派遣交換留学 デルフト工科大学 2019年8月27日~2020年9月5日

派遣交換留学 デルフト工科大学 2019年8月27日~2020年9月5日

留学時の学年:
修士課程1年
東工大での所属:
工学院 機械系 機械コース
留学先国:
ドイツ連邦共和国
留学先大学:
デルフト工科大学
留学期間:
2019年8月27日~2020年9月5日
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

デルフト工科大学はオランダ, デルフトに本部を置くオランダの国立大学であり,1842年に設置されました.各種世界大学ランキングにおいてもイギリス及びスイスの有名校に次いでヨーロッパの科学技術分野における第6位の名門校として位置付けられています.特に土木工学・建築・航空宇宙工学・デザイン工学といった社会への応用を重視した工学の分野で高い評価を受けています.すべての講義が英語で行われ,特に修士と博士については全体の半数近くがオランダの外からきた国際生です.

留学前の準備

留学開始(2019年8月)の1年以上前,具体的には2018年4月頃からまずは留学機関や研究題目,奨学金等の下調べとIELTSの準備を始めました.留学先の選定についてはその大学の強みとする分野やその国の治安や物価などをベースに,いくつかに候補を絞り込み,加えて機械系の教授の方々に研究題目が満足に行えそうな大学についてアドバイスを頂き,最終的にデルフト工科大学の航空宇宙学科で行われている人工衛星用マイクロ推進に興味を持ち,デルフト工科大学へのアプライを決めました.2018年夏にトビタテ!留学JAPANへの申込みと,デルフト工科大学の教授へのコンタクトを行いました.今までの留学を経験された先輩方から,指導教員を見つけるためにはホームページをよく調べて,根気よくメールを送り続けるしかないと聞いていたのですが,私は幸運にもメールを送った1人目の教授に受入許可をいただくことができました. デルフト工科大学の派遣交換留学の要件であるIELTS6.5は自分にとって少し難しく,2018年11月頃にようやく要求スコアを達成し,派遣交換留学プログラムへの申込みを行いました.さらにこの時期,別の短期留学プログラムに参加したり,トビタテ!留学JAPANの2次面接があったりして,それらに時間を取られがちでしたが,合間を縫って,自身の研究を行い,なんとか卒論を完成させました.大学院課程開始直前の3月末にデルフト工科大学へのアプリケーションをフォームから行い,その後デルフト工科大学に滞在許可書(Residence Permit)の代理申請と現地住宅業者DUWOを通じた住宅の紹介(別途手数料が必要)を行って頂きました.その後ようやく2020年8月末から留学を開始しました.

留学中の勉学・研究

授業

Space Systems Engineering 3ECTS

宇宙システム工学の授業で,宇宙プロジェクトをどうデザイン,運用していくのかを学習しました .毎回の授業で課題が出されるので,それを毎週こなしていました.提出した課題はTAがたくさんのフィードバックをつけて返してくださるので,理解を深めるのに非常に役に立ちました.また,期末試験が無い代わりに最終グループワークがあり,この結果と毎回の課題の評価を合わせて授業の成績となりました.デルフトの学生は自分の意見をはっきり伝えたり,ディスカッションの中からアイデアを得たりすることに非常に長けていた印象があり,私もそれについていこうと必死でした.

Micropropulsion 4ECTS

小型人工衛星用のマイクロ推進の授業でした.授業は前半のセルフスタディ+中間試験と後半の個別プロジェクトから構成されていました.セルフスタディは自分でテキストを読んで十分に理解ができたら,試験を受けるのですが,これはあまり難易度は高くなかったです.後半の個別プロジェクトではテーマのリストの内,私の東工大での研究テーマにも近い,MEMS技術を使用したマイクロバルブのデザインを選びました.Literature Studyに加え,要求された事柄すべてを満たすマイクロバルブを提案するのは,この分野が専門の私でも相当難しく,専門でない人ならおそらくほとんど何も提案できないのではないかと思わせるような難易度だったので,テーマ選びは非常に重要だと感じました.また,単位数に対して個別テーマのワークロードが重すぎるとも感じました.MEMS技術についてはこの授業を担当する教員は全く知識を持っていなかったため,こういった専門外の人に自分の専門分野をわかりやすく説明するという体験ができました.

