派遣交換留学 ベルリン工科大学 2022/3/1~2023/1/17

派遣交換留学 ベルリン工科大学 2022/3/1~2023/1/17

留学時の学年:
修士課程3年
東工大での所属:
環境・社会理工学院 建築学系都市・環境学コース
留学先国:
ドイツ
留学先大学:
ベルリン工科大学
留学期間:
2022/3/1~2023/1/17
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

ベルリン工科大学(Technische Universität Berlin、略称: TU Berlin)は、ベルリンに4つある大学の1つである。7学部で構成されており、私はその中のFaculty VI - Planning Building EnvironmentのLandscape Architectureに所属していた。留学生はヨーロッパや北南米国から来ている学生が多く、日本人は3~5人程度だった。しかし、ベルリン工科大学の隣にベルリン芸術大学(UdK)があり、その大学にも日本人留学生が何人かいた。

留学前の準備

就職活動、修士・博士論文などとの兼ね合いを含め、修了までの計画をどう立てたか

留学中に就職活動の準備を行いながら、帰国後に面接などの採用試験に臨むことを計画していた。修士論文に関しては帰国してから1年かけて執筆する予定である。最終的に卒業を延ばし、修士課程を留学期間含めて4年間過ごすことになったが、私の場合大学院入学と同時にコロナが拡がったこともあり、むしろ学生のうちに経験したいことを全部やってから卒業した方が今後の人生でプラスに働くのではないかと考えた。

その他

留学情報の入手方法:ひたすらインターネットでベルリン工科大学の情報や入国審査、コロナ禍の状況などについて調べた。また、同時期にベルリン工科大学に留学する東工大の同期がいたので、その人とも色々相談しながら準備を進めた。
専門分野・語学の準備方法:専門分野についてはドイツの都市や歴史、自然に関する本や論文を読んで知識を深めていた。語学についてはDMM英会話で英語を話す練習と、ドイツ語の基本的な単語や文法について、東工大のドイツ語秋期・春期集中講座と独学で勉強した。
留学先の研究室:研究室に所属したいと考えていたため、ベルリン工科大学のサイトから自分に合いそうな研究室を探して教授にメールしてみたが、返事が返ってこなかったため結局研究室には所属しなかった。
ビザ取得:全てドイツに来てから手続きした。入国から二週間以内に住民登録を行い、そこからオンラインバンクと閉鎖口座の開設、健康保険の加入などに加えて入学許可証などの必要な書類を揃えた。提出する書類が多く、他のヨーロッパの国と比べて申請方法も複雑なため、帰国前には何の書類が必要か確認することが必須である。特に閉鎖口座は滞在月数×861€を開設時に送金する必要があるので、注意した方が良い。(1年滞在する場合はおよそ日本円で140~150万円程。私は閉鎖口座開設時にこれだけの金額を揃えることが出来なかったので、親にお金を借りて月々の奨学金で返していった。)
住居の探し方:留学開始2,3ヶ月前にベルリン工科大学から留学生専用の学生寮の案内が来たので、それに従った。

