派遣交換留学 デンマーク工科大学 2021年8月23日~2021年12月23日

派遣交換留学 デンマーク工科大学 2021年8月23日~2021年12月23日

留学時の学年:
修士課程2年
東工大での所属:
工学院 経営工学系 経営工学コース
留学先国:
デンマーク王国
留学先大学:
デンマーク工科大学
留学期間:
2021年8月23日~2021年12月23日
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

デンマーク工科大学はデンマークの首都コペンハーゲンの中心部からバスで30分ほどの場所にあり、ヨーロッパをはじめ世界中の留学生が集まっている。世界研究ランキングで2位の評価を得るなど、工学分野でデンマークだけでなくヨーロッパを代表する大学である。

留学前の準備

1セメスター(半年)の留学を含む2年間で修士を修了した。当初は修士1年の後期に留学し、帰国後に就職活動と研究をする予定であった。しかし新型コロナウイルス感染拡大により1年延期になり、修士2年の後期の渡航となった。職活動と研究を先に終えてからの留学となり順番こそ入れ替わったが、在学期間・留学期間に変更はなかった。また、留学に行けない可能性も高かったので、留学先の単位に頼らなくていいよう修了に必要な単位はすべて東工大で取得しておいた。

学生ビザ(ST1)について

手続きが直前になってしまったため、渡航前に間に合わなかった。大学からの受入許可証とビザを申請中である書類を持参し、ビザなしで入国した。(90日まで滞在可)申請の流れと時期は以下の通り。
・7月末手続きを開始。生体認証の予約確保→オンラインフォーム申請→汐留のビザ申請センターに行き生体認証
・8月中旬ビザなしで渡航
・8月末ビザの書類が日本の自宅に到着(宛先をデンマークの住所にするよう申請したが、反映されなかった)。家族にEMSで転送してもらい、10日ほどで書類がデンマークに届いた
・その後、デンマークのCPRナンバーやNemID(マイナンバーのようなもの)の申請が可能になる。
※2019年ごろに手続きのシステムが変わったようなので、情報を探す際は更新日時に注意が必要

日本で紙のワクチン証明書を発行して持参した(その時は入国にも必要だった)。自治体でCPRナンバーを取得するとイエローカード(保険証)が送られてくるので、そこに記載されたかかりつけ医の予約を取って紙の証明書を見せ、アプリ上のEUコロナパスに登録してもらった。
※日々変化するコロナ規制の更新情報や安全情報などの入手には大使館からのメールがとても役に立つので、渡航前はたびレジ、渡航中は在留届を登録し毎回確認することをお勧めする。最新情報を日本語で案内してくれる。

留学中の勉学・研究

履修・講義スタイルについて

単位は1コマ週4時間で5ECTSが最小ユニットである。私は1セメスターで5ECTSを2つ、10ECTSを2つの合計4講義30ECTS を履修したが、とても忙しく、多すぎたと感じた。ヨーロッパは日本のように単位数をたくさん取るのではなく、1つの講義に深くリソースを費やす学習スタイルのようだ。すべてグループワークだったが、課題や次回の準備のために講義時間外に予定を合わせてミーティングをすることも多かった。連絡やデザイン作業のツールも講義によってまちまちで(Teams, Slack, Messenger, Google drive,Miro,Figmaなど)、使い方や切り替えに慣れるのが大変だった。学んだこととしては以下Design and innovationの専門的な知識・経験とより一般的なプロジェクトへの取り組み方の2つに大別される。

Design and innovationの専門的な知識・経験

講義は1コマ4時間のうち前半2時間が主に講師が話すレクチャー、後半2時間がその知識をアウトプットするグループワークという構成だった。学期の終盤になると丸々グループワークの時間ということもあった。前半で新しく知ったデザイン手法などをすぐ実際のプロジェクトで試すことができ、グループワーク中もいつでも講師やTAに質問できる環境が整っていて非常に実践的だと感じた。過去の履修生のフィードバックを参考にして毎年新しい教え方を試みる熱心な講師が多かった。プロジェクトのトピックも医療系IoTやinclusive designといった時代に合ったものを扱っていた。また、数あるデザイン手法・ツールの中からどれを採用すべきか、プロジェクトの段階ごとの目的に合わせてグループで深く議論したのも印象的だった。(今問題点を深堀りするべきなのか、アイデアを収束させるべきなのか、言葉を使ったワークがいいのか、絵や図形を用いるタスクがいいのか、時間はかかりすぎないか、など)

