Summer Exchange Research Program(SERP) アーヘン工科大学 2022年11月~2023年1月

Summer Exchange Research Program(SERP)  アーヘン工科大学 2022年11月~2023年1月

留学時の学年:
博士1年
東工大での所属:
物質理工学院 応用化学系
留学先国:
ドイツ連邦共和国
留学先大学:
アーヘン工科大学
留学期間:
2022年11月1日 ~2023年1月31日
プログラム名:

派遣大学の概要(所在地、創立、規模など)

はじめに、私は手続き上RWTH Aachenに登録されていたのですが、研究は研究室があるJülich Forschungszentrumで行いました。
RWTH Aachen Universityはドイツ西端の都市アーヘンに位置する工科大学です。1870年に創立され、2020年には創立150周年を迎えました。学生数約4.5万人のうち留学生が約1万人を占めており、非常に国際性が豊かな大学です。アーヘンはノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW州)の都市で、オランダとベルギーとの3国の国境に面しています。人口は約25万人と比較的小規模の都市ですが、古代ローマ帝国の時代から温泉地として知られるなど長い歴史があります。円形の市街地の中心にはアーヘン大聖堂があり、これは1978年に登録された世界遺産第1号のうちの一つです。大聖堂や市庁舎前の広場で毎年開催されるクリスマスマーケットはドイツでも有数の規模で多くの観光客がアーヘンを訪れます。
Jülich Forschungszentrumはアーヘン、ケルン、デュッセルドルフの間に位置し、小さな町ユーリッヒの郊外にあるドイツの国立研究機関です。1956年に設立され、10の研究所と80のサブ研究所に約6,800人の職員を擁する、ヨーロッパで最大級規模の研究機関の一つです。

留学準備など

5月に本プログラムに採用された後は、7月から登録手続きのための書類作製が始まりました。RWTH Aachen側からのコーディネーターとやり取りをするのですが、ウェブサイトに書類を上手くアップロードできなかったため、やり取りが非常に多くなりました。内容自体は特に複雑ではないので、指示に従って必要事項を埋めれば問題はありませんでした。渡航前の準備で重要なのは、航空券の手配、閉鎖口座の開設(一部例外を除いて滞在許可申請で必須)、住居の確保でした。いずれも自身で調べる必要があったので、早めに行動することをお勧めします。特に、詳細は後述しますが、住居を確保するのに1か月以上かかました。
渡航後は普通口座の開設や滞在許可申請を行いました。普通口座は開設に住所とパスポートのみが必要なN26を使用しました。その他の口座は滞在許可書が必要なことが多く、開設に時間がかかる可能性がありました。滞在許可書はJülich Forschungszentrumの職員が申請を支援してくださり、私は入学許可書や閉鎖口座の書類を提出するだけでした。当初は研究所内に手続きを支援する課があることを知らなかったため職員とは渡航後にコンタクトしたのですが、渡航前からやり取りをしていたRWTH Aachenのコーディネーターから紹介を頂きました。帰国前も住所の取り消し手続き等のリマインドを頂きました。

所属研究室での研究概要とその経過や成果、課題など

Prof. Rüdiger-A. Eichel研究室に所属し、次世代蓄電池として注目されている金属-空気二次電池について、負極材料候補である鉄電極の作製法を研究しました。鉄は地殻中に豊富に存在することや、構造変化が起こりにくく繰り返し充放電しやすい等の利点があります。従来では鉄粉を固めることで電極を作製していましたが、十分な容量を確保するまでに予備的な充放電を要すことや、表面積を最大限利用できていない等の問題がありました。そこで、私は新たな電極作製手法として電解析出を用いる課題に取り組みました。このテーマは派遣先でも前例のない内容であったため、文献を参照して実験条件の検討から始めました。上司とディスカッションを重ねることで、高い表面積を有する鉄析出条件を見出し、鉄箔と比較して大きな容量を得ることができました。今後は実用的な充放電条件下で試験、評価する必要があります。帰国後も本研究について共同研究の成立を模索したいです。

ディスカッション後の上司との記念撮影、研究室の内観

所属研究室内外の活動・体験(日常生活・余暇に行ったこと等)