研究

Research for Exchange 41ECTS

研究は当初東工大での研究テーマであるMEMS技術を使用した小型人工衛星用のResistojetの研究をする予定でしたが,到着後文献調査をして,その後ようやく留学前に指導教員と相談して決めたテーマについて具体的にどんな研究をするのか決めようとした段階で,指導教員から私の研究にはまったく予算がとれなかったと伝えられました.そのため,推進デバイスを作るための材料はもちろん,クリーンルームの利用料なども確保できず,加工や実験は全くできないと判明しました.指導教員からは数値シミュレーションなどをやろうと提案されましたが,それならばわざわざデルフト工科大学まで来なくてもできると感じたため,結局指導教員を替えて.新たな指導教員のもとで小型人工衛星用のマイクロ推進機に使用される燃料の研究をすることになりました.

私の所属していたSpace Systems Engineeringというセクションでは研究室という概念はなく,セクションに属している教授や研究者の指導の元で学生が修論プロジェクトを行っていました.少なくとも航空宇宙学科では同じようなシステムで修士は研究ではなく,あくまで6ヶ月程度の短期の修論プロジェクトという形で東工大の研究活動に相当するものを行っていました.こういった背景から長期の本格的な研究はあくまでPhDやリサーチャーが行うものと考えられており,修士学生の修論プロジェクトにあてられる予算はかなり制限されていたと思います.私がとったResearch for Exchangeも基本的にはこの修論プロジェクトに近い位置づけなので,もしデルフト工科大学で東工大のような研究をしたい場合は,コンタクトをとる指導教員によく確認をとったほうが良いと思います.また,日本の大学のような研究室が少なくとも航空宇宙学科にはなく,研究に使用する材料や実験器具はすべて学科にある大きな1つの実験場に集約されていました.実験をするときは研修をうけて,その実験場で毎回実験器具の予約をとって行っていました.東工大とのシステムの違いはある程度予期していましたが,いざ研究を始めるとこうも大きく違うのだとかなり戸惑いましたが,最終的には新しい指導教員のもと,実験を行い,日々ディスカッションをしながら研究をすすめることができたので,満足しています.

留学中に行った勉学・研究以外の活動

学修活動以外ではタンデムとバスケットボールに取り組んでいました.この2つが私のデルフトでの生活を非常に豊かにしてくれたと考えています.

タンデムは言語交換システムで東工大にも同じようなものがあると思います.話す言語をペアになった人と教え合うという活動です.私の場合は日本語を教えて,ペアになった人に英語を教えてもらっていました.私はウェブサイト上で知り合った人たち,合計6人と仲良くなって一緒に食事をしたりしながら楽しく言語を教え合っていました.そのうち1人は非常に仲良くなってオランダ滞在中に3回一緒に旅行に行きました.日本語を学びたいということもあり,日本にある程度興味があるので,すぐに仲良く慣れますし,私自身自分の英語力の改善を友人と遊び感覚ですることができたので,非常におすすめです.

バスケットボールはデルフト工科大学のXというスポーツ総合施設の中の体育館でプレイしていました.頻繁に体育館でバスケットボールをやっていると自然と友達も増え,バスケットボールを一緒にプレイする以外に,週末にパーティーを開いて食事をしたりすることもありました.

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

指導教員を変更したプロセスとその後の指導教員とそのアシスタントと一緒に行った研究活動が何より自分を成長させてくれたと感じています.はじめの指導教員のもとでは実験ができないとわかってから,なんとかその指導教員のもとで実験ができないか,解決策を考えたり,他の教授や研究者に指導教員になってくれるようコンタクトをとったりしてようやく,1人の研究者が私の指導教員になってくださったのですが,そこに至るまで大変苦労しました.解決策を考えるにしてもデルフト工科大学航空宇宙学科のシステムは全くわからなかったので,ウェブで調べたり,他の修士の学生に聞いてみたりと予算をどうにか手に入れることができないか,とにかく四方八方可能な限り調べました.また,指導教員になってくださいと頼むときも英語で話すので,どうも相手の真意がつかめなかったり,自分がいかに困っているかがしっかり伝わっていないのではないかと心配になったりとコミュニケーション面でも非常に苦労しました.最終的に私の熱意に感心して指導教員になってくださった研究者の方には本当に感謝していますし,海外でそういった苦労を乗り越えた経験そのものが私を成長させてくれたと感じています.その後の研究活動では,研究プランを立て,実験のセットアップを用意し,毎日実験室に通って研究をすすめるということを指導教員のもと1人で行えたことが自信に繋がりました.また実験や実験データの解析にあたり,指導教員やそのアシスタントとディスカッションを頻繁に行ったのですが,徐々に慣れてきて最終的には自分の意見をスムーズに伝えられるようになり,海外で研究者やエンジニアとして働くということに近いことを現時点でもできるということがわかり,将来海外で働くということのイメージがつき ました

留学費用

渡航費は往路と復路を別々に購入して合計14万円,生活費は毎月4万円程度,住居費は住宅手当込みで毎月5万円程度,保険料は毎月1万4千円程度でした.奨学金についてはトビタテ!留学JAPAN から月額16万円を受給していました.オランダではどこでもデビットカードが使えるので,基本的には滞在許可(ビザ)を申請するときに経済能力を示すために現地銀行口座にデポジットしたお金を切り崩して生活していました.

