派遣交換留学 スウェーデン王立工科大学 2021年8月22日~2022年1月17日

派遣交換留学 スウェーデン王立工科大学 2021年8月22日~2022年1月17日

留学時の学年:
修士課程2年
東工大での所属:
生命理工学院 生命理工学系 生命理工学コース
留学先国:
スウェーデン王国
留学先大学:
スウェーデン王立工科大学
留学期間:
2021年8月22日~2022年1月17日
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

スウェーデン王立工科大学(KTH)はストックホルムにあるヨーロッパ有数の理工系総合大学です。留学生も多く受け入れており、修士の授業は英語で行われるなど、国際的な環境で勉強することができます。ストックホルム中央駅からメトロで15分ほどとキャンパスまでの交通アクセスもよく、キャンパス内には歴史を感じる煉瓦造りの様な建物が多くあります。キャンパス内には自然もあり、野ウサギを見ることもありました。



留学前の準備

派遣交換留学の追加募集(2020年秋出発)に応募しました。1年間の交換留学に興味を持ったのが修士1年生の夏だったので、修士の卒業を一年遅らせて(2021年3月卒業→2022年3月卒業)にすることを決めていました。就職活動は留学中に行い、実験は留学前に行い修士論文作成は帰国後に行うことを予定していました。

しかし、COVID19の影響から交換留学が中止になり(2020年5月発表)、留学を延期して留学参加を待つか、就職活動をし、修士卒業の延期を止め2021年3月卒業に戻すかを悩みました。留学をしてみたいという気持ちと、プログラム中止の連絡が来た段階で2021年卒の新卒一括採用の就職活動はかなり終わっており、就職先の選択肢が絞られている状況から、2022年3月卒業ができる範囲まではプログラム参加のチャンスを待つことを決めました。その後、留学のチャンスを待ちながら就職活動を終え、2度の留学延期を経て、派遣交換プログラムに参加することができました。卒業時期は2022年3月と決めていたので、プログラム参加期間を1年間から半年間に変更しました。最終的なスケジュールは以下の様になりました。日本での指導教官の先生にもスケジュール変更があれば報告し、相談に乗って頂きました。

留学情報は留学生交流課に伺って、相談に乗って頂きました。留学先で研究をしてみたいと思っていたので、授業として研究室での研究を履修したいと思っていたので、派遣交換留学に応募する前に興味のある研究室をインターネット調べて、メールでアポイントを取りました。ビサの申請は2ヶ月前に行うつもりでしたが、COVID19の影響でいつ出発できるかが不透明だったため、プログラムの実施通達後にオンライン申請を行いました。出発前ギリギリになってしまい焦りましたが1ヶ月程でビザ(residence permit)が降りました。ビザはパスポートをスウェーデン大使館に持っていく必要などはなく、スウェーデン到着後immigration officeに行く必要があります。ビザの通達後すぐにimmigration officeの予約を行いました。ストックホルム近くのimmigration officeはかなり混んでいるので早めに予約をする方がいいと思います。住居は、KTHaccommodationへ申し込みをしました。

留学中の勉学・研究

BB200X Degree Project in Biotechnology, Second Cy

KTHの出願時に授業の履修登録も行いました。留学先での指導教官の先生に研究室での研究を授業として履修したい旨と、どの授業が該当するのかをメールで相談しました。私が履修した授業は、1セメスターで研究を行い、結果を論文としてまとめ、発表をするという授業でした。授業の第1週にはstart up meetingという授業に関する説明会があり、授業開始から2ヶ月でhalf time meetingという研究の中間発表の機会もありました。また研究計画書も書きました。研究計画書には研究の意義などに加えて、SWOT分析やリスクアセスメントやビジネスケースを書くように指示がありました。本学の研究計画書よりもビジネスを意識したものでとても驚きました。研究室では、指導教官やポスドクや研究員の方々から基礎を教わりながら研究を進めました。論文やプロトコルを送ってもらって読んでおき、実験の前後にディスカッションをしながら理解を進めました。実験をしていた期間は朝8-9時から17-20時くらいまで毎日研究室に通っていました。慣れない実験がほとんどで、実験方法も一から教えてもらうことが多かったです。実験器具や研究室でのルールが所属研究室とは異なることが多く、同じフロアで実験している人たちに聞くことも多かったです。授業開始から2ヶ月ほどの頃、寮の退去騒動があり、予定していた実験の遅れなどを指導教官と相談し、スケジュールを立て直しました。授業開始から4ヶ月以降は、実験をするのをほぼ終え、結果を論文にまとめていました。最後の1ヶ月間は、論文の添削や発表のプレゼンテーションの練習なども指導教官の方々にして頂き、無事に発表を終えることができました。また論文提出の翌日にはopposition reportという課題もあり、割り当てられた他の学生の論文を読み、まとめ、評価をするというものでした。他の分野の他学生の論文を読む機会もあり、興味深かったです。

