は履修すればよかったと今でも思う。

単位認定(互換)、在学期間

単位認定は行わなかった。また在学期間は1年間延長する予定でいるが、半年延長で済むかもしれない。

就職活動

留学先では特になにも行っていない。帰国後に正規学生と同じように就職活動をする予定でいる。

留学先で困ったこと(もしあれば)

まずは、到着してすぐのお金管理が大変だった。家賃の支払いが口座振り込みなため、ヨーロッパで有効な口座を取得しなければならず、次に日本の口座からヨーロッパの口座にお金を送金する必要があった。日本の銀行で一般的に送金しようとすると手数料がとんでもなくかかるので、友達から教えてもらったTransferwiseと言うサービスを利用したが、渡航前からお金をどう管理するか調べておくべきだった。なお、新生銀行などのキャッシュカードを使えば現地通貨を引き出せるが手数料が少し高いためあまりお勧めされていない。

あとは、お酒に弱くて困った。留学の最初1、2週間はパーティが多く、特に何かするわけでもなくただお酒を飲んで喋るだけだが、普通に4、5時間程度続く。自分は、お酒に弱いし、パリピでもなかったので、そう言うパーティから足が遠のいてしまった。ビールをもっと飲めればパーティをもっと楽しめただろうと思う。
また、留学生は普通、研究活動をしない。他の留学生は、毎週末イベントに参加したり、旅行に出かけたりしていたが、自分は研究に忙しかったので、あまりそう言った集まりに参加できなかった。その結果留学中に友達をあまり作れず、一時は孤独を感じたりもしたが、別に遊ぶために留学した訳でもないので途中から気にしなくなった。

11月にかなり鬱になった。外は本当に真っ暗になり、気温も低く寒くなり、秋学期末にさしかかるのでレポートがたくさん出るため、遊びに出かけることもできず、部屋にこもりきりになった。とにかく人とコミュニケーションを取るのが嫌になり、誰とも話さないうえにルームメイトとも会いたくなくなり、メッセージすら読むだけで返信しなくなった。幸い12月に彼女が遊びに来てくれたので、とりあえず普通の精神状態に戻り、冬休みにポルトガルに旅行に行って日光を浴びたので元気になれた。他の日本人留学生の中には病院に行って抗うつ剤を処方してもらっていた人もいたらしいので、自分も危なかったかもしれないと思う。

留学を希望する後輩へアドバイス

  • 迷っても迷ってなくても留学したほうが良い。アアルト大学は、ほとんどすべての点において東工大よりも優れている。
  • 留学の決意は早めに固めること
  • 英語の勉強はすぐに始めること。留学中に英語力が向上することはない。リスニングと発音が少し良くなるくらい。
  • ビザの申請はすぐに始めること
  • HOAS, AYYにはメールが来たその日に応募すること
  • 航空券は早めに予約すること
  • 留学はあっという間に終わるので、留学前に留学先でしたいこと、行きたいところ、目標等を明確にしておくこと
  • パーティやイベントがたくさんあり、誘われることも多いが、自分の目的を忘れずに流されないこと
  • 研究をする場合、現地教授は結構受け入れてくれると思うので、つてがなくても臆せずアポをとること
  • 研究をする場合、留学の後半は研究に追われて何もできないので、前半のうちに旅行をしておくこと
  • 和食がある程度作れるようになっておくこと
  • 寮のお金管理をどうするかあらかじめ情報収集しておくこと

➢お金の送金はTransferwiseを使うと便利
➢N26と言うネットバンクがスマホで口座開設できてとても便利

冬は真面目に鬱になるので、元気になる方法をいくつか用意しておくこと(スポーツ、旅行、映画・海外ドラマ・アニメ鑑賞、ゲーム、おいしいものを食べる、友達と電話・スイカイプ、サウナ、その他なんでも可)。多ければ多いほど良い。

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