派遣交換留学 スイス連邦工科大学チューリッヒ校 2021年9月1日~2022年2月16日

派遣交換留学 スイス連邦工科大学チューリッヒ校 2021年9月1日~2022年2月16日

留学時の学年:
修士課程2年
東工大での所属:
生命理工学院 生命理工学系
留学先国:
スイス連邦
留学先大学:
スイス連邦工科大学チューリッヒ校
留学期間:
2021年9月1日~2022年2月16日
プログラム名:

留学先大学の概要

スイス連邦工科大学チューリッヒ校(以下ETH)は、スイスの国立大学の一つです。ヨーロッパトップレベルの理工科系大学であり、近年は毎年QSランキングで上位10位以内にランクインしています。私が所属したDepartment of Chemistry and Applied Bioscience のPharmaceutical Sciencesは、チューリッヒ中心部から車で15分ほど離れたHönggerbergキャンパスを拠点としており、1学年約30人の小さな学部で、交換留学生は私一人でした。

留学前の準備

研究室の手配と奨学金の準備がメインでしたが、どちらも思っていたようにはいきませんでした。留学を計画していた段階では留学先で研究室に所属し、授業履修は行わない予定であったため、講究単位を取得する目的で、受け入れてくれる研究室を探しました。そこで、Pharmaceutical Sciencesのある研究室に興味を持ったので、派遣の学内募集に先立ってメールでコンタクトしたところ、交換留学生としてアクセプトされてから連絡するように返信を頂きました。しかし、その後連絡すると、研究室がシンガポールに移ったため受け入れることができないと断られてしまいました。その時点では、Pharmaceutical Sciencesに留学が決まっていたので、そこに所属する他の研究室から再び探したのですが、興味のある研究室を見つけられず、最終的に授業履修のみに決めました。奨学金は、トビタテ留学JAPANと現地のHeyning-Roelli財団の奨学金に応募しました。トビタテは1月末、Heyning-Roelliは4月に書類選考の締め切りがあったので、先輩に添削をお願いするなどして画的に仕上げました。結果、どちらも採択していただきましたが、コロナ禍で9ヶ月未満の留学ではトビタテ留学JAPANの奨学金を受給できないことになってしまったため、やむなく辞退し、Heyning-Roelli財団を選びました。

留学中の勉強・研究

留学中は、東工大での専門からは少し離れて、Pharmaceutical Sciences(創薬科学)を専攻し、医薬品に関する専門的な知識と、創薬産業と社会との関わりについての考え方を学びました。科学技術の範疇から飛び出て、製品がどのように社会へ影響を及ぼし、その影響をどのように調査して意思決定に反映するのか、といった視点は、東工大で学んだことがなかったため、全てが新鮮でした。疫学や有免疫学などの初めて学ぶコンセプトを英語で理解していくことは容易ではありませんでしたが、TAさんに何度もアポを取って質問しに行ったり、友達と意見を交換したりして、なんとか乗り越えることができました。毎回の授業では、周りの学生の優秀さと積極性に圧倒されっぱなしではありましたが、対面とオンラインのハイブリッド型の授業運営の中、根気強く対面授業への出席を続けていたところ、最後には発言することができました。座学以外の授業で印象的だったのはDrug Seminarで、3,4人のチームでひとつのテーマについて調べ、プレゼンに向けて各グループごとに準備を行うという科目です。最初の方は、担当教員とのディスカッションで、自分だけついていけないこともあって、メンバーには迷惑をかけました。しかし、そこから私が貢献できることを探し、他の3人よりも研究経験が長くプレゼンの回数も多いことに気がついたため、スライドを分かりやすく整理することができると考えました。すると、「貢献できている」という意識から心の余裕が生まれたのか、ディスカッションでも積極的に発言できるようになり、良い経験になりました。

留学中に行った勉強以外の活動

コロナ禍ではありましたが、ミラノやパリなどチューリッヒから比較的近い隣国の都市や、アルプスのユングフラウなどのスイス国内に旅行に行きました。帰国前には、学部の友達とポルトガルのリスボンに行ったのはいい思い出です。しかし、クリスマスマーケットから年末年始にかけて、オミクロン株の大流行があったため、その時期には旅行をキャンセルしたこともありました。また、私が所属していたPharmaceutical sciences とPharmacyの学科の学生が運営している学生団体APVは活動が活発で、彼らが主催していたバブルサッカー大会やアイススケートイベントにも参加しました。日常的には、大学のスポーツセンターであるASVZをよく活用しました。特にダンスが好きだったので、ジャズダンスやバレエ、ズンバなどのクラスに通い、ストレス解消に役立てていました。無料で綺麗な施設を使い放題の素晴らしいシステムなので、是非活用してください。

