Summer Exchange Research Program(SERP) カールスタード大学 2019年6月~9月

Summer Exchange Research Program(SERP) カールスタード大学 2019年6月~9月

留学時の学年:
修士課程2年
東工大での所属:
工学院
留学先国:
スウェーデン王国
留学先大学:
カールスタード大学
留学期間:
2019年
プログラム名:

Karlstad Universityについて

Karlstad University(通称KAU)はスウェーデン・ヴェルムランド地方にある州立の総合大学である.設立は1999年と比較的歴史の浅い大学ながらも,人文科学・社会科学から工学,自然科学まで広い分野を網羅している.学生数はおよそ16,000人で,教員数はおよそ1200人であり,授業は少人数制のものが多く,学生と教員との比較的距離が近いことが知られている.また,ドイツ,フランス,アメリカ,中国,韓国,日本など,世界中の200近い大学との国際的な連携を持ち,また数多くの留学生を世界中から受け入れている.

Fig.1 Karsldadの位置
Fig.1 Karsldadの位置

Fig.2 Karlstad Universityのキャンパス
Fig.2 Karlstad Universityのキャンパス

留学準備

受け入れ先の先生とは学部生の時から共同研究プロジェクトを通してコネクションがあり,11月ごろにKarlstad大と東工大での留学プログラムが始まるとの話を聞き,その時期に同時に指導教員に留学に行きたい旨を伝え,本プログラムに応募した(TOEIC,TOEFLのスコアが必要).1月下旬にKarlstad大への留学が決定した.受け入れが決まってから,約1カ月に一回程度Skypeを通して,具体的な留学の日程(出入国の日程や現地での引っ越しの日程),ビザ関係の話や研究計画について相談を行った.当初は,スウェーデンの会社との共同研究プロジェクトのため,90日以上の滞在の可能性が高く,シェンゲンビザの滞在可能日数を超えてしまう可能性が高いために学生用のビザの申請を求められ,スウェーデン大使館のサイトにて申請を行ったが,取得する授業の単位数(Karlstad大ではPBL型の授業を受ける留学生としての扱いだった)が足りないために申請ができず,結果的に滞在日数を調整してもらい,シェンゲンビザにて渡航に至った(結果として,ビザの申請は行わなかった).ここで注意として,スウェーデン大使館のビザの申請には時間がかかるケースが多く,私の場合3週間程度で結果が来たが,時期によっては2カ月以上かかる場合もあることを見越して早めに準備を始めたほうが良い.飛行機のチケットは予約や海外旅行の保険加入は滞在日程が決定したあとの4月上旬に行った.同時にストックホルムからカールスタッドへの電車(SJ)の予約を行った.カールスタッドへ行くまでの電車は約1時間に1本程度で,ストックホルムから約3時間かかるため,宿舎への到着時間が遅くなりすぎないようにすることに注意したほうが良い.

所属研究室での研究概要とその経過や成果、課題など

研究テーマ

LSTM Neural Network Model for Electricity Consumption Prediction

研究概要

Adaptive Control of Energy Storage Project(ACES)は人工知能AIを用いて,世界規模での再生可能エネルギーにおける最適な電力供給システムの構築とそのためのバッテリーの最適制御手法の開発を目指している.今回の研究においては,バッテリーの最適制御のためにバッテリーに接続されている家庭での電力需要の予測を行うことに焦点を当てており,高精度の予測のために機械学習のうち,時系列データの学習に適したLSTMニューラルネットワークを用いて予測モデルの構築を行う.結果として,24時間分の過去の電力消費量のデータを入力パラメータとして,その2時間先の電力需要量を予測する学習モデルの構築を行い,MAE(平均絶対誤差)が1.233 kWh, RMSE(二乗平均平方誤差)が1.859 kWh,という高精度の予測を出力できることができた.