留学費用

渡航費は往路と復路を別々に購入して合計14万円,生活費は毎月4万円程度,住居費は住宅手当込みで毎月5万円程度,保険料は毎月1万4千円程度でした.奨学金についてはトビタテ!留学JAPAN から月額 16 万円を受給していました.オランダではどこでもデビットカードが使えるので,基本的には滞在許可(ビザ)を申請するときに経済能力を示すために現地銀行口座にデポジットしたお金を切り崩して生活していました.

留学先での住居

前述したように,デルフト工科大学へのアプリケーション時に現地住宅業者DUWOを通じた住宅の紹介をお願いし,Studioと呼ばれるタイプの住居で生活をしていました.一つの部屋にキッチンやベッドなどがすべて入っているタイプの住居で,シャワーとトイレもついていたので,完全にプライバシーを確保した状態で生活していました.フラットシェアのタイプの住居も選ぶことができ,こちらは価格がより安かったです.シェアといってもベッドルームは個室でその他の空間をシェアするだけなので,もしルームメイトとのやりとりを楽しみたいという人はフラットシェアタイプの住居で良いと思います.自分で住宅を探す場合は必ず,そこが自治体に居住地として登録可能なのかどうかを確認したほうが良いです.登録できないとビザの有効性を維持できません.

留学先での語学状況

デルフト工科大学の学生や学生でないオランダ人含め,非常に高いレベルで英語を話せるため,生活,授業,研究すべてを英語で行っていました.しかしオランダ語を話せるとオランダ人と仲良くなるのに役立つと思います.派遣交換留学へのアプリケーションに必要な語学要件であったIELTSは2018年4月頃から勉強を始めて,同年11月の3回目の受験でようやくOA6.5を達成できました.リスニングとリーディングはおそらく多くの人がTOEICや受験英語で鍛えられていると思うので,真に準備すべきはスピーキングとライティングだと思います.スピーキングは英語を話す友人にお願いするか,タンデムなどの言語交換サービスを使って積極的に話す機会を設けないと上達は難しいと感じました.私は英語を流暢に話す日本人の友人と留学生の友人にお願いして週2,3回程度のセッションを行っていました.ライティングは表現の幅や,論理的に説明する練習をテキストを使って行えば,比較的簡単に伸びると思います.こういった下積みのおかげで現地到着後1ヶ月もすれば慣れてきて,現地でできた友人たちと問題なくコミュニケーションが取れるようになりました.

単位認定(互換)、在学期間

デルフト工科大学で行った研究に関しては東工大で所属するコースに専用の互換単位があるのでそちらに申請する予定です.1年の留学であり,東工大での研究や就活の兼ね合いもあるので在学期間は1年間延長する予定です.

就職活動

私の留学中,東工大の同期は就活を行っていたので,それに影響されて,自分の気になる業界や,将来のキャリアプランの下調べなどを行っていました.また,東工大の在学期間を1年延長することで1年後ろにずれた就活を帰国後にスムーズに行えるように,エンカレッジなどの就活支援団体に定期的にZoomでミーティングをさせてもらって,様々なアドバイスを頂いていました.

留学先で困ったこと(もしあれば)

前述した指導教員の変更の他にDUWOに紹介された住宅の契約期限が切れた後の住宅探しに非常に困りました.住宅は探せば見つかるのですが,自治体に居住地として登録可能かどうかが明記されていないものが多く,問い合わせても返事がないことが多かったです.最終的にはウェブ上の住宅探しプラットフォームではなく,Facebookの住宅探しグループに「居住地登録可能な住宅を探しています!」と投稿してようやく見つけることができました.

それから御存知の通り,COVID-19の流行という世界が未だ体験したことのない状況を,私は期せずして留学中に体験することになったので,マスクの入手など非常に困ることが多かったですが,無事に帰国できてよかったと思います.

留学を希望する後輩へアドバイス

自分と全く異なるバックグラウンドを持つ人々と一緒に生活や学修活動を行うことは,多くの人が考える以上に価値があり,自分を大きく成長させてくれます.私が具体的に留学してどう良かったのかは,話せば延々と話せると思いますが,とにかく少しでも興味があるなら留学に挑戦してみてほしいと思います.きっと後悔はしないはずです.留学の準備にはかなり時間がかかるので,すぐに行動に移すことが大切だと思います.

この体験談の留学・国際経験プログラム情報

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