Summer Exchange Research Program (SERP)オックスフォード大学 2023年7~9月

留学時の学年:
修士2年
東工大での所属:
物質理工学院 応用化学系
留学先国:
イギリス
留学先大学:
オックスフォード大学
留学期間:
2023年7月24日~2023年9月29日
プログラム名:

派遣大学の概要(所在地、創立年、規模など)

図書館周辺の眺め
図書館周辺の眺め

クライストチャーチ(有名なカレッジ)
クライストチャーチ(有名なカレッジ)

【所在地】イギリス、イングランド
【創立年】1167年(現存する大学の中で世界で3番目に古い)
【学生数】26000人以上(約半数が大学院生)
大学には36のカレッジ(寮)と3つの協会、4つのホールが存在し、学生はいずれかの組織に所属しています。これらは学部とは全く別の区分であり、宿泊施設、食事、図書館、運動施設などを提供しています。

留学準備など

【応募まで】
私は外部進学のため、大学院進学後に応募の準備をする必要がありました。また、就職活動や修士論文のことを考慮し、修士 2 年の夏派遣を選択しました。高校時代、イギリスでのホームステイを経験があったことに加え、その際にオックスフォード大を現地の学生に案内してもらった経験から、今回の派遣先を志望しました。
【派遣まで】
学内選考後、現地のコーディネーターの方から派遣先の研究室に関する連絡をもらいました。その後、研究室の先生にオンラインミーティングの機会を設けていただき、テーマの確認を行いました。本留学ではビザは不要でした。

所属研究室での研究概要とその経過や成果、課題など

【概要】
近年、注目を集めている太陽電池は、外部環境からの保護のため、ガラスカバーが使用されています。しかし、ガラス表面での太陽光の反射により、入射光の一部を失ってしまうという問題があります。これまでにメソポーラスシリカを用いた単層や多層の反射防止膜の報告がなされていますが、本研究では更なる光学特性の向上に向けた検討を行いました。
【成果】
薄膜の作製条件の検討から始まり、用いるシリカ粒子のサイズやバインダーの添加比を変えた際に、光学特性にどのような影響を及ぼすのか調べることができました。
【課題】
本研究では薄膜の光学特性を十分に制御することができませんでした。一つの要因として、市販のメソポーラスシリカを用いていたため、密度や孔サイズを制御できていなかったことが挙げられます。そのため、メソポーラスシリカを作製する段階から取り組むことで、本研究の目的を達成できるのではないかと考えます。

所属研究室内外の活動・体験(日常生活・余暇に行った事など)

研究所
研究所

研究所の皆さん
研究所の皆さん

【研究室生活】
私が所属していた研究室は、市内からシャトルバスで20分ほどのところにありました。コアタイムはなかったため、実験スケジュールに合わせて研究室で過ごす時間を調整していました。研究室へ行く日は毎日10時ごろのバスに乗り、遅い日でも18時のバスには乗って帰っていました。お昼は同じ研究所の人たちと食堂でテイクアウトするか、お弁当を持参して食べていました。実験の予定がなくデータの解析のみの日は、市内の図書館やカフェで作業をしていました。ありがたいことに、学生証が発行されたため、図書館(ボドリアン図書館、ラドクリフカメラなど)を利用することが可能でした。研究についての相談は直接先生とすることが基本となっていました。特に、これまでに取り組んだことのない分野だったこともあり、コミュニケーションで苦労する場面もありましたが、わからないことはわからないと伝え、理解できるまで話し合うことを心がけていました。初めから手を抜かずに向き合えたことで、後半ではスムーズに理解・発信できるようになりました。
【日常生活】
他の交換留学生や現地の学生とともに、平日の夜はジムに行くなどして運動をして過ごしました。休日は、バスケットボールやバドミントン、パンティング(オックスフォードやケンブリッジで盛んな川でボートに乗るアクティビティ)を楽しみました。また、現地の日本人コミュニティに招待していただき、月に一度パブで開催される飲み会に参加していました。長く住んでいらっしゃる方が多く、経歴も多様な方が多かったため、貴重な時間になりました。食事に関しては、週の1/3は他の学生と夕食をともにしていましたが、残りの食事に関しては日本から持参したご飯のパックとフリーズドライの味噌汁を重宝していました。おかずに関してはできる限りスーパーで食材を買い、日本から持参した調味料で自炊していました。
【余暇】
余暇の過ごし方として、現地の人と過ごすことをメインとして、残りの時間で友人に会いに国外へ行くということを重視し、後悔のない過ごし方をできました。現地で出会った人たちとコッツウォルズ(オックスフォードから車で1時間ほど)のラベンダー畑と蒸留所に行ったほか、ブライトン(ロンドンから電車で1時間程度)では、魚介や自然の絶景を楽しむことができました。イギリス国外への旅行としては、中学・高校時代の友人に会いにコペンハーゲンを訪ね、デンマークの食文化や生活を体験することができました。また、日本に交換留学生として来ていた友人が働いているということで、クロアチアを訪ねました。海外で活躍する友人たちと再会し、刺激をもらうことができました。