留学中の勉学・研究

ベルリンに到着して最初の一ヶ月間はドイツ語のクラス(A1-1レベル)に参加した。クラスメイトが約13人いて、基本的な分法や会話の練習に加えて、毎週金曜日はベルリンの街を皆で見学しに行っていた。夏学期が始まってからは、ランドスケープデザインスタジオである「Masterstudio Verwandtschaftsräume II」というコースに参加した。内容は複雑に変容する現在の地球環境において、人間と非人間の関係を見直すための提案を行う授業だった。授業の参加者は約20人で殆どが正規学生で、留学生は私を含めて2人しかいなかった。3~4人で6つのグループに分かれて課題を行い、私たちのグループは人とクロヅルの関係を環境的・社会的に繋がり直すための農業やインフラストラクチャーに関する提案を行った。Rhinluchとよばれるベルリン近郊にある広大な湿地帯が対象敷地であり、6月にはその湿地で一週間のキャンプを行った。全体を通しての感想は、内容が複雑で難しく、英語とドイツ語の両方で行っていたためついていくのには苦労したが、グループメイトやまわりの生徒、担当教授の人にサポートしてもらいながら自分が持っていなかった考え方を吸収できたため、良い経験になったと感じている。
冬学期はType and Model - History Class -という建築の歴史やタイポロジーに関する授業と、Green Justiceというパブリックスペースや都市緑地に存在する不平等や環境的公正について議論する授業を履修していた。それぞれベルリンの街をまわりながら発見したことについて議論し、プレゼンテーションを行う授業だった。授業以外ではNaturpark Südgelände、Teufelsberg、テーゲル空港など、ベルリンにある瓦礫の山や空港・壁跡地などが、公園や芸術活動の場として再生した事例をリサーチした。ベルリンの東西分裂時代に形成された都市空間と歴史、現在の使われ方について独自で調べていたので、修士論文のテーマにしたいと考えている。

留学中に行った勉学・研究以外の活動

ボランティア、インターンシップ、旅行、スポーツなど、幅広く体験を記入してください。
旅行はオランダ、イタリア、ポーランド、スペイン、ポルトガル、フランスなどヨーロッパにある13 カ国・23 都市を見て回り、それぞれの場所の歴史や文化、建築、街や公共空間の形成について経験することができた。特に印象に残っているのはアムステルダムの街並みである。街全体が運河で囲まれており、自転車道が綺麗に整備されていて歩いていて一番心地よかった場所である。建物もオランダ様式で並んでいて景観が整っていることに加えて、近くに風車村もあって楽しく観光できたことが鮮明に記憶に残っている。スポーツは夏に友達と公園でビーチバレーを行っていた。ボランティアやインターンシップは特に行わなかった。



留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

先述したランドスケープデザインのスタジオが最も苦労と成長を感じたエピソードである。英語とドイツ語の両方で授業が行われたため、ドイツ語のパートは理解できずまわりのクラスメイトに通訳してもらうしかなかった。また、内容も複雑で最初は議論に全くついていけず、人の助けがなければ何もできないという無力さを日々感じていた。それでも授業の内容を録音して授業後に聞き直したり、次の授業前に必要となるであろう情報をあの手この手で集め続けたりした結果、少しずつ自分の考えを言えるようになった。また、海外でのディスカッションでは自分の言いたいことをはっきり言わないといけないという意識に悩まされていたが、それが上手くいかなくてもグループのために行動する、例えば自分が担当以外のことでも調べて役に立ちそうな情報を集めて共有したところ、グループメイトの人に喜んでもらえたことがあった。個人の意見を主張することも勿論大切であるが、グループに貢献するという意識や行動が認めてもらえたのは大きかった。助けてくれたクラスメイトや教授には本当に感謝しかない。後は海外の友達をつくったり、一人で旅行をしたりしたことで自分の行動や考えが広がって、留学前と比べて自分に自信がついたと実感している。

留学費用

渡航費:往復約20万円(ANA、ルフトハンザを利用してフランクフルトで乗り継ぎ)
住居費:月約4万円(秋から家賃が上昇して約5万円になった)
保険料:月約2万円
通信量:月約2千円
放送料:月約千円~3千円
食費:月約3万円
ビザ申請:約2万円
その他:月約2~5万円
奨学金:月20万円 (三原正一海外留学支援奨学金)

留学先での住居

留学生専用の寮が全部で4つあり、第2希望まで出すことができた。申し込みは留学の約2,3ヶ月前にメールで案内が送られてくるので、それに返信した。私は大学から徒歩10分で最も近く、家賃も最も安い寮を選んだ。1フロアに最大22人住んでおり、スペインやトルコ、イタリアなど様々な国からの留学生と生活していた。6畳より少し小さい個人部屋と、共有のシャワー、トイレ、キッチンがあった。洗濯は寮の外にランドリーがあるのでそこを使っていた。コモンスペースでは常に誰かがお喋りをしているので孤独を感じることは殆どなかったが、パーティで夜中はうるさいことが多かった。寮での生活は大体楽しむことができたが、プライベートを重視して落ち着いた生活を重要視するならば他の寮を選んだ方が良いと思った。

