Summer Exchange Research Program (SERP) アーヘン工科大学 2023年9月~11月

留学時の学年:
博士2年
東工大での所属:
工学院 機械系機械コース
留学先国:
ドイツ
留学先大学:
アーヘン工科大学
留学期間:
2023年9月4日~2023年11月24日
プログラム名:

派遣大学の概要(所在地、創立年、規模など)

アーヘン工科大学は,ドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州の都市アーヘンに位置します.付近にはベルギーとオランダの国境が交わる場所があるように,国境沿いに位置しています.1870 年に前身となる大学が創立された歴史のある大学です.THE 世界大学ランキング 2023 において、工学分野で世界 32 位、総合 99 位となっており、町のいたるところにキャンパスがあり,学生数も 4 万 7 千人以上と非常に規模が大きくレベルの高い大学です.また,留学生数は 1 万 4 千人以上と国際性が豊かです.

留学準備など

Summer Exchange Research Program(SERP)を通じて,博士 2 年次の 2023 年の 9 月初めから 11 月の終わりまでの 3 か月間留学を行いました.将来海外でポスドクを行いたいという思いから,コネクションを作るためにも留学を考えていました.まず,様々な研究室にメールし,受け入れていただける大学を探しました.留学先が決定した後 2022 年の 12 月に SERP の面接に臨みました.採用通知を受けた後,2 月頃にオンライン上でアーヘン工科大学で必要な登録を行い,3 月頃にアーヘン工科大学が用意している奨学金に申し込みを行いました.アーヘン工科大学では,博士課程の学生は自分で家を探す必要があったので,アーヘン工科大学の方から教えていただいた家探しのためのサイトの内,WG-Gesuch というサイトを使用して7月頃から家を探しました.留学期間が 3 か月のため,ビザ等の手続きは必要ありませんでした.留学準備の中では家探しが一番大変でした.

所属研究室での研究概要とその経過や成果、課題など

【研究概要】
私は博士課程において高精度な人の運動シミュレーションを構築する研究を行っております.人の運動シミュレーションでは例えば,ある動作をした時の床を蹴る力や,関節にかかる力,筋肉がどれくらい活動しているかを計算することができます.高精度な運動シミュレーションを構築するためには,基礎的なパラメータである人の腕や脚,胴体それぞれの慣性特性(質量・重心位置・慣性テンソル)が高精度に得る必要があります.この慣性特性が不正確だとシミュレーションで得られる結果も不正確となってしまいます.そこで博士課程ではこの慣性特性を高精度に同定する技術を開発しています.
【成果】
留学では,研究に関する知見を広げるため,シミュレーションのうち慣性特性ではなく,筋肉に焦点を当てようと考えました.そこで,留学先の研究室で,どのように筋肉をモデル化するか,また筋肉の活性度や関節負荷と慣性特性の関係を明らかにするということを行いました.私の専門は機械工学ですが,所属研究室は医学部の研究室であり,より人の動きに対する筋肉の活動に知見があり,過去の研究データや実験設備が整った環境を活用させていただきながら研究を進めることができました.所属研究室の過去の実験データの人の動きに対する筋肉活動量の計測結果を用いて,運動シミュレーションモデルの筋肉のパラメータを最適化する手法を開発しました.そして,その手法を使って構築した運動シミュレーションモデルを活用して,慣性特性と筋肉の活性度の関係を明らかにすることができました.また,人の動きに対する筋肉の活動など工学部にいるだけでは得にくい人に関する知見や自身の研究の発展についてのアイディアを得ることができました.

所属研究室内外の活動・体験(日常生活・余暇に行った事など)

