派遣交換留学 ミラノ工科大学 2021/9/1~2022/8/30

派遣交換留学 ミラノ工科大学 2021/9/1~2022/8/30

留学時の学年:
修士課程3年
東工大での所属:
環境・社会理工学院 建築学系 建築学コース
留学先国:
イタリア
留学先大学:
ミラノ工科大学
留学期間:
2021/9/1~2022/8/30
プログラム名:

留学先大学の概略

ミラノ工科大学はミラノ、レッコ、コモの3つのキャンパスに所在し、工学、建築、デザインの3部門からなるイタリアの国立大学。私は建築学科に所属していた。英語で行われる授業とイタリア語で行われている授業が分かれており、他国からの留学生も多かった。英語で行われる授業に参加していたが、3/4以上が他の国からの留学生であり多国籍な印象だった。

クラスメイト達

クラスメイト達

留学前の準備

交換留学のために大学へ提出する資料作成

留学する前年の秋頃から次の春にかけて募集がある。英語の得点が足切りになるので、英語の勉強を数ヶ月行った。私は、TOEFL ITP試験の点数を提出した。TOEFL ITPテストはTOEICのように記号問題しかないため、他のテストに比べて難易度が低く比較的点数を取りやすいことが理由だった。その他、志望動機書や面接は英語で行われるため、少し苦労した。

奨学金のための資料作成、ビザの申請のための資料作成

私はトビタテ奨学金に応募した。トビタテ奨学金は毎年留学前年の秋から冬にかけて募集があるので、それに間に合わせるように、留学生交流課の方にも手伝っていただきながら資料作成を行った。資料が通ると対面、グループでの面接があるため、ボードを準備して、自身の留学計画を発表した。その後留学開始前に幾つかの提出などがあった。

ビザ取得のための資料作成

留学2ヶ月前から、資料を集め始めなんとかビザを取得できた。一般的にはビザの申請ができるのが出発の3~4ヶ月前からなので、そこに向けて4~5ヶ月前から準備を始める。しかし私の場合、新型コロナウイルスの影響もあって留学が決まったのが2ヶ月前であったので苦労した。入学許可証や留学金の受給証明書などは、割合簡単に入手できたが、住居の証明書をもらうのにとても苦労した。イタリアのビザ申請には1年間居住する場所の証明書が必要だったが、イタリアの仲介業者からの連絡が遅かったり、こなかったりまちまちで、非常に苦労した。また、証明書にハンコをもらう必要があることがあり(イタリア大使館の担当者による)それにも苦労した。ハンコがもらえない場合は、出発後2週間~1ヶ月のホテルの予約証明が必要となる(これも担当者による)。以上の書類を揃えるのに出発の2週間前までかかり、ビザを受け取れたのは出発の3日前だった。

留学中に行った勉学・研究

留学先では、ARCHITECTURAL AND URBAN DESIGN COURSEに所属して建築意匠に関するスタジオや座学を履修していた。ミラノ工科大学のこのコースには大きく4つのスタジオがあり、その中から、ARCHITECTURAL DESIGN STUDIO(建築設計スタジオ)とURBAN DESIGN STUDIO(都市設計スタジオ)を受講した。建築設計スタジオではクロアチアのスプリットに、文化とスポーツ機能を持った高層の公共施設を提案した。クロアチアのスプリットは古くから保存されている旧市街と、60年代以降に開発せれた地域が混在している。それらを互いのコンテクストに参照して、街の起点になるような設計とした。また、このスタジオには構造を専門とした建築家も参加していたため、高層の建物の構造に関しても提案を行った。現実的に立てられるかどうかが重要なポイントであり学生のうちに、実務でもそのまま生かせるような内容に踏み込めたことは良い経験になった。
都市設計スタジオのテーマはBIO-DEVERSITY(生物学的多様性)で、人間の視点からだけではなく生物学的な視点からも都市計画を行うようなスタジオであった。スタジオでは毎週、生物学を専門とした教授や哲学者など、建築の分野とは異なる専門家からのレクチャーもあり、様々な視点から建築を考えるきっかけになった。具体的な内容としては、まずはイタリア全土を敷地とし、保存生物の生息範囲や保護森林地区などの生物と関わるゾーンと、人間の手が加わっている都市部や交通網などのエリアを地図上にマッピングする。そして、生物の栖となる緑地をつなげながら、イタリアの社会、環境問題(地震や大雨などの災害や、農村部の過疎化問題、交通の整備不良による経済的衰退など)を解決するような提案を行った。これらの提案はどれも生物学的な視点でも利点があるような提案とし、人と自然の関係について考え直すきっかけともなった。
スタジオの他にもヨーロッパの文化史や現代建築史などの授業も履修しイタリア、西洋の側からの視点で、歴史を捉えることができたことも良い経験になった。



