Summer Exchange Research Program(SERP) アーヘン工科大学 2022 年 07 月~ 09 月
留学時の学年: |
修士2年 |
---|---|
東工大での所属: |
物質理工学院 応用化学系 |
留学先国: |
ドイツ連邦共和国 |
留学先大学: |
アーヘン工科大学 |
留学期間: |
2022 年 07 月 04 日 ~2022 年 09 月 29 日 |
プログラム名: |
派遣大学の概要(所在地,創立年,規模など)
アーヘン工科大学はドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州アーヘンに位置しており1870年に創立された.学生は4万人を超え,ドイツの中で最も大きい工科大学の一つである.アーヘン市内にはユネスコに初めて世界遺産として登録された遺跡の一つ,アーヘン大聖堂がある.また,温泉地としても有名であり,街の名称は水を意味する語に由来している.
留学準備など
留学が決まった後,受入先研究室の教授に連絡を取り,研究内容について話し合っていた.留学は限られた期間なので事前の準備がとても重要であると感じた.渡航予定が決まり次第,先の事を考えて早めに研究内容・航空券や宿舎の手配をすることをお勧めする.私は89日間のドイツ滞在だったが90日以上の場合はビザ申請が必要である.
アーヘン工科大学は入学するとSemester ticketがもらえ,交通機関が無料になるので長期間滞在の場合はお得である.Semester ticketがないと毎回高い電車料金を払わなければならず大変だと思うが,7~8月にはドイツ鉄道(DB)が9 Euro ticketを販売しておりその期間は一か月9€で交通機関に乗り放題なのでとても助かった.
(アーヘン工科大学の入学期間が限られているので留学が決まり次第,早めに手続きをし,気になれば大学に連絡した方がいいと思う.もし入学期間が過ぎていると入学に結構お金がかかるので短期滞在の場合は入学するかしないか考えた方がいいと思う)
研究テーマは二つある.一つ目はナノテクノロジーに関する知識を深めるために表面増強ラマン分光法に必要な基板を電子線リソグラフィーにより作製すること.二つ目は派遣先研究室の学生と協働してバイオセンサーを作製し,バイオセンサーの学生大会であるSensUsに参加することである.
一つ目について,表面増強ラマン分光法(SERS)は物質の同定や定量を行う従来のラマン分光法より高感度・高選択性を持つため一分子計測法として期待されている.現在,ナノテクノロジーの激しい進歩によりSERS基板をトップアップ法で,つまり設計通りに作ることができるようになった.その方法として電子線リソグラフィーが用いられており,ナノレベルでの構造を作製できる.私は,基板作製までの過程とその後,基板評価・分析を行った.ナノレベルでの制御なので研究はクリーンルームで行われる.そのため,渡航後はまずクリーンルームへの安全テスト・対面安全講習を行い,その後装置トレーニングを行った.良いSERS測定のためにはナノ構造の形状・サイズが重要である,それらを正確に制御するためには電子線パワーや現像手法など条件を正しく選択することが必要であった.
二つ目について,SensUsはバイオセンサーの国際大会であり,毎年異なる病気をテーマにその病気のバイオマーカー(代表的な生体分子)を検知する性能を競う.今年は15チームが参加し,大会当日には企業や観客に対しバイオセンサーの性能だけでなく創造性や社会への実装についてプレゼンを行う.私は,バイオマーカーを検知するためのセンサーの表面修飾,その後表面評価を行うことで化学的な視点からチームをサポートした.私たちのチームは異なる専門性を持つ学生で構成されており,異なるバックグラウンドをもつ人々と協働する素養を学べた.結果的には一つも賞を取ることができなかったが,大会に向けてバイオセンサーを作製する過程で,自身の研究・技術がどのように社会に実装されていくのか,また商品にした後に選ばれるためにはどうしたらいいのかなどビジネス的な素養も学べたのでとても有意義な経験となった
SensUsチームメンバー (AixSense)
所属研究室内外の活動・体験(日常生活・余暇に行った事など)
平日は研究室に9時ごろから行き研究活動をしていた.研究室はフレキシブルであり,修士の部屋は学生がたくさんいて集中できないこともあったのでデスクワークは帰宅して行うときもあった.私の研究室にはドイツ以外の国出身の学生が多かったので昼ご飯や休み時間に異文化について話す機会があった.ミーティングは週に多くて3回行われゼミも参加した.
休日は基本的に9 Euro ticketや特急電車に乗ってドイツ国内外を観光していた.ドイツは地域ごとに異なる有名なビールや食べ物があるので色々試してみた.またドイツは9か国の国境と接しているので海外にもとても行きやすい.ヨーロッパの美術・文化・考えは今後の人生にとても影響を与えると思うのでできる限りいろいろな体験をするべきだと思う.
おすすめはフランス・パリ,オランダ・アムステルダム,ドイツ・ハンブルグ
ヨーロッパで出会った東工大の学生(ハンブルク)
留学先での住居(寮,ホームステイ等),申し込み方法,ルームメイトなど
アーヘン工科大学は専用の学生寮がないため,インターネットで学生寮やアパートを探していたが,学生が多いこともあり学生寮は待機時間が1年あったのでアパートやシェアハウスに住もうと考えた.短期間の場合は宿舎選びが限られてしまうのでたくさんの候補を調べてなるべく早く手配した方がいい.私は研究室から徒歩20分,バス5分の場所にあるMilestone Aachen West NEUBAUという一人部屋アパートを借りた.少し高いが,スーパーやバス停も近くにあるので結構良かった.
Milestone Aachen West NEUBAUの部屋
留学費用(渡航費,生活費,住居費,保険料など)
渡航費:13万円,生活費:2万円,住居費:8万円/月,保険料:4万円
旅行費含め三か月で合計100万円くらい使ったと思う.
今回の留学から得られたもの,後輩へのメッセージ,感想,意見,要望
今回,住み慣れた日本から離れて何もつながりや知識のなかった国・コミュニティーに一人で参加する中でたくさんの気づきを得た.留学において一番大切な事はやはり情報を得ることだと思う.インターネットに載っていることもあるが,しっかりした情報を得るためには人から聞くことが最も良い.そのため,なるべく留学する前に現地人の友人や現地での日本人と繋がりを持っておくことを強く勧める.私は幸運なことに同じ研究室に日本人のPh.Dがおり,研究への姿勢からドイツでの生活関連事情まで非常に多くの事を教えてもらった.一人でもそういう方がいると効率的に物事が進められるし,メンタルも非常に安定する.
また,一人でもいいができるだけコミュニティーと旅行に行き様々な経験をすることが重要であると思う.日本ではやらなかった・できなかったことを通して思考することで様々な発見があると思う.例えば,私は旅行先で美術館に行くようにしていて教養や創造性を学んだ.その過程で,ヨーロッパと日本との大きな違いはアートな部分,つまり感情に重きを置くか置かないかと感じた.どちらも長所短所はあると思うが,感情に重きを置かない,つまり論理的で感情を隠すこと(集団と同じこと)が美であると思われているので日本では非効率な規律・低い幸福度が作り出されると思う.ヨーロッパでの気づきをメモして日本に持ち帰ることで新たなイノベーションに繋げたいと思っている.
後輩へのメッセージ:
まずは現地での知り合いを探して正しい情報やメンタルの基盤を作るといいと思う.情報を得た後は,限られた留学期間で何を目的とするか何に時間を使うかプランを立てると後悔しなくて済むと思う.現地での繋がり,正しい情報,あとは多分留学する方はほとんどみんな持っていると思うがプラス思考があれば予期せぬ問題が起きてもなんとかなる.
この体験談の留学・国際経験プログラム情報
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