一般的なプロジェクトへの取り組み方

全体的な印象として、オンとオフの切り替えが非常にはっきりしていた。オンの時には集中して取り組み、深い議論を交わした。上下関係があまりなくフラットなワークスタイルのため、年齢や学生、教授に関係なく「私はこういう理由でこう思う」と本気で意見をぶつけ合っていた。その上でおおもとの目的に立ち返り方向性を決めていった。自分はどの立場なのか、根拠は何かということを考える習慣がついた。対照的に休憩は10-30分と長めのコーヒーブレイクを取ったり外の芝生に出て社交的に過ごす。時間が短くトイレに行くかスマホをチェックして過ごす東工大の休憩時間との違いを感じた。はじめは驚いたが、心も体も効率的にリフレッシュしてタスクに戻ることができるので、今後もこのスタイルを自分の休憩に取り入れていきたい。

留学中に行った勉学・研究以外の活動

大学内のボルダリングやダンスの活動にたまに参加した。近郊の美術館も多く訪問した。また月に1回程度ヨーロッパ内で旅行した。

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

X-techという講義のグループワークにおいて、自分の貢献できるバリューは何かということを強く考えさせられた。日本で経験していたグループワークの分担では「私が1-5をやるから、6-10を○○さん、...」というように平等にタスクを割りふることが多かった。しかしこの講義ではスタートアップということもありCEO,CFOなど役割をはっきりさせ、得意なことで分担して進めていった。具体的にはデンマーク語ができるメンバーが外部の潜在顧客や似た分野の企業に連絡を取ったりインタビュー調査し、ソフトウェア開発経験のあるメンバーがコンテンツをプログラミングし、イラストやアニメーションが得意なメンバーがストーリーボードやピッチスライドを作成するなど分担して進めていた。私は特に生かせそうなスキルがなく、デンマークの制度などの背景知識もなく、ヒートアップする英語のディスカッションに着いて行けず、私以外で進んでいく疎外感があった。結局自分にしかできないことは見つけられなかったが、文献調査や競合との比較などの作業を中心に行い、忙しそうなメンバーに手伝えることはないかと聞いて都度タスクをもらった。そもそもの仕事量も多くストレスフルな講義だったが、この経験を生かして今後仕事等でプロジェクトに関わる際に、チームメンバーの中で自分の存在価値は何か、そのためにどういった視点で発言し、何に貢献できるのかを意識できると思う。

留学費用

渡航費:往復15万円
家賃:10万円×5か月
光熱水道:1万円×5か月
食費・日用品:平均3万円×5か月
自転車レンタル:1万円(5か月)
保険:5.6万円(5か月)
娯楽:旅行や稀に外食など
奨学金に合格したが、コロナウイルスの影響で支給に制限があり、結局受給できなかった。デンマークは消費税が平均50%もあり物価が高い。生活費を抑えるために以下のようなことが役に立った。
・食料ロス削減サービスのToo Good To Goというアプリをよく利用した。賞味期限が近い食材を安く買うことが出でき、未知の食材にも出会うことができたので良かった。大学にはほぼ毎日お弁当を持っていき、外食もほとんどしなかった。・調味料や調理器具はキッチンでシェアした。
・医療費やPCR検査は無料・費用を抑えて旅行するためFlixbus, Omio, Ryanair, TimeTravelsなどを利用した。
・電子機器など高価なものは日本で揃えて行った。
・コートやコンタクトレンズなど比較的高額なものが必要になった際は、物価の安い国に旅行したときに購入した。
・美術館や歴史的施設は学割があることが多い。入場料無料の曜日を設定している所もある。