留学中に行った勉学・研究以外の活動

留学に行くきっかけとなったのは、大学での勉学の他にヨーロッパの建築を見て回りたいという目的があったためだ。春休み、夏休みの長期休みを生かして、ヨーロッパへの周遊旅行で様々な建築を見て回った。イタリアは他の国へのアクセスがよく、どこの国でも飛行機を使用すれば2~3時間で行くことができる。そのため授業がない日や休日などを活用して様々な建築を見て回った。春休みにはスイスを周遊した。スイスには数多くの現代建築作品があり、それらを回ることができた。スイスは小さな国でどこも電車やバスで移動することができたので楽だった。チューリッヒとクール、バーゼルを起点として、その他小さな街も回ることができた。夏休みは、春休みに比べて長い休みがあるので、帰国ギリギリまでたくさんの国を回った。オーストリア~スペイン~ポルトガル~スイス~フィンランド~スウェーデン~デンマーク~イギリス~フランス~オランダと飛行機や電車を使って移動し様々な建築を見ることができた。

留学を終えて、自分自身の成長を実感できたエピソード

研究室では留学生も交えたゼミや研究活動があり、英語で話す機会があった。留学以前も、そのような会に参加して発言していた。留学後はよりスムーズに自信を持って発言できるようになり、議論に積極的に参加できるようになる、といったところで成長を実感することができた。また、留学の手続きから、帰国に至まで、様々な人にお世話になりながらも一人でこなせたことも自信につながった。今まで実家で暮らしていたので一人暮らしが初めてだったこともあり、家事などの生活力、料理もよりできるようになったことも良かった。

留学費用

留学費用はトビタテの奨学金の範囲内で大体収めることができた。毎月160,000円と準備金200,000円前後でやりくりした。夏休みの旅行などのときは貯金していたお金を崩しできるだけ多くの国を回ることに使った。生活費を抑えながら、旅行に月に一回程度いけるようにやりくりした。

留学先での住居

ミラノ工科大学には学生寮があるが、学生寮は人気があるのと、数が少なく、運よく空いていない限り入れないので、イタリアの仲介会社を通して値段の安いフラットを探した。ミラノは都会で家賃も高いので一人で部屋に住むのは難しかった。留学準備の欄にも詳しく書いたが、日本にいながら居住するフラットを探すことはかなり大変だった。イタリアの仲介業者(Dovevivoという仲介業者を利用した)は時差もありなかなか連絡が取れない(メールの返信が返ってこない、電話が通じないなど)ので早めに準備する必要があったなと感じた。
居住していたフラットはキッチンとシャワートイレが共有で個室がある形態のフラットだった。部屋数がかなり多く8人の同居人と一緒に生活していたのでそれぞれのフラットメイトの誕生日のパーティや、日々の会話など楽しいことも多かった半面、キッチンやリビングがあまり大きくなく一つしかなかったのでキッチンが使えない時が多いなど工夫が必要だったのは難点だった。

留学先での語学状況

留学先のミラノ工科大学は、英語の授業とイタリア語での授業で分かれていたため、授業は英語ができれば十分だった。
英語の点数は苦労せずに取ることができたが、実際に使うとなると別の問題で、最初の3ヶ月ほどは全然聞き取ることができずかなり苦労した。それを超えるとだんだん聞いたり話したりすることに苦労がなくなってくる感じがあり、現地で英語の多くを習得した。生活では簡単なイタリア語だけで十分だった(お店での注文や、ありがとう、こんにちはなど)。たまにイタリア語が必要な時もあり、中でも滞在申請、住民登録の際は、郵便局に届出を行わないといけないのだが、イタリア語しか通じず苦労した。また、病院の予約(PCR検査など)でもイタリア語で話せないと切られてしまうなどもあった。

単位認定、在学期間

単位認定は行わなかった。また在学期間は1年2セメスターで延長などはなかった。

就職活動

留学中に就職活動は行わなかった。私は建築学科で中でもアトリエと呼ばれるような建築会社に就職することを考えている。そのためインターンなどをしながら、帰国後の春もしくは、論文を書き終えて秋から始める予定。

留学先で困ったこと

病気になったとき(熱など)日本に必ずあるものがなかなか見つからなかった。熱さまシートがないのは困った。

留学を希望する後輩へ、アドバイス

英語や自分の専門分野など目的を持って成長できる機会でもあります。それがなくとも1年間、海外で暮らすというだけで貴重な経験となるので、迷っている人がいたらぜひ行ってみて欲しいなと思います。



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