研究室のあるAlbaNova University center
研究室のあるAlbaNova University center

研究室でのデスク
研究室でのデスク

留学中に行った勉学・研究以外の活動

留学を開始した直後は、寮でのcooking partyやKTHの学生団体(THS)が主催するイベントに参加していました。学期開始直後ということもありwelcome partyや新入生でハイキングに行くイベントなどに行き、研究室以外での友達ができました。週末に友人とストックホルムの植物園や旧市街を見に行ったり、11月には公園でアイススケートをしたりしました。クリスマスの時期には研究部門でのクリスマスパーティーに参加しました。クリスマス休暇ではほとんどの人たちが自国に帰ってしまってとても静かでしたが、スウェーデンに残っている留学生の友人と一緒にお菓子の家を作って楽しく過ごしました。

公園でのアイススケート
公園でのアイススケート

研究室全員でクリスマスパーティーの準備
研究室全員でクリスマスパーティーの準備

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

4年前まで英語に苦手意識があり、留学に興味を持つようになったのも修士課程に入ってからでした。いつか海外の人と友達になったり、仕事ができたりしたら、さらに楽しいだろうと思い、交換留学で研究をしてみたいと考えていました。今回の留学プログラムでは、英語が話せるようになることに加え、文化の違う人達と一緒に何かをするのが目標でした。様々な国の人たちと、研究をしたり、友人になって一緒に出かけたりする中で、感覚の差を感じることも多かったです。例えば、研究を教えてくれた研究員の方は、朝9時ごろから実験しようと連絡していたので、8時半ごろから待っていたものの、10時半ごろに研究員の方が来ることがありました。国によって時間感覚の差があると感じました。逆に、自分の意見や考えを聞かれる機会は日本にいる時よりも多く、上手くスラスラと答えられないということもありました。そのような文化や感覚の違いがあっても、違うことは当たり前で、それを踏まえつつその違いに歩み寄りながら、仕事をしているのだと研究室での生活を通じて思いました。世界の違いを知ることもまた面白く、研究の合間に様々な国の人たちと、各国の話をするのも楽しかったです。英語が流暢でなくても、自ら話そうとすること、様々なことに興味を持つことが、一番大事なのだと感じました。

留学費用

KTH accommodationで寮の申し込みを行いました。KTHにはキャンパス内と外に一つずつ寮があります。私はキャンパス外の寮が割り当てられました。研究室へは電車で片道90分程の場所でしたが、自分で住居を探すのも大変だと思ったので、寮の契約をすることにしました。寮は1人1部屋で、ルームメイトはいません。部屋にはシャワーやキッチンがあり、電子レンジではなく、オーブンがありました。お湯が10分ほどで出なくなること以外は快適だったように思います。買い物は、駅のそばにあるスーパーを利用していました。また大型のIKEAが1時間ほどの場所にあり、生活雑貨はそこで購入しました。

Björksätravägen寮の建物
Björksätravägen寮の建物

寮周辺は緑が豊か
寮周辺は緑が豊か

寮に入ってから1ヶ月半ほどした頃、寮の点検をするため、翌日の夜のバスに荷物をまとめ乗るようにという連絡が寮の大家さんからありました。突然の連絡で、どこのホテルにどの程度の期間行くのかといった情報もなく、寮内は混乱していました。翌日の夕方、バスに乗ってBromma空港近くの指定ホテルに移動しました。寮の点検をし、寮の部屋を移動する必要のある人に対して、順次メールで次の部屋の契約の案内をするとのことでした。さらに新しい契約書を受け取ったら、即日にサインをし、その日中にホテルを出て新しい部屋に移動をして欲しいとのことでした。いつ新しい部屋に移動するのか不透明だったので、指導教官の先生に連絡をし、1週間ほど研究室のお休みさせてもらうことにしました。1週間の間に、同じ寮の友人達は徐々に他の寮(Karolinska大学などの他大学寮だそうです)へ移っていきました。私には1週間待っても連絡が来ず、研究を再開することにしました。いつ部屋を移動するか分からない状況ではスーパーでの買い出しも思うようにできず、大学での研究もありかなり大変でした。

