派遣交換留学 ベルリン工科大学 2018年9月1日~2019年3月24日

派遣交換留学 ベルリン工科大学 2018年9月1日~2019年3月24日

留学時の学年:
修士課程4年
東工大での所属:
環境・社会理工学院 建築学系 建築学コース
留学先国:
ドイツ連邦共和国
留学先大学:
ベルリン工科大学
留学期間:
2018年9月1日~2019年3月24日
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

ベルリン工科大学は工学系大学で、建築学部をもつ大学としては、ベルリン芸術大学とともにベルリンの建築教育で最も重要な大学のうちの1つである。毎年建築学部だけでも300人単位で新入生が入学する大規模大学で、スタジオ制度を持ち、建築学棟内にスタジオごとに大きな作業部屋が割り当てられ、学生は学期ごとに参加するスタジオを選びそのスタジオの作業部屋でのグループ活動を中心に生活を送る。ベルリン工科大学では2年前より東工大でいうIGPのような英語開講の修士プログラムが始まったことをきっかけに、英語開講の授業も増加している。東工大からの交換留学は通常の修士プログラムへの留学となるので、交換留学生以外の正規の学生はドイツ語能力が必須で、正規の学生であれば海外からの学生もドイツ語が堪能である。しかし、通常の修士プログラムでも、英語開講のスタジオや講義が豊富にあるので、私はその英語開講のスタジオと講義を履修した。

留学前の準備

修士四年間での卒業を想定して計画を立てた。また、就職は個人の建築事務所への就職を希望しているので、通常の就職活動とは異なり、不定期での採用ということで、時期に関しては帰国後に事務所ごとの採用情報に従って随時申し込みをする形となる。以上に加えて、修士論文に一年間取り組むため、そこから逆算し、修士2年の夏に留学を始め、一年間の交換留学、半年間の留学先でのインターンを行い、修士四年目が始まる2019年4月直前に帰国した。帰国後の一年間で、修士論文、不定期の就職活動を行い、2020年3月に修了予定である。

留学情報の入手は、自分より早くベルリン工科大学へ留学していた人が東工大、早稲田大学にいたので、主にその方々から情報を教えてもらった。ドイツは保険制度が厳しく、東工大で加入必須のAIUではビザが取得できないため、保険に関する情報や、ビザに関する情報は、インターネット上に多数あるベルリン滞在者のブログなどを参考にして詳細に情報を集めた。住居に関しては、交換留学期間は学生寮に滞在した。ベルリン工科大学の留学生課が、交換留学生向けに優先して学生寮を割り当ててくれたので容易に入居できた。インターン期間はWG-Gesuchtというシェアハウス情報サイトでシェアフラットを探して申し込みをし、内見後、個人間契約で入居をした。ベルリンのシェアフラットは探すのが困難で、競争率が激しく、早い段階で探すことを勧める。そのシェアフラットで住民登録をしたい場合は、住民登録が可能な物件かを事前に家主に聞く必要がある。それは私の場合もそうだったが、又貸しをすることも一般的で、正式な契約にのっとらない場合も多いからである。語学は、日本にいる間に2週間ほどの短期でドイツ語の授業を受けたのに加え、到着後1ヶ月間、ベルリン工科大学のドイツ語集中講座を履修した。また、最初の夏学期もドイツ語クラスを履修したが、競争率が激しく、文法のクラスしか取れなかったため、あまり成長しなかった。最終的に、大学内では英語の授業が受けられ、ベルリンで暮らすほぼ全ての人が英語も話せるため、その状況に甘んじてドイツ語を成長させることができなかった。ベルリンではドイツ語があまり話せなくても、生活に必要なある程度の単語がわかれば、生活するのに困らないが、現地で知り合ったベルリンで暮らす友人や地域の人と深く関わり合うためには、やはりドイツ語を話せなくとも聞けるようになることは重要だと感じた。自分の周囲で不規則に発生するドイツ語の会話を聞けるか聞けないかは、そこでの生活にどこまで馴染めるかに大きく関わってくるので、モチベーションを維持して、しっかりと継続してドイツ語を学ぶべきだったと後悔している。また教科書などを使って独学で学ぶのはオススメしない。授業の履修や、語学交換のタンデムなどで、教えてもらいながら話す機会を確保することが必須だと思う。

