Summer Exchange Research Program(SERP) カールスタード大学 2022年9月~12月

Summer Exchange Research Program(SERP) カールスタード大学 2022年9月~12月

留学時の学年:
修士2年
東工大での所属:
工学院 機械系
留学先国:
スウェーデン王国
留学先大学:
カールスタード大学
留学期間:
2022年9月29日 ~2022年12月26日
プログラム名:

派遣大学の概要

カールスタッド大学は、スウェーデンのヴェルムランド地方にある州立の総合大学である。1967年にヨーテボリ大学のカールスタード校として開校し、1977年にヨーテボリ大学から独立、1999年に大学としてスウェーデン政府から正式に認可された。人類学、社会学、科学、工学、教育、健康学、美術などの学部があり、現在約16000人の学生が在籍している。35か国の200を超える大学と協定を結んでおり、毎年約250人の留学生を受け入れている。日本の大学との交流も盛んであり、本学だけでなく明治大学や金沢大学などからも留学生を受け入れている。

研究棟
研究棟


留学準備など

修士2年の3月末に就職が決まり、同年9月の学会に出せる程度の研究の見通しが立っていため、後期の3ヵ月を利用しての留学を決意した。この時点で英語のスコアは取得していなかったので、4月中旬にTOEFL-iBTを受検し、応募要件ぎりぎりのスコアを取得できたので応募に踏み切った。特に行きたい国や大学が決まっていたわけではなかったので、募集のあった大学の中から興味のある研究を行っている大学の教授に直接メールを送って受け入れ先を探した。しかし、返信がなかったり、6か月以上でないと受け入れができないと言われたりと、自力での受け入れ先探しが難航し、最終的には留学コーディネーターの方に受け入れ先の候補を探していただき、その中で興味のある研究を行っていた先生にコンタクトをとっていただいてようやく受け入れ先が決定した。その後は、受け入れ先の指導教員の先生と月に1度Zoomでミーティングを行い、研究テーマや留学期間等について相談した。90日以内の滞在ではビザは不要であったため、滞在期間を89日にしてビザの申請は行わなかった。言語に関しては、公用語はスウェーデン語だが、基本的には英語が通じると伺っていたので、英会話の練習を中心に行い、スウェーデン語は挨拶と日常よく使いそうな単語やフレーズだけ覚えて留学に臨んだ。

所属研究室での研究概要とその経過や成果、課題など

今回の留学では、協同ロボットと呼ばれる人間とともに作業をする産業用ロボットのコントロールシステムへの、Time Delay Neural Network(TDNN)を用いたジェスチャー認識システムの導入を行った。これにより、ロボットに対してシンプルなハンドジェスチャーで起動、停止などのコマンドを送ることが可能となる。これを実現するため、ロボットへのコマンド送信及びロボットからのステータス情報の受信を行うプログラムをC#というプログラミング言語を用いて作成し、それを先行研究で開発されたジェスチャー認識システムと統合した。更に、プログラムを改良し、各ジェスチャーの認識速度をおよそ1.5倍に増加させることに成功した。

ジェスチャー認識システムのテストの様子

ジェスチャー認識システムのテストの様子

所属研究室内外の活動・体験(日常生活・余暇に行った事など)

現地の研究室の修士の学生は私と入れ違いでアメリカに留学していたため、研究室での作業は基本的に1人で行っていた。幸い、指導教員の先生が優しい方で何でも気軽に相談できたので、行き詰まるたびに相談に行き、どうにか研究を進めることができた。
 余暇は、友人宅でボードゲームをしたり、留学生の交流イベントに参加したりするなどして過ごした。ちょうどクリスマスシーズンだったので、クリスマスマーケットへ出向いたり、クリスマスパーティーに参加したり、楽しいイベントが豊富だった。週末を利用してストックホルムやヨーテボリ、隣国ノルウェーのオスロへ旅行にも行った。

滞在先宿でのクリスマスパーティー
滞在先宿でのクリスマスパーティー

友人宅での寿司パーティー
友人宅での寿司パーティー

留学先での住居(寮、ホームステイ等)、申し込み方法、ルームメイトなど

渡航前に受け入れ先の先生と話した際に、3ヵ月で学生寮を借りるのは難しいと伺ったので、先生の知り合いが貸し出している部屋を一室手配していただいた。部屋にはキッチンと冷蔵庫があり、1人部屋としては十分な広さで快適に生活できた。ただし、シャワー、トイレは共用なので順番待ちは割とよくあった。主に海外からの短期、長期滞在者が利用するようで、アイスランド、ドイツ、台湾など様々な国籍の方々(皆さん20代後半で比較的年は近い)が住んでおり、彼らや彼らの友人とよく食事に行ったりボードゲームをして遊んだりした。