サッカー観戦
サッカー観戦

デュッセルドルフ近郊研究者ネットワーク
デュッセルドルフ近郊研究者ネットワーク

【所属研究室内の活動・日常生活】
平日は 8 時半から 17 時の間研究室で研究をしていました.昼は研究室の同僚と食堂で食べ,夜は友達と外食したり,スーパーでレンチンできるものを買って食べたりしてました.長期間留学する人は,アーヘンから電車で 1 時間半くらいのところにあるデュッセルドルフの大きな日本人街に行き日本食を仕入れたりしていました.なので,日本食が恋しくなっても何とかなります.研究室にはビールが備わっており,毎週金曜日の夕方には 1 時間くらい同僚とビールを飲んでいました.また,所属研究室旅行でケルンにあるビール蔵を回るツアーに参加したりしました.ドイツのビールは安くてとても種類があり,ビール好きにはたまらない環境だと思います.また,ドイツはビールに注目されがちですが,ワインも安くて美味しいものがたくさんあり,ワイン蔵でテイスティングをして好みのワインを買うという経験は最高でした.
【所属研究室外の活動】
休暇には,すぐ近くにあるベルギーやオランダに旅行をしました.電車 1 本でいろんな国に行けるので観光の観点でも最高の土地だと思います.ドイツ国内もケルンのように素晴らしい街並みの場所が多いので観光しつくすのは大変だと思います.他には,サッカーを観戦したりしました.ドイツのサッカーの盛り上がりは凄まじくサッカーに興味がなくてもとても楽しい体験ができると思います.また,日本人と日本語を学びたい人の集まりがあったのでそこに参加し,友達を増やしました.学生以外も参加しており,ドイツで職業訓練を受けこっちで働いている人がいたりと普段関わることの少ない人達とも知り合うことができてとても刺激的でした.また,デュッセルドルフ近郊研究者ネットワークという,デュッセルドルフ近郊のアーヘンやケルンなどでポスドク・Ph.D.学生を中心とする研究者間の交流を深めることを目的とした研究者ネットワークがあり,その集まりに参加しました.そこで現地でポスドク・Ph.D.学生をしている人たちと交流し,様々な情報を得ることができました.

留学先での住居(寮、ホームステイ等)、申し込み方法、ルームメイトなど

留学先の住居
留学先の住居


先述したように,アーヘン工科大学では博士課程の学生は自分で家を探す必要があったので,アーヘン工科大学の方から教えていただいた家探しのためのサイトの内,WG-Gesuch というサイトを使用して探しました.貸してくれる期間と場所から住みたい家を探し,家主にメッセージを送り,返信が来た場合はオンラインミーティングで話してお互いのことを知ってもらい最終的に住めるかどうか判断されるという流れでした.4回目くらいのオンラインミーティングの後やっと家が決まりました.トータルで 1 ヵ月くらいかかりました.ドイツでの家探しは大変なので,早めに準備をしておくといいと思います.家はシェアハウスでインド人とドイツ人の人と暮らしました.二人とも気さくな性格で楽しく暮らすことができました.

留学費用(渡航費、生活費、住居費、保険料)など

渡航費が 23 万円ほど,生活費が 600€/くらい,住居費が光熱費や wifi 込みで 400€/月,保険料は 3.5 万円でした.食堂が 3~5€ほどで,夕飯は 10€以内でした.夕飯はちゃんと自炊すればもっと安く済ませられます.3 か月と短期間ということもありエンロールメントはなしで行ったので,ゼメスターチケットという州中で電車とバスが乗り放題の券が手に入りませんでした.そのため,49 ユーロチケットという 49€/月でドイツ国内の電車バスが乗り放題になるチケットを買いました.

今回の留学から得られたもの、後輩へのメッセージ、感想、意見、要望

研究に関する知見を広げられたのはもちろんのこと,実際にこちらで Ph.D.やポスドクを行っている人と話すことでより詳細にドイツで研究するイメージをつけることができました.また,他国の人と暮らすことで他国の生活習慣を知ることができたり,うまく共に生活するための術を身につけられたと思います.これらは現地に行って生活しないと得られないと思います.研究面でも生活面でもとても充実した日々を過ごすことができました.留学はいろんな価値観や生活習慣に触れることができ,人生をより豊かにすることができると思うので少しでも留学をしてみたいという気持ちがあるなら絶対に行くべきだと思います.

その他(留学先で困ったこと、帰国後の進路(就職・進学・長期留学)など)

幸いにも留学先で困ったことは特にありませんでした.何かあってもみんな親切で優しいので何とかなると思います.博士課程が修了後はヨーロッパでポスドクができたらといいなと思っております.今回できたネットワークや知識をもとに頑張ってポスト探しをしたいと思っています.最後に,留学をサポートいただいた方々に感謝を申し上げます.おかげで充実した留学生活を送ることができました.誠にありがとうございました.

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