派遣交換留学 デンマーク工科大学 2023年8月21日~ 2024年2月8日

派遣交換留学 デンマーク工科大学 2023年8月21日~ 2024年2月8日

留学時の学年:
学士4年
東工大での所属:
環境・社会理工学院 融合理工学系
留学先国:
デンマーク
留学先大学:
デンマーク工科大学
留学期間:
2023年8月21日~ 2024年2月8日
プログラム名:

留学先大学(機関)の概略

デンマークの首都であるコペンハーゲンの中心地からバスなどで30~40分のLyngbyというエリアに位置し、ヨーロッパでもトップクラスの単科大学。留学中にヨーロッパの工科大学ランキングで1位を獲ったことで学内が少し沸いた。メインとなるLyngbyキャンパスの敷地面積は東工大の4倍の大きさで、学内移動はかなり不便。
世界各国からの交換留学生(半年または1年)、またデンマーク外から修士学生(二年間)として入学する外国人の数が非常に多く、様々な国の学生と交流を図ることができる。日本人は他国の学生と比べると非常に少なく、交換留学生の数では、秋学期は5人(東工大2名、東大1名、東北大2名)であり、英語を上達させる上でも好環境である。
授業については、学部はデンマーク語で開講されているものや英語で開講されているものがあり、修士はすべて英語で行われている。

留学前の準備

学士課程で留学した場合

私の場合、大学の硬式野球部で主将だったこともあり、大学野球に区切りをつけるまで続けた結果、学部4年後期というかなり珍しい時期の留学となった。学部4年6月(留学の2か月前)まで部活動を続けていたため、留学準備は部活動と両立して行った。本来はアメリカやスイスの大学に留学することを目標としていたが、募集の段階で英語スコアが足りず、その次の希望であったデンマーク工科大学を選ぶこととなった。今となってはこの選択が正解だと思っている。その後、ありがたいことに奨学金を給付していただくことが決まり、野球部を引退してからの2か月は、大学院入試と学士特定課題研究の準備、英語力強化に勤しんだ。

その他

留学情報は、去年DTUに1年間留学していた同期の友人に住居・用意すべきものなどを教わった。語学の準備方法については、単語を覚える、英語の本を読む、など行ってきたが、今も正解がわかっていない。ビザの取得は、過去の先輩らの体験記やホームページ、インターネットに詳しく書いてあるので割愛するが、私の場合正式なResidence Permitの取得は最後までできなかった。日本での手続きはすべて終了して渡丁したが、役所の手続きが滞っていたのかこちらが10月上旬に連絡するまで何の動きもなかった。その後急かしたことで、CPRナンバー、イエローカードと紙媒体でのResidence Permitは取得したが、Residence Permitカードは最後まで届かなかった。住居の探し方も特殊で、当初BDTUに募集していたが、再度確認した際に何故かリジェクトされていたため、Lyngby Basecampも視野に入れながらFacebookでサブリースしている部屋を探した。その結果、運良くNybrogård Dormitoryの部屋を見つけることができた。

留学中の勉学・研究

授業は基本的に、週1コマ(4時間)の5ECTまたは週2コマの10ECTの授業を組み合わせてとり、私は週6コマの30ECTを受講した。しかしながら、内2コマは学部の授業であったこともあり、テスト期間を除き、きついとは感じなかった。しかし、他の人の話を聞くとDTUの中でも楽な授業を取っていたようだ。DTUの授業は4時間のうち前半2時間は教授が教える講義形式、後半2時間は演習やグループディスカッションに費やす時間となっていた。講義内容や授業形式を見ても、ディスカッションやグループワークを大切にする大学だと感じた。これは他の欧州の大学と比較しても顕著なようだ。
履修した科目には、ビジネスとエネルギーという2つの柱があった。その理由としては世界でも有数のスタートアップ企業数を誇る大学で、そのイノベーションの根源を探りたかったこと。またエネルギー分野は、世界一の環境先進国であるデンマークが再生可能エネルギーをどう利用して、今後をどう展望しているのかを知りたかった。
結論としてビジネス分野においては、ビジネス形成の手法などは日本と異なる部分は少なかったが、大きな違いは学生の思考の幅・深さと機会の多さである。思考の幅ではアイデア出しの段階でポンポン考えが出てくるところであり、深さはビジネスモデルの実現可能性を模索していく過程で、私がある程度の検証で満足していたにもかかわらず、他の学生はより深く、あらゆる手法を用いて検証しており、その点で日本人学生並びに私との大きな差を感じた。また、エネルギーに関しては、日本とEUでは電力グリッドの形が多少異なっていたり、水素1つ取っても日本と描いている未来が異なっていることが非常に興味深かった。ただ、成績は全体的に芳しいものではなく、原因としては英語の壁が多少あったこと、多くの授業を履修したこと、時間管理の下手さなどがあると分析している。