留学中の勉学・研究

留学前学期はデザインスタジオ1つと、3つのセミナーの履修に加え、ドイツ語のクラスを履修した。デザインスタジオを履修するにはセレクションがあり、初回の説明会で各教授が開講するスタジオのテーマを説明し、その中から興味あるスタジオを選んで課されるセレクション課題を行い、プレゼンテーションをしてその結果を元に教授が定員に合うように学生を選抜する。選抜に残れなかった学生は定員割れをしていたスタジオから第二希望のスタジオを選ぶことになる。全てのスタジオはグループ設計課題で、私は中国人の正規の留学生とペアを組んでデザインを行なった。スタジオにもよるが多くは隔週か3週間に一回教授からフィードバックを得る機会があり、中間発表、最終発表を経て成績を得ることになる。大学院のプログラムで特に英語で留学生受けに開講されているクラスのほとんどは参加型のセミナーで、英語で授業を受けられる聴講型の講義は無かった。私が履修した3つのセミナーは、歴史的モニュメントに関するものと、コモンスペースに関する展示会に出展する模型をデザインするもの、都市のリサーチをして未来の住居をデザインするものであった。どの授業も、議論やプレゼンテーションがベースで、教授がレクチャーをすることは半年間で各授業3回ずつほどであった。いずれもグループワークで、最初の授業で各ブループ扱うテーマを決め、リサーチ、プレゼンテーション、議論、デザインを繰り返しながら、最終発表や成果物作りをして成績が決まる、徹底したアウトプット型の授業であった。グループワークなので、議論する機会がとても多く、プレゼンテーションも頻繁に行うので、英語の能力も鍛えられ、また議論をする頭の回転も鍛えられた。後学期は都市デザインスタジオを履修し、フィールドワークを元に、実際に都市空間に影響を与えられるプロダクトを製作した。フィールドワークをベースにしていたので、ベルリンのある地域に関して徹底して歩き回り、地元民にインタビューをし、その地元民と共同でワークショップを行ったり、製作を行ったりして、都市環境に深く関わりながらデザインすることができた。グループワークなのでドイツ語を話せる人もグループ内におり、ドイツ語を話せない留学生にとってはこのように地元の人々に関われたことは非常に貴重な経験となったと感じた。このスタジオは実際にベルリンの建築家が行なっているプロジェクトに関わる形で進められていたので、様々な分野の専門家と共同したり、難民キャンプに行って家具製作をしたり、大学内だけでは関わることのできない規模で様々な活動をすることができた。

留学中に行った勉学・研究以外の活動

ベルリン工科大学に留学後の半年間は、ベルリンの建築事務所でインターンシップを行なった。現地に行かないと得られない情報もあるだろうと考えて、出国前には働く事務所を決めず、現地の友人に事務所を教えてもらったり、ベルリンの建築雑誌に掲載されている事務所を調べたりして、最終的に雑誌で見つけた気に入った建築の写真を手掛かりに事務所を調べ、ポートフォリ オを提出したところ、いい返事をもらうことができ、働くことができた。最終的にその事務所は国際的には有名ではないがドイツ国内では数多くのプロジェクトを完成し、現地の建築学生なら多くの人が知っている事務所だった。従業員10人規模の事務所で、頻繁に事務所の所長と議論する機会も得られ、様々なプロジェクトにも関わらせてもらうことができ、大学での学習だけでは経験できないことが経験できたと思う。1つ残念だったことは、ドイツ国内でのプロジェクトが多い事務所だったので、プロジェクトのプレゼンや提出の際に使う言語は全てドイツ語だったので、ドイツ語が必須になる段階には関わることができず、自分が期待していたほど1つのプロジェクトに深く関わることができなかった点である。大学にいた際は留学生に対して多くの配慮がされており、授業も英語開講だったので、言語による壁よりも、楽しさの方が優っていたが、プロの一員として事務所で働くと、現地語ができないことで生じる障壁はやはり大きかった。これはインターンをしたからこそ知ることのできた困難だったので、インターンを経験して良かったと思う一面でもある。