住居の外観
住居の外観

部屋の内観
部屋の内観

留学費用(渡航費、生活費、住居費、保険料)など

●航空券 : 往復236690円(Turkish Airlines、JTBで渡航2か月前に予約)
●海外保険 : 25540円(大学指定の保険、3ヵ月)
●家賃 : 550ユーロ(約8万円)/月
●生活費(食費+生活雑貨) : 約6万円/月
※ 基本は3食自炊していたが、週末の外食で高くついた(食事+酒代で5000円程度)
●バス定期券 : 約7000円/月
※カールスタッド市内のバスが乗り放題なのでかなり便利。
●合計金額 : 約76万円 (滞在中の旅行費、お土産代等を含む)

今回の留学から得られたもの、後輩へのメッセージ、感想、意見、要望

今回の留学へ行くまでオンライン英会話以外で英語でのコミュニケーションをしたことはなく、1週間以上海外に滞在するのも初めての経験だった。英語力もこの留学プログラムに応募できるぎりぎりのラインであったため、現地での生活や研究をやっていけるか強い不安があったが、飛び込んでみると案外なんとかなるものだなというのが留学を終えての率直な感想だ。文法や言い回しなどが多少不自然になっても気にせず自分の持っているもので自分の考えや気持ちを伝えることで意思疎通ができたという手ごたえがあった。さらに、もっといろいろなことを話したいという強いモチベーションが生まれ、会話の中で相手がよく使うフレーズを真似してみたり、会話で出てきたわからないフレーズを調べたりして使える表現の幅を広げることができた。もちろん、現地の人々の優しさと包容力に助けられた部分は大きかったと思う。研究に関しては、慣れない英語で専門的な話をするのは非常に難儀だったが、筋道を立てて論理的に考えるという研究の根幹の部分はどこの国にいても同じなので、躊躇せず自分の意見を先生に伝えることで問題なく(失敗は何度もあったが)研究を進めることができ、自信につながった。また、スウェーデンは様々な国から人が集まっており、多様な価値観に触れることができた。(共通していたのは日本人に比べて圧倒的にプライベートな時間を重視していること、そして、他人に依存せず良い意味で自立している人が多かった。)
 最後に、今から留学を考えている方々に伝えたいのは、時間とお金が許すならためらわず挑戦してほしいということだ。奨学金を貰ってかつ自分のために海外に行ける機会は学生の間にしか得られないのではないだろうか。そして、明確な目的を持って臨めばその経験は今後の人生にも少なからず影響を与えると思う。もし英語ができないことを理由に留学を迷っている人がいるなら、ひとまず募集要項に書かれている要件を目指して頑張ってほしい。もし、その点数を少しでも上回ったなら、同程度かそれ以下の英語力の先輩が3ヵ月の留学を楽しんで無事帰国したので安心して応募してほしいと思う。

現地での支払い方法について

スウェーデンはクレジットカードでの支払いが主流で、現金を使う機会はほとんどない。ただし、現地の人は割り勘をする際、誰かがクレジットカードで代金を支払ってその後Swishというスウェーデン独自のキャッシュレス決済アプリ(PayPayのようなもの)で集金をするのだが、Swishはスウェーデンの銀行口座がないと使えないため、割り勘になる時は支払いを別にしてもらうか、現金で払うという工夫が必要になる。私は一旦おごってもらって次回ビールをおごるなどしてバランスをとっていたが、おごってもらうことを気兼ねする人は現金を持っておいた方が良いかもしれない。クレジットカードのキャッシングでATMから現金を引き出せるので、日本で多額の現金を両替する必要はないと思う。

公共交通機関について

冬の時期は雪で電車が止まりやすい上、スウェーデンの電車は運転手が風邪を引いたなどの理由で当日急に運行取りやめになる事がある(友人の体験談)。その場合代わりにバスが手配されるが、例えばカールスタードからストックホルムまでの場合、電車で3時間のところバスでは4時間半かかる上、渋滞状況によってはさらに時間がかかる。そのため、特に帰国の際には少なくとも3時間は余裕を持って電車の時間を決めた方が良いと思う。

この体験談の留学・国際経験プログラム情報

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