リスボン旅行

バブルサッカー

自分自身の成長を実感したエピソード

こんなことを言うとしょうもないと思われてしまうかもしれませんが、留学を通していろんな人と出会い、関わる中で、自分の気持ちに素直なり、ひどく落ち込むことがなくなりました。今までは、義務感や責任感でしか動けなかった私が、自分本意にやりたいことや必要なことを考えて行動できるようになりました。また、友達に弱みを見せることができない性格で、人と深く関わることを恐れていましたが、留学中には勉強のモチベーションが湧かない時や、授業についていけず気分が落ち込んでいるときに、それをすごく自然にフラットメイトやクラスメイトに相談するようにもなりました。ヨーロッパの人は、ある出来事について話す時に自分の感情に言及することを欠かさず、また相手に対して「どう思った?」と必ず聞いてくれるので、それに影響されたのかと思います。

留学費用

Heyning-Roelli財団の奨学金が半年間で5000フラン給付され、それを生活費に充てていました。加えて、JASSOの大学院貸与奨学金第一種(月額88,000円)を留学中も借りていたので、旅行等の費用はそれと貯金から捻出していました。
航空券:往路5万円(エミレーツ航空)、復路11万円(ターキッシュエアライン)
住居:月563フラン
保険:月 61フラン
定期券:月62フラン
携帯電話:月20〜30フラン
食費・交際費:月250〜300フラン
旅行:月4〜8万円
私が留学していた期間はかなり円安だったので、現地スイスの財団からお金をいただけたことは、結果的にはちょっと得した気分でした。

留学先での住居

学生用のフラットに住んでいました。家賃は月563フラン(別途デポジットが必要です)で、15人で一つのキッチンと、4つのバスルームをシェアして使うスタイルでした。大学と連携しているWOKOという会社が運営している寮の一つで、大学から送られてきたメールに従って手続きしたところ、その寮に割り当てられました。チューリッヒ市内にしては家賃が安く、近くに比較的安価なスーパーマーケットがあり、Hönggerbergキャンパスまで片道20分で通学できたので、特に不満はありませんでした。また、ETHは他大学と異なり、セメスターが終わった後に約1ヶ月間のsession examというテストだけが行われる期間があり、秋学期の場合は、それが春学期開始直前の2月中旬まで続きます。そのため、1セメスター留学の学生は、1月末に寮から退去した後、最後のテストが終わるまでの約2週間を過ごす場所を決める必要がありました。私は、大学近くのairbnbを契約し、大学から1泊につき30フランの補助をもらっていました。私の友達は、同じWOKOの寮で空きが出ているところを借りていたので、その手もあると思います。

語学状況

基本的にETHの学生や教員、スタッフで英語ができない人はいないので、ドイツ語ができなくて苦労することはありませんでした。セメスター開始前のドイツ語集中講座に参加しましたが、ヨーロッパの言語を母語とする学生の習得スピードについていけず、ドイツ語学習はそこで諦めてしまいました。チューリッヒ大学の語学学校を通じて知り合った、スイス人のタンデムパートナーがいましたが、私があまりドイツ語に興味を示さなかったので、少し申し訳なかったです。ただし、スーパーマーケットなどでは英語が通じない場面もあるので、日常生活に必要なスイスドイツ語は使えるようになっておくと良いと思います。
また、スイス人や他の留学生(特にスカンジナビア系やオランダ人、ドイツ人)の英語の流暢さには驚きました。「英語がもっとできれば、もっと友達と仲良くなれたな」と思うことはありましたが、それ以上に言語の壁に臆することなく関わり続けることが大事だと思います。

単位認定、在学期間

学部を半年早期卒業したので、修士課程は留学含めた2年半で修了する予定です。単位認定は行いません。

就職活動

23年春卒を目指して就職活動を行う予定です。

留学先で困ったこと

コロナ関連の面倒が多かったです。結果的に感染することはなかったですが、濃厚接触者になるリスクに晒されたことが何度かあり、その度にその時点でのスイスのコロナルールの内容を調べて把握する必要があったため非常にストレスでした。留学前に調べていても規制は頻繁に変わるし、経験してみないと分からないことも多いため、周りの人たちとの情報共有はとても大事であると感じました。また、旅行に行く際にPCR検査が必要であったり、日本のワクチンパスポートをスイスのCOVID証明書に変換するのにお金がかかったりと、コロナ関連での出費も多かったです。

留学を希望する後輩へアドバイス

ETHでの留学は、必要な履修単位数が多く、非常に忙しいですが、そのハイレベルな環境に身をおくからこそ学べることがあります。また、私は、準備段階で研究室に入れなかったり、奨学金を辞退することになったりと、思うようにいかないことがありましたが、結果的にはそのおかげでいい出会いに恵まれ、自分の感じるままに伸び伸びと毎日を過ごすことができました。留学の計画・準備の段階は、面倒なことや大変なことがたくさんありますが、その全てが貴重な経験に繋がっていますので、是非チャレンジしてみて欲しいです。東工大には、ETHに留学経験のある先輩がたくさんいるので、そういった人たちも頼ってみてください。

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