派遣交換留学 ボローニャ大学 2019年9月8日~2020年3月3日

派遣交換留学 ボローニャ大学 2019年9月8日~2020年3月3日

留学時の学年:
学士課程4年
東工大での所属:
環境・社会理工学院 土木・環境工学系
留学先国:
イタリア共和国
留学先大学:
ボローニャ大学
留学期間:
2019年9月8日~2020年3月3日
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

イタリアにあるボローニャ大学は、エミリア・ロマーニャ州の州都ボローニャに拠点を持つヨーロッパ最古の総合大学です。創設当初よりある法学部や医学部が有名であり、また、 ガリレオ、ダンテ、コペルニクスなど歴史上の著名な人物も卒業生として名を連ねています。ヨーロッパ、アラブ・イスラム圏を中心に留学生も多いです。

留学前の準備

学部4年の後期を利用して留学することを、学部3年の後期に留学を検討し始めました。成績の都合で早期卒業することは不可能でしたが、学士特定課題研究を学部4年前期の半年で終了し、 余った後期を利用して半年間の留学をすることが大学の制度上問題ないことに気付いたため留学を決定しました 。

一方、先述の期間での留学は東工大で前例がないと聞いていたため、12月に留学生支援課の書類及び面接審査を通過してから、所属する系の系主任の教授に相談し、続いて系の教員会議で審議していただくなどして、卒論を半年で執筆し残った半年で留学をすることへの認可を得ました。また、春休み中には研究室訪問を通して、所属する可能性のあった研究室の教授それぞれに自分の留学プランも事前に伝えて理解と協力をお願いしました。

結果的に、8月の1週目に行われた卒論の発表で無事合格を頂き、卒業まで半年残した状態で卒業要件を満たして、留年及び休学する必要なく留学することが可能となりました。

留学先での学修についての準備としては、自分と同じボローニャ大学へ留学した経験のある先輩伝いで、授業の履修方法、住居を探す方法などを教えて頂きました。入居するのは9月でしたが、6月に大学の寮に申し込み入居することができました。

留学中の勉学・研究

留学中は研究室に所属せず、授業の履修のみを行いました。いずれも修士向けに英語開講された授業で、1コマ2時間週2の頻度であり、計25~26回の授業がありました。授業期間は3か月半、テスト期間は2ヶ月用意され、先生の指定した複数の日時のどれかを選んでテストを受けます。授業によっては、救済措置として複数回のテストを受けることが認められているものもありました。

Engineering Geology (6 ETCS)

日本では岩盤工学と呼ばれるもので、地質、断層、地すべりなどの岩盤の性質や関係する現象を総合的に学びました。成績評価は、4回の授業中のグループプレゼンテーションを含めた出席態度と、期末課題であるレポート、個人プレゼン、期末試験から成ります。多くのプレゼンに加え、2度のフィールドワークもあり、課題が大変な分、生徒の多くが授業にコミットすることができ学んだ内容がしっかりと身に着く授業であったと感じました。

イタリア北部にあるVajont Damへ見学に行った時の写真

イタリア北部にあるVajont Damへ見学に行った時の写真

Mechanics of Historical Masonry Structures (6 ETCS)

この授業は、歴史的なレンガや石積みの建築物の構造力学を学ぶ授業でした。木造や鉄筋コンクリートを用いた構造物が主である日本ではでは学ぶ機会のない内容であったため、内容がとても新鮮であり、また生活の中で目にするイタリアの街中の建物の仕組みが理解でき、とても 面白い授業でした。具体的には、教会に用いられるアーチ、ドーム、ヴォールト屋根などの基本構造を学び、実際にボローニャで一番大きなサン・ペトロ―ニオ大聖堂の天井の内部も見学する機会もあり理解を深められました。

成績評価は、オンラインでの宿題及び、上述のサン・ペトロ―ニオ大聖堂に関する個人プレゼン、口述試験により行われました。

サン・ペトロ―ニオ大聖堂内部を見学した際の写真

サン・ペトロ―ニオ大聖堂内部を見学した際の写真

Structural Safety (聴講)

数学の確率論を構造物の性能評価に適用する方法を学ぶ授業でした。先生の説明が難しく、また自分のベースの知識が乏しかったため、単位を取ることは断念しました。この授業は講義のみでした。

留学中に行った勉学・研究以外の活動

活動の一つして、ボローニャのFacebookで見つけた語学パートナー制度を利用して、イタリア人の友達を 作りカフェで週一回のペースでお互いの母国語を教えあっていました。また、Facebookを通じて日本語を学習する意欲のあるイタリア人が多く見つかったため、ボローニャに住むイタリア人と 日本人が交流するためのコミュニティをFacebook上で作り、2ヶ月に1回のペースで飲み会をして現地のイタリア人との交流を深めました。