平日は概ね9-10時から17時まで研究所で実験を行いました。実験で待ち時間がある場合は実験データ処理や本学での研究を同時並行で進めていました。
ドイツは電車が頻繁に遅れることを除いて、地理的に旅行がしやすいです。特にアーヘンは西側国境近くにあるため、アムステルダムやブリュッセルは日帰りで旅行ができます。また、長期のクリスマス休暇では東側に位置するウィーン、プラハ、ドレスデン、ベルリンに行きました。近場のNRW州内では、RWTH Aachenの登録手続きで申請できるセメスターチケットを使えば無料で移動ができます。NRW州内には大聖堂で有名なケルン、日本人コミュニティがあるデュッセルドルフがあります。

アーヘンでのクリスマスマーケット
アーヘンでのクリスマスマーケット

ベルリンの国会議事堂
ベルリンの国会議事堂

留学先での住居(寮、ホームステイ等)、申し込み方法、ルームメイトなど

博士学生は自身で住居を探す必要があったため、私はドイツでは一般的なシェアハウス(Wohngemeinshaft, WG)を探しました。WG-Gesuchtというウェブサイト上で家賃や場所を絞り込んで、投稿主に興味がある旨の連絡を送るのですが、返信が来るのは滅多になく、住居探しに非常に苦労しました。特に家賃が安めのところは人気で返信が来なかったため、最終的には家賃が高い住居に住むことになりました。住居は3階建てで、各階に3人、2人、2人が居住していました。私は最上階に住んでいたのですが、各階にシャワー&トイレ、1、2階にキッチンがあったため、不便に感じることはありませんでした。食器や寝具もすでにあったため、追加購入はしませんでした。ルームメイトはドイツやシリア出身で、コミュニケーションは英語で不自由はありませんでした。ゴミ出しのルール等を教えてもらえたため、早く生活に順応できました。

WGの共有キッチン、個室

留学費用(渡航費、生活費、住居費、保険料)など

コロンボ経由のスリランカ航空を利用して、成田-フランクフルト間は\140,000程度でした。ロシアのウクライナ侵攻の影響で、他の経由便はアブダビ等のアラブ経由でコロンボ経由より高かったです。生活費は月€180程度でした。家賃は高めで€647、本学の海外旅行保険が\36,000、現地保険付きの閉鎖口座開設費用が€164でした。RWTH Aachenから奨学金€3,000を頂けたため、家賃と生活費の一部をカバーできましたが、支払いが留学開始月の翌月だったため、敷金、家賃の支払いに間に合わず、家族から一時的に資金を借りることになりました。閉鎖口座内にも資金を準備していましたが、滞在許可書がないと資金を引き出せなかったため、当初は前述した家族からの支援とクレジットカードを併用していました。奨学金と自己資金が使えるようになってからはN26のデビットカードで紐付けたモバイル決済を多用したため、不自由は感じませんでした。

今回の留学から得られたもの、後輩へのメッセージ、感想、意見、要望

Julich Forschungszentrumで研究をしていて、研究者の出身国が多岐に渡り、日本と比べて多様性が非常に豊かなことに驚きました。多様性があることで、世界中から優秀な研究者が集まりやすく、より独創的なアイデアが生まれると感じました。それを支えるのは、ドイツには英語を話せる人が多いことにあり、ドイツが科学分野で世界を牽引する一因だと感じました。
また、研究環境は自由度が高く、研究に没頭できる一方で、悪く言えば手を抜くことも容易な環境だと感じました。したがって、研究を進めるためには、自分の意見や希望を臆せず伝えることが重要だと学びました。また、シェアハウスのルームメイトもバックグラウンドが異なるため、日本では当たり前のことでも自身の意見を伝える必要がありました。

その他(留学先で困ったこと、帰国後の進路(就職・進学・長期留学)など)

ドイツに住んでいたので当たり前のことですが、書類がドイツ語で書かれていたので苦労しました。例えば、ドイツでも公共放送受信料を支払う必要があるのですが、ルームメイトに相談して解決しました。建物単位で支払うため、留学期間が短い私は結局支払わず、ルームメイトが支払いを行いました。最後に、基本的に生活は英語で十分でしたが、ドイツ語をもう少し勉強していればと後悔しています。

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