留学先での語学状況

英語はそこそこ話せる、ドイツ語は基礎知識があるだけで全く話せない状態で留学をスタートした。ベルリンであればスーパーやレストラン、マーケット、商業施設など何処でもほぼ全員の人と英語でコミュニケーションをとることができるので、ドイツ語ができなくても生活に困ることはなかった。授業については建築の座学やスタジオは英語開講のものが多かったが、ランドスケープ分野はほとんどドイツ語開講だったので、あまりとることができなかった。最初の1,2ヶ月は英語でのコミュニケーションに苦戦していたが、徐々に慣れることができた。英語力のなさにコンプレックスを感じることもあったが、逆に言えば英語を母国語として話す人はアメリカ人やイギリス人を除けばいなかったため、間違えても誰も気にしないという意識で会話できたことがコミュニケーション力の向上に繋がったと思う。

単位認定(互換)、在学期間

留学中に取得した単位の認定(互換)を東工大で行ったか(行う予定か)。在学期間の延長を行ったか。
Indicate if you were able to transfer credits you earned during study abroad, and if you extended your enrollment period at Tokyo Tech.
2020年4月に大学院に入学し、2024年3月に修了予定である。2021年夏までに修了に必要な単位は修士論文を除いて全て取り終えたので、単位認定は行わない。

就職活動

先述の通り、留学中に就職活動の準備を行いながら、帰国後に面接などの採用試験に臨むことを計画していた。8月頃からインターンや説明会の参加、11月頃からOB訪問などをオンラインで行った。12月からは本格的にエントリーの準備等を行っていた。本来であれば2月一杯まで留学を行う予定であったが、留学生交流課の方や担当教授と相談して1月に帰国することになった。帰国してすぐに採用面接や実技試験が始まり、2月上旬に第一志望の企業から内々定を得ることができた。留学を行うこと自体が就職活動においてマイナスになるとは感じていないが、留学前に就職活動との両立をしっかりと計画し、事前に留学生交流課やOBの方々とよく相談しておくべきだったと後悔している。

留学先で困ったこと

最初の1ヶ月は新しい生活やコミュニケーションに慣れていないことに加えて、ビザ申請や銀行口座の開設などやることが多かったので苦労した。留学して半年くらい経てば生活に慣れることができた。金銭面ではウクライナ戦争による経済状況の悪化と円安の影響が大きく、想定していたより費用が膨らんでしまった。また、ドイツではクレジットカードが使えないお店が結構多く、現金を持っていない時は焦ることが多かった。ベルリンはヨーロッパの他の都市と比べて治安も良い方なので、盗難にあったり犯罪に巻き込まれたりすることはなかった。

留学を希望する後輩へアドバイス

もし留学をしたいという気持ちがあるならば、どんな手を使ってでも行った方が良いと思います。英語力に自信がなくても、海外での生活に不安があったとしても、大丈夫です。今までの価値観や行動範囲を大きく超えることができますし、時にはまわりの人に沢山助けてもらいながら新しい経験を積むことができる貴重なチャンスが留学だと考えています。正直私も卒業の時期を遅らせること、コロナ禍の中で海外に渡ること、就活と両立させること、金銭的なことなど留学前は色々なことで悩んでいましたし、親にも結構反対されました。しかし最終的には留学に行きたいという気持ちは変わりませんでした。楽しい事も苦労した事も沢山経験することができましたし、自分が今まで見ていた世界がどれだけ小さかったのかが実感しました。可能性や視野を広げるためにも、もし留学期間を半年か1年間で迷っていれば、私は是非1年間留学することをオススメしたいです。迷っていることやわからないことがあれば、私の経験した範囲で力になれることは是非後押ししたいと考えているので、気軽にご相談ください。



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