留学先での住居

DTU公式で寮を管理しているBDTUに申し込んで住居を確保してもらうのが一般的である。しかし私の場合は7月末と遅く申し込んだため別のキャンパスの寮しか空いていなかった。(バスor自転車で40分ほどかかる)自分でBasecamp Lyngbyという大学近くのプライベートの寮を見つけ、そちらに住むことにした。立地としては、徒歩圏内にスーパーマーケットが複数あり、大学まで自転車で10分程度、電車の駅にも近くコペンハーゲン中心部に行くにも便利だった。家賃は月10万円と高いが、BDTUでも8万円以上するのでデンマークの住居は全体的に高いと思う。シャワー・トイレは自室だがキッチンは20人ほどで共有した。(キッチン付きの部屋も選択可)キッチンのメンバーとはとても仲が良く、毎晩料理しながら話したり、一緒に出掛けることも多かった。共有キッチンで過ごしていることで日常会話でも英語を話す機会が増えた。特に冬は寒く暗いので鬱になる人も多いと聞き、積極的にキッチンで人と話すようにした。クリスマスや年末年始を一緒に過ごして乗り越え、これぞヒュッゲだと思った。

留学先での語学状況

デンマーク語

デンマーク人は皆とても英語が得意なので、生活にも講義にも英語だけで十分である。クラスメイトも店の店員も英語で話してくれ、行政手続きや電車の案内も英語が併記してあるので外国人に優しいと感じた。(スーパーマーケットだけはデンマーク語しか書いておらず、見慣れない食材も多かったので買い物に時間がかかった)個人的にデンマークの文化や言語に興味があったので週1回デンマーク語のクラスを取った。街中のデンマーク語や会話が少しだけ分かるようになり面白かったが、コミュニケーションを取れるほどではなく結局英語を使ったので、実用的には必要ないと思う。

英語

留学が延期になってしまい渡航を待っている間に、留学先で言語の障壁を減らしたいと思い準備をしていた。渡航前にTOEICを何度か受け、最終的に955点を取得した。やはり行ってみると周りの学生の中で自分が一番英語ができないと感じた。日常会話では語学力の問題だけでなく知らない話題(映画やヨーロッパのサッカー選手など)のために着いて行けないこともよくあった。グループワークでは早口の人がいたり議論がヒートアップしてくると聞き取ることに精一杯になり、自分の意見を述べて話題に参加するのは難しいこともあった。しかし皆外国語として英語を話しているので、単語が出てこなかったり詰まってしまっても理解してくれ優しく聞いてくれるのはありがたかった。

単位認定(互換)、在学期間

「留学前の準備」述べた通り必要な単位を東工大で取得してから留学したため、単位認定は行わなかった。在学は延長せず、2年間で修士を修了する。

就職活動

留学前に終えた。内定者研修等もなかったので特に問題なかった。

留学先で困ったこと(もしあれば)

・出国前に冬服やコンタクトレンズを入れた船便を発送したが、結局届かず、現地で買い足す羽目になった。多少高くても航空便か預け入れ荷物で運ぶことをお勧めする。これに限らず、デンマークは手続きのIT化が進んでいる分、手紙などの配送システムはあまり発達していないと感じた。オンラインショッピングもあまり使われていない。
・現地の学生証が中々発行されなかった。何度も担当オフィスに連絡したが進展がなく、学生証がないまま学期が終わってしまった。食堂で割引を受けられない、夕方以降大学の建物に入れないなどの不便があった。
・コロナウイルスの影響で帰国のフライトが2度キャンセルになった。幸いどちらも返金されたが、日程変更のため寮の退寮日など調整が必要になった。

留学を希望する後輩へアドバイス

私は渡航前は在学期間の延長や就活のスケジュールが変わってしまうことに抵抗があり、在学期間を延
ばさない半年の留学にしました。しかし渡航してみると現地の生活や自由な考え方が合っていてとても快適で、ずっといたいと思えるほどでした。卒業や就職のプレッシャーのないのびのびしたキャリア観に触れ、急いで2年で修了にする必要はなかったのではと振り返っています。半年間に詰め込んで色々な経験をしましたが、忙しくあっという間に終わってしまったと感じます。もし同じようにスケジュールで心配している方がいたら、ぜひ1年間の交換留学や海外進学も検討してみてください。

この体験談の留学・国際経験プログラム情報

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