留学中に行った勉学・研究以外の活動

Vestasへの企業訪問
Vestasへの企業訪問

モロッコの砂漠
モロッコの砂漠

CopenHill (ごみ焼却場とスキー場が融合した施設) への訪問

CopenHill (ごみ焼却場とスキー場が融合した施設) への訪問

ボランティア、インターンシップ、旅行、スポーツなど、現地での経験について

 風力発電が国内エネルギー供給の約6割を占めるデンマークで新しい技術や取り組みを学べる、また色々なコミュニティに属し様々な人と出会いたいという考えから、WESA (Wind Energy Student Association) という学生団体の幹部に立候補した。主な仕事はSNSでのイベント周知・メンバー勧誘や新たなイベント企画を行っていた。業務自体はそこまで受け持たなかったが、そこでの風力エネルギーに従事する人達との出会いや企業訪問によって私の就職に対する視野が格段に広がった。
 旅行に関しては、週末を利用してデンマーク国内の城や美術館を友人と廻っていた。また、海外はスウェーデン・オーストリア・ドイツ・ノルウェー・ポルトガル・イギリス・モロッコと当初の想定よりも多くの国に訪れることができた。特にポルトガルやモロッコは文化・環境・人柄が日本と異なっており、特にここでは書かないがおすすめしたい町が多くある。
 もちろん、ビール大国でもあるデンマークなので、飲酒やパーティーも頻繁に行っていた。

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

英語に関して成長を感じた瞬間が留学中に一瞬だけあり、冬頃に英語が突然スルスル出てくるようになった。しかしながら、旅行で日本人に会うなどしばらく英語を使わないでいるとこの感覚がなくなっていたので、日本語からの隔離はある程度必要だと感じている。
 また、本留学が初めての一人暮らしだったこともあり、一人でいることが増えたために自分自身について考えることが格段に増えた。将来のこと、自分の興味、感情の言語化などを行い、努力が足りていない自分に憤りを感じることが多かったが、無駄ではないと感じている。

留学費用

渡航費: 往復25万円 (直前で日付を変えたため)
生活費: 月額8万円
住居費: 月額6万5000円
保険料: 約7万円
旅行費: 計25万円
奨学金あり

留学先での住居

寮は大学の寮ではなく地元の学生寮なので、寮生のほとんどがデンマーク人であった。せっかくデンマークに来ているので彼らと仲良くなれるのは良い反面、留学生同士のコミュニティが少なかったり、寮内の会話が時々デンマーク語になる時があるのでそこでの苦労はあった。ただ、デンマークの制度・おすすめの場所、伝統文化などを知ることができ、とても有意義な時間だった。加えて、彼らの優しさに救われたことが何度もあり、いいルームメイトに恵まれたと感じている。
寮内のアクティビティとして、週1回のフードクラブ、不定期の合トレ、カヌーなどがあった。フードクラブとは、週1回ルームメイトの誰かがみんなのご飯を作るというもので、デンマーク料理のほかに、インド料理、東欧料理、メキシコ料理などがあった。勿論、私も日本料理として寿司、カレー、鍋を作った。また、寮が湖 (Lyngby lake) の目の前にあり、無料でカヌーが使えたので週末はルームメイトとカヌーをすることもあった。

ルームメイトとカヌー
ルームメイトとカヌー

聖マルティヌスの日に食べる鴨肉とジャガイモ
聖マルティヌスの日に食べる鴨肉とジャガイモ

留学最後のフードクラブ

留学最後のフードクラブ

留学先での語学状況

デンマークでの語学に関してはみんなが英語を話せるのでデンマーク語を話せなくても問題ない。前述のとおり、学部の授業はデンマーク語で開講されているのもあるのでシラバスでの確認が必要である。
ちなみに私は、最終的にTOEFLを73点取って渡丁したが、英語に関しては常に劣等感を持って過ごしていた。小さな苦労は常にしていたが、自分は英語下手だから頑張って理解してくれという気持ちで人と話していた。

単位認定(互換)、在学期間

単位互換もせず、在学期間の延長もしない予定

就職活動

学部4年での留学であったため、特に就職活動などはしていなかった。しかしながら、オーストリアでたまたま出会った日本人が海外インターンシップ制度を利用していたことや、デンマーク工科大学の研究室訪問などで留学前は考えてもいなかった就職についての選択肢が広がった。今後はヴルカヌスやIAESTEを利用した海外インターンシップ、並びにPh. Dやポスドクを海外で取得することも視野に入れながら今後の研究・就職活動に従事していきたい。

留学先で困ったこと(もしあれば)

日本の実家から荷物を郵送してもらった際、デンマークの税関で関税を払わない手続きにかなり時間がかかった。また前述の通り、Residence Permitの手続きも時間がかかったことから、デンマークの役所を通す手続きは電話で交渉すること念頭に置くべきである。

留学を希望する後輩へアドバイス

留学前にこれを勉強したいというビジョンを持って、何事にも積極性を忘れないでほしい。留学しているとき、思ったほどキラキラしてないと感じるかもしれないが、それはよくあること。そういう時こそ日々の小さな喜びを見つけてみよう!

この体験談の留学・国際経験プログラム情報

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