留学先での住居(寮、ホームステイ等)、申し込み方法、ルームメイトなど

宿舎の外観
宿舎の外観

部屋の中の様子
部屋の中の様子

【住居について】
渡航が決まった際に、現地コーディネーターの方と連絡を取り合い、渡航期間を決定しました。その後、現地コーディネータの方によって、カレッジ(寮)とその住所が送られてきました。私の寮はカレッジのオフサイト(本部からは徒歩30分ほど)の建物で、地下1階地上3階の建物でした。私が住んでいた部屋はベッド、洗面台、クローゼット、棚、勉強机、椅子、小さな机が備えられており、広い一人部屋でした。トイレやシャワールーム(それぞれ建物内に4か所)、キッチン(建物内に2か所)は建物内で共用でした。ランドリールームは道を挟んで反対側の小屋の中にあり、洗濯機2台、乾燥機2台が設置されていました。洗濯機のアプリをダウンロードし、オンライン上でチャージをして利用するもので、洗剤は自分で購入しました。
【場所】
市内中心部(大きなスーパーがあるところ)までは徒歩20分ほどで、学科の建物(研究所までのシャトルバスの出発地)までは徒歩10分ほどでした。市内まで行くバス停が建物の目の前にあったため、重い荷物を持っているときなどは利用していました。片道2ポンドかかるため、毎回は利用せずできるだけ歩くようにしていました。同じ寮の留学生と移動する際は、配車アプリを利用してタクシーに乗っていました。複数人で利用すると一人当たりの費用はバスとあまり変わりませんでした。

留学費用(渡航費、生活費、住居費、保険料)など

【渡航費】往復40万円
【生活費】30万円
【住居費】40万円(光熱費込、食事なし)
【保険料】3万円
【通信費】4500円
円安ということもあり、出費は想定していたものより高くなってしまいました。食費については、現地でフルーツ、野菜、肉を買う分には日本とそこまで変わらないため、いかに自炊をするかによって節約できると思います。SIMカードは事前にThreeというイギリスではメジャーな会社のものを使っていましたが、市内の中心部以外では電波の弱いところが多くありました。ただ、他のヨーロッパの国でも使えたため便利でした。寮や学校ではWi-Fiが利用できるため心配いらないかと思います。支払いは全てクレジットカードのタッチ決済で行っていたため、現金は一度も使いませんでした。

今回の留学から得られたもの、後輩へのメッセージ、感想、意見、要望

【留学で得られたもの】
今回の留学を通して、たくさんの人と出会い、たくさんの新しい経験をしたことで、何事においても正解などなく、自らが心の向くままに全力で取り組むことが重要だと学びました。研究活動においては、先生から「やりたいことは何か」「どう考えているのか」という私が主語になることを深く聞かれる機会が多く、実験についてもほとんどを自力で一からスタートすることが多かったです。初めに少し受け身の姿勢があることを指摘され、意識して主体的に動くことを心がけるようにした結果、その大切さに気づくことができました。日常生活においても、オックスフォードは日本人の学生が少なく、ほとんどの時間を国際交流に費やすことができ、恵まれた環境だったと感じています。そのおかげで、日本では積極的に参加しないような会にも思い切って全て参加する姿勢を保ち続けたことで、多様な人と出会うことができました。その結果、出会った人たちから様々な場所に呼んでもらうことができ、多くの経験ができたのだと思います。出会った人たちは、それぞれのやりたいことに真っ直ぐ進み、その道を楽しんでいるように見えました。そのような人たちと過ごすうちに、正解は人それぞれで、自らの気持ちに素直であること・全力で楽しむことが、私自身にとって一番の幸せなのだと気づくことができました。
【後輩の皆さんへ】
留学に対してハードルの高いものと思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、人生においてかけがえのない経験になることは間違いないので、少しでも興味がある方にはぜひ挑戦してもらいたいです。もちろん留学中は楽しいことばかりではなく、悩むこともあるかもしれませんが、しっかりと向き合えば乗り越えられます。日本の慣れた環境ではなかなか巡り会わないような壁に当たることもありますが、乗り越えた時には自信にも繋がる良い経験になるはずです。また、留学先では世界各国の人たちと出会うことができ、多様な価値観に触れることになります。お互いを理解しようとコミュニケーションをとることで、これまでの自らの固定観念を自らの視野を広げられる良い機会にもなります。特に今回の派遣先であるオックスフォードは世界でも有数の大学であることに加え、日本人の学生も少なく留学の環境としては非常に恵まれており、おすすめです。新しいことに出会い、新しい自分を見つけられる留学をぜひみなさんにも経験していただけたら幸いです。今回、私が貴重な経験をできたのは多くの方々から支えていただいたおかげです。国際交流実施委員会委員長の原先生、国際研究研修担当の竹村先生、国際交流支援チームの皆様に深くお礼申し上げます。また、私を受け入れてくださったAndrew 先生並びにDept. Materialの皆様、Corpus Christi Collegeの皆様、これまで指導いただき、留学を快諾し送り出してくださった下山先生並びに下山研究室の皆様、そして常に応援し支援してくれた両親・祖父に感謝いたします。

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