所属研究室内外の活動・体験

前半2カ月はGlavaにある研究施設にて,後半1カ月はKarlstad大の研究室に行っていた.基本的には平日毎日8時半ごろから16時半ごろまで研究室に行っていた.夏休み期間であったため,研究室には基本的に現地の学生はおらず,同じSEPRにて留学に来ていたもう一人の東工大生と研究生活を送っており,お昼は毎回Karlstad大の指導教員と食べることが多かった.指導教員との距離がとても近く,比較的頻繁に研究の相談をすることができ,また途中コーヒーブレイクを挟むことも多く,リラックスして研究生活を送ることができた.土日祝日には,先生がピクニックに連れて行ってくれたり,ご自宅に招いていただきご飯を頂いたりするのを通してスウェーデンの文化を体験することができた.また,後半1カ月は週2回程度Karlstad地元のラグビーチームの練習に参加していた.また1週間程度研究室でのお休みをいただき,北欧6都市(ヘルシンキ,バルト三国,コペンハーゲン,ストックホルム)を巡る一人旅を行った.

Fig.4 先生ご家族とのピクニック
Fig.4 先生ご家族とのピクニック

Fig.5 Karlstadのラグビーチーム
Fig.5 Karlstadのラグビーチーム

Fig.6 Karlstad大でのランチ
Fig.6 Karlstad大でのランチ

Fig.7 ヘルシンキ大聖堂
Fig.7 ヘルシンキ大聖堂

留学先での住居

前半の2カ月はGlavaと月に数回程度Karlstad大にて打ち合わせを行うために中間地点のArvikaのアパートにて,後半1カ月はKarsltadの指導教員の知り合いの人の家の1室を借りて生活を送っていた.住居探しはKarsltad大の指導教員が行ってくださり,自分では行ってはいない.どちらの住居も部屋にキッチンがついており,洗濯機は共用だった.

留学費用(渡航費、生活費、住居費、保険料)など

渡航費:出発の2カ月前に購入し,スカンジナビア航空の便で往復14万程度だった.
保険料:3カ月で27,490円(AIU損害保険,プランH)
部屋代:??(支払いは共同研究先の会社が行ってくれた)
生活費:食費のみで3万円程度だった.スウェーデンの物価は日本よりも少し高い程度であったが,外食をすると高くつくので基本的には毎日3食自炊をしていた.

今回の留学から

今回の留学の目的は海外での自身の海外での研究遂行能力を試し,成長させることとして定めていた.結果として,研究を進める上では海外でも日本でも,また分野を問わず,大きな差異はなく,地道に仮説を立て検証を行うことの繰り返しにあるということを再認識でき,また指導教員との英語でのコミュニケーションにも特に問題なく行えることがわかって自身につながった.また,今回の研究はスウェーデンでの会社との共同研究であり,会社や指導教員からのサポートなしには思うように進められないことが多く,臆することなく積極的にコミュニケーションをとっていく姿勢を得ることができたと思う.さらに,普段東工大で行っている研究分野(機械設計・解析)とは大きく異なる分野(機械学習)の研究を行うことができ,自身の技術に対する視野を広げることができたと思う.留学に行くまでは,英語でのコミュニケーションや研究をきちんと進められるのかが正直心配ではあったが,実際に行ってみるとどうにかできる(する)ものであり,1歩踏み出して飛び込んでみるのが一番大切であると思う.留学に少しでも興味がある人は重々しくとらえず,“行ってみる”感覚でいくのが良いと思う.

また,本プログラムでのKarlstad大での留学を行う時期については6月からの3カ月は現地の学生が夏休み中であるためにほとんどいないので,現地の学生との交流を望む場合は時期をずらしての渡航を勧める.新年度は8月の下旬から始まり,研究室にて研究を行う学生がいるのは冬の時期であることに注意したほうが良い.

その他

現地でのお金について

北欧(特にスウェーデン)はクレジットカードでの決済が主流になっており,現金を使う場面はほどんどなかったので,わざわざ用意する必要はないと思う.現金が必要となった場合でもクレジットカードを使ってATMから降ろすことができる.カード1枚であるとトラブルがあった場合対応することができなくなるので,複数枚の(できればマスターとビザそれぞれの)カードを持つことを勧める.

ロストラゲージについて

経験上,スカンジナビア航空を使ってスウェーデンに行く場合,コペンハーゲン‐ストックホルム間での出発が遅れることがあり,ロストラゲージが起こる場合が大いにあるので,手荷物のほうに1日か2日分くらいの着替えは用意していったほうが良い.また,保険はロストラゲージ時の損害補償までついているプランにしたほうがいいと思う.

この体験談の留学・国際経験プログラム情報

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