旅行はヨーロッパ内を中心に旅行した。長期休みを利用して、自分が体験したい建築がある都市に出向き、多くの建築を見ることができた。他の日本人の話を聞くと、自分よりも頻繁に、多くの国に旅行しており、ヨーロッパだけでなく、中東、南米、アフリカなどに行っている人もいて、もう少し幅広い国に出向いてもよかったかもしれないと感じている。一方で私はベルリンでの生活がとても好きで、ベルリンで何かをするチャンスを逃したくないという思いも強く、学期中の週末も旅行に行くよりもベルリンで過ごし、長期休みの一部もセミナーやサマースクールなどに参加して、ベルリン内での活動を充実させた。トルコを除いてヨーロッパ以外の都市に行くことはできなかったが、住んでいる都市に深く入り込むことはできたと思うので、悪くは無かったと感じている。

留学費用

奨学金はトビタテを利用した。住居費は学生寮では月々260ユーロ、光熱費込み、インターネットは隣の部屋の人とシェアで契約し、月々7ユーロ、シェアハウスでは、月々330ユーロで光熱費インターネット込みだった。どちらの場所が中心から遠い場所だったので安かったが、中心地だとシェアハウスでも400ユーロ以下の部屋を見つけるのは難しく、400-500が相場である。携帯代はプリペイド式で月々20ユーロであった。

留学先での住居

「留学前の準備」を参照ください。

留学先での語学状況

授業は英語開講のものが豊富にあるので、英語で学習できた。生活でも簡単なドイツ語の単語が理解できればどうしようもなく困ることはない。もともと自分から話かかることが得意な人でない限り、英語力への自信次第では、最初の数ヶ月は友人とのコミュニケーションや、友人同士の会話にうまく入れるか、偶然あった友達と気楽に会話できるかなど少なからず消極的になってしまうかもしれないので、留学前に東工大にいる留学生と積極的にコミュニケーションをとって、英語で会話をすることに慣れておくことは必要だと思う。留学に行けるだけの英語のスコアがあるなら、あとは慣れだと思う。ドイツ人は英語が上手で、しかもドイツ語のハキハキした発音の影響か、かなり聞き取りやすいため、友達の英語を聞いたり、その言い回しを真似したりしてかなり英語を上達させることができると思う。

単位認定(互換)、在学期間

在学期間は最終的に修士4年間に延長した。そのうち1年半は留学とベルリンでのインターンである。留学前の1年半で単位は全て取り終えたので単位互換はしない。

就職活動

留学中にインターンシップを行なった時にポートフォリオと提出して事務所に申請したように、日本でもポートフォリオを建築事務所に送り、就職活動をする予定である。この場合不定期なので、一般的な就職活動を行う予定はない。

留学を希望する後輩へアドバイス

留学をして損することはないと思うので、金銭面などの環境が許すのであれば、どんな手を使ってでも留学には行った方がいいと思うし、仮に第一志望の大学、都市に行くことが困難だとしても、大学や国を変えてとにかく海外で生活をするチャンスを得た方がいい。日本でない国で生活をすることは、仮にかなりたくさん旅行をしても知ることのできないメリットが多く、その土地に一定期間以上住んで入り込めることはとても楽しい経験になる。またできることなら長く留学した方がよく、最低1年留学をすることを勧める。半年だと、海外生活経験とその近辺の国の旅行をする機会を得た以上の感想を得ることは困難に感じた。また、一年と一年半でも大きく違った。留学一年とインターン半年というやったことが違うのも大きいが、一年で夏と冬の両方を経験し、楽しみ方を知り、自分の中でその都市に対する客観性を持てるので、現地の友達に頼って、学び方、楽しい生活の仕方を経験させてもらっていた最初の一年に比べて、最後の6ヶ月は自分のペースで生活することができたように感じる。

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