また、ボローニャがイタリア中央に位置し、ミラノ、ヴェネツィア、フィレンツェなどの主要都市への交通の便が良かったことから、週末にはイタリアの有名な街によく出掛けていました。世界最多の世界遺産を有する国なだけあって出かける場所には困りませんでした。さらに、市内にLCCが発着する空港もあったので、スペイン、ドイツ、ベルギー、モロッコにもクリスマスや試験休暇を利用して旅行で訪れもしました。

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

留学を通じての1番の成長は国際的な問題について日本人以外とも議論することが出来るようになったことだと思います。きっかけは、確か昨年夏に起きた台風31号でした。その規模の大きさから一躍世界的なニュースになり、ボローニャ大学に通い始めて出来たばかりの友達の多くから日本 にいた自分の家族の安否を 心配されました。この時に 初めて、周りの留学生の友達が世界の時事に常に関心を抱いていることを知りました。他にも、リビアや ケニア出身の友達が日本の総理が安倍首相ということを知っていたことには驚きました。一方で、自分は他の留学生の友達のバックグラウンドの知識に乏しく、さらには、お互いの国の情報を教え合う時に、そもそも日本の政治や経済の問題にも疎かったことにも気づかされました。

留学に来るまでは、日本の外の政情を詳しく知ろうとしてこなかったため、他の国と日本の比較さえまともに考えられませんでしたので、なるべく多くの国について知るために出来る限り友達と踏み込んだ話もする事を心掛けるようになりました。そうこうして、レバノン、スペイン、イタリア、インド、ポーランド、ノルウェー、中国といった様々な留学生の友達とお互いの国のことについて話すことで、日本のその他の国の比較ができ、それぞれの国のいい点、悪い点を知ることが出来ました。そして現代において、世界が貧困や気候変動などの課題にグローバル社会として一体となって取り組んでいることにも目が向くようになりました。様々な国の長所と短所を把握することで 、国際的な問題を世界中の人と議論するスタート地点にようやく立てたことが1番の成長だと思います。

留学費用

渡航費:224,000円(往復)
住居費:360€/月(当時のレートで約45,000円、光熱費、wi-fi込)
保険料:70,000円(渡航前に一括)
奨学金:80,000円/月(JASSO)

留学先での住居

寮に滞在。一部屋に5人で住み、2人で寝室を共用していました。ルームメイトの国籍はスペイン、ポーランド、インドと様々で英語でコミュニケーションをとっていました。留学生活の最後の方は、とくに仲の良かったスペイン人のルームメイトとはお互いの練習の為にイタリア語で会話することもありました。

他の寮の部屋との交友関係も多く、月一程で寮生が企画するパーティーもあったので、寮だけで友達を沢山作ることが出来ました。日本人は他に2人住んでいたが、アジア系がとりわけ多いことはなかったです。暇な時間には友達のレバノン人だけが住む部屋によく行っていて、お喋りや食事を共にする他、他の友達も呼んで夜にポーカーをして遊ぶこともあり充実していました。

レバノンの友達達と一緒に夕食を食べた時

レバノンの友達達と一緒に夕食を食べた時

留学先での語学状況

授業や友達との日常会話は英語で、街中で買い物やレストランに行くときはイタリア語を使用していまし た。渡航前にイタリア語は文法を少し勉強していただけであったため、初めの1ヶ月ほど日常で用いるイタリア語に難を感じていたが、良く使うフレーズを覚えるほか、Duolingoで勉強してイタリア語を使うことに慣れていきました。

単位認定(互換)、在学期間

JASSOの奨学金受給のために単位申請を行ったが、卒業要件を事前に満たしていたことと帰国時期が学部4年の3月だったこともあり 単位認定は不可能であった。ただし、ボローニャ大学で取得した単位の証明書を提出するなどして、奨学金の受給は認められた。在学期間の延長は行わなかった。

就職活動

帰国後は東工大の大学院に進学。その後は、海外での博士後期課程進学や就職も選択肢にいれて検討中です。

留学先で困ったこと(もしあれば)

1つは街中で買い物をする時に英語が通じないことです。これについては上述のようにイタリア語を学習することで1ヶ月程 経った頃に困難は感じなくなりました。もう一つは、寮の寝室を2人で共用していたため生活習慣のずれにストレスを感じていました。接する態度にも困ったため時間はかかりましたが、徐々に仲良くなってお互いの妥協点を見つけて解決することが出来たと思います。

留学を希望する後輩へアドバイス

留学をする意欲がある人は、時間とお金を捻出してでも留学することをお勧めします。

まず、自分の知らないことに沢山出会って刺激を受けることで、視野も広がりより多角的に物事を考えることが出来るようになると思います。また、インターネットで海外に関する情報も沢山手に入る世の中になったとはいえ、テレビのバラエティー番組もネットの記事も他人の感覚で編集されたものであり、自分が現地で感じる感覚とはかけ離れていることも十分あり得ます。その点、留学は日本の外で起きていることの現実を見ることが出来るという意味では、間違いなく人生にインパクトを与えてくれるものであり、挑戦する価値があります。

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