寮の部屋の荷物をまとめ、バスに乗りました
寮の部屋の荷物をまとめ、バスに乗りました

一時退去で滞在した空港近くのホテル
一時退去で滞在した空港近くのホテル

ホテルに移動してから1ヶ月後、大学から新しい寮を見つけられなかったので、別のホテルで残りのセメスターを過ごすようにという連絡をもらいました。別のホテルは、KTHから歩いて5分ほどの場所にあり、ビジネスホテルのような作りで、キッチンやケトルは部屋にはありませんでした。大学に近くなったので、図書館などが利用しやすくなったのは良かったです。ホテルの隣の建物に共有の小さなキッチンとランドリースペースを用意してもらったので、ホテル滞在の学生50人ほどでそこで料理と洗濯をしていました。共有キッチンでは食べ物が盗まれたり、片付けない人がいたりと使い方で揉めることもありました。またキッチンに行くのに一度外に出ないといけないことから、私は電子レンジ以外のキッチンは使わないようにしていました。寮の時には毎日自炊をしていましたが、ホテルではスーパーのサラダや冷凍食品を食べていました。

学期末までいることになった学校近くのホテルの部屋
学期末までいることになった学校近くのホテルの部屋

学校近くのホテルからの景色
学校近くのホテルからの景色

留学先での語学状況

KTHの修士課程の授業は全て英語で行われるため、スウェーデン語は必要ありませんでした。研究室でも英語で、スウェーデンではどこでも英語が通じるため(子供でも流暢に英語を話していました)、スウェーデン語が分からなくて困る場面はありませんでした。唯一不便を感じたのは、スーパーでの買い物です。表記がスウェーデン語であるため、商品の名前や説明などが分からず、google翻訳のリアルタイム翻訳機能を使っていました。特に初日の買い物で、洗濯洗剤/食器洗剤/柔軟剤なのかの判断が難しかったです。またスウェーデンでの予約サイトなどはスウェーデン語しかないことがかなりありますが、これもgoogle翻訳などを利用して読んでいました。私は英語が得意ではなく(特にスピーキング)、留学開始の2週間ほどは早いスピードの英語や各国の訛りの英語が聞き取れず、なかなか思ったように話せないなど、多くの問題がありました。それでも研究室の人たちや友人達は、わかりやすく言い直してくれたり、話すのが遅くても待っていてくれたりしました。言いたいことが言えないのはとても歯痒い一方で、伝えたいことが生活をしていると多くあり、一生懸命伝えようとするうちに少しずつ話せるようになりました。また、うまく話せなかった時には、「あの時なんて言えばよかったのだろう?」と考え、調べておくことも、徐々に話せるようになるのに繋がった気がします。寮の退去に伴い、複雑なシチュエーションを伝えなければならないという状況も、英語の上達につながったかなと思います。最後まで流暢に話すことができた訳ではありませんが、帰国前に多くの人に「前よりもたくさん話すようになったね」と言ってもらえたことはとても嬉しかったです。

単位認定(互換)、在学期間

交換留学プログラムの参加前に大学院卒業に必要な単位は全て取り終えていたので、留学中に取得した単位の認定(互換)を東工大で行いませんでした。交換留学に参加する場合は、在学期間を1年間延長しました。しかし留学プログラムがCOVIDによって延期となり、単位も取り終えていたので、2021年4月から半年間休学をしました。その後2021年8月出発の許可が大学から降りたため、8月に復学をし、その後留学を開始しました。

就職活動

留学開始前の2021年3~5月の間に行いました。通常の新卒一括採用の時期だったため、特に変わったことは行いませんでした。

留学先で困ったこと(もしあれば)

住居の不安は大きかったです。またスウェーデンに滞在するのが一年未満の人にはpersonal numberが発行されないために、できることに制限がかなりあるなと感じました(住居を借りる際の選択肢やCOVIDの無料検査など)。

留学を希望する後輩へアドバイス

修士課程の2年間という短い時間の中で、研究や就職活動、それに加えて留学をしてみたいと考えると、上手くできるのか不安になると思います。不安な時には、家族や知人、留学生交流課などの多くの人が相談に乗ってくれると思います。情報を集めることで、様々な方法や機会があり、自分のやりたい事に近づけるヒントになります。留学は新鮮で楽しい一方で、辛いことや煩雑な多くの手続きもあると思います。またCOVID19の影響から必ずしも推奨されるものではなくなっている、という現実もあると思います。こうした留学が難しい状況下でも協力してくれる人たちがいて、さらに自分のやってみたいという強い気持ちがあれば、留学へのチャレンジは新たな成長の機会につながると思います。私は、COVID19や寮の退去などで、全てが想像通りの留学とはなりませんでしたが、留学を通してたくさんの貴重な経験と友人や知人ができました。大変なことも多くありますが、皆さんの世界に対する好奇心が貴重な経験につながることを祈っています。

この体験談の留学・国際経験プログラム